秋津皇国興亡記

三笠 陣

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第二章 シキガミの少女と北国の姫編

21 皇国鉄道事情

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 将家の家臣団たちが政務を執り行う部屋は、御用場(御用部屋)と呼ばれる。
 基本的には朝九時から、一日の政務は始まる。ただし、当主が御用場へ顔を出すことは非常に稀であり、基本的には家臣の方から主君の執務室へ出向かねばならない。
 午前中、当主の代理を務める景紀は執務室にて各執政からの報告を受ける。執政だけでなく、結城家領各地の代官から届く報告にも目を通し、場合によっては上京してきた代官やその他面会を求める者たちとも接見する。
 そうした報告、接見だけで、大抵は午前中が過ぎてしまう。
 午後については、引き続き政務を行う場合、学者などを招いて進講を受ける場合など、日によって異なってくる。

「冬花、書庫に行って全国地図と東北地方の地図とそれぞれの路線図、それと宵がいたら連れてきてくれ」

 午後、ようやく人の出入りが落ち着いた執務室で、景紀は冬花にそう指示する。
 しばらくすると、地図と路線図を抱えた冬花と共に、宵が執務室へとやってきた。

「言われた通り地図と路線図を持ってきたけど、景紀、これどうするの?」

 冬花が抱えている地図を顎で示しながら尋ねてくる。

「ああ、そこに掛けてくれ」

「判ったわ」

 そう言って、彼女は丸められている地図を広げ、部屋に置かれていた吊り具に地図と路線図を引っ掛ける。
 一方の宵は一瞬だけ地図と路線図に視線をやると、景紀の方に向き直った。

「何かご用でしょうか?」

「覚えているか、婚儀の日のこと? 俺とお前の父親で、鉄道敷設の話をしていただろ?」

「もしかして、路線経路のことについての相談ですか?」

「話が早くて助かる」にんまりと、景紀は笑った。「本来だったら財務担当や土木担当の執政とかを呼んで検討会議を開きたいところなんだが、俺の方でもある程度、経路の選定はしておきたくてな」

「婚儀の場で、路線経路については父に任せるようなことを景紀様は言っておられたと記憶していますが?」

「まあ、ある程度、佐薙家に主体性は持たせるが、鉄道敷設の主導権はこちらで握っておきたい」

「妥当なご判断かと」

 実家のことだというのに、宵は景紀の言葉にまったく反発らしきものを見せなかった。

「むしろ、その方がよろしいでしょう」そう言って、宵は続ける。「私の父は長尾家への反発を抱いています。家臣団の多くの者もそうです。これは、母や私の経験から断言出来ます」

 自分にとっては良い思い出ではないだろうに、宵の声は事実だけを伝える淡々としたものだった。

「下手に父に主導権を握らせては、長尾家との対立が尖鋭化しかねません」

「俺とまったく同じ意見で、安心したよ」

 そう言われて、宵は少し目を伏せてあるかなきかの笑みを浮かべた。心なしか、嬉しそうな笑みだった。

「鉄道敷設の条件は、千代から鷹前、鷹前から岩森まででよろしいですか?」

「ああ、兵部省や逓信省も、その路線の開設を望んでいる」

「判りました」

 そう言って、彼女は部屋に掲げられた地図と路線図の前に立つ。景紀も冬花も、同じようにその前に立った。

「まず、景紀様のご意見を伺いたいと思います」

 ちらりと、宵は横目で景紀を見た。

「俺の意見と言うよりも、兵部省と逓信省の意見だがな」

 視線を受けた景紀は、東北の地図を指でなぞり始める。

「まあ、一気に千代―岩森間の敷設工事を始めるのは無理だろうから、工事を一期、二期と分けて、まずは千代―鷹前間の鉄道敷設工事に取りかかる。ただ、経路については兵部省と逓信省で意見が分かれていてな。とりあえず、千代から鷹前の手前の花岡までについては、問題ないんだ。だが、花岡―鷹前間の経路選定で、揉めていてな。逓信省は海岸沿いに、十戸とおのへを経由して鷹前に行く路線を希望しているんだが、兵部省が『海岸線沿いだと敵艦隊の攻撃を受けやすい』と反対して、八幡台・広舘ひろだてを経由する路線を考えている」

