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Capitulo 2 ~en Mexico~
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フローレス・ホテルのある街の中心から、アントニオの農園までは車で十五分程の距離だった。
初めて目にするシエネガ・デ・フローレスの街を、例え車内からでも堪能したかったが、アントニオの言葉をテルに伝えるため、街の様子は盗み見するだけに留まった。
そんな言い方をすれば、このシエネガ・デ・フローレスがとても魅力のある街に聞こえるかもしれないが、実際の街は何の変哲もない素朴で小さな街だ。
白い壁の建物が目立ちはするが、統一されているわけでもなく、黄色やオレンジ色の壁の建物も頻繁に姿を見せる。道路沿いに並ぶ椰子の木も幾度となく目にはするが、その椰子の木よりも高い建物は何一つない。改めて三階建てのフローレス・ホテルがこの街では一番のホテルである事を思い知らされる。
農園へ向かう十五分の距離の中で、アントニオは実に色々な話を聞かせてくれた。
出荷工場は今日休みのため見せる事は出来ないが、また別の日に改めて見せたいと言う事。ボヤージュ・スカイだけではなく、淡い緑色のトルコキキョウ、ボヤージュ・フォレストの品種改良に最近成功したと言う事。今年に入り新しく畑を買い足し、生産能力が上がったから、今は新規顧客の獲得に奔放している最中だと言う事。どれも興味深い話ばかりで、テルと同様に目を輝かせて、アントニオの話を聞いていたが、テルが一番目を輝かせ興味を示したのはアントニオが話す家族の話だった。
農園は家族経営。この土地で代々受け継がれてきたもので、父親から譲り受けたあと、経営はアントニオに一任されていた。忙しい時期には手を借りる事もあるが、寡黙な父親のファンが経営に口を出してくる事はないと言う。
そんな父親のファンと母親のアナ。奥さんのアンヘラと二人の息子、双子のファン・ミゲルとファン・ルイスの六人家族だと言う事。アントニオの口ぶりから温かい家庭はすぐに想像できたが、その温かさがテルにも伝わったのだろう。後部座席のテルが目を細めアントニオの話を聞く姿がバックミラーに映っていた。
「さあ、着きました。ここが私の農園です」
アントニオに促され車を降りると、どこまでも続く幾つものビニールハウスが目に飛び込んできた。勝手に広がる花畑を想像していたから、目にしたビニールハウスに肩を透かされた気にもなるが、その数だけでも圧巻と呼べるものだ。
「すごいね。いったい幾つあるんだろう?」
圧倒されたテルが漏らした質問をそのままアントニオへと投げる。
「ハウスは全部で四十あります。栽培用の大きなハウスが三十六と研究用の小さなハウスが四つです。栽培用のハウスは去年までは十八。今年に入って倍になりました」
アントニオが畑を拡げたタイミングでメキシコに来られた事。これはやはり何かの導きがあっての事だと確信が持てる。テルは未だに圧倒されているようで、開いた口を閉じられずにいる。
「折角なんだし、ハウスの中を見せてもらおう」
テルの背中を小突く。どれ程ボヤージュ・スカイに、トルコキキョウに、テルが情熱を持っているかは、アントニオにも十二分に伝わっているはずだ。
「……収穫はまだ蕾の状態。花が開く前に刈り取ります。栽培用のハウスを見ても花を見て頂けません。……なので研究用のハウスをお見せしますよ。ボヤージュ・スカイにボヤージュ・フォレスト。小さなハウスですが一面に咲く花をご覧いただけます」
アントニオが言う研究用のハウスがどれなのかはすぐに分かった。停められた車の右手後方に建つ他よりは小さめなハウス。ビニール越しに見える葉の緑に混じって、淡いブルーを見る事が出来る。
「あのハウスですか?」
