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第四章 半島の暗雲編
63 補佐官対補佐官
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景紀が父である景忠と庭園を散歩している間、宵は景紀の母であり景忠の正室でもある久と話すことになった。
久はたった一人、生き残った夫との子供である景紀のことを心配していたようで、宵に皇都での景紀の様子をしきりに尋ねていた。
「景紀様は、皇都にて景忠様の代理を立派に務めてらっしゃいました」
なるべくこの義母が喜ぶよう、宵は景紀のことを持ち上げる形で問いかけに答えていく。
「そうですか。実は少し、心配していたのです」
「心配、ですか?」
「ええ、あの子はどこか意地っ張りというか、強情っ張りなところがありますから、益永様たち家老の方々と上手くやっていけるか、不安だったのです」
この母親は、景紀の冬花ら近しい者たちに対する責任感をそう受け取っているらしい。確かに、そういう捉え方もあるだろう。
「あの子が幼い頃は、葛葉家の娘さんである冬花さんのことで、よく家臣の者たちの子供と喧嘩になっていたのですよ。景忠様の代わりに当主の役目を務めるに際しても、そんなことをしていては家臣団を取りまとめることなど、到底出来ないでしょうから」
「その点に関しては、杞憂であられるかと」
「だといいのですけれど、宵姫様の方からも、少し注意しておいて下さると助かります」
どうやら自分は、この義母から息子の嫁として一定程度、認めてはくれているらしい。
例え政略結婚が当たり前な将家の中においても、嫁姑の問題は往々にして生じる。自分とこの義母との対立で景紀に迷惑を掛けることなど、宵にとっては考えたくもないことであった。
「それと、冬花さんのこと、宵姫様はどうお考えで?」
「景紀様をお支えする者同士として、良き関係を築いていきたく存じます」
佐薙家の家臣たちも、冬花のことを景紀の愛妾と呼ぶ者たちがいた。結城家内にも、そうした認識をする者がいてもおかしくはない。
久もまた、景紀、宵、冬花三者の関係に懸念を抱いているのだろう。
「これは一度、子を失った母としての忠告ですけれども、あまり冬花さんのことを蔑ろにしないであげて下さい。あの子が今も生きているのは、呪い師の者たちのお陰だと思っていますから。それに、宵姫様も子を成すに際して、冬花さんや葛葉家の者たちの力を借りることもあるでしょう。彼らが家臣であることは、とても幸運なことなのですよ」
「はい、しかと心に刻んでおきます」
久の言葉は、子を産んだ母としての実感の籠ったものであった。ただ一方で、一度子を失ってしまったが故の、呪術への傾倒のような感情も見受けられた。
歴史上、呪術的・宗教的なものへ傾倒していった者は多い。なかなか子が生まれぬことに悩んだ将家当主が、前世の行いが悪かったためと思い込み、功徳を積むために寺院などに多額の寄進を行って財政を傾かせてしまった例もある。
冬花という陰陽師が身近にいる自分は、そういう点について特に気を付けるべきだろうと、宵は久の言葉を聞いて思うのだった。
景紀たちが庭園から帰ってくると、景忠・景紀父子は政務の引き継ぎなどのために城の執務室へと向かっていった。
そのため、宵は済の案内で城内を巡ることになった。
よくよく考えたら、城内を自由に歩き回るというのも、宵の人生では初めてであったかもしれない。
城とはいえ、今では戦国時代のような防御拠点としての軍事的役割はほとんどない。天守などは発達した火砲の的であるし(実際、戦国末期の時点で天守は砲撃の標的にされていた)、城壁すら現在の陸軍の火器ならば簡単に破壊出来るだろう。城の軍事的役割は、発達した火砲にも対応出来る稜堡式要塞へとすでに移っていた。
あくまでも領国の政庁として、そして領主の権威の象徴としての、政治的役割を持つのが現在の皇国における城という存在であった。あるいは、城に文化的価値を見出して観光資源にしているところもある。城の扱いは、領主によって様々だ。
「宵姫様、済殿、少々よろしいでしょうか?」
城の廊下を歩いていると、向こうから一人の男が現れた。皇都屋敷では見かけなかった顔である。つまり、この城の人間だ。