「兵部省は、北方における将家の領地問題を無視しているのでは?」地図を見つめたまま、宵は何気ない口調で鋭い指摘をする。「広舘は長尾家領に近すぎます。そこに鉄道を通せば、佐薙家と長尾家の対立が尖鋭化しかねません」

 鉄道が軍隊輸送にも利用されることを理解した上での発言だった。

「まあ、兵部省は俺たちの婚儀で、東北情勢が落ち着くことを見越しているんだと思うがな」

 大して兵部省の判断を支持していない声で、景紀が言う。

「地形的にも、兵部省案は問題なのよね」

 景紀の隣で地図を覗き込んでいる冬花が、別の角度から指摘する。

「その路線だと、山間地だから隧道トンネルを何本も掘らないといけないし、路線がかなり複雑に曲がりくねることになるわ」

「当然、建設費用もその後の維持費も嵩むわけですね?」

 宵はすべてを理解した表情のまま、冬花の指摘に補足した。

「だから、この件に関しては大蔵省が逓信省の側についている」景紀が、二人に付け加える。「それに、六家と違って財政基盤がそれほど堅固でない佐薙家だと、例え建設にうちが協力したとしても、その後の維持が困難だろう」

「しかし、兵部省案だというのは厄介ですね」心なしか、地図を見つめる宵の視線が厳しくなっていた。「父はそれを理由に、この路線を推してくると思います」

「まあ、そうでなくとも将家であるならばそういう意見になるよなぁ」

 景紀は腕を組んで悩ましげな息を漏らした。もともと武士たちの集団であった将家とその家臣団は、政策に軍事的要素を入れがちな傾向にある。
 今回も、兵部省案に見られるように、鉄道の敷設に関して経済的な面よりも軍事的な面を優先しているのだ。軍事を優先すると、経済的には非効率であるという事例は、往々にして存在する。

「沿線地域の振興という観点から考えれば、逓信省案の方がよろしいかと」宵は断定口調で言った。「山村地帯を切り捨てるというわけではないのですが、主要街道に沿う形で全国に鉄道網が敷かれていることを考えると、嶺州もそれに倣うべきでしょう。街道沿いに鉄道を敷設することで、今まで以上に人・モノの移動が活発になり、領内の振興に繋がります。そうなれば自ずと、その恩恵は領内の各地に広がっていくはずです」

 元々、自分の故郷の人々の生活の向上を願って、結城家への輿入れする覚悟を固めていた宵である。言葉には熱がこもっていた。

「……ああ、いえ。いっそ、景紀様の方で敷設の主導権を握るのであれば、あえて八幡台・広舘経由の路線を第三期の工事として計画して、それも結城家の協力の下で建設するという方式をとるのも手かもしれませんね。結城家の財政的な負担は増えるでしょうが」

「ああ、それについては俺も考えていたし、執政連中の間からもそうした方がいいのではないかという意見は出ていた」

「財政面はどうなのですか?」

「正直、出せないことはない」

 そう言った景紀の声は、どこか奥歯に物の挟まった言い方であった。

「何か問題でも?」

「何が問題だと思う?」

 宵を試すような、景紀の問い。黒髪の少女は、しばらく考え込んだ。ここで、この少年の期待に応えなければ。

「……結城家領内からの反発ですね?」

「正解」にやり、と景紀は満足そうな笑みを宵に見せる。「領民にとってみれば、領主に納めた税が領内の経済振興に使われず、軍事や他国の開発に費やされる。まずは自国領内の民を優先しろ、と結城家領から選出された衆民院議員あたりが言い出すだろうな。まあ、そいつらにとってみれば、多分に地元への利益誘導が先にあるんだろうが」

「景紀様はまだお父上の政務を代行してから日が浅いですし、家臣団だけでなく領民からの支持を得られなければ列侯会議において他の諸侯から侮られる原因ともなりますね」

「まあ、そこが難しいところだな。ただまあ、一番五月蝿そうな民権派議員については、来年度予算の軍事費削減で黙らせることは出来るだろう。それによって、結城家の負担分も減るわけだからな。浮いた国家予算を地方振興に回すことで、間接的にうちの領内に還元することも出来る」