テルの目にもボヤージュ・スカイの淡いブルーが映ったのだろう。アントニオに投げた問いの答えを待っている間に、すでにハウスの入口へと駆け寄っている。
「おい、テル。慌てるなよ」
「だって、早く見たいし」
その日本語の意味を理解したのだろう。アントニオが入口のビニールを捲り上げる。まだ全ては開放されていないその隙間にテルが身を滑らせる。
逸る気持ちは分かるが、その危なっかしさに目を離せないでいると、淡いブルーがテルの向こうで、幾つも群れになっている様が見えた。
一面の花畑までとは言えないが、ハウスの中でボヤージュ・スカイがこれでもかと咲き誇っている。花丈は一メートル以上。昨日ガソリンスタンドでテルが見つけた白いトルコキキョウは、大地にしがみつくように咲いていた。それを考えれば花だけではなく葉や茎もどれだけ立派なものかは分かる。
「……ここでボヤージュ・スカイの改良に成功したんです。今咲いている花は種子の収穫用の花です」
入口付近でアントニオの説明を聞いている間、テルはハウスの中央に立ったまま微動しなかった。
「……先程もお話したように、ハウスの数が倍になり私の農園の生産能力も上がりました。もしあなた方が私の花を気に入ってくれるなら、是非契約をして、日本で私の花を広めて戴きたい」
未だ微動しないテルを目で守りながら、アントニオの説明に耳を傾ける。
テルにトルコキキョウの畑を見せてやりたいと思った。テルと花屋を開いた時、ボヤージュ・スカイを扱えるように、アントニオ・ロペスの畑と契約を取りたいと思った。
それがいとも簡単に叶ってしまった今、すぐにでもテルに伝えてやるべきだが、微動しないテルにどんなトーンの声を掛ければいいのか。
「……テル」
出来るだけ色のない声で呼びかける。
「今、アントニオが……」
アントニオが持ち出した契約の話を始めようとした時、微動しなかったテルがゆっくりと振り返った。顔を歪めるような泣き方ではなく、静かに泣いていたんだろう。テルの両頬で涙の跡だけが光っていた。
「おい、テル。大丈夫か?」
「うん。ゴメン。感動しちゃって。……ううん。ゴメン。感動なんて安っぽい言葉で片付けちゃダメだよね」
ハウスの中央に立つテルへと歩み寄りその肩を抱く。自身の意識のないままに涙を流していたのだろう。体に震えもなく、感情を昂らせたあとだとは思えない程テルは落ち着いていた。
「……このボヤージュ・スカイを見ていたら。色んな事を思い出しちゃって。子供の頃からずっと花が好きで、中でもトルコキキョウが一番好きで。……花屋で働くようになって、このボヤージュ・スカイと出会って、それだけでも充分だったのに。……このメキシコに来て、昨日自生する白いトルコキキョウを見て、今日はこんなに沢山のボヤージュ・スカイを見る事が出来て。……幸せだなって、俺なんかがこんな幸せでいいのかなって」
「何言ってんだよ。幸せならそれでいいじゃないか。テルは幸せになっていいんだ」
テルの涙の跡の意味をアントニオも誤解をせず、素直に受け止めてくれたようだった。
「これほど花を愛してくれるあなた達とパートナーになれて私も本当に嬉しいです。是非、ボヤージュ・フォレストも見ていって下さい」
アントニオの前でテルの肩を抱いていた事。何故か急に恥ずかしさが込み上げてきたが、アントニオが気に留める様子はない。テルの頬にも涙の跡はもう見えない。
アントニオが言う、花を愛する域にはまだ達していないが、新たに品種改良に成功したと言う、ボヤージュ・フォレストに興味がない訳ではない。花を見て綺麗だ、美しいと思う心は持っている。逆に花を見て美しいと思わない奴がいるのか聞いてもみたい。だがテルやアントニオのように花を愛すると言う感覚はまだ持ててはいない。やはりテルと言う人間を介しての花に興味を持っている事に変わりはないようだ。
三歩ほど出遅れていた。テルもアントニオもすでにハウスの外だ。このボヤージュ・スカイのハウスの入口を閉めるため、アントニオが手招きしている。
