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第二章 シキガミの少女と北国の姫編
40 それぞれの居場所
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「……」
宵が出ていった後も、景紀は冬花の部屋にいた。
そろそろ、いつもであれば冬花が自分を起こしにくる時間だろうか。いつもとは逆だな、と何となく景紀はおかしく思う。
責任感だけで接されるのは寂しいと、宵は言った。
ならば自分と冬花との関係は何なのだろうな、とぼんやりと思う。
白髪の少女に対する責任感は、当然ある。だけれども、幼少期からずっと互いに傍にいれば、それだけの関係ではなくなる。友情、親愛、信頼、そういった様々な感情が二人の間に介在している。
互いにとって、もう片方は半身のような存在だ。
それは、絆といってもいいだろう。
ただ、宵に対してもそうなのだが、自分が冬花に対して恋慕の情を抱いているかといえば、それは少し違うような気がする。
自分と冬花は、主君とシキガミの関係であり、その根底にあるのは深い信頼関係である。
将家の当主が城や屋敷に勤める女性に手を出すような、そうした感情はまるでない。別に、冬花を少女として認識していないわけではないのだが、主君とシキガミという幼い頃の主従契約を神聖視しているために、どうしてもそうした恋慕の情になりにくいのだ。いや、なりにくいというよりも、そうした感情を抱くことに躊躇いがあるのかもしれない。
冬花は、自分にとって大切な少女だ。それを、自分が汚してしまうことが怖いのかもしれない。
一方で、冬花が自分に対してほのかな恋慕の情を抱いていることは気付いている。ただ、彼女のそれも恋慕の情というには、あまりに幼い恋心であるように思える。
幼い頃の依存心に始まり、景紀のシキガミとしての自覚、主従としての信頼、そうしたものが、彼女の中で景紀に対する好意的な情として昇華されていったのだろう。少なくとも、主君とシキガミの主従関係、信頼関係以上に、冬花のそうした感情が大きくなっているようには見えなかった。
やはり、自分も冬花も、幼い日のあの児戯のようなシキガミ契約を大切にしているのだろう。
あるいは、周囲との人間関係において、互いに絶対の信頼が置けるものがそれだけしかなかったからかもしれない。
幼い冬花は、狐耳や尻尾を上手く封印することが出来なかった。女子学士院に入るころには、そうした封印の制御をほぼ完璧に行えるようになっていたが、それ以前、結城家の居城で暮らしていたころはそうではなかったのだ。
だから結果として、常人を越える鋭敏な聴覚を持つ冬花は、城内で交わされる会話を拾うことが出来た。
そして聞こえてしまう、自分への悪口や中傷。自分が若様に悪い影響を与えるのではないかという大人たちの懸念。
幼い冬花は、それを一人で抱え込むことが出来なかった。自分の心の安寧を保つために、景紀に縋った。
だから景紀は、ごく幼い段階で影で人を悪し様に言う人間たちが多いと知ることになり、人間という存在に不信感を抱くようになる。
だから、幼い頃の景紀と冬花は、互いだけを絶対に信じられる存在と認識していた。
そしてそれは、景紀の中では今でもほとんど変わっていない。
兵学寮で出逢った貴通など、信頼出来る人間の範囲が多少は広まったにせよ、景紀の心の根本的な部分は変わっていないのだ。
父・景忠が病に伏してから、景紀が短期間で結城家家臣団を掌握出来たのも、そうした人間不信的な面があったことが大きい。
景紀がまず行ったのは、家臣団の内心の把握だった。どの家臣がどのような思いで結城家に仕えているのか、家臣同士の人間関係はどうであるのか、能力のある人間なのか、それとも阿諛追従が得意なだけの人間であるのか、その人物の弱みは何なのか。
そのために、景紀は冬花を用いた。普段は彼女自身が封印している鋭敏な聴覚などを利用して、家臣個人個人の情報を収集したのだ。
すでに景紀のシキガミとして生きる覚悟を決めていた冬花は、己の妖狐としての能力を存分に発揮してくれた。そこには幼少期に見えた他者の本心を聞いてしまうことへの怯えはなく、ただ自身の能力を景紀のために活かせることへの誇らしさがあった。
景紀としては彼女の忌むべき力を引き出すことへの葛藤があったが、過度に冬花を庇護することは彼女自身の覚悟を侮辱することにもなる。だから、その後も冬花の妖狐としての体質を使った情報収集は随所で行っていた。
人ならざる妖狐の耳と尻尾を持つ冬花は冬花で、自身の妖狐としての側面を景紀に利用してもらうことで、己の中に流れる妖の血を景紀に肯定してもらいたかったのかもしれない。
