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【6】 日常の向こう② *性描写あり
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——いつまで舐め回しているんだろうか?
ふと、どれ位の時間が経ったのか気にもなりもしたが、暗闇の中、時間の感覚が奪われていた。それでもアラームを合わせている事に、安心感は持つ事が出来る。
もう二時間は経っていたのかもしれない。股間を貪り続ける男。だがその舌が腹から胸へ、更に顔へと這い上がってきた時。
「……ヨウイチ」
荒い息と共に男の小さな声が漏れた。
「……ヨウイチ、ヨウイチ。ヨウイチ!」
次第に大きくなる声。その声に合わせ、男の指が尻へと食い入ってくる。男の首に腕を回す。幾ら名前を間違えられたとは言え、長時間に及ぶ行為に体は熱くなっている。指を三本入れられても、尻に痛みはなく、充分柔らかくなっているようだ。
「ヨウイチ、入れるよ」
荒い息の混じった小さな声に戻っていた。柔らかくなった尻に男を受け入れ、暗闇で繰り広げられる行為に没頭していく。その後、男の荒い息遣いは何分続いただろうか。長い時間だったかもしれないし、案外短かったのかもしれない。今、尻の中に果てた男の顔は胸の上にある。
「陽太。ありがとう」
胸に顔を埋めたままの潰れた声に、固く閉じていた目を開いてみる。だが男の顔は確認できない。そんな見開いた目に突然眩しい光が飛び込み、咄嗟に目を閉じる。男が照明のスイッチに指を伸ばしたらしい。
「えっ?」
ゆっくりと目を開き、ぼんやりと浮かび始めた男の顔に、自然と驚きが零れる。
「えっ?」
見覚えのある顔に何度も驚きが声になるが、それ以上の言葉は繋げられない。
「陽太。久しぶりだな。元気だったか?」
「えっ?」
こんなにも驚きを与えておきながら、男の表情に驚きはなかった。むしろ少しの笑みを浮かべているようにも見える。
「何でそんなにびっくりしているんだ?」
「えっ?まさか、高志さん?」
「ああ、三年ぶりだな」
何喰わぬ顔の高志に、頭が真っ白になっていく。耳と目を疑いたいが、目の前にいるのは間違いなく高志だ。ほんの数分前まで、このベッドで繰り広げていた行為を思い出す。
「何で? こんな、えっ?」
思い出した行為に、吐き気が伴いそうで、思わず口を手で塞ぐ。明かりに照らされた部屋では、目の前の男の全てを見る事が出来るが、高志だと知った以上、目を逸らすしか術はない。
「お前がこんな売り専なんて、やっている事は前から知っていたよ。ネットで見つけていたんだ。……お前も見たか? 茜の死体が見つかったニュース。それで、元気かなって気になってな。まあ、元気そうで良かったよ」
「気になってって……何でこんな、こんな形で」
「何でって、お前が売り専なんてやっているからだろ」
言葉を失うしかなかった。高志に、まさか叔父である高志に買われるなんて。
「それより、もうそろそろ三時間だから、シャワー浴びて帰っていいよ」
他の客と変わらない口ぶりに、全身が震える。
「寒いのか? 冷房効き過ぎかな?」
どうして唯一の肉親である甥と、あんな行為に及んでおきながら、平静でいられるのだろうか? いや、高志は初めから身内だと分かった上で、売り専を買い、行為に及んだのだ。
「俺は気持ち良かったよ。お前も気持ち良かったんだろ? 何ならまた指名するよ」
あまりにもあっけらかんとした態度に、混乱は押えられていた。さっき覚えた吐き気も全身の震えも消えている。何故かいつもの客を相手した後と変わらない自分を取り戻しつつある。
「……俺、何度か電話したんですよ。母さんの事で」
平静を取り戻しかけた口は、叔父と甥としての会話を発する事が出来た。
「ああ、今は携帯しか持っていないんだ。何かあったら携帯に連絡くれればいい。さっきのアドレスにメールくれてもいい。それよりシャワー浴びて戻った方がいいんじゃないのか? もうそんなに時間ないだろ」
高志に促され、ユニットバスへ体を納める。一体どう捉えればいいのだろうか? 気になって、なんて言い方ではぐらかされたような気もする。だが更に突っ込んで聞いたところで、高志が真意を語るとも思えなかった。
