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19 相次ぐ敵機来襲
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「魚雷、後方に抜けました!」
見張り員が安堵と共に報告する。
「舵戻せ!」
ひとまず、赤城に迫る敵機は消えていた。だが、未だ各艦は対空砲火を激しく撃ち上げており、艦隊上空には高角砲弾の炸裂による黒煙が片々と浮かんでいる。
「各艦の状況はどうか!?」
南雲中将は、咄嗟にそう尋ねた。だが、その叫びは続く見張り員の声にかき消されてしまった。
「敵機、飛龍に急降下!」
零戦隊の襲撃によって編隊を乱されながらも、オールト中佐率いるドーントレス隊は約三分の一にあたる七機が爆撃針路に入ることに成功した。
本当であればアカギやカガといった大型空母を狙いたいところであったが、零戦に追撃される前に投弾を成功させる必要があった。
オールト中佐は素早く目標に狙いを定めた。
この際、小型空母でも致し方ない。
彼がそう考えて目標に定めた空母が、飛龍であった。
「付いてきている奴は全員俺に続け! 突撃せよ!」
オールト中佐はダイヴブレーキを展開させながら、目標と定めたジャップ空母に向けて機体を急降下させていった。
「取り舵一杯! 急げ!」
飛龍艦橋では、加来止男艦長が裂帛の号令を下していた。赤城の無事を喜んでいる暇はない。
対空砲火による喧噪の中を、飛龍は三〇ノットを超える速力で艦首を右舷に旋回させていく。だがMI作戦以降も各種作戦を控えているために物資を積み込み過ぎている船体は、最大速力である三十四ノットを出せていない。
見張り員や機銃員たちは、そのわずか数ノットの違いを酷くもどかしいものに感じていた。
ダイヴブレーキの空気を裂く音が、艦橋にまで届いているような気分になってくる。
「……」
そんな中、山口多聞少将は泰然と司令官席に腰を下ろしていた。
転舵の影響で、飛龍の船体がわずかに右舷に傾いている。海面を切り裂き、飛沫を噴き上げながら彼女は転舵を続けていた。
不意に、轟音と共に右舷に水柱が立ち上る。
衝撃が船体を揺らし、崩れた水柱が飛行甲板を濡らしていく。そして、衝撃と水柱は連続した。
下から突き上げるような衝撃が走るが、飛行甲板は無事だ。
やがて、七つ目の水柱が崩れ去ったとき、飛龍の上空から敵機の姿は消えていた。
「被害知らせ!」
至近弾で済んだとはいえ、船体は幾度も衝撃に揺さぶられた。水柱に攫われてしまった兵員もいるだろう。
「こちら機関室。ただ今の衝撃で蒸気圧が一時低下せるも、現在は復旧。機関異常なし」
機関室からの報告を皮切りに、各所から報告が上がる。結果、船体そのものに大きな損傷は見られなかったが、機銃員二名が水柱に攫われて流されたという。
「妙高より信号! 新たな敵編隊の接近を確認!」
だが、艦橋の誰かが何かを口にする前に、見張り員が新たな敵の来襲を告げた。
「艦長、ただ今の操艦、見事であった。流された二名に関しては、後で姓名を調べるよう」
「はっ」
努めて冷静な口調で放たれた山口の言葉に、加来艦長は頷くしかない。今は戦闘中であり、艦を止めて流された二名の捜索をするわけにはいかなかった。
彼らは心の内で黙祷を捧げつつ、次なる敵機来襲に備えるしかなかったのだ。
見張り員が安堵と共に報告する。
「舵戻せ!」
ひとまず、赤城に迫る敵機は消えていた。だが、未だ各艦は対空砲火を激しく撃ち上げており、艦隊上空には高角砲弾の炸裂による黒煙が片々と浮かんでいる。
「各艦の状況はどうか!?」
南雲中将は、咄嗟にそう尋ねた。だが、その叫びは続く見張り員の声にかき消されてしまった。
「敵機、飛龍に急降下!」
零戦隊の襲撃によって編隊を乱されながらも、オールト中佐率いるドーントレス隊は約三分の一にあたる七機が爆撃針路に入ることに成功した。
本当であればアカギやカガといった大型空母を狙いたいところであったが、零戦に追撃される前に投弾を成功させる必要があった。
オールト中佐は素早く目標に狙いを定めた。
この際、小型空母でも致し方ない。
彼がそう考えて目標に定めた空母が、飛龍であった。
「付いてきている奴は全員俺に続け! 突撃せよ!」
オールト中佐はダイヴブレーキを展開させながら、目標と定めたジャップ空母に向けて機体を急降下させていった。
「取り舵一杯! 急げ!」
飛龍艦橋では、加来止男艦長が裂帛の号令を下していた。赤城の無事を喜んでいる暇はない。
対空砲火による喧噪の中を、飛龍は三〇ノットを超える速力で艦首を右舷に旋回させていく。だがMI作戦以降も各種作戦を控えているために物資を積み込み過ぎている船体は、最大速力である三十四ノットを出せていない。
見張り員や機銃員たちは、そのわずか数ノットの違いを酷くもどかしいものに感じていた。
ダイヴブレーキの空気を裂く音が、艦橋にまで届いているような気分になってくる。
「……」
そんな中、山口多聞少将は泰然と司令官席に腰を下ろしていた。
転舵の影響で、飛龍の船体がわずかに右舷に傾いている。海面を切り裂き、飛沫を噴き上げながら彼女は転舵を続けていた。
不意に、轟音と共に右舷に水柱が立ち上る。
衝撃が船体を揺らし、崩れた水柱が飛行甲板を濡らしていく。そして、衝撃と水柱は連続した。
下から突き上げるような衝撃が走るが、飛行甲板は無事だ。
やがて、七つ目の水柱が崩れ去ったとき、飛龍の上空から敵機の姿は消えていた。
「被害知らせ!」
至近弾で済んだとはいえ、船体は幾度も衝撃に揺さぶられた。水柱に攫われてしまった兵員もいるだろう。
「こちら機関室。ただ今の衝撃で蒸気圧が一時低下せるも、現在は復旧。機関異常なし」
機関室からの報告を皮切りに、各所から報告が上がる。結果、船体そのものに大きな損傷は見られなかったが、機銃員二名が水柱に攫われて流されたという。
「妙高より信号! 新たな敵編隊の接近を確認!」
だが、艦橋の誰かが何かを口にする前に、見張り員が新たな敵の来襲を告げた。
「艦長、ただ今の操艦、見事であった。流された二名に関しては、後で姓名を調べるよう」
「はっ」
努めて冷静な口調で放たれた山口の言葉に、加来艦長は頷くしかない。今は戦闘中であり、艦を止めて流された二名の捜索をするわけにはいかなかった。
彼らは心の内で黙祷を捧げつつ、次なる敵機来襲に備えるしかなかったのだ。
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