57 / 233
第三章 列侯会議編
56 失脚
しおりを挟む
一時間の休憩が終わり、議長が宮城から戻ると、本会議が再開された。
議長から政府提出の法律案などの報告がなされると、次の議題は全院委員長の選出であった。全院委員会は、文字通り議員全員が所属する委員会であり、形式上は本会議とは別個の存在とされている。
全院委員長に選出されたのは五摂家の一つ、九重公爵であった。この辺りにも、権威を尊重することで自らの権力の正統性を示そうとする六家の思惑が透けて見える。
全院委員長に九重公爵が選出されると、次は彼の下で各常任委員の選出が行われることになる。
ここで昼時になったので、また休憩を挟んで午後に常任委員の選出を行い、その結果を報告するための本会議が午後二時過ぎに再度開かれた。
景紀は六家の人間ということもあり、委員会の中でも最も重要とされる予算委員に選出された。
そして、今後の議事日程が議長によって通達された後、第一回目の列侯会議本会議は終了となった。
◇◇◇
午前の列侯会議において佐薙成親による電信維持費の横領が暴露されると、それに合わせるかのように正午に内務省、逓信省による連名での公式発表がなされるに至った。もちろん、議会での詳しい説明はまだであるが、それでも佐薙家による横領の事実は皇都の住民たちの知るところとなったのである。
結果、佐薙家のみならず、横領の事実を暴いた結城家にも新聞記者たちがやってきたが、新聞操縦の観点から景紀は結城家にとって不利にならない情報は積極的に開示するように家臣たちに予め指示を出していた。これによって、恐らくは横領の情報を隠蔽するために記者たちを追い返すであろう佐薙家との対比を生み出し、記者たちからの好印象を得ようとしたのである。
なおこの時代、交通・通信網の問題から新聞の夕刊は一般的ではなく、佐薙成親による電信維持費の横領が新聞の紙面を飾るのは、翌二十六日のことになる。
二十五日の夕方、廟議堂から帰宅した景紀は、今日の本会議で起こったことの顛末を宵たちに報告した。
「つまり、佐薙成親の失脚は確定的となったのですね」
淡々とした口調で反応したのは、佐薙成親の娘でもある宵であった。その声音には、実の父親に対する憐憫の情など一切存在しない、酷薄なものであった。
「これにて、景紀様にとっての後顧の憂いは断たれたことになります。実に目出度いことです」
そして、宵はむしろ父親を出し抜いて失脚の道筋を付けた景紀の手腕を喜んでいるようでもあった。
「僕としても、景くんがあんな男に足を引っ張られずに終わって一安心です。今度は伊丹、一色の番ですか?」
どこか浮ついた調子で言ったのは貴通。
「気が早い奴だな」
「そう言うってことは、将来的には追い落とすつもりはあるんですね?」
苦笑して思わず言ってしまった言葉に、貴通が喰い付いてきた。
「まあ、俺の楽隠居の邪魔になりそうであれば、な。隠居したあとも面倒な政治的ゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだからな」
とりあえず、景紀はそう言って誤魔化しておく。
「ふふっ、景くんらしいといえばらしいですね」
そんな同期生の言葉に、貴通はおかしそうな笑い声を漏らした。
「それで若、僕の方は当面、民党系の院外団に潜り込んで情報収集って形でええんか?」
一方、新八は今後の諜報活動の方向性について尋ねてくる。
「ああ、そうだな。だが、攘夷派の人間が根絶やしにされたわけじゃない。そっちの方面にも、ある程度気を配っておいてくれ」
「了解。まあ、何とか上手くやってみるわ」
手の中で火の付いていない煙管を弄びながら、飄々とした調子で新八は請け負った。
「景紀、佐薙成親の失脚に伴って、問題が発生すると思うのだけどいいかしら?」
すっと冬花が手を挙げる。
「何だ?」
「佐薙家が横領した電信維持費について、恐らく国庫への返納命令が出ると思うけど、佐薙家にその金額を返納するだけの財政的余裕はあると思う? 無理矢理捻出出来たとしても、嶺州の統治権をうちが取り上げる方向で画策している以上、今後の佐薙家は経済的に困窮するはずよ。そうなると、嶺州に大量の牢人が発生することになると思うけど?」