自分がその容姿を嫌悪していても、景紀が受入れてくれるならば耐えられると思っていたのだろう。
冬花が妖の血を暴走させたことは、これまでにも何度かあった。
感情が著しく不安定になったとき、自らに生命の危機が迫ったとき、そうした時に彼女は妖狐の血を暴走させてしまう。
最初にそうしたことが起こったのは、八歳の時。彼女を女子学士院に入れようとしたときのことであった。
あの事件の後、自分は冬花の父に一つの相談を持ちかけた。
もしかしたら、もう一度、冬花が妖狐の血を暴走させたら正気に戻らないかもしれない。そう恐れたのだ。
そして、同様の懸念は彼女の父も抱いていた。
だから、それからしばらくして、景紀は一つの呪術儀式を行うことを了承した。
景紀と冬花が五歳の時に行った児戯に等しいシキガミ契約などではない、本当の主君と術者との主従契約。
そしてその儀式の最後、再び冬花の中に流れる妖狐の血が暴走したとき、その血の働きを抑制するために主君である景紀の肉体の一部を冬花の体内に移し替えた。
景紀が冬花に分け与えたのは、己の肋骨。
だからもし冬花の中に流れる妖狐の血が暴走しそうになったときには、主従契約の効果もあり、景紀の失われた肋骨の辺りが痛みを発することになる。
そして、景紀の肋骨を埋め込むために切除された冬花の肋骨は、すり潰されて霊刀の材料とされた。
椿の装飾がなされた白い刀は、そうして鍛えられたものであった。だから刀身には冬花の霊力が宿り、主君である景紀を守護し、景紀を害しようとする術式を切り裂く力を持っている。
西洋の十字教の聖典では、最初の人類の肋骨からその伴侶が創られたという。その神話になぞらえるならば、自分と冬花は精神的にも肉体的にも、半身なのだろう。
だからやはり、自分たちの関係は主君とシキガミであることが相応しい。
そうやって一人、景紀が納得していると、小さな呻き声が室内に響いた。
「冬花……?」
そっと、景紀は呼びかける。
「……ぅん」
褥に横たわる冬花の瞼が、かすかに痙攣した。そして、ゆっくりと赤い瞳が現れる。
「……」
深く沈んでいた意識を呼び戻すように、しばらく冬花は薄目を開けたまま天井を見上げていた。そして意識が覚醒してくると、近くにいた景紀に気付いたらしい。その顔と瞳が、彼の方を向く。
「……わか……さま……?」
「ああ、俺だよ」
迷子になった子供がようやく親を見つけたような、儚い声で冬花は景紀のことを呼んだ。そして、緩慢な動作で起き上がろうとする。
景紀は背中を支えて、彼女が起き上がるのを助けた。
「体の方は、大丈夫か?」
景紀が案ずるように問うと、少女の赤い瞳に見る見るうちに涙が溜まっていった。両手は、布団をぎゅっと握りしめていた。
「ごめん……なさい……」
そして、震える声でそう言ったのだ。
「宵姫様を守れなくて……、景紀のことも……」
冬花は自身の不甲斐なさを悔いるように、目をぎゅっと瞑って唇を噛みしめ、背中を丸めて俯いてしまう。
暴走状態の冬花は、明確に景紀に殺意を向けていたのだ。まさしく、人喰いの化け物のように。
その時の記憶は、冬花の中に残っている。
「俺も、佐薙成親があそこまで性急な行動に出るとは思っていなかった。俺の失態でもある」
冬花を宵の護衛につける判断をし、その命令を下したのは景紀である。
命令をした者とされた者、責任を負うべきは前者であり、そもそも命令の前提条件が間違っていた以上、景紀は冬花を責めることは出来ない。責めるつもりもない。
そして冬花も、そうした主従関係からくる責任の所在については、十分に理解している。
それでもやはり、負い目を感じてしまうものはしまうのだ。
「だが、お前が鷹前に放った守護の術式を刻んだ式は、宵の母親を呪詛から守ったらしい。それは紛れもなく、お前の手柄だ」
「……」
それでも、冬花の顔は晴れなかった。
「それに、前にも言っただろう? 何でもかんでも一人で背負い込もうとするな、って」
「でも、景紀のことだって……」
「お前がああなった時に止めるのは、俺の役目だ」
みなまで言わせず、景紀は冬花を抱きしめて断言した。
「その役目だけは、誰にも渡さん。お前は、俺のシキガミだ。お前がただの化け物に堕ちるなら、俺が引導を渡してやる」
絶対に譲れない覚悟を感じさせる、シキガミの主の言葉。ぎゅっと、景紀は冬花を力強く抱きしめた。
「だから、安心しろ」
「……ありがとう、景紀」
冬花もそっと、景紀の背中に腕を回した。
それで少し、冬花は救われた気分になった。
景紀に終わらせられるのならば、それは悪くない。その思いは、最初に妖狐の血を暴走させてしまったときから変わらない。