「これは、里見様。お久しぶりでございます」
済が事務的な調子で挨拶をする。自身の世話役のその態度から、宵は彼女と現れた男の関係が必ずしも良好なものではないと感じ取った。
「宵姫様、お初にお目に掛かります。私は御館様の側用人を務めております、里見善光と申します」
男は、そう名乗った。側用人とは、要するに将家当主の補佐官である。つまりこの男は景紀にとっての冬花のような人物か、と宵は理解する。だから皇都屋敷では見かけなかったわけである。恐らく、病に倒れた主君・景忠の側にずっといたのだろう。
「これより景忠様の元に向かわねばならぬのですが、その前に一言、無礼を承知で宵姫様に申し上げたきことがございまして、よろしいでしょうか?」
慇懃な態度で、里見は言う。
「お急ぎなのでしたら、執務が終わってからでも私は構いませんが?」
済の態度を見るに、面倒なことが起こりそうな予感がしたので、宵はやり過ごそうとした。この男と話すにしても、事前に景紀か冬花から里見善光なる人間のことを訊いてからにすべきだと咄嗟に思ったのだ。
「いえ、私が申し上げたいことは一点のみでございますので」いささか強引な口調で、里見は言った。「若君のお側に控えている、葛葉冬花についての件でございます」
「里見殿」
叱責するような済の声が飛ぶ。彼女は、このまま宵と里見を会話させることを拙いと感じているようだ。
「私は今、姫様とお話しておるのだ」
だが、里見の方も引く様子はない。
「冬花様が、何か?」
宵はやむを得ず、ここでこの男から話を聞くことにした。冬花の件であれば、むしろ先に内容を聞き出して景紀に報告すべきだろう。
宵は普段通りの無表情の下で、そのように判断した。
「直答をお許し下さり、感謝いたします」平伏するような語調で、里見は続ける。「若君がご聡明なること、この里見は重々承知しておりまずが、ただ一点、あのような者を側に置き続けることに懸念を抱かずにはいられないのでございます」
「……」
里見の言葉を遮ろうと口を開きかけた済を、宵は視線だけで制する。
「姫様が若君と婚儀を挙げられた今、その懸念はますます深まりました」
「冬花様は、景紀様の補佐を大過なく全うしておられますが?」
「姫様」叱責するような調子で、里見は言った。「御身はすでに若君の正室であることをご自覚下さいませ。もしあの娘が姫様よりも先に若君のお子を宿し、それが男児であった場合、姫君のお立場が危ぶまれることになりましょう。佐薙家のご出身であらせられる姫様には、その点につき十分にご理解いただけるものと愚考いたします」
この男の目的は何だ、と宵は無表情のまま考える。言っていることは、客観的に見れば至極真っ当なものだ。自分だって、景紀に嫁ぐ前は似たようなことを覚悟していた。
だが、それを景紀に言わず、宵に言ってくることが疑問であった。
この男は先ほど、これから景忠の元に向かうと言っていた。つまりはそこに景紀もいるわけで、その懸念は景紀に直接言えばいいだろう。
家臣として抱いて当然の懸念ならば、景紀の逆鱗に触れる危険性はあるが、彼も無闇に処断しようとは思わないだろう。せいぜい、機嫌悪そうに里見の訴えを退けるといった程度で済むはずだ。
家臣としても、主君への忠の尽くし方としてはその方が正道である。わざわざ、景紀のいないところで陰口のように宵に言う必要はない。
やはり、純粋な家臣としての懸念以外の思いが、この側用人の胸の内にあると見るべきだろう。
「現在、結城家に分家はあれど直系の男子は御館様を除けば景紀様ただお一人。結城家宗家が将来にわたって安泰であるためには、姫様、あなた様が若君のご寵愛をどれほど受けられるかにかかっていると言っても過言ではないのです。下手に側室などが権力を持つような事態になれば、そこに付け込む者たちも出てまいりましょうぞ」
真っ当な意見ではあるものの、どこか宵が冬花を排斥するように誘導しているようにも感じる。佐薙家での事例を持ち出したことも、そうした思いに拍車をかける。
ならば、この男の目的は何だろうか?
そうやって頭を思考が駆け巡っている間にも、里見善光は続ける。
「それに、かの娘は如何に陰陽師であろうとも、妖狐の血を引くものであります」
これが本音か、と宵は思った。この男は単に、冬花の容姿を嫌悪しているだけなのだろうか?