「失脚するのは佐薙成親だけじゃない。横領に加担していた、あるいは横領を隠蔽するのに協力していた家臣のほとんども、失脚するはずだ。そいつらは、氷州か日高州で木を数える仕事に就くことになるだろうな」
つまり、佐薙家の重臣たちのほとんどは流刑にすると、景紀は言っているわけである。
「ただし、下級官僚、つまり嶺州で実際に領地経営に当たっている実務者系統の人間たちは、よほど問題がなければそのまま使うことになるだろうな。そいつらまで入れ替えるとなると、そもそも結城家としても人間が足りない」
「それは、官僚系家臣団の方の話でしょ? 用人系統の方はどうするの? 佐薙家が没落して一番困るのは、家に直接仕えていることになっている用人系統の家臣団のはずだけど?」
「佐薙家自体は、存続させる方向で調整している。宵の母だとか、大寿丸だとか、仕えるべき人間はまだいる。ある程度の人員削減はするが、溢れ出た牢人が徒党を組んで匪賊と化して東北の治安を脅かす、なんてことにはならないはずだ」
「それに、冬花さんを見ていると忘れがちになりますが、そもそも用人系統の家臣団は家の庶務、つまりは会計・経理などの事務や家事などを司る人間たちばかりですので、匪賊化するよりは、他に就職先を見つけようとする者が多くなると思いますよ」
景紀の言葉に、貴通が付け加えた。彼女自身は匪賊討伐に加わったことはないが、軍人の知識として匪賊の人的構成を知っているのだ。
「まあ、そこは結城家の方で、ある程度就職先を斡旋してやれば城下町に失業者が溢れかえるってことにはならんだろう。鉄道なんかが開通すれば、経営のために会計の知識を持った奴なんかが必要になってくるわけだからな」
「判ったわ。じゃあ、結城家が東北経営に介入するにあたって必要な人材の種類を、一覧表にまとめておいたほうが良いかしら?」
「ああ、そうだな。頼む」
「了解。それと、列侯会議の予算委員会の方で、こっちが用意しておく資料とかってある?」
「ああ、そうだな。民党が騒ぎ立てそうな地租問題についての資料をまとめておいてくれると助かる」
「判ったわ」
「まっ、六家会議がまとまった以上、六家や大臣の誰かが余程の失言をしない限りは、問題なく議会は進むだろうよ」
まだ議会は始まったばかりであるが、来年度予算問題と東北問題に一定の道筋を付けた以上、当面、面倒事に巻き込まれることはないだろうと、景紀は判断していた。
衆民院において軍事拡張費と地租問題が議論となりそうではあるが、六家間の合意が形成されている以上、拒否権などの発動によって議会において来年度予算が成立しないという可能性は低いだろう。とかく民党の存在が注目されがちであるが、衆民院には中央政府や六家の意向を汲む、いわゆる“吏党”も存在しているのだ(「吏党」は、あくまでも民党側が政府・六家寄りである政党を批判しての言葉であり、自ら吏党を名乗っている者たちはいない。彼らは基本的には「温和派」、「保守派」を名乗っている)。そして、議員の割合でいえば“吏党”の方が多い。
これは、六家などによる選挙干渉の結果というよりは、選挙資金など衆民院議員が必要とする政治活動資金の出所の問題であった。
政治家に資金を提供出来るだけの大資産家は、もちろん地主層も含まれてはいるものの、将家、特に六家であることも多かったのである。後に財閥と呼ばれることになる大店の多くも、この時代は将家の庇護を受ける御用商人であることがほとんどであった。
つまり、衆民院議員はどこかで六家と繋がりのある場所から提供される政治資金に頼らざるを得ない者が多く、それ故に純粋に“民党”と呼べる存在はごくわずかであった。
こうした議会の人的構成であるので、景紀はある程度、議会の状況を楽観視していたのである。
「ところで、僕の方はどうすればいいですか?」
と、貴通が手を挙げた。
「僕が結城家で何をやればいいのか、景くんに命じてもらわないと、無為徒食の人間になってしまいます」
自分だけ何もやることのない現状に、貴通はちょっとだけ唇を尖らせた。
