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39 猿猴月を取る
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急遽、ある公爵家で夜会が開かれることになった。
ブトナ侯爵令嬢ローズは豪勢なドレスに身を包み、派手なアクセサリーで全身を装飾していた。
王宮で挨拶をし、追って連絡をすると言われてから音沙汰がなくてやきもきしていたが、ついにエリック王子から連絡が来た。
今度開催される公爵邸での夜会にて二人で会おうというもの。ただし、噂になると未来に差しさわりがあるので口外しないようにと念が押されていた。
(やはり、シャルロットを追い出すだけではだめだった。エリック様にあの女のふしだらさを教えてあげてよかったのだわ。エリック様は感謝してきっと私の事を・・・フフフ。)
広間を見渡すも、エリックの姿が見えない。
困っていたところに、使用人がそっと近づいてきて、
「ご案内するよう申し遣っております。」
といった。ローズは胸を高鳴らせ
「案内しなさい。」
居丈高に言った。
個室にはワインや軽食がすでに並べられている。
エリックは少し遅れるため、食べて待つように言われた。ローズは、この先に待ち受ける輝かしい自分の未来に向かって、ワイングラスを掲げ乾杯をした。
ざわめきにふと、気が付いた。
エリックを待ちながら、いつの間にか寝てしまったのだろう。慌てて目を開けると大勢の人々がこちらを見て眉をひそめていた。
「な・・何?」
自分の状況に気が付いた。自分の両脇に見知らぬ男が二人、ローズに寄りかかるように眠っていた。おまけに二人とも上半身のシャツははだけ、胸やお腹をさらしている。
まるで先ほどまで三人でお楽しみだったような状況に、ローザはパニックに陥った。
「なんなのよ!これは!」
「あら、目が覚めたと思ったらあのようなはしたない・・・。今更取り繕ったところで無駄ですけれど。」
「でもまあ、よくも特別控室に無断で入り込んだうえに殿方を引っ張り込んで不埒な行為に及ばれるとは・・・・侯爵は教育を放棄されていたのかしらねえ。」
あからさまな侮蔑の言葉に、顔を真っ赤にしてローズはソファーから立ち上がると、
「何を見てるのよ!出て行きなさい!私はもうすぐ王族になるのよ!無礼は許さないわ!」
室内にいる人々を睨みつけた。
「まあ、怖い怖い。あ、騎士様たちが来られましたわ。」
さっと人々が割れると、ドアから数名の騎士と夜会の主催の公爵が入ってきた。
「この女を不法侵入、公然わいせつ罪で拘束せよ。」
「公爵様!何かの間違いです!私はこの者どもを知りません!私はエリック殿下とここで会う約束をしているのです!」
「この部屋は私の妻のご両親がお疲れになった時にいつでも休めるよう、整えていた部屋だ。その他の何者にも使わせるはずはない。」
「殿下がここで待つようおっしゃたのです!エリック様をお呼びくださいませ!」
「黙れ!不敬罪も追加だ!連れていけ!」
公爵は、それ以上耳を貸すことなくローズを騎士に拘束させた。
そして居並ぶ貴族たちに、丁寧に詫び、夜会を引き続き楽しんで欲しいと、とっておきのワインを出すと約束した。
皆、もうブテナ侯爵家はおしまいだとさっきの出来事を肴に美味しくワインが進むだろう。
皆が出て行った後、公爵はソファーで眠りこけている男たちを起こした。
「ご苦労だったな。」
日頃は、この公爵家で働いている使用人二人に特別任務としてローズの側で眠る振りをさせた。そのうえで、すぐに大騒ぎするようなご婦人が偶然この部屋を見るように仕組んだ。あとは勝手に騒いでくれた。
エリック殿下の逆鱗に触れたというブトナ侯爵親子。これでローズの将来は潰えた。縁談が来るわけがなく、社交界にも顔を出せなくなった。
侯爵に関しては、エリックがさらに追い詰めると聞いた。