だとしたら、景紀に直接言えない理由も判らないでもないが……。
いささか納得しかねる思いを、宵は抱く。
「古来、妖狐が美女に化けて君主を惑わし、政治を乱れさせたという言い伝えは様々な国に残っております。あの娘が、その伝承に倣わないという保障はどこにもないのです」
何となく、この男は自身の真意を隠しているような様子も見受けられる。家臣としての忠言、妖狐の血への嫌悪感、そうしたものの中に本音を上手く隠しているような気がするのだ。
済が警戒するのも無理からぬことだな、と宵は納得した。
これが将家の奥向きのことにしか興味のない姫君であれば、景紀の寵を得ているために自分を脅かしかねない冬花を排斥しようとするかもしれない。
しかし正直、自分はただ殿方に愛でられるだけの存在には興味がない。それは恐らく、冬花も同様だろう。
「この里見の懸念を、宵姫様にはどうかご理解いただきたく」
「判りました。私の口より、景紀様にお伝え申し上げましょう」
あくまで伝えるだけである。どちらかといえば、家臣の言動を景紀に密告するようなものだろう。
「おお、臣の思いを汲み取って頂き、この里見、感激の極みでございます」
だが、宵の反応を見て自分の忠言が受入れられたと勘違いしたらしい。本気で床に頭を突きかねない調子で、里見は頭を下げた。
「それでは、お時間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした」
そう言って、里見善光は去っていった。
結城家では佐薙家と違い、自分は城の中を自由に動けるが、城の中にいる者たちの人間性まで違っているわけではないのだな、と宵は皮肉にも似た納得を覚えたのであった。
◇◇◇
一方その頃、冬花は父に伴われて母の若菜へと帰省の報告を行っていた。
馬車の中では父もあまり親子の会話が出来なかったこともあって、二人は冬花に対して皇都での数ヶ月のことをあれこれと訊いてきた。
「冬花、あなたはちゃんと若様のお役に立てているのですか?」
両親の関心事は、やはり景紀との関係であった。
「冬花、お前は若様からご寵愛を受けているが、だからといって公私の別を忘れるようなことがあってはならんぞ」
心配と忠告が入り混じった両親の言葉に、シキガミの少女は内心で苦笑を浮かべていた。
佐薙成親は親として失格だったろうが、だからといっていつまでも娘を子供扱いする親もどうだろうか。もっとも、自分がそれだけ両親から想われているということでもあり、若干の反発を抱きつつも安堵してしまうのであるが。
「今、主家たる結城家は岐路に立っているのだ。我が葛葉家は代々、呪術的警護のために主君のお側に仕えることが許されているが、そうであるが故に要らぬ勘ぐりを入れてくる者もおる。特に冬花、お前は女だ。若様との関係を邪推する者も、いないわけではないのだ」
「しかし、私は若様のシキガミであると誓いました。若様のお側を離れることは、その誓いを破ることになります」
「ああ、それは私たちも判っている。その意味では、宵姫様にお前と若様の関係をご理解いただけたことは幸運であったな。だが、それを万人が理解出来るとは限らんのが、人の世の難しいところなのだ」
「何か、父様や母様にご迷惑でも?」
「迷惑というほどのものではないのだがな……」
英市郎は苦い表情とともに、口を濁した。
「何かあったのですか?」
だが、冬花は続きを促した。
「……里見殿から、何度か釘を刺されてな」
ああ、と冬花は納得した。
景紀の父である結城景忠に側用人として重用されている里見善光は、用人系統の家臣である。少年期に、まだ兵学寮を出たばかりの景忠の小姓に任命されて以来、彼の側に控え続けている男であった。
里見善光は用人の出であるために執政や参与の地位を得ることは出来なかったが、それでも景忠が政務を執り行っていた頃にはそれなりの権限を持っていた。このあたりは、同じ補佐官的存在でも冬花と違うところである。
そして、景忠の寵臣であるがために執政や参与といった重臣と対等であるかのように振る舞うことも多かった。
そのため、事務処理能力に長けた人間であることは他の家臣団たちからも認められていたものの、益永忠胤など一部重臣たちとの関係は必ずしも良好ではなかった。
そして、まだ冬花が自分の中に流れる妖狐の血を十分に制御出来なかった幼少期、その容姿を見て不吉の子と陰で言っていた家臣の一人であった。