景紀にとっては酷な決断を強いることになると判っていても、どうしてもその言葉に冬花は安心してしまうのだ。
例え自分が人でなくなったとしても、それを止めてくれる人がいる。そして、その人が景紀ならば、自分は満足と納得の内に死ねるだろう。
でも、それでも、出来れば自分は最期の時まで彼のシキガミでいたいと思う。
「ねえ、景紀」
「何だ、冬花」
互いに相手の背中に手を回したまま、名を呼び合う。
「こんな、泣き虫で、未熟で、あなたには迷惑ばかりかけている陰陽師ですが……」
冬花は涙に濡れた声で、絞り出すように言った。
「これからも、ずっとずっと、あなたのシキガミでいさせて下さい」
「ああ、もちろんだ」
主君からの迷いない答えを聞いて、シキガミの少女は涙を流したまま嬉しそうな笑みを浮かべた。
そして、今度は彼女の方から景紀を強く抱きしめた。
情けなさと恥ずかしさと嬉しさが混じり合った泣き顔を、しばらく景紀には見られたくなかったのだ。
火鉢があってもなお寒さを感じる冬の朝、二人はそうやってしばらく、温もりを分かち合っていた。
◇◇◇
「……」
宵は、冬花の部屋の前に無言で佇んでいた。
所在なさげに背中で手を組み、柱に背を預けている。
今、部屋に入るべきではない。中からかすかに聞こえてくる景紀の言葉、そして冬花のすすり泣く声で、宵はそう判断していた。
二人の主従の絆を、自分ごときが邪魔するべきではないのだ。
別に、妻となったからといって景紀を自分のモノだと主張する気はない。冬花が景紀の存在を必要としているのならば、それはそれで構わなかった。
自分は、彼女とは別の形で景紀と絆を結んでいけばいい。
冬花は今のような絆を、十七年という時間をかけて結んだのだ。ならば自分も焦ることはない。結城宵としての人生は、まだ始まったばかりだ。
そっと、宵はその場から立ち去る決意をした。
柱から背中を離す。
ふと、廊下をこちらに向かって歩いてくる存在に気付いた。
黒い学生服をまとった少年。
冬花の弟、葛葉鉄之介だった。
「……」
向こうもこちらの存在に気付いたらしく、顔が強ばった。
彼も冬花と同じく家臣団の中では用人に属する家格の者であり、次期当主の妻である宵とは身分が違い過ぎる。そのような存在に唐突に出くわしたとなれば、緊張もするだろう。
昨日見たわずかな印象だと、彼は景紀に反発混じりのぞんざいな態度をとっていたが、やはりあれは景紀限定の態度なのだろう。
「……」
宵は足音を立てないように鉄之介に近付いた。彼も姉のことが心配なのだろうが、あの部屋に乱入させるわけにはいかない。
宵が人差し指を口元に立てて声を出さないように指図すると、鉄之介は少し不満そうな、むっとした表情を浮かべた。
そのまま彼に近付いた宵は、手の動きだけで指図して鉄之介を冬花の部屋から少し離れた廊下にまで連れて行く。
「……何をされに来たのですか?」
冬花の部屋から離れたところで、宵はある程度答えを予想しながらもそう尋ねた。
「姉上の様子を見に……」
宵の声が少し詰問口調になってしまった所為か、鉄之介はばつが悪そうに答えた。
「姉思いな弟さんなのですね」
とりあえず、宵としてはこの少年と対立したいわけではないので、そう言っておく。
この少年が姉を大事に思っていることは、昨日の様子からも予想がついている。
「ありがとう、ございます」
少し緊張気味に、陰陽師の少年は答えた。
普段、彼が景紀にどのような態度で接しているのかは、昨日の態度から予想が出来る。しかし、流石に宵にまで同じような態度で接するのは拙いと判っているのだろう。
ただし、外面を取り繕うのが苦手なのか、姉に会えない不満が表情や態度に表れてしまっていた。
「ですが、冬花様の側には景紀様がいらっしゃいます。後ほどにして下さい」
「……宵姫様は、それでいいんですか?」
宵を自分の不満を共有出来る相手を見たのか、鉄之介はそう問うてきた。
「何が、ですか?」
「あなた様は、若様の正室なんですよね? 若様と姉上が一緒にいることを、許せるのですか?」
「……」
思わず、宵は無言で鉄之介を睨み付けていた。いつも無愛想に見える無表情をしている所為か、その表情には独特の凄みがあった。
鉄之介が怯んだ表情になって一歩、後ずさる。
「あなたは、結城家家臣なのですよね?」叱責するような声が、宵の口から飛び出ていた。「なのに何故、私と冬花様の対立を煽るような発言をなさるのですか?」
「いや、それは……だって……」
しどろもどろになりながら鉄之介は弁明しようとするが、上手く言葉が出てこない。
「私はあの方の正室であり、冬花様はあの方のシキガミ。それでいいではありませんか」
