【完結】White Whirling ~二丁目探偵物語~

かの翔吾

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Prologue

Be whirling.

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——Be whirling廻れ!Whirling廻れ!.
——Be whirling. Whirling.

 ルーミーの声。いや、違う。ルーミーではない。高幡たかはたの声だ。

——Be whirling. Whirling.
——Be whirling. Whirling.

 会場に響き渡る声に、誰もが息を飲んでいる。もし高幡が神のつかいだと言われても、今なら全てを飲み込むだろう。そんな高幡の声に合わせ、六人の男達がゆっくりと廻り始める。いつか話を聞かされた姿だ。

 右手を天に、左手を地に——。

——Be whirling. Whirling.
——Be whirling. Whirling.

 高幡の声が止む事はない。廻り始めた六人の男達が止まる事もない。舞台の上に、神に通じるみちを見せられているような錯覚。ただ高幡の声を聞き、ただ六人の男達の姿を見ているだけで、何かが解放されていくようだ。

 肉体と心と意識の解放。そんな話を聞かされた覚えもある。

『……私達の肉体はによって創られている。によって人体と宇宙は生まれたが、は人体と宇宙から生まれたものではない』

 ふと思い出したルーミーの教え。これも高幡から聞かされたものではあるが、今ならそれの意味を口に出来そうな気がする。いや、だからと言ってまだ神に迎えられる訳にはいかない。ただ一つの事件がクリアになっただけだ。

 理解し難さを、不条理と片付ける事で、見えなくなる事もある。それは充分に教えられた。ほんの数カ月前。四カ月、いや、五カ月は経つだろうか。

——Be whirling. Whirling.
——Be whirling. Whirling.

 止む事のない高幡の声。まだ肉体と心と意識を解放する訳にはいかない。


 Whirling【wɚlıŋ/hwɚlıŋ】(名詞)旋転せんてん旋廻せんかい。円または渦巻に回転する行為、または回転するもの。(動詞の原形)→Whirl
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