冬花がそうした家臣たちの陰口に耐えきれずに景紀に泣きついてしまった時、名前を挙げた者の一人だった。父親である景忠には忠臣面をしつつ、陰では冬花の悪口を言う表裏のある奴、と景紀はそれで思ってしまったらしい。
冬花の責任であるとはいえ、景紀が人間不信となる一因を作った人間の一人であった。
「どのように、ですか?」
「例えば、若様は宵姫様と婚儀を結ばれただろう? それなのにお前が未だ若様のお側に居続けることについて親の立場から何か言うべきではないか、と言われていてな。もし万が一、宵姫さまよりも先にお前が若様の子を孕み、しかもそれが男子であった場合どうするのだ、などとな」
「……」
冬花はちょっとだけ眉をしかめて不快げな表情を作った。
「……恐らく、里見殿は若様の補佐は自分が御館様の側用人に引き続いて務めることになると考えていたのでは? それなのに私が若様の補佐官に任命されたことで、それを根に持っておられるとか?」
「まあ、若様はまだお若い。景忠様がご健壮であられた頃からその執務に携わっていた里見殿からすれば、年若い当主を補佐すべきなのは当然自分だと考えていたとしてもおかしくはなかろう」
実際問題、当主の側用人(あるいは冬花のように、当主ではないにせよそれに準ずる地位にある人間の補佐官)という地位は、やり方次第では家臣団内でそれ相応の影響力を獲得することが出来る。その上、中央政府による職制で定められた地位である執政や参与と違って、側用人は将家内の職制で定められた地位であるため、当主が個人的に置くことが出来、身分を問わず登用することが可能であった。
組織を掌握するにおいて重要なのは、権力と情報である。
補佐官は権力こそ限定的であるが、当主の元に集まってくる情報を集約出来る立場にある。
これは逆にいえば当主に届く情報を制限することも出来るわけで、やり方次第では里見善光が若い次期当主(景紀)を操ることも可能であっただろう(と、里見自身が考えていたかもしれない)。
また、主君の作成する文書の起案などにも関わることが出来るため、他の家臣へ影響力を及ぼすことも可能である。
つまり、組織の様々な情報を入手し、またそれを発信出来る側用人(冬花の場合は主君が当主ではないので単なる補佐官)という立場は、主君や他の家臣への一定程度の影響力を発揮することも可能なわけである。
これが極端なことになると、後世の共産党におけるような、本来であれば文書管理という情報の整理・収集を行う組織であった書記局が大きな権限を握り、その長である書記長が党の最高指導者になるという事例にすら発展してしまう。
だからこそ、景紀は冬花の補佐官としての権限をかなりの程度、限定化しているわけである。とはいえ、これは景紀が冬花を信頼していないというわけではない。むしろ、その重要な地位に冬花を付けたこと自体が景紀の彼女に対する信頼の証であり、同時に彼女が他の家臣団から無用の反発を買わないようにするために権限を限定したのである。
冬花もそれを弁えており、重臣との情報共有は密に行っている。家臣の中で六家会議に参加出来る数少ない人間であることもあり、議事録はその日の内に清書して重臣たちへ供覧に回しているなど、冬花は相応に彼らを尊重する姿勢をとっていた。
こうした態度が、益永を始めとした結城家重臣から彼女が政敵と明確に認定されていない要因なのである。
さらに、景紀が家臣団の相互監視を意図した朝食会議の存在も、冬花に有利に働いていた。朝食会議は家臣が冬花を介さずに景紀に会うことの出来る機会であり、これによって重臣たちは冬花が自分たちのことを景紀に歪めて伝える恐れ(つまりは讒言などの恐れ)がないと安心材料を提供出来る場となっていたのである。
「それで、結局のところ、若様との関係はどうなのだ?」
案ずるように、英市郎は問う。
「父様が心配されるようなことは、何もありません。私は、若様のシキガミですから」
景紀が宵姫と婚礼の儀を行う前、筆頭家老・益永忠胤からも側室の話を聞かされたが、今も「側室」という言葉には心を動かされなかった。
やはり、自分は景紀のシキガミでありたいのだ。
あるいはそれは、シキガミならば景紀の一番になれるが、妻となれば二番手以下に甘んじなければならないという女としての見栄も入っているのかもしれない。