少なくとも、宵はそれで納得している。それを他人にとやかく言われる筋合いはない。
「あなたが姉である冬花様を大切に思ってらっしゃることは判りますが、それで冬花様ご本人や私の意志を無視しないで下さい」
何と言うか、鉄之介からは姉に構って貰えなくて拗ねている幼子の気配を感じるのだ。恐らく、物心ついた頃には、姉の冬花は景紀に取られていたのだろう。その不満が、ずっと彼の中に燻っているのかもしれない。
その点に関しては同情するが、だからといって自分をそうした不満の共有者として扱われるのは不愉快だと、宵は思う。
「……そう、ですね。申し訳ございませんでした。お許し下さい」
鉄之介は肩を落としながら、頭を下げた。やはり、彼も自分自身の不満を周囲にぶつけているだけだと理解しているのだろう。
「それに、別に景紀様は私を蔑ろにしているわけではないですし、あなたのことも蔑ろにしているわけではないのだと思いますよ」
とはいえ、ここでこの少年に不満を抱えたまま追い返すのも拙かろう。
「私や冬花様を助けるに際して、景紀様はあなたを頼りにしていたそうではないですか。そのことに関しては私も感謝していますし、あなたの陰陽師としての実力を認めてもいます」
「……」
鉄之介は、不満とこそばゆさの混じり合った複雑な表情をしていた。
「ですから、あなたはもっと精進を重ねて、景紀様や冬花様を支えられるようになって下さい。相手をただ大切に思うだけで、相手のことを理解しようとしないならば、その相手は決してあなたを見てはくれませんよ」
「……判りました」
神妙な顔つきで、鉄之介は頷いた。憑き物が落ちたとまではいえないが、それでもある程度、納得した人間の表情であった。
もしかしたら、冬花はこの弟の不満を上手く受け止められてあげられなかったのかもしれない。彼女は景紀のシキガミであることに誇りを感じ、そしてそれを自分自身の存在意義であると感じている。
姉を景紀に取られた恰好となった弟にはそれが面白くなかったのだろうし、逆に冬花としても弟からそのことに関して不満を零されても不快に思うだけだろう。
冬花にしてみれば、葛葉家を継ぎ結城家当主を呪術的に守っていく立場になるだろう鉄之介は、自身のシキガミとしての立場を脅かしかねない存在なのだ。彼女自身がどこまでそれを意識しているかは判らないが、心の深い部分で弟の存在を苦手としている可能性はある。
すべては推測でしかないが、どうにもこの姉弟の間にはすれ違いのようなものがあるように、宵としては感じざるを得ないのだ。
もっとも、そのあたりは追々、景紀や冬花と相談していけばいい。
一礼して宵の元から去っていく鉄之介の背中を眺めながら、宵はそんなことを思った。
「はぁ……」
そして、誰もいなくなった廊下で溜息をついてしまう。
偉そうに説教じみたことを言ってしまったが、自分だってそれほど人生経験が豊富な方ではない。もう少し、家臣の統制や不満の受け止め方については、学んでいかなければならないだろう。
あの陰陽師の少年との関係もそうであるが、そうした主君と家臣の関係を円滑にすることも、景紀を支える者の役目だろう。
「……」
宵は冬花の部屋のある方を振り返った。
だがまずは、ようやく与えられた自分自身の居場所を、そして自分自身の存在意義を守らなければならない。
そのために父は、いや、佐薙成親は、邪魔だ。
自分の、そして、景紀が為そうとしていることのために。
景紀は、自分の能力を信頼してくれている。そして、自分が何かをしようとすれば、それに対して課題を出してくれる。
一度目は嶺州の振興と中央集権国家のことで、二度目は嶺州鉄道の路線選定のことで。
ならば、今回は自分で課題を設定しよう。
嶺州鉄道建設請負契約と、佐薙成親の失脚。それをどうすれば両立出来るか。
結城宵としての戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
これにて、第二章は完結となります。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございました。
冬花の名字が「葛葉」で、妖の血が混じっているという設定ですので、「信田の狐伝説」から彼女の正体に予想がついておられた読者様も多いのではないかと思います。
どうしても、筆者がケモミミ少女を出したかったのです。
さて、本来であれば主人公とヒロインの過去に何があったかはもっと時間をかけて繙いていくのが常道な気もいたしますが、拙作が目指すのは異世界架空戦記ですので、そうしたものは早めに明らかにしておくべきだと考え、第二章はこのような形とさせていただきました。