「隣のハウスではボヤージュ・フォレストをご覧いただけますよ。まだ種子を収穫するまでは至っていませんが……」
案内された隣のハウスの中は花畑と言える程の多くの花を咲かせている訳ではなかったが、それでもすぐに淡い緑の集合体を見つける事ができた。葉や茎のような緑ではなく、説明の難しい緑色だ。ヴィリジアンに白と青を少し足したような、さっきのボヤージュ・スカイに少し黄色を足したような、なかなか形容しがたい色だった。
「すごい! こんな色のトルコキキョウがあるなんて!」
斜め前でテルが感嘆の声を漏らしている。昨日、ガソリンスタンドで自生するトルコキキョウを見つけた時と同様に興奮が窺える。
「……ねえ、梗佑君。このフォレストも日本に送ってもらえるのかな?」
「……どうだろ? アントニオに聞いてみなきゃ」
アントニオの顔を覗き込む。自身が改良した新しい花にテルが感嘆の声を上げた事。それはアントニオにとっても喜ばしい事のようで、その顔に幾つかの皺を刻んでいる。
「……ええ、もちろん。いずれは日本へも送りたいと思っています。ですがまだ他の花たちのように安定して収穫できるまで作付面積を広げていないんです。それに新しい花を輸出するには、それなりの手続きも必要で……。ですが一年。一年以内には手続きも進め、安定して収穫できるよう努めていくつもりです」
アントニオの言葉は力強かった。
「一年以内には日本にも送れるようになるって」
その場にしゃがみ込み、すぐ近くのボヤージュ・フォレストの蕾を指でつつき、淡い緑色の花弁に鼻を近付け始めたテル。
まるで、一年後によろしく。とでも話しかけているような姿に思わず頬が弛んでしまう。このメキシコに来て本当に良かったと思えるだけの成果はあった。
アントニオに繋がれた事、テルにトルコキキョウを見せられた事。もちろんそれが旅の目的であり、達成された事の喜び以上に大きなものはないが、テルへの気持ちが確固たるものだと言う自信を持てた事は、この旅の成果の一つに他ならない。
初めて目にするシエネガ・デ・フローレスの街を、例え車内からでも堪能したかったが、アントニオの言葉をテルに伝えるため、街の様子は盗み見するだけに留まった。
そんな言い方をすれば、このシエネガ・デ・フローレスがとても魅力のある街に聞こえるかもしれないが、実際の街は何の変哲もない素朴で小さな街だ。
白い壁の建物が目立ちはするが、統一されているわけでもなく、黄色やオレンジ色の壁の建物も頻繁に姿を見せる。道路沿いに並ぶ椰子の木も幾度となく目にはするが、その椰子の木よりも高い建物は何一つない。改めて三階建てのフローレス・ホテルがこの街では一番のホテルである事を思い知らされる。
農園へ向かう十五分の距離の中で、アントニオは実に色々な話を聞かせてくれた。
出荷工場は今日休みのため見せる事は出来ないが、また別の日に改めて見せたいと言う事。ボヤージュ・スカイだけではなく、淡い緑色のトルコキキョウ、ボヤージュ・フォレストの品種改良に最近成功したと言う事。今年に入り新しく畑を買い足し、生産能力が上がったから、今は新規顧客の獲得に奔放している最中だと言う事。どれも興味深い話ばかりで、テルと同様に目を輝かせて、アントニオの話を聞いていたが、テルが一番目を輝かせ興味を示したのはアントニオが話す家族の話だった。
農園は家族経営。この土地で代々受け継がれてきたもので、父親から譲り受けたあと、経営はアントニオに一任されていた。忙しい時期には手を借りる事もあるが、寡黙な父親のファンが経営に口を出してくる事はないと言う。
そんな父親のファンと母親のアナ。奥さんのアンヘラと二人の息子、双子のファン・ミゲルとファン・ルイスの六人家族だと言う事。アントニオの口ぶりから温かい家庭はすぐに想像できたが、その温かさがテルにも伝わったのだろう。後部座席のテルが目を細めアントニオの話を聞く姿がバックミラーに映っていた。