そんなことを、冬花は思った。
「そうか」
シキガミ少女の父は、まだ何か言いたげにしながらも、短くそう言うだけであった。
あるいは英市郎は、家臣として娘の主君への忠誠心を喜ばしく思いつつも、親として娘のいき遅れを懸念していたのかもしれない。もしかしたら、若様からのお手出しを期待する思いも、どこかにあったのかもしれない。
「ならばこれからも、若様の御為に尽くしなさい」
しかし結局、冬花の父はそう言って締め括ったのだった。
久はたった一人、生き残った夫との子供である景紀のことを心配していたようで、宵に皇都での景紀の様子をしきりに尋ねていた。
「景紀様は、皇都にて景忠様の代理を立派に務めてらっしゃいました」
なるべくこの義母が喜ぶよう、宵は景紀のことを持ち上げる形で問いかけに答えていく。
「そうですか。実は少し、心配していたのです」
「心配、ですか?」
「ええ、あの子はどこか意地っ張りというか、強情っ張りなところがありますから、益永様たち家老の方々と上手くやっていけるか、不安だったのです」
この母親は、景紀の冬花ら近しい者たちに対する責任感をそう受け取っているらしい。確かに、そういう捉え方もあるだろう。
「あの子が幼い頃は、葛葉家の娘さんである冬花さんのことで、よく家臣の者たちの子供と喧嘩になっていたのですよ。景忠様の代わりに当主の役目を務めるに際しても、そんなことをしていては家臣団を取りまとめることなど、到底出来ないでしょうから」
「その点に関しては、杞憂であられるかと」
「だといいのですけれど、宵姫様の方からも、少し注意しておいて下さると助かります」
どうやら自分は、この義母から息子の嫁として一定程度、認めてはくれているらしい。
例え政略結婚が当たり前な将家の中においても、嫁姑の問題は往々にして生じる。自分とこの義母との対立で景紀に迷惑を掛けることなど、宵にとっては考えたくもないことであった。
「それと、冬花さんのこと、宵姫様はどうお考えで?」
「景紀様をお支えする者同士として、良き関係を築いていきたく存じます」
佐薙家の家臣たちも、冬花のことを景紀の愛妾と呼ぶ者たちがいた。結城家内にも、そうした認識をする者がいてもおかしくはない。
久もまた、景紀、宵、冬花三者の関係に懸念を抱いているのだろう。
「これは一度、子を失った母としての忠告ですけれども、あまり冬花さんのことを蔑ろにしないであげて下さい。あの子が今も生きているのは、呪い師の者たちのお陰だと思っていますから。それに、宵姫様も子を成すに際して、冬花さんや葛葉家の者たちの力を借りることもあるでしょう。彼らが家臣であることは、とても幸運なことなのですよ」
「はい、しかと心に刻んでおきます」
久の言葉は、子を産んだ母としての実感の籠ったものであった。ただ一方で、一度子を失ってしまったが故の、呪術への傾倒のような感情も見受けられた。
歴史上、呪術的・宗教的なものへ傾倒していった者は多い。なかなか子が生まれぬことに悩んだ将家当主が、前世の行いが悪かったためと思い込み、功徳を積むために寺院などに多額の寄進を行って財政を傾かせてしまった例もある。
冬花という陰陽師が身近にいる自分は、そういう点について特に気を付けるべきだろうと、宵は久の言葉を聞いて思うのだった。
景紀たちが庭園から帰ってくると、景忠・景紀父子は政務の引き継ぎなどのために城の執務室へと向かっていった。
そのため、宵は済の案内で城内を巡ることになった。
よくよく考えたら、城内を自由に歩き回るというのも、宵の人生では初めてであったかもしれない。
城とはいえ、今では戦国時代のような防御拠点としての軍事的役割はほとんどない。天守などは発達した火砲の的であるし(実際、戦国末期の時点で天守は砲撃の標的にされていた)、城壁すら現在の陸軍の火器ならば簡単に破壊出来るだろう。城の軍事的役割は、発達した火砲にも対応出来る稜堡式要塞へとすでに移っていた。
あくまでも領国の政庁として、そして領主の権威の象徴としての、政治的役割を持つのが現在の皇国における城という存在であった。あるいは、城に文化的価値を見出して観光資源にしているところもある。城の扱いは、領主によって様々だ。
「宵姫様、済殿、少々よろしいでしょうか?」
城の廊下を歩いていると、向こうから一人の男が現れた。皇都屋敷では見かけなかった顔である。つまり、この城の人間だ。