「ああ、それに関しては正式な辞令が兵部省人事局から出されてからってことになるんだが、俺はお前に結城家領軍の査閲官を任せたい」
「査閲官、ですか?」
「まあ、表向きは領内を回って軍の状況を調査するってことになるんだが、俺がまだ十分に取りかかれていない新部隊の設立と運用方法、それに基づく訓練などを見てやって欲しいんだ」
「なるほど」貴通は頷いた。「以前、景くんが言っていた新設部隊の件ですね?」
「ああ、一応、人員の選定と編成まではあらかた終わっているんだが、具体的な部分はまだだからな」
「流石に新参者の僕を部隊長にすると反発が強まるだろうから、査閲官ということですね?」
「理解が早くて助かる」にやり、と景紀は笑う。「というか正直、俺が部隊長をやってお前を幕僚長に据えたいくらいだ」
「景くん、言っていることがまるっきり新しいおもちゃで遊ぼうとする童のそれですよ」
くすり、と男装の少女は笑った。
「でもまあ、楽しそうではありますね」
「だろ?」
景紀から大役を任されたことが嬉しいのか、あるいは本格的に軍人らしいことが出来るのが嬉しいのか、とにかく貴通の声は溌剌としていた。
「いつかその部隊で、景くんと轡を並べられるといいですね」
「ああ、そうだな」
兵学寮時代の思い出が蘇ったのか、景紀も貴通も、どこか懐かしそうな笑みを互いに浮かべ合った。
「じゃあ、そういうわけで頼めるか、貴通?」
「ええ、了解です。では、査閲間の任、仰せつかりました。結城少佐殿」
そう言って、貴通は実に茶目っ気のある敬礼をしたのだった。
議長から政府提出の法律案などの報告がなされると、次の議題は全院委員長の選出であった。全院委員会は、文字通り議員全員が所属する委員会であり、形式上は本会議とは別個の存在とされている。
全院委員長に選出されたのは五摂家の一つ、九重公爵であった。この辺りにも、権威を尊重することで自らの権力の正統性を示そうとする六家の思惑が透けて見える。
全院委員長に九重公爵が選出されると、次は彼の下で各常任委員の選出が行われることになる。
ここで昼時になったので、また休憩を挟んで午後に常任委員の選出を行い、その結果を報告するための本会議が午後二時過ぎに再度開かれた。
景紀は六家の人間ということもあり、委員会の中でも最も重要とされる予算委員に選出された。
そして、今後の議事日程が議長によって通達された後、第一回目の列侯会議本会議は終了となった。
◇◇◇
午前の列侯会議において佐薙成親による電信維持費の横領が暴露されると、それに合わせるかのように正午に内務省、逓信省による連名での公式発表がなされるに至った。もちろん、議会での詳しい説明はまだであるが、それでも佐薙家による横領の事実は皇都の住民たちの知るところとなったのである。
結果、佐薙家のみならず、横領の事実を暴いた結城家にも新聞記者たちがやってきたが、新聞操縦の観点から景紀は結城家にとって不利にならない情報は積極的に開示するように家臣たちに予め指示を出していた。これによって、恐らくは横領の情報を隠蔽するために記者たちを追い返すであろう佐薙家との対比を生み出し、記者たちからの好印象を得ようとしたのである。
なおこの時代、交通・通信網の問題から新聞の夕刊は一般的ではなく、佐薙成親による電信維持費の横領が新聞の紙面を飾るのは、翌二十六日のことになる。
二十五日の夕方、廟議堂から帰宅した景紀は、今日の本会議で起こったことの顛末を宵たちに報告した。
「つまり、佐薙成親の失脚は確定的となったのですね」
淡々とした口調で反応したのは、佐薙成親の娘でもある宵であった。その声音には、実の父親に対する憐憫の情など一切存在しない、酷薄なものであった。
「これにて、景紀様にとっての後顧の憂いは断たれたことになります。実に目出度いことです」
そして、宵はむしろ父親を出し抜いて失脚の道筋を付けた景紀の手腕を喜んでいるようでもあった。
「僕としても、景くんがあんな男に足を引っ張られずに終わって一安心です。今度は伊丹、一色の番ですか?」
どこか浮ついた調子で言ったのは貴通。
「気が早い奴だな」
「そう言うってことは、将来的には追い落とすつもりはあるんですね?」