「なるほど」

 宵は感心したように頷いていた。

「それで鉄道敷設についてですが、逓信省や大蔵省は、資金をすべて結城家に負担させるつもりなのですか?」

「官営鉄道とはいっても、実態は将家による共同経営みたいな面があるからな。鉄道敷設を監督しているのは逓信省とはいえ、建設費用のかなりの部分は将家持ちだ。官営鉄道とは言っても、領内の路線の経営や管理は将家の管轄だからな。領地の統治権は、それぞれの領主にあるわけだから、そりゃあそうなるわな。そんなわけでまあ、中央政府が一応は鉄道運営に携わっているから厳密に言えば違うんだが、『将家』という企業が経営する私鉄みたいな面もある。だからこそ、鉄道経営による収益はその将家のものに出来るという面もあるんだが。まあ、財政基盤が弱い将家の中には、その地域の路線経営の中心となっている六家に、鉄道の経営権を譲り渡す羽目になったところもあるがな」

「弱小諸侯では鉄道網を維持するのも大変でしょうし、かといって財政難だからといってある区間の路線を廃止すれば、全国の鉄道網が各所で寸断されることになる。中途半端に私鉄会社に経営権を譲り渡せば、官営鉄道としての統一性がなくなる。中央政府としてもそうしたことは避けたいですから、六家に任せることで全国の鉄道網を維持しようとしている、といったところですか?」

「ああ、そういうことだ」

「しかし、だからこそ、嶺州のように鉄道敷設がなかなか進まない地域があるのでしょうね。鉄道の経営権を六家に譲り渡すということは、領地の統治権の一部を六家に譲り渡すことと同義ですから」

「ああ。実際、鉄道経営権を六家に譲り渡した諸侯の中には、それでも財政難を克服出来ずに、六家の経済的支配下に入ったところ、統治権を皇主陛下に返上するという形で中央政府直轄県になったところなんかもある」

「父としては、そうした羽目に陥ることは避けたいでしょうね。しかし、鉄道敷設は嶺州の人々の悲願みたいなところがあります。結城家の支援は受けて鉄道を敷設したいが、統治権への介入はさせたくない。なかなか難しいところです」

 そこまでやり取りを重ねると、宵は再び考え込む仕草をした。

「……正直、景紀様が結城家領内の経済振興を優先するというのであれば、私としてはそれに反対することは出来ません」

「お前が結城の人間だから、か?」

「はい」一瞬の迷いもなく、宵は答えた。「ただ、工事の二期目までは結城家の資金において行うことを主張させて下さい」

 少女は、彼女よりも少し高い位置にある少年の目を真っ直ぐに見つめた。故郷の民と結城の民との間で揺れ動いている内心を、おくびにも出さない視線であった。
 芯の強い少女だな、と景紀はその思いを新たにする。

「まあ、それはほぼ決定事項からだ安心してくれ」

「ありがとうございます。嶺州の民を代表して、というのは少し傲慢かもしれませんが」

 そう言って、宵は頭を下げた。心なしか、肩の荷が下りたような、ほっとした声音だった。

「ただ、厳しいことを言わせてもらえれば、そこは知恵を絞って俺に工事第三期の実施を提案して欲しかったな。宵の頭なら、考えられないことはないと思うんだ」

「……申し訳ありません」

「いや、別に責めてるわけじゃないぞ」

 少しだけ沈んだ表情になってしまった宵に、慌てたように景紀が弁明する。

「じゃあ、宵に宿題だ。どうやったら工事第三期を行えるだけの資金を、周囲からの反発なく集めることが出来ると思う? ……そうだな、明日、朝食会議の場で答え合わせをするぞ」

「わかりました、考えておきます」

 宵は挑むような調子で頷いた。その瞳には、故郷の人々を思う強い光が宿っていた。
 それが少し、景紀には眩しく感じてしまう。彼女の信念は、自分などよりもよほど尊いものだ。