ここまでの内容につきまして、ご意見・ご感想を頂ければ幸いに存じます。
何卒、宜しくお願いいたします。
宵が出ていった後も、景紀は冬花の部屋にいた。
そろそろ、いつもであれば冬花が自分を起こしにくる時間だろうか。いつもとは逆だな、と何となく景紀はおかしく思う。
責任感だけで接されるのは寂しいと、宵は言った。
ならば自分と冬花との関係は何なのだろうな、とぼんやりと思う。
白髪の少女に対する責任感は、当然ある。だけれども、幼少期からずっと互いに傍にいれば、それだけの関係ではなくなる。友情、親愛、信頼、そういった様々な感情が二人の間に介在している。
互いにとって、もう片方は半身のような存在だ。
それは、絆といってもいいだろう。
ただ、宵に対してもそうなのだが、自分が冬花に対して恋慕の情を抱いているかといえば、それは少し違うような気がする。
自分と冬花は、主君とシキガミの関係であり、その根底にあるのは深い信頼関係である。
将家の当主が城や屋敷に勤める女性に手を出すような、そうした感情はまるでない。別に、冬花を少女として認識していないわけではないのだが、主君とシキガミという幼い頃の主従契約を神聖視しているために、どうしてもそうした恋慕の情になりにくいのだ。いや、なりにくいというよりも、そうした感情を抱くことに躊躇いがあるのかもしれない。
冬花は、自分にとって大切な少女だ。それを、自分が汚してしまうことが怖いのかもしれない。
一方で、冬花が自分に対してほのかな恋慕の情を抱いていることは気付いている。ただ、彼女のそれも恋慕の情というには、あまりに幼い恋心であるように思える。
幼い頃の依存心に始まり、景紀のシキガミとしての自覚、主従としての信頼、そうしたものが、彼女の中で景紀に対する好意的な情として昇華されていったのだろう。少なくとも、主君とシキガミの主従関係、信頼関係以上に、冬花のそうした感情が大きくなっているようには見えなかった。
やはり、自分も冬花も、幼い日のあの児戯のようなシキガミ契約を大切にしているのだろう。
あるいは、周囲との人間関係において、互いに絶対の信頼が置けるものがそれだけしかなかったからかもしれない。
幼い冬花は、狐耳や尻尾を上手く封印することが出来なかった。女子学士院に入るころには、そうした封印の制御をほぼ完璧に行えるようになっていたが、それ以前、結城家の居城で暮らしていたころはそうではなかったのだ。
だから結果として、常人を越える鋭敏な聴覚を持つ冬花は、城内で交わされる会話を拾うことが出来た。
そして聞こえてしまう、自分への悪口や中傷。自分が若様に悪い影響を与えるのではないかという大人たちの懸念。
幼い冬花は、それを一人で抱え込むことが出来なかった。自分の心の安寧を保つために、景紀に縋った。
だから景紀は、ごく幼い段階で影で人を悪し様に言う人間たちが多いと知ることになり、人間という存在に不信感を抱くようになる。
だから、幼い頃の景紀と冬花は、互いだけを絶対に信じられる存在と認識していた。
そしてそれは、景紀の中では今でもほとんど変わっていない。
兵学寮で出逢った貴通など、信頼出来る人間の範囲が多少は広まったにせよ、景紀の心の根本的な部分は変わっていないのだ。
父・景忠が病に伏してから、景紀が短期間で結城家家臣団を掌握出来たのも、そうした人間不信的な面があったことが大きい。
景紀がまず行ったのは、家臣団の内心の把握だった。どの家臣がどのような思いで結城家に仕えているのか、家臣同士の人間関係はどうであるのか、能力のある人間なのか、それとも阿諛追従が得意なだけの人間であるのか、その人物の弱みは何なのか。
そのために、景紀は冬花を用いた。普段は彼女自身が封印している鋭敏な聴覚などを利用して、家臣個人個人の情報を収集したのだ。
すでに景紀のシキガミとして生きる覚悟を決めていた冬花は、己の妖狐としての能力を存分に発揮してくれた。そこには幼少期に見えた他者の本心を聞いてしまうことへの怯えはなく、ただ自身の能力を景紀のために活かせることへの誇らしさがあった。
景紀としては彼女の忌むべき力を引き出すことへの葛藤があったが、過度に冬花を庇護することは彼女自身の覚悟を侮辱することにもなる。だから、その後も冬花の妖狐としての体質を使った情報収集は随所で行っていた。
人ならざる妖狐の耳と尻尾を持つ冬花は冬花で、自身の妖狐としての側面を景紀に利用してもらうことで、己の中に流れる妖の血を景紀に肯定してもらいたかったのかもしれない。
自分がその容姿を嫌悪していても、景紀が受入れてくれるならば耐えられると思っていたのだろう。
冬花が妖の血を暴走させたことは、これまでにも何度かあった。
