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41 マクラスキー隊急降下
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『零戦!』
マクラスキー機の無線機に、部下からの悲痛な叫びが響き渡った。
「―――っ!?」
マクラスキーは、喉まで出かかった罵声を呑み込んだ。あと少し、あと少しですべてが上手くいくはずだった。
だというのに、最後の最後になって神は我らを見放したというのか。
「零戦、下から突っ込んできます!」
南太平洋カナカ族の血を引く後部偵察員チョチョラウセクが叫ぶ。
「ガッデム!」
マクラスキーは操縦桿を捻った。旋回する機体の脇を、曳光弾が通り抜けていく。彼は操縦席のバックミラーを確認した。
そこには、日の丸を描いた忌々しいジャップ戦闘機の姿があった。
「各機、後部機銃で応戦しろ!」
ドーントレスは後部に七・七ミリ連装機銃を備えている。背後から迫ってくる零戦を牽制する程度には役に立つだろう。
だが、ジャップは巧妙だった。
連中はこちらの死角になる背後下方から接近し、一挙に襲撃を仕掛けてきたのである。
回避運動を続けつつ、マクラスキーは編隊の様子を確認する。突然の零戦の襲撃に、編隊は完全に崩れていた。三十一機のドーントレスは空中であちこちに散らばり、その何機かは火を噴いて落下しつつある。
「やむを得ん! 各機、直ちに攻撃を開始せよ!」
不幸中の幸いなのは、恐るべき零戦の姿が十機程度しか見えないことだ。敵が増援の戦闘機を呼ぶ前に、何としても攻撃を成功させねばならなかった。
「目標に変更はない! ガラハー、お前は俺と一緒に手前の空母をやれ! ベストはその奥に見える大型空母だ!」
部下たちから“壊れた拡声器”と揶揄される怒鳴り声で、マクラスキーは全機に命じる。
この混乱の中で、その命令がどこまで正確に実行されるかは判らない。だがそれでも、マクラスキーはここで二隻のジャップ大型空母を仕留めるつもりであった。
彼は機体をジャップ大型空母に向けて降下させる。
教範通りであれば、目標に対して左翼の前端を合せて、発動機を絞って機体を左に捻って降下させるのであるが、零戦に襲われている今、訓練通りの急降下爆撃などやっていられない。
命中率は落ちるだろうが、それでもやるしかなかった。このままでは、自分たちのすべての努力が無駄になる。
彼の機体は、七十度という急角度で赤城への降下を開始した。
一方、マクラスキー機の動きに驚いたのは、第六爆撃隊を率いるベスト大尉であった。これまでの訓練であれば、自分たち第六爆撃隊が最も手近な目標を狙うはずであるのに、何故か隊長機はガラハーの第六偵察隊を率いて手前のジャップ大型空母に降下を開始してしまった。
ベスト大尉は、隊長の連絡不足を内心で罵った(正確には、彼の機体の後部偵察員が命令を聞き逃していただけなのだが)。
「やむを得ん! 俺たちは奥に見える大型空母をやるぞ!」
ベストは即座に目標を変更した。
自分たちエンタープライズ艦爆隊は、零戦の襲撃によって隊列を大きく乱し、中には撃墜されてしまった仲間もいる。
ここで一隻でも多くのジャップ空母を仕留めなければならないという思いは、ベスト大尉も隊長と同じであった。
「おい、ブラック・スミス! 俺たちについて、落ち着いて狙うんだぞ!」
ベスト大尉は、隊内で練度最悪と言われているブラック・スミス少尉機に呼びかけた。彼の機体は、これまでの訓練で一度も目標に爆弾を命中させたことがないのだ。
ベスト隊はそのスミス機を殿として、四機のドーントレスで加賀への急降下を開始した。
機体の周囲で敵対空砲火が炸裂し、風防が震える。
マクラスキー機の無線機に、部下からの悲痛な叫びが響き渡った。
「―――っ!?」
マクラスキーは、喉まで出かかった罵声を呑み込んだ。あと少し、あと少しですべてが上手くいくはずだった。
だというのに、最後の最後になって神は我らを見放したというのか。
「零戦、下から突っ込んできます!」
南太平洋カナカ族の血を引く後部偵察員チョチョラウセクが叫ぶ。
「ガッデム!」
マクラスキーは操縦桿を捻った。旋回する機体の脇を、曳光弾が通り抜けていく。彼は操縦席のバックミラーを確認した。
そこには、日の丸を描いた忌々しいジャップ戦闘機の姿があった。
「各機、後部機銃で応戦しろ!」
ドーントレスは後部に七・七ミリ連装機銃を備えている。背後から迫ってくる零戦を牽制する程度には役に立つだろう。
だが、ジャップは巧妙だった。
連中はこちらの死角になる背後下方から接近し、一挙に襲撃を仕掛けてきたのである。
回避運動を続けつつ、マクラスキーは編隊の様子を確認する。突然の零戦の襲撃に、編隊は完全に崩れていた。三十一機のドーントレスは空中であちこちに散らばり、その何機かは火を噴いて落下しつつある。
「やむを得ん! 各機、直ちに攻撃を開始せよ!」
不幸中の幸いなのは、恐るべき零戦の姿が十機程度しか見えないことだ。敵が増援の戦闘機を呼ぶ前に、何としても攻撃を成功させねばならなかった。
「目標に変更はない! ガラハー、お前は俺と一緒に手前の空母をやれ! ベストはその奥に見える大型空母だ!」
部下たちから“壊れた拡声器”と揶揄される怒鳴り声で、マクラスキーは全機に命じる。
この混乱の中で、その命令がどこまで正確に実行されるかは判らない。だがそれでも、マクラスキーはここで二隻のジャップ大型空母を仕留めるつもりであった。
彼は機体をジャップ大型空母に向けて降下させる。
教範通りであれば、目標に対して左翼の前端を合せて、発動機を絞って機体を左に捻って降下させるのであるが、零戦に襲われている今、訓練通りの急降下爆撃などやっていられない。
命中率は落ちるだろうが、それでもやるしかなかった。このままでは、自分たちのすべての努力が無駄になる。
彼の機体は、七十度という急角度で赤城への降下を開始した。
一方、マクラスキー機の動きに驚いたのは、第六爆撃隊を率いるベスト大尉であった。これまでの訓練であれば、自分たち第六爆撃隊が最も手近な目標を狙うはずであるのに、何故か隊長機はガラハーの第六偵察隊を率いて手前のジャップ大型空母に降下を開始してしまった。
ベスト大尉は、隊長の連絡不足を内心で罵った(正確には、彼の機体の後部偵察員が命令を聞き逃していただけなのだが)。
「やむを得ん! 俺たちは奥に見える大型空母をやるぞ!」
ベストは即座に目標を変更した。
自分たちエンタープライズ艦爆隊は、零戦の襲撃によって隊列を大きく乱し、中には撃墜されてしまった仲間もいる。
ここで一隻でも多くのジャップ空母を仕留めなければならないという思いは、ベスト大尉も隊長と同じであった。
「おい、ブラック・スミス! 俺たちについて、落ち着いて狙うんだぞ!」
ベスト大尉は、隊内で練度最悪と言われているブラック・スミス少尉機に呼びかけた。彼の機体は、これまでの訓練で一度も目標に爆弾を命中させたことがないのだ。
ベスト隊はそのスミス機を殿として、四機のドーントレスで加賀への急降下を開始した。
機体の周囲で敵対空砲火が炸裂し、風防が震える。
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