「……ところで、気になっていたのですが、景紀様はどうやって嶺州の鉄道敷設の主導権を握るおつもりなのですか? 鉄道借款方式ですか?」

「それ、私も実は詳しいところを聞いていなかったわね」

 二人の少女の視線が、景紀を向く。
 別に隠すことでもなかったので、景紀は説明することにした。

「鉄道借款だと、嶺州の鉄道敷設権を担保に結城家が佐薙家に資金提供するという形になるだろ? まあ、佐薙家としては結城家から金を得られて鉄道も敷いてもらえるんだから一見、万々歳といったところだが、これだと金を貰った直後は良いんだろうが、後々、対立の火種になりかねない」

「まあ、確かにね」

「鉄道経営権を結城家に握られたままですと、やはり将来的には結城家の影響力を国内から排除しようとする人間が出てくる可能性がありますね。鉄道利権は、恐らく九十九ヶ年の貸与とかその辺りになるでしょうから、利権を手放したくない結城家、経営権を取り戻したい佐薙家で対立が激化する危険性を孕んでいます」

「冬花も宵も、この方式の問題点は判ってるみたいだな。まあ、百年経つ前にこの国が中央集権化してしまえば何の問題もないんだが」

「余計なことは言わずに説明を続けて」

 いささか圧を感じる冬花の声に軽く苦笑を返して、景紀は続けた。

「だから、結城家が行うのは鉄道の敷設まで。その後の経営は全部、佐薙家に任せることにしようと思ってる。もちろん、鉄道建設に掛かった費用は、利子を付けて返してもらうがな。つまり、借款方式ではなく、建設請負方式、ってわけだ」

「なるほど」宵は顎に指をやりつつ、地図を見た。「借款方式ですと、佐薙家はその資金を領内の経済振興に充てず、長尾家への対抗のために軍事に注ぎ込む可能性もある。建設請負方式は現金を貸すわけではないのでそれを阻止出来る上に、佐薙家は鉄道経営で得た利益から資金を返済出来、経営権を握っているから結城家への反発も起こりにくいということですね。一方の結城家も路線決定の主導権を得ることが出来、長期的には利子による利益を得ることが出来る、と。これならば、佐薙家と長尾家の対立が尖鋭化する可能性を抑えられます」

「ただ、問題はあるんじゃないの?」

 冬花の方は、宵とは違って景紀の方針を疑問に思っているようだった。
 これは当然といえば当然で、彼女は結城家家臣団の出身なのだ。必然、政策に対する見方は主家にとって利益となるかならないか、家臣団が納得出来るか出来ないか、というものになる。

「それ、建設に掛かった費用を回収するのに何年かかると思ってるの? 借款方式なら鉄道付属地とか鉱山の権益も付いてくるからいいけど、景紀の方法だと結城家が関われるのは本当に鉄道の敷設だけ。例え鉄道敷設をうちが請け負うにしても、鉄道車両の用意、燃料である石炭の確保、車両と線路の保守整備だけでも、佐薙家にとっては財政的負担になるわ。下手をすると国庫下渡金に頼る羽目になるかも。佐薙家の鉄道経営が軌道に乗って、結城家へ工事資金を返済出来るだけの利益を生むようになるまで、うちは財政負担を抱えることになるじゃない。それに、もし佐薙家が経営に失敗したら、完全に焦げ付き状態になるわ」

「ああ、その可能性については俺も考えた。だから、利子とは別に担保を貰おうと思ってる」

「利子とは別に?」

「まず、当然ながら返済が滞るようならば嶺州鉄道の経営権はうちに引き渡してもらう」

「まあ、当たり前よね」冬花はまだ怪訝そうであった。「でも、当たり前過ぎて担保としては弱い気がするわ。うちの家臣団を納得させられるかは疑問ね」

「最後まで聞けって。もう一つは、岩森港の独占的使用権。事実上の租借だな」

「租借の条件は、佐薙家が結城家への資金の返済を終えるまで、ですよね?」

 宵が確認してくる。

「ああ、そうなるな。だから、岩森港は今後、十年、二十年単位で結城家が独占的に使用出来ることになるだろう」

「まあ、岩森港は天然の良港だけど、現状、佐薙家にとっては宝の持ち腐れ状態にあるから、妥当といえば妥当ね」

「だだ、それですと佐薙家の赤字を結城家が背負い込むことになるのでは? 岩森港は商港として整備はしたものの、対岸の北溟道・御舘みだて港は関税法における貿易港の指定を受けている一方、岩森港は受けていません。そのため、商港としての利用も限定的なものに留まっています。また、嶺州と皇都を結ぶ汽船も佐薙家は就役させられていません。もし海路で皇都を目指す場合、一旦、対岸の御舘港に出て、そこで船を乗り換える必要があります。港としての使用は、かなり限定的なのです。このため、港湾設備の維持管理だけでも毎年、それなりの予算が消えていきます。嶺州鉄道の開通によって将来的な発展は見込めるにしても、現状で租借するには不利益の方が大きいかと」