「これは、里見様。お久しぶりでございます」
済が事務的な調子で挨拶をする。自身の世話役のその態度から、宵は彼女と現れた男の関係が必ずしも良好なものではないと感じ取った。
「宵姫様、お初にお目に掛かります。私は御館様の側用人を務めております、里見善光と申します」
男は、そう名乗った。側用人とは、要するに将家当主の補佐官である。つまりこの男は景紀にとっての冬花のような人物か、と宵は理解する。だから皇都屋敷では見かけなかったわけである。恐らく、病に倒れた主君・景忠の側にずっといたのだろう。
「これより景忠様の元に向かわねばならぬのですが、その前に一言、無礼を承知で宵姫様に申し上げたきことがございまして、よろしいでしょうか?」
慇懃な態度で、里見は言う。
「お急ぎなのでしたら、執務が終わってからでも私は構いませんが?」
済の態度を見るに、面倒なことが起こりそうな予感がしたので、宵はやり過ごそうとした。この男と話すにしても、事前に景紀か冬花から里見善光なる人間のことを訊いてからにすべきだと咄嗟に思ったのだ。
「いえ、私が申し上げたいことは一点のみでございますので」いささか強引な口調で、里見は言った。「若君のお側に控えている、葛葉冬花についての件でございます」
「里見殿」
叱責するような済の声が飛ぶ。彼女は、このまま宵と里見を会話させることを拙いと感じているようだ。
「私は今、姫様とお話しておるのだ」
だが、里見の方も引く様子はない。
「冬花様が、何か?」
宵はやむを得ず、ここでこの男から話を聞くことにした。冬花の件であれば、むしろ先に内容を聞き出して景紀に報告すべきだろう。
宵は普段通りの無表情の下で、そのように判断した。
「直答をお許し下さり、感謝いたします」平伏するような語調で、里見は続ける。「若君がご聡明なること、この里見は重々承知しておりまずが、ただ一点、あのような者を側に置き続けることに懸念を抱かずにはいられないのでございます」
「……」
里見の言葉を遮ろうと口を開きかけた済を、宵は視線だけで制する。
「姫様が若君と婚儀を挙げられた今、その懸念はますます深まりました」
「冬花様は、景紀様の補佐を大過なく全うしておられますが?」
「姫様」叱責するような調子で、里見は言った。「御身はすでに若君の正室であることをご自覚下さいませ。もしあの娘が姫様よりも先に若君のお子を宿し、それが男児であった場合、姫君のお立場が危ぶまれることになりましょう。佐薙家のご出身であらせられる姫様には、その点につき十分にご理解いただけるものと愚考いたします」
この男の目的は何だ、と宵は無表情のまま考える。言っていることは、客観的に見れば至極真っ当なものだ。自分だって、景紀に嫁ぐ前は似たようなことを覚悟していた。
だが、それを景紀に言わず、宵に言ってくることが疑問であった。
この男は先ほど、これから景忠の元に向かうと言っていた。つまりはそこに景紀もいるわけで、その懸念は景紀に直接言えばいいだろう。
家臣として抱いて当然の懸念ならば、景紀の逆鱗に触れる危険性はあるが、彼も無闇に処断しようとは思わないだろう。せいぜい、機嫌悪そうに里見の訴えを退けるといった程度で済むはずだ。
家臣としても、主君への忠の尽くし方としてはその方が正道である。わざわざ、景紀のいないところで陰口のように宵に言う必要はない。
やはり、純粋な家臣としての懸念以外の思いが、この側用人の胸の内にあると見るべきだろう。
「現在、結城家に分家はあれど直系の男子は御館様を除けば景紀様ただお一人。結城家宗家が将来にわたって安泰であるためには、姫様、あなた様が若君のご寵愛をどれほど受けられるかにかかっていると言っても過言ではないのです。下手に側室などが権力を持つような事態になれば、そこに付け込む者たちも出てまいりましょうぞ」
真っ当な意見ではあるものの、どこか宵が冬花を排斥するように誘導しているようにも感じる。佐薙家での事例を持ち出したことも、そうした思いに拍車をかける。
ならば、この男の目的は何だろうか?
そうやって頭を思考が駆け巡っている間にも、里見善光は続ける。
「それに、かの娘は如何に陰陽師であろうとも、妖狐の血を引くものであります」
これが本音か、と宵は思った。この男は単に、冬花の容姿を嫌悪しているだけなのだろうか?