「さあ、着きました。ここが私の農園です」
アントニオに促され車を降りると、どこまでも続く幾つものビニールハウスが目に飛び込んできた。勝手に広がる花畑を想像していたから、目にしたビニールハウスに肩を透かされた気にもなるが、その数だけでも圧巻と呼べるものだ。
「すごいね。いったい幾つあるんだろう?」
圧倒されたテルが漏らした質問をそのままアントニオへと投げる。
「ハウスは全部で四十あります。栽培用の大きなハウスが三十六と研究用の小さなハウスが四つです。栽培用のハウスは去年までは十八。今年に入って倍になりました」
アントニオが畑を拡げたタイミングでメキシコに来られた事。これはやはり何かの導きがあっての事だと確信が持てる。テルは未だに圧倒されているようで、開いた口を閉じられずにいる。
「折角なんだし、ハウスの中を見せてもらおう」
テルの背中を小突く。どれ程ボヤージュ・スカイに、トルコキキョウに、テルが情熱を持っているかは、アントニオにも十二分に伝わっているはずだ。
「……収穫はまだ蕾の状態。花が開く前に刈り取ります。栽培用のハウスを見ても花を見て頂けません。……なので研究用のハウスをお見せしますよ。ボヤージュ・スカイにボヤージュ・フォレスト。小さなハウスですが一面に咲く花をご覧いただけます」
アントニオが言う研究用のハウスがどれなのかはすぐに分かった。停められた車の右手後方に建つ他よりは小さめなハウス。ビニール越しに見える葉の緑に混じって、淡いブルーを見る事が出来る。
「あのハウスですか?」
テルの目にもボヤージュ・スカイの淡いブルーが映ったのだろう。アントニオに投げた問いの答えを待っている間に、すでにハウスの入口へと駆け寄っている。
「おい、テル。慌てるなよ」
「だって、早く見たいし」
その日本語の意味を理解したのだろう。アントニオが入口のビニールを捲り上げる。まだ全ては開放されていないその隙間にテルが身を滑らせる。
逸る気持ちは分かるが、その危なっかしさに目を離せないでいると、淡いブルーがテルの向こうで、幾つも群れになっている様が見えた。
一面の花畑までとは言えないが、ハウスの中でボヤージュ・スカイがこれでもかと咲き誇っている。花丈は一メートル以上。昨日ガソリンスタンドでテルが見つけた白いトルコキキョウは、大地にしがみつくように咲いていた。それを考えれば花だけではなく葉や茎もどれだけ立派なものかは分かる。
「……ここでボヤージュ・スカイの改良に成功したんです。今咲いている花は種子の収穫用の花です」
入口付近でアントニオの説明を聞いている間、テルはハウスの中央に立ったまま微動しなかった。
「……先程もお話したように、ハウスの数が倍になり私の農園の生産能力も上がりました。もしあなた方が私の花を気に入ってくれるなら、是非契約をして、日本で私の花を広めて戴きたい」
未だ微動しないテルを目で守りながら、アントニオの説明に耳を傾ける。
テルにトルコキキョウの畑を見せてやりたいと思った。テルと花屋を開いた時、ボヤージュ・スカイを扱えるように、アントニオ・ロペスの畑と契約を取りたいと思った。
それがいとも簡単に叶ってしまった今、すぐにでもテルに伝えてやるべきだが、微動しないテルにどんなトーンの声を掛ければいいのか。
「……テル」
出来るだけ色のない声で呼びかける。
「今、アントニオが……」
アントニオが持ち出した契約の話を始めようとした時、微動しなかったテルがゆっくりと振り返った。顔を歪めるような泣き方ではなく、静かに泣いていたんだろう。テルの両頬で涙の跡だけが光っていた。
「おい、テル。大丈夫か?」
「うん。ゴメン。感動しちゃって。……ううん。ゴメン。感動なんて安っぽい言葉で片付けちゃダメだよね」
