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87 アメリカ戦艦部隊の錯誤
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「こちらレーダー室! 敵五番艦より高速で飛翔する物体が発射されました! 砲撃を開始した模様!」
ワシントンの艦橋と司令塔に、レーダー室からの報告がもたらされる。
合衆国海軍のレーダーはその性能上、飛翔する砲弾すら捉えることが出来た。そのためこのような報告が入ったわけであるが、リー少将やデイビス艦長にとって、それは意外なものであった。
「敵の一番から四番艦は、戦艦ではないのか?」
レーダー室からの報告を信じる限り、ジャップ艦隊は戦艦を隊列の後方に配置していることになる。
問題は、すでにワシントンは敵一番艦を、ノースカロライナは敵二番艦を目標に射撃準備を開始してしまったということだ。
レーダーアンテナは未だ索敵モードにされたまま回転を続けているが、距離二万二〇〇〇ヤード(約二万メートル)を切った辺りで光学照準の補助とするために射撃モードに切り替える予定であった。
しかし、レーダー室からの報告が正しければ射撃目標を変更しなければならないことになる。
「一九四一年五月のデンマーク海峡海戦では、ドイツ海軍は重巡プリンツ・オイゲンを戦艦ビスマルクに先行させていたと言う」
司令塔で、スプルーアンス少将は言った。
「しかしオイゲンをビスマルクと誤認したイギリス側は、海戦当初、その砲火をオイゲンに集中させてしまったということだ」
「ジャップがそれを知っているかどうかはともかく、こちらの砲撃目標の選定を混乱させることを意図している可能性は高いわけですな」
リーは戦艦を後方に配置しているというジャップの隊列を、そのように解釈した。
とはいえ、まだワシントンは射撃を開始していない。照準を修正するならば、今しかなかった。
「ワシントンおよびノースカロライナに下令。ジャップ戦艦は敵五番艦以降と認定し、ワシントンは敵五番艦に、ノースカロライナは敵六番艦に目標を変更せよ。砲撃開始距離は、変わらず二万ヤード!」
「アイ・サー」
TBSに取り付いていた通信兵が、ただちに戦艦戦隊司令官からの命令を伝達する。
「また、第二駆逐戦隊のフーバー大佐にも伝達。ジャップ一番艦から四番艦は巡洋艦の可能性が高いため、戦艦戦隊への雷撃阻止に当たるように」
ジャップの重巡洋艦は、合衆国海軍の重巡と違って対艦攻撃能力の高い魚雷を搭載している(合衆国海軍でも建造当初のペンサコラ級とノーザンプトン級には魚雷発射管が搭載されていたが、日米開戦前にはすでに撤去されていた)。
ある意味で、戦艦同士の砲撃戦の最中に雷撃を受けることの方がより脅威であるといえた。
だからこそ、リーは後衛の第二駆逐戦隊の四隻にそう命じたのである。
ワシントンの周囲にジャップ五番艦からの弾着があったのは、その直後であった。
ワシントンの艦橋と司令塔に、レーダー室からの報告がもたらされる。
合衆国海軍のレーダーはその性能上、飛翔する砲弾すら捉えることが出来た。そのためこのような報告が入ったわけであるが、リー少将やデイビス艦長にとって、それは意外なものであった。
「敵の一番から四番艦は、戦艦ではないのか?」
レーダー室からの報告を信じる限り、ジャップ艦隊は戦艦を隊列の後方に配置していることになる。
問題は、すでにワシントンは敵一番艦を、ノースカロライナは敵二番艦を目標に射撃準備を開始してしまったということだ。
レーダーアンテナは未だ索敵モードにされたまま回転を続けているが、距離二万二〇〇〇ヤード(約二万メートル)を切った辺りで光学照準の補助とするために射撃モードに切り替える予定であった。
しかし、レーダー室からの報告が正しければ射撃目標を変更しなければならないことになる。
「一九四一年五月のデンマーク海峡海戦では、ドイツ海軍は重巡プリンツ・オイゲンを戦艦ビスマルクに先行させていたと言う」
司令塔で、スプルーアンス少将は言った。
「しかしオイゲンをビスマルクと誤認したイギリス側は、海戦当初、その砲火をオイゲンに集中させてしまったということだ」
「ジャップがそれを知っているかどうかはともかく、こちらの砲撃目標の選定を混乱させることを意図している可能性は高いわけですな」
リーは戦艦を後方に配置しているというジャップの隊列を、そのように解釈した。
とはいえ、まだワシントンは射撃を開始していない。照準を修正するならば、今しかなかった。
「ワシントンおよびノースカロライナに下令。ジャップ戦艦は敵五番艦以降と認定し、ワシントンは敵五番艦に、ノースカロライナは敵六番艦に目標を変更せよ。砲撃開始距離は、変わらず二万ヤード!」
「アイ・サー」
TBSに取り付いていた通信兵が、ただちに戦艦戦隊司令官からの命令を伝達する。
「また、第二駆逐戦隊のフーバー大佐にも伝達。ジャップ一番艦から四番艦は巡洋艦の可能性が高いため、戦艦戦隊への雷撃阻止に当たるように」
ジャップの重巡洋艦は、合衆国海軍の重巡と違って対艦攻撃能力の高い魚雷を搭載している(合衆国海軍でも建造当初のペンサコラ級とノーザンプトン級には魚雷発射管が搭載されていたが、日米開戦前にはすでに撤去されていた)。
ある意味で、戦艦同士の砲撃戦の最中に雷撃を受けることの方がより脅威であるといえた。
だからこそ、リーは後衛の第二駆逐戦隊の四隻にそう命じたのである。
ワシントンの周囲にジャップ五番艦からの弾着があったのは、その直後であった。
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