だとしたら、景紀に直接言えない理由も判らないでもないが……。
いささか納得しかねる思いを、宵は抱く。
「古来、妖狐が美女に化けて君主を惑わし、政治を乱れさせたという言い伝えは様々な国に残っております。あの娘が、その伝承に倣わないという保障はどこにもないのです」
何となく、この男は自身の真意を隠しているような様子も見受けられる。家臣としての忠言、妖狐の血への嫌悪感、そうしたものの中に本音を上手く隠しているような気がするのだ。
済が警戒するのも無理からぬことだな、と宵は納得した。
これが将家の奥向きのことにしか興味のない姫君であれば、景紀の寵を得ているために自分を脅かしかねない冬花を排斥しようとするかもしれない。
しかし正直、自分はただ殿方に愛でられるだけの存在には興味がない。それは恐らく、冬花も同様だろう。
「この里見の懸念を、宵姫様にはどうかご理解いただきたく」
「判りました。私の口より、景紀様にお伝え申し上げましょう」
あくまで伝えるだけである。どちらかといえば、家臣の言動を景紀に密告するようなものだろう。
「おお、臣の思いを汲み取って頂き、この里見、感激の極みでございます」
だが、宵の反応を見て自分の忠言が受入れられたと勘違いしたらしい。本気で床に頭を突きかねない調子で、里見は頭を下げた。
「それでは、お時間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした」
そう言って、里見善光は去っていった。
結城家では佐薙家と違い、自分は城の中を自由に動けるが、城の中にいる者たちの人間性まで違っているわけではないのだな、と宵は皮肉にも似た納得を覚えたのであった。
◇◇◇
一方その頃、冬花は父に伴われて母の若菜へと帰省の報告を行っていた。
馬車の中では父もあまり親子の会話が出来なかったこともあって、二人は冬花に対して皇都での数ヶ月のことをあれこれと訊いてきた。
「冬花、あなたはちゃんと若様のお役に立てているのですか?」
両親の関心事は、やはり景紀との関係であった。
「冬花、お前は若様からご寵愛を受けているが、だからといって公私の別を忘れるようなことがあってはならんぞ」
心配と忠告が入り混じった両親の言葉に、シキガミの少女は内心で苦笑を浮かべていた。
佐薙成親は親として失格だったろうが、だからといっていつまでも娘を子供扱いする親もどうだろうか。もっとも、自分がそれだけ両親から想われているということでもあり、若干の反発を抱きつつも安堵してしまうのであるが。
「今、主家たる結城家は岐路に立っているのだ。我が葛葉家は代々、呪術的警護のために主君のお側に仕えることが許されているが、そうであるが故に要らぬ勘ぐりを入れてくる者もおる。特に冬花、お前は女だ。若様との関係を邪推する者も、いないわけではないのだ」
「しかし、私は若様のシキガミであると誓いました。若様のお側を離れることは、その誓いを破ることになります」
「ああ、それは私たちも判っている。その意味では、宵姫様にお前と若様の関係をご理解いただけたことは幸運であったな。だが、それを万人が理解出来るとは限らんのが、人の世の難しいところなのだ」
「何か、父様や母様にご迷惑でも?」
「迷惑というほどのものではないのだがな……」
英市郎は苦い表情とともに、口を濁した。
「何かあったのですか?」
だが、冬花は続きを促した。
「……里見殿から、何度か釘を刺されてな」
ああ、と冬花は納得した。
景紀の父である結城景忠に側用人として重用されている里見善光は、用人系統の家臣である。少年期に、まだ兵学寮を出たばかりの景忠の小姓に任命されて以来、彼の側に控え続けている男であった。
里見善光は用人の出であるために執政や参与の地位を得ることは出来なかったが、それでも景忠が政務を執り行っていた頃にはそれなりの権限を持っていた。このあたりは、同じ補佐官的存在でも冬花と違うところである。
そして、景忠の寵臣であるがために執政や参与といった重臣と対等であるかのように振る舞うことも多かった。
そのため、事務処理能力に長けた人間であることは他の家臣団たちからも認められていたものの、益永忠胤など一部重臣たちとの関係は必ずしも良好ではなかった。
そして、まだ冬花が自分の中に流れる妖狐の血を十分に制御出来なかった幼少期、その容姿を見て不吉の子と陰で言っていた家臣の一人であった。
冬花がそうした家臣たちの陰口に耐えきれずに景紀に泣きついてしまった時、名前を挙げた者の一人だった。父親である景忠には忠臣面をしつつ、陰では冬花の悪口を言う表裏のある奴、と景紀はそれで思ってしまったらしい。