感情が著しく不安定になったとき、自らに生命の危機が迫ったとき、そうした時に彼女は妖狐の血を暴走させてしまう。
最初にそうしたことが起こったのは、八歳の時。彼女を女子学士院に入れようとしたときのことであった。
あの事件の後、自分は冬花の父に一つの相談を持ちかけた。
もしかしたら、もう一度、冬花が妖狐の血を暴走させたら正気に戻らないかもしれない。そう恐れたのだ。
そして、同様の懸念は彼女の父も抱いていた。
だから、それからしばらくして、景紀は一つの呪術儀式を行うことを了承した。
景紀と冬花が五歳の時に行った児戯に等しいシキガミ契約などではない、本当の主君と術者との主従契約。
そしてその儀式の最後、再び冬花の中に流れる妖狐の血が暴走したとき、その血の働きを抑制するために主君である景紀の肉体の一部を冬花の体内に移し替えた。
景紀が冬花に分け与えたのは、己の肋骨。
だからもし冬花の中に流れる妖狐の血が暴走しそうになったときには、主従契約の効果もあり、景紀の失われた肋骨の辺りが痛みを発することになる。
そして、景紀の肋骨を埋め込むために切除された冬花の肋骨は、すり潰されて霊刀の材料とされた。
椿の装飾がなされた白い刀は、そうして鍛えられたものであった。だから刀身には冬花の霊力が宿り、主君である景紀を守護し、景紀を害しようとする術式を切り裂く力を持っている。
西洋の十字教の聖典では、最初の人類の肋骨からその伴侶が創られたという。その神話になぞらえるならば、自分と冬花は精神的にも肉体的にも、半身なのだろう。
だからやはり、自分たちの関係は主君とシキガミであることが相応しい。
そうやって一人、景紀が納得していると、小さな呻き声が室内に響いた。
「冬花……?」
そっと、景紀は呼びかける。
「……ぅん」
褥に横たわる冬花の瞼が、かすかに痙攣した。そして、ゆっくりと赤い瞳が現れる。
「……」
深く沈んでいた意識を呼び戻すように、しばらく冬花は薄目を開けたまま天井を見上げていた。そして意識が覚醒してくると、近くにいた景紀に気付いたらしい。その顔と瞳が、彼の方を向く。
「……わか……さま……?」
「ああ、俺だよ」
迷子になった子供がようやく親を見つけたような、儚い声で冬花は景紀のことを呼んだ。そして、緩慢な動作で起き上がろうとする。
景紀は背中を支えて、彼女が起き上がるのを助けた。
「体の方は、大丈夫か?」
景紀が案ずるように問うと、少女の赤い瞳に見る見るうちに涙が溜まっていった。両手は、布団をぎゅっと握りしめていた。
「ごめん……なさい……」
そして、震える声でそう言ったのだ。
「宵姫様を守れなくて……、景紀のことも……」
冬花は自身の不甲斐なさを悔いるように、目をぎゅっと瞑って唇を噛みしめ、背中を丸めて俯いてしまう。
暴走状態の冬花は、明確に景紀に殺意を向けていたのだ。まさしく、人喰いの化け物のように。
その時の記憶は、冬花の中に残っている。
「俺も、佐薙成親があそこまで性急な行動に出るとは思っていなかった。俺の失態でもある」
冬花を宵の護衛につける判断をし、その命令を下したのは景紀である。
命令をした者とされた者、責任を負うべきは前者であり、そもそも命令の前提条件が間違っていた以上、景紀は冬花を責めることは出来ない。責めるつもりもない。
そして冬花も、そうした主従関係からくる責任の所在については、十分に理解している。
それでもやはり、負い目を感じてしまうものはしまうのだ。
「だが、お前が鷹前に放った守護の術式を刻んだ式は、宵の母親を呪詛から守ったらしい。それは紛れもなく、お前の手柄だ」
「……」
それでも、冬花の顔は晴れなかった。
「それに、前にも言っただろう? 何でもかんでも一人で背負い込もうとするな、って」
「でも、景紀のことだって……」
「お前がああなった時に止めるのは、俺の役目だ」
みなまで言わせず、景紀は冬花を抱きしめて断言した。
「その役目だけは、誰にも渡さん。お前は、俺のシキガミだ。お前がただの化け物に堕ちるなら、俺が引導を渡してやる」
絶対に譲れない覚悟を感じさせる、シキガミの主の言葉。ぎゅっと、景紀は冬花を力強く抱きしめた。
「だから、安心しろ」
「……ありがとう、景紀」
冬花もそっと、景紀の背中に腕を回した。
それで少し、冬花は救われた気分になった。
景紀に終わらせられるのならば、それは悪くない。その思いは、最初に妖狐の血を暴走させてしまったときから変わらない。
景紀にとっては酷な決断を強いることになると判っていても、どうしてもその言葉に冬花は安心してしまうのだ。
例え自分が人でなくなったとしても、それを止めてくれる人がいる。そして、その人が景紀ならば、自分は満足と納得の内に死ねるだろう。