「いや、そうでもないだろ? 鉄道はまだ通ってないにせよ、商港として整備されている以上、それなりに港までの交通網は整えているんだろ? だったら、結城家の力を利用して貿易港の指定を受けさせると共に、うちと佐薙家の交易も活発化させる。うちの持っている汽船の航路を岩森まで延ばせばいいだけの話だからな。それを使って、うちが利権を持っている南洋群島や新南嶺島から砂糖、鰹節、暖房用の灯油を嶺州に売り込むことが出来る。現状、千代からの陸上交通網が未整備な状態で大量の物資輸送をしようとなると、やっぱり船に頼るしかない。そのためにも、岩森港は便利だ」

 実際、費用の面でも陸上輸送は海上輸送の十倍の金額がかかると言われている。一度に運送出来る量を考えても、船舶輸送の方が有利なのだ。

「なるほど」宵は納得した表情になった。「佐薙家にとっては、赤字続きの港を手放せますからね。結城家と佐薙家が婚姻関係になったことの利を父上に納得させると共に、結城家は鉄道の完成に先駆けて、つまりは他の諸侯に先駆けて嶺州領内における経済的な地盤を築こうとしているわけですね? ゆくゆくは東北経済を支配するおつもりで?」

「そこまで大それたことは狙ってないが、まあ、国内経済を統一することは中央集権化のためにも役立つからな」

「……なるほど。まだ、私には全国的な視点が足りていませんでした」

 宵は感心している一方、冬花はどこか白けた視線を景紀に向けていた。

「……いや、結構真面目な構想だろ?」

 その視線にいたたまれなくなり、景紀は言い訳じみた言葉を発する。

「……ほんと、景紀はそういうとこ、あくどいわよね。自分の願望と家の利益、国家の利益をごちゃ混ぜにするんだから」

 はぁ、と冬花は呆れたように小さく溜息をついた。

「まあ、景紀がそうしたいなら、必要な資料を集めてくるわ。港の造営に関わる資料や、南洋群島・新南嶺島から内地への航路図を持ってくればいいかしら?」

「ああ、頼む」

「では、私も書庫に戻らせていただきます」

 ぺこりと頭を下げた宵が、冬花と共に執務室を退室していった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  あとがき

 今話より、拙作「秋津皇国興亡記」第二章を開始いたします。
 また何卒、宜しくお願いいたします。

 さて、作中に描いた皇国の官営鉄道についてですが、一九〇六(明治三九)年の鉄道国有法によって出現した、いわゆる「帝国鉄道」というよりは、現代のJRのような存在を想像していただけると助かります。
 つまり、路線としては一体であるものの、経営主体は地域によって異なる、といった感じです。

新たに参考にした資料
  主要参考文献
一坂太郎『暗殺の幕末維新史』(中央公論新社、2020年)
宇和島市誌編さん委員会『宇和島市誌』(宇和島市、1974年)
愛媛教育協会北宇和部会編『北宇和郡誌』(関和洋紙店印刷部、1917年)
愛媛県史編さん委員会『愛媛県史 近世』下巻(愛媛県、1987年)
愛媛県史編さん委員会編『愛媛県史 資料編 幕末維新』(愛媛県、1987年)
小田部雄次『華族』(中央公論新社、2006年)
玉木俊明『ヨーロッパ覇権史』(筑摩書房、2015年)
玉木俊明『〈情報〉帝国の興亡 ソフトパワーの五〇〇年史』(講談社、2016年)

  主要参考論文
佐伯康子「海軍の南進と南洋興発(一九二〇年~一九三六年)」(『法学研究』第65巻第2号、1992年)
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