冬花の責任であるとはいえ、景紀が人間不信となる一因を作った人間の一人であった。
「どのように、ですか?」
「例えば、若様は宵姫様と婚儀を結ばれただろう? それなのにお前が未だ若様のお側に居続けることについて親の立場から何か言うべきではないか、と言われていてな。もし万が一、宵姫さまよりも先にお前が若様の子を孕み、しかもそれが男子であった場合どうするのだ、などとな」
「……」
冬花はちょっとだけ眉をしかめて不快げな表情を作った。
「……恐らく、里見殿は若様の補佐は自分が御館様の側用人に引き続いて務めることになると考えていたのでは? それなのに私が若様の補佐官に任命されたことで、それを根に持っておられるとか?」
「まあ、若様はまだお若い。景忠様がご健壮であられた頃からその執務に携わっていた里見殿からすれば、年若い当主を補佐すべきなのは当然自分だと考えていたとしてもおかしくはなかろう」
実際問題、当主の側用人(あるいは冬花のように、当主ではないにせよそれに準ずる地位にある人間の補佐官)という地位は、やり方次第では家臣団内でそれ相応の影響力を獲得することが出来る。その上、中央政府による職制で定められた地位である執政や参与と違って、側用人は将家内の職制で定められた地位であるため、当主が個人的に置くことが出来、身分を問わず登用することが可能であった。
組織を掌握するにおいて重要なのは、権力と情報である。
補佐官は権力こそ限定的であるが、当主の元に集まってくる情報を集約出来る立場にある。
これは逆にいえば当主に届く情報を制限することも出来るわけで、やり方次第では里見善光が若い次期当主(景紀)を操ることも可能であっただろう(と、里見自身が考えていたかもしれない)。
また、主君の作成する文書の起案などにも関わることが出来るため、他の家臣へ影響力を及ぼすことも可能である。
つまり、組織の様々な情報を入手し、またそれを発信出来る側用人(冬花の場合は主君が当主ではないので単なる補佐官)という立場は、主君や他の家臣への一定程度の影響力を発揮することも可能なわけである。
これが極端なことになると、後世の共産党におけるような、本来であれば文書管理という情報の整理・収集を行う組織であった書記局が大きな権限を握り、その長である書記長が党の最高指導者になるという事例にすら発展してしまう。
だからこそ、景紀は冬花の補佐官としての権限をかなりの程度、限定化しているわけである。とはいえ、これは景紀が冬花を信頼していないというわけではない。むしろ、その重要な地位に冬花を付けたこと自体が景紀の彼女に対する信頼の証であり、同時に彼女が他の家臣団から無用の反発を買わないようにするために権限を限定したのである。
冬花もそれを弁えており、重臣との情報共有は密に行っている。家臣の中で六家会議に参加出来る数少ない人間であることもあり、議事録はその日の内に清書して重臣たちへ供覧に回しているなど、冬花は相応に彼らを尊重する姿勢をとっていた。
こうした態度が、益永を始めとした結城家重臣から彼女が政敵と明確に認定されていない要因なのである。
さらに、景紀が家臣団の相互監視を意図した朝食会議の存在も、冬花に有利に働いていた。朝食会議は家臣が冬花を介さずに景紀に会うことの出来る機会であり、これによって重臣たちは冬花が自分たちのことを景紀に歪めて伝える恐れ(つまりは讒言などの恐れ)がないと安心材料を提供出来る場となっていたのである。
「それで、結局のところ、若様との関係はどうなのだ?」
案ずるように、英市郎は問う。
「父様が心配されるようなことは、何もありません。私は、若様のシキガミですから」
景紀が宵姫と婚礼の儀を行う前、筆頭家老・益永忠胤からも側室の話を聞かされたが、今も「側室」という言葉には心を動かされなかった。
やはり、自分は景紀のシキガミでありたいのだ。
あるいはそれは、シキガミならば景紀の一番になれるが、妻となれば二番手以下に甘んじなければならないという女としての見栄も入っているのかもしれない。
そんなことを、冬花は思った。
「そうか」
シキガミ少女の父は、まだ何か言いたげにしながらも、短くそう言うだけであった。
あるいは英市郎は、家臣として娘の主君への忠誠心を喜ばしく思いつつも、親として娘のいき遅れを懸念していたのかもしれない。もしかしたら、若様からのお手出しを期待する思いも、どこかにあったのかもしれない。
「ならばこれからも、若様の御為に尽くしなさい」
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