でも、それでも、出来れば自分は最期の時まで彼のシキガミでいたいと思う。
「ねえ、景紀」
「何だ、冬花」
互いに相手の背中に手を回したまま、名を呼び合う。
「こんな、泣き虫で、未熟で、あなたには迷惑ばかりかけている陰陽師ですが……」
冬花は涙に濡れた声で、絞り出すように言った。
「これからも、ずっとずっと、あなたのシキガミでいさせて下さい」
「ああ、もちろんだ」
主君からの迷いない答えを聞いて、シキガミの少女は涙を流したまま嬉しそうな笑みを浮かべた。
そして、今度は彼女の方から景紀を強く抱きしめた。
情けなさと恥ずかしさと嬉しさが混じり合った泣き顔を、しばらく景紀には見られたくなかったのだ。
火鉢があってもなお寒さを感じる冬の朝、二人はそうやってしばらく、温もりを分かち合っていた。
◇◇◇
「……」
宵は、冬花の部屋の前に無言で佇んでいた。
所在なさげに背中で手を組み、柱に背を預けている。
今、部屋に入るべきではない。中からかすかに聞こえてくる景紀の言葉、そして冬花のすすり泣く声で、宵はそう判断していた。
二人の主従の絆を、自分ごときが邪魔するべきではないのだ。
別に、妻となったからといって景紀を自分のモノだと主張する気はない。冬花が景紀の存在を必要としているのならば、それはそれで構わなかった。
自分は、彼女とは別の形で景紀と絆を結んでいけばいい。
冬花は今のような絆を、十七年という時間をかけて結んだのだ。ならば自分も焦ることはない。結城宵としての人生は、まだ始まったばかりだ。
そっと、宵はその場から立ち去る決意をした。
柱から背中を離す。
ふと、廊下をこちらに向かって歩いてくる存在に気付いた。
黒い学生服をまとった少年。
冬花の弟、葛葉鉄之介だった。
「……」
向こうもこちらの存在に気付いたらしく、顔が強ばった。
彼も冬花と同じく家臣団の中では用人に属する家格の者であり、次期当主の妻である宵とは身分が違い過ぎる。そのような存在に唐突に出くわしたとなれば、緊張もするだろう。
昨日見たわずかな印象だと、彼は景紀に反発混じりのぞんざいな態度をとっていたが、やはりあれは景紀限定の態度なのだろう。
「……」
宵は足音を立てないように鉄之介に近付いた。彼も姉のことが心配なのだろうが、あの部屋に乱入させるわけにはいかない。
宵が人差し指を口元に立てて声を出さないように指図すると、鉄之介は少し不満そうな、むっとした表情を浮かべた。
そのまま彼に近付いた宵は、手の動きだけで指図して鉄之介を冬花の部屋から少し離れた廊下にまで連れて行く。
「……何をされに来たのですか?」
冬花の部屋から離れたところで、宵はある程度答えを予想しながらもそう尋ねた。
「姉上の様子を見に……」
宵の声が少し詰問口調になってしまった所為か、鉄之介はばつが悪そうに答えた。
「姉思いな弟さんなのですね」
とりあえず、宵としてはこの少年と対立したいわけではないので、そう言っておく。
この少年が姉を大事に思っていることは、昨日の様子からも予想がついている。
「ありがとう、ございます」
少し緊張気味に、陰陽師の少年は答えた。
普段、彼が景紀にどのような態度で接しているのかは、昨日の態度から予想が出来る。しかし、流石に宵にまで同じような態度で接するのは拙いと判っているのだろう。
ただし、外面を取り繕うのが苦手なのか、姉に会えない不満が表情や態度に表れてしまっていた。
「ですが、冬花様の側には景紀様がいらっしゃいます。後ほどにして下さい」
「……宵姫様は、それでいいんですか?」
宵を自分の不満を共有出来る相手を見たのか、鉄之介はそう問うてきた。
「何が、ですか?」
「あなた様は、若様の正室なんですよね? 若様と姉上が一緒にいることを、許せるのですか?」
「……」
思わず、宵は無言で鉄之介を睨み付けていた。いつも無愛想に見える無表情をしている所為か、その表情には独特の凄みがあった。
鉄之介が怯んだ表情になって一歩、後ずさる。
「あなたは、結城家家臣なのですよね?」叱責するような声が、宵の口から飛び出ていた。「なのに何故、私と冬花様の対立を煽るような発言をなさるのですか?」
「いや、それは……だって……」
しどろもどろになりながら鉄之介は弁明しようとするが、上手く言葉が出てこない。
「私はあの方の正室であり、冬花様はあの方のシキガミ。それでいいではありませんか」
少なくとも、宵はそれで納得している。それを他人にとやかく言われる筋合いはない。
「あなたが姉である冬花様を大切に思ってらっしゃることは判りますが、それで冬花様ご本人や私の意志を無視しないで下さい」