すぐに湯気が立ち込めるほど熱いシャワーに頭を晒しても、高志の考えが読めるはずもない。ただ固く目を閉じると、行為に耽った男が浮かびもしたが、そこに高志がだぶる事はなかった。
ふと、どれ位の時間が経ったのか気にもなりもしたが、暗闇の中、時間の感覚が奪われていた。それでもアラームを合わせている事に、安心感は持つ事が出来る。
もう二時間は経っていたのかもしれない。股間を貪り続ける男。だがその舌が腹から胸へ、更に顔へと這い上がってきた時。
「……ヨウイチ」
荒い息と共に男の小さな声が漏れた。
「……ヨウイチ、ヨウイチ。ヨウイチ!」
次第に大きくなる声。その声に合わせ、男の指が尻へと食い入ってくる。男の首に腕を回す。幾ら名前を間違えられたとは言え、長時間に及ぶ行為に体は熱くなっている。指を三本入れられても、尻に痛みはなく、充分柔らかくなっているようだ。
「ヨウイチ、入れるよ」
荒い息の混じった小さな声に戻っていた。柔らかくなった尻に男を受け入れ、暗闇で繰り広げられる行為に没頭していく。その後、男の荒い息遣いは何分続いただろうか。長い時間だったかもしれないし、案外短かったのかもしれない。今、尻の中に果てた男の顔は胸の上にある。
「陽太。ありがとう」
胸に顔を埋めたままの潰れた声に、固く閉じていた目を開いてみる。だが男の顔は確認できない。そんな見開いた目に突然眩しい光が飛び込み、咄嗟に目を閉じる。男が照明のスイッチに指を伸ばしたらしい。
「えっ?」
ゆっくりと目を開き、ぼんやりと浮かび始めた男の顔に、自然と驚きが零れる。
「えっ?」
見覚えのある顔に何度も驚きが声になるが、それ以上の言葉は繋げられない。
「陽太。久しぶりだな。元気だったか?」
「えっ?」
こんなにも驚きを与えておきながら、男の表情に驚きはなかった。むしろ少しの笑みを浮かべているようにも見える。
「何でそんなにびっくりしているんだ?」
「えっ?まさか、高志さん?」
「ああ、三年ぶりだな」
何喰わぬ顔の高志に、頭が真っ白になっていく。耳と目を疑いたいが、目の前にいるのは間違いなく高志だ。ほんの数分前まで、このベッドで繰り広げていた行為を思い出す。
「何で? こんな、えっ?」
思い出した行為に、吐き気が伴いそうで、思わず口を手で塞ぐ。明かりに照らされた部屋では、目の前の男の全てを見る事が出来るが、高志だと知った以上、目を逸らすしか術はない。
「お前がこんな売り専なんて、やっている事は前から知っていたよ。ネットで見つけていたんだ。……お前も見たか? 茜の死体が見つかったニュース。それで、元気かなって気になってな。まあ、元気そうで良かったよ」
「気になってって……何でこんな、こんな形で」
「何でって、お前が売り専なんてやっているからだろ」
言葉を失うしかなかった。高志に、まさか叔父である高志に買われるなんて。
「それより、もうそろそろ三時間だから、シャワー浴びて帰っていいよ」
他の客と変わらない口ぶりに、全身が震える。
「寒いのか? 冷房効き過ぎかな?」
どうして唯一の肉親である甥と、あんな行為に及んでおきながら、平静でいられるのだろうか? いや、高志は初めから身内だと分かった上で、売り専を買い、行為に及んだのだ。
「俺は気持ち良かったよ。お前も気持ち良かったんだろ? 何ならまた指名するよ」
あまりにもあっけらかんとした態度に、混乱は押えられていた。さっき覚えた吐き気も全身の震えも消えている。何故かいつもの客を相手した後と変わらない自分を取り戻しつつある。
「……俺、何度か電話したんですよ。母さんの事で」
平静を取り戻しかけた口は、叔父と甥としての会話を発する事が出来た。
「ああ、今は携帯しか持っていないんだ。何かあったら携帯に連絡くれればいい。さっきのアドレスにメールくれてもいい。それよりシャワー浴びて戻った方がいいんじゃないのか? もうそんなに時間ないだろ」
高志に促され、ユニットバスへ体を納める。一体どう捉えればいいのだろうか? 気になって、なんて言い方ではぐらかされたような気もする。だが更に突っ込んで聞いたところで、高志が真意を語るとも思えなかった。
すぐに湯気が立ち込めるほど熱いシャワーに頭を晒しても、高志の考えが読めるはずもない。ただ固く目を閉じると、行為に耽った男が浮かびもしたが、そこに高志がだぶる事はなかった。
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