ハウスの中央に立つテルへと歩み寄りその肩を抱く。自身の意識のないままに涙を流していたのだろう。体に震えもなく、感情を昂らせたあとだとは思えない程テルは落ち着いていた。
「……このボヤージュ・スカイを見ていたら。色んな事を思い出しちゃって。子供の頃からずっと花が好きで、中でもトルコキキョウが一番好きで。……花屋で働くようになって、このボヤージュ・スカイと出会って、それだけでも充分だったのに。……このメキシコに来て、昨日自生する白いトルコキキョウを見て、今日はこんなに沢山のボヤージュ・スカイを見る事が出来て。……幸せだなって、俺なんかがこんな幸せでいいのかなって」
「何言ってんだよ。幸せならそれでいいじゃないか。テルは幸せになっていいんだ」
テルの涙の跡の意味をアントニオも誤解をせず、素直に受け止めてくれたようだった。
「これほど花を愛してくれるあなた達とパートナーになれて私も本当に嬉しいです。是非、ボヤージュ・フォレストも見ていって下さい」
アントニオの前でテルの肩を抱いていた事。何故か急に恥ずかしさが込み上げてきたが、アントニオが気に留める様子はない。テルの頬にも涙の跡はもう見えない。
アントニオが言う、花を愛する域にはまだ達していないが、新たに品種改良に成功したと言う、ボヤージュ・フォレストに興味がない訳ではない。花を見て綺麗だ、美しいと思う心は持っている。逆に花を見て美しいと思わない奴がいるのか聞いてもみたい。だがテルやアントニオのように花を愛すると言う感覚はまだ持ててはいない。やはりテルと言う人間を介しての花に興味を持っている事に変わりはないようだ。
三歩ほど出遅れていた。テルもアントニオもすでにハウスの外だ。このボヤージュ・スカイのハウスの入口を閉めるため、アントニオが手招きしている。
「隣のハウスではボヤージュ・フォレストをご覧いただけますよ。まだ種子を収穫するまでは至っていませんが……」
案内された隣のハウスの中は花畑と言える程の多くの花を咲かせている訳ではなかったが、それでもすぐに淡い緑の集合体を見つける事ができた。葉や茎のような緑ではなく、説明の難しい緑色だ。ヴィリジアンに白と青を少し足したような、さっきのボヤージュ・スカイに少し黄色を足したような、なかなか形容しがたい色だった。
「すごい! こんな色のトルコキキョウがあるなんて!」
斜め前でテルが感嘆の声を漏らしている。昨日、ガソリンスタンドで自生するトルコキキョウを見つけた時と同様に興奮が窺える。
「……ねえ、梗佑君。このフォレストも日本に送ってもらえるのかな?」
「……どうだろ? アントニオに聞いてみなきゃ」
アントニオの顔を覗き込む。自身が改良した新しい花にテルが感嘆の声を上げた事。それはアントニオにとっても喜ばしい事のようで、その顔に幾つかの皺を刻んでいる。
「……ええ、もちろん。いずれは日本へも送りたいと思っています。ですがまだ他の花たちのように安定して収穫できるまで作付面積を広げていないんです。それに新しい花を輸出するには、それなりの手続きも必要で……。ですが一年。一年以内には手続きも進め、安定して収穫できるよう努めていくつもりです」
アントニオの言葉は力強かった。
「一年以内には日本にも送れるようになるって」
その場にしゃがみ込み、すぐ近くのボヤージュ・フォレストの蕾を指でつつき、淡い緑色の花弁に鼻を近付け始めたテル。
まるで、一年後によろしく。とでも話しかけているような姿に思わず頬が弛んでしまう。このメキシコに来て本当に良かったと思えるだけの成果はあった。
アントニオに繋がれた事、テルにトルコキキョウを見せられた事。もちろんそれが旅の目的であり、達成された事の喜び以上に大きなものはないが、テルへの気持ちが確固たるものだと言う自信を持てた事は、この旅の成果の一つに他ならない。
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