何と言うか、鉄之介からは姉に構って貰えなくて拗ねている幼子の気配を感じるのだ。恐らく、物心ついた頃には、姉の冬花は景紀に取られていたのだろう。その不満が、ずっと彼の中に燻っているのかもしれない。
その点に関しては同情するが、だからといって自分をそうした不満の共有者として扱われるのは不愉快だと、宵は思う。
「……そう、ですね。申し訳ございませんでした。お許し下さい」
鉄之介は肩を落としながら、頭を下げた。やはり、彼も自分自身の不満を周囲にぶつけているだけだと理解しているのだろう。
「それに、別に景紀様は私を蔑ろにしているわけではないですし、あなたのことも蔑ろにしているわけではないのだと思いますよ」
とはいえ、ここでこの少年に不満を抱えたまま追い返すのも拙かろう。
「私や冬花様を助けるに際して、景紀様はあなたを頼りにしていたそうではないですか。そのことに関しては私も感謝していますし、あなたの陰陽師としての実力を認めてもいます」
「……」
鉄之介は、不満とこそばゆさの混じり合った複雑な表情をしていた。
「ですから、あなたはもっと精進を重ねて、景紀様や冬花様を支えられるようになって下さい。相手をただ大切に思うだけで、相手のことを理解しようとしないならば、その相手は決してあなたを見てはくれませんよ」
「……判りました」
神妙な顔つきで、鉄之介は頷いた。憑き物が落ちたとまではいえないが、それでもある程度、納得した人間の表情であった。
もしかしたら、冬花はこの弟の不満を上手く受け止められてあげられなかったのかもしれない。彼女は景紀のシキガミであることに誇りを感じ、そしてそれを自分自身の存在意義であると感じている。
姉を景紀に取られた恰好となった弟にはそれが面白くなかったのだろうし、逆に冬花としても弟からそのことに関して不満を零されても不快に思うだけだろう。
冬花にしてみれば、葛葉家を継ぎ結城家当主を呪術的に守っていく立場になるだろう鉄之介は、自身のシキガミとしての立場を脅かしかねない存在なのだ。彼女自身がどこまでそれを意識しているかは判らないが、心の深い部分で弟の存在を苦手としている可能性はある。
すべては推測でしかないが、どうにもこの姉弟の間にはすれ違いのようなものがあるように、宵としては感じざるを得ないのだ。
もっとも、そのあたりは追々、景紀や冬花と相談していけばいい。
一礼して宵の元から去っていく鉄之介の背中を眺めながら、宵はそんなことを思った。
「はぁ……」
そして、誰もいなくなった廊下で溜息をついてしまう。
偉そうに説教じみたことを言ってしまったが、自分だってそれほど人生経験が豊富な方ではない。もう少し、家臣の統制や不満の受け止め方については、学んでいかなければならないだろう。
あの陰陽師の少年との関係もそうであるが、そうした主君と家臣の関係を円滑にすることも、景紀を支える者の役目だろう。
「……」
宵は冬花の部屋のある方を振り返った。
だがまずは、ようやく与えられた自分自身の居場所を、そして自分自身の存在意義を守らなければならない。
そのために父は、いや、佐薙成親は、邪魔だ。
自分の、そして、景紀が為そうとしていることのために。
景紀は、自分の能力を信頼してくれている。そして、自分が何かをしようとすれば、それに対して課題を出してくれる。
一度目は嶺州の振興と中央集権国家のことで、二度目は嶺州鉄道の路線選定のことで。
ならば、今回は自分で課題を設定しよう。
嶺州鉄道建設請負契約と、佐薙成親の失脚。それをどうすれば両立出来るか。
結城宵としての戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
これにて、第二章は完結となります。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございました。
冬花の名字が「葛葉」で、妖の血が混じっているという設定ですので、「信田の狐伝説」から彼女の正体に予想がついておられた読者様も多いのではないかと思います。
どうしても、筆者がケモミミ少女を出したかったのです。
さて、本来であれば主人公とヒロインの過去に何があったかはもっと時間をかけて繙いていくのが常道な気もいたしますが、拙作が目指すのは異世界架空戦記ですので、そうしたものは早めに明らかにしておくべきだと考え、第二章はこのような形とさせていただきました。
ここまでの内容につきまして、ご意見・ご感想を頂ければ幸いに存じます。
何卒、宜しくお願いいたします。
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