苦笑して思わず言ってしまった言葉に、貴通が喰い付いてきた。
「まあ、俺の楽隠居の邪魔になりそうであれば、な。隠居したあとも面倒な政治的ゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだからな」
とりあえず、景紀はそう言って誤魔化しておく。
「ふふっ、景くんらしいといえばらしいですね」
そんな同期生の言葉に、貴通はおかしそうな笑い声を漏らした。
「それで若、僕の方は当面、民党系の院外団に潜り込んで情報収集って形でええんか?」
一方、新八は今後の諜報活動の方向性について尋ねてくる。
「ああ、そうだな。だが、攘夷派の人間が根絶やしにされたわけじゃない。そっちの方面にも、ある程度気を配っておいてくれ」
「了解。まあ、何とか上手くやってみるわ」
手の中で火の付いていない煙管を弄びながら、飄々とした調子で新八は請け負った。
「景紀、佐薙成親の失脚に伴って、問題が発生すると思うのだけどいいかしら?」
すっと冬花が手を挙げる。
「何だ?」
「佐薙家が横領した電信維持費について、恐らく国庫への返納命令が出ると思うけど、佐薙家にその金額を返納するだけの財政的余裕はあると思う? 無理矢理捻出出来たとしても、嶺州の統治権をうちが取り上げる方向で画策している以上、今後の佐薙家は経済的に困窮するはずよ。そうなると、嶺州に大量の牢人が発生することになると思うけど?」
「失脚するのは佐薙成親だけじゃない。横領に加担していた、あるいは横領を隠蔽するのに協力していた家臣のほとんども、失脚するはずだ。そいつらは、氷州か日高州で木を数える仕事に就くことになるだろうな」
つまり、佐薙家の重臣たちのほとんどは流刑にすると、景紀は言っているわけである。
「ただし、下級官僚、つまり嶺州で実際に領地経営に当たっている実務者系統の人間たちは、よほど問題がなければそのまま使うことになるだろうな。そいつらまで入れ替えるとなると、そもそも結城家としても人間が足りない」
「それは、官僚系家臣団の方の話でしょ? 用人系統の方はどうするの? 佐薙家が没落して一番困るのは、家に直接仕えていることになっている用人系統の家臣団のはずだけど?」
「佐薙家自体は、存続させる方向で調整している。宵の母だとか、大寿丸だとか、仕えるべき人間はまだいる。ある程度の人員削減はするが、溢れ出た牢人が徒党を組んで匪賊と化して東北の治安を脅かす、なんてことにはならないはずだ」
「それに、冬花さんを見ていると忘れがちになりますが、そもそも用人系統の家臣団は家の庶務、つまりは会計・経理などの事務や家事などを司る人間たちばかりですので、匪賊化するよりは、他に就職先を見つけようとする者が多くなると思いますよ」
景紀の言葉に、貴通が付け加えた。彼女自身は匪賊討伐に加わったことはないが、軍人の知識として匪賊の人的構成を知っているのだ。
「まあ、そこは結城家の方で、ある程度就職先を斡旋してやれば城下町に失業者が溢れかえるってことにはならんだろう。鉄道なんかが開通すれば、経営のために会計の知識を持った奴なんかが必要になってくるわけだからな」
「判ったわ。じゃあ、結城家が東北経営に介入するにあたって必要な人材の種類を、一覧表にまとめておいたほうが良いかしら?」
「ああ、そうだな。頼む」
「了解。それと、列侯会議の予算委員会の方で、こっちが用意しておく資料とかってある?」
「ああ、そうだな。民党が騒ぎ立てそうな地租問題についての資料をまとめておいてくれると助かる」
「判ったわ」
「まっ、六家会議がまとまった以上、六家や大臣の誰かが余程の失言をしない限りは、問題なく議会は進むだろうよ」
まだ議会は始まったばかりであるが、来年度予算問題と東北問題に一定の道筋を付けた以上、当面、面倒事に巻き込まれることはないだろうと、景紀は判断していた。
衆民院において軍事拡張費と地租問題が議論となりそうではあるが、六家間の合意が形成されている以上、拒否権などの発動によって議会において来年度予算が成立しないという可能性は低いだろう。とかく民党の存在が注目されがちであるが、衆民院には中央政府や六家の意向を汲む、いわゆる“吏党”も存在しているのだ(「吏党」は、あくまでも民党側が政府・六家寄りである政党を批判しての言葉であり、自ら吏党を名乗っている者たちはいない。彼らは基本的には「温和派」、「保守派」を名乗っている)。そして、議員の割合でいえば“吏党”の方が多い。
これは、六家などによる選挙干渉の結果というよりは、選挙資金など衆民院議員が必要とする政治活動資金の出所の問題であった。
政治家に資金を提供出来るだけの大資産家は、もちろん地主層も含まれてはいるものの、将家、特に六家であることも多かったのである。後に財閥と呼ばれることになる大店の多くも、この時代は将家の庇護を受ける御用商人であることがほとんどであった。
つまり、衆民院議員はどこかで六家と繋がりのある場所から提供される政治資金に頼らざるを得ない者が多く、それ故に純粋に“民党”と呼べる存在はごくわずかであった。
こうした議会の人的構成であるので、景紀はある程度、議会の状況を楽観視していたのである。
「ところで、僕の方はどうすればいいですか?」
と、貴通が手を挙げた。
「僕が結城家で何をやればいいのか、景くんに命じてもらわないと、無為徒食の人間になってしまいます」
自分だけ何もやることのない現状に、貴通はちょっとだけ唇を尖らせた。
「ああ、それに関しては正式な辞令が兵部省人事局から出されてからってことになるんだが、俺はお前に結城家領軍の査閲官を任せたい」
「査閲官、ですか?」
「まあ、表向きは領内を回って軍の状況を調査するってことになるんだが、俺がまだ十分に取りかかれていない新部隊の設立と運用方法、それに基づく訓練などを見てやって欲しいんだ」
「なるほど」貴通は頷いた。「以前、景くんが言っていた新設部隊の件ですね?」
「ああ、一応、人員の選定と編成まではあらかた終わっているんだが、具体的な部分はまだだからな」
「流石に新参者の僕を部隊長にすると反発が強まるだろうから、査閲官ということですね?」
「理解が早くて助かる」にやり、と景紀は笑う。「というか正直、俺が部隊長をやってお前を幕僚長に据えたいくらいだ」
「景くん、言っていることがまるっきり新しいおもちゃで遊ぼうとする童のそれですよ」
くすり、と男装の少女は笑った。
「でもまあ、楽しそうではありますね」
「だろ?」
景紀から大役を任されたことが嬉しいのか、あるいは本格的に軍人らしいことが出来るのが嬉しいのか、とにかく貴通の声は溌剌としていた。
「いつかその部隊で、景くんと轡を並べられるといいですね」
「ああ、そうだな」
兵学寮時代の思い出が蘇ったのか、景紀も貴通も、どこか懐かしそうな笑みを互いに浮かべ合った。
「じゃあ、そういうわけで頼めるか、貴通?」
「ええ、了解です。では、査閲間の任、仰せつかりました。結城少佐殿」
そう言って、貴通は実に茶目っ気のある敬礼をしたのだった。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結済み】正義のヒロインレッドバスターカレン。凌辱リョナ処刑。たまに和姦されちゃいます♪
屠龍
ファンタジー
レッドバスターカレンは正義の変身ヒロインである。
彼女は普段は学生の雛月カレンとして勉学に励みながら、亡き父親の残したアイテム。
ホープペンダントの力でレッドバスターカレンとなって悪の組織ダークネスシャドーに立ち向かう正義の味方。
悪の組織ダークネスシャドーに通常兵器は通用しない。
彼女こそ人類最後の希望の光だった。
ダークネスシャドーが現れた時、颯爽と登場し幾多の怪人と戦闘員を倒していく。
その日も月夜のビル街を襲った戦闘員と怪人をいつものように颯爽と現れなぎ倒していく筈だった。
正義の変身ヒロインを徹底的に凌辱しリョナして処刑しますが最後はハッピーエンドです(なんのこっちゃ)
リョナと処刑シーンがありますので苦手な方は閲覧をお控えください。
2023 7/4に最終話投稿後、完結作品になります。
アルファポリス ハーメルン Pixivに同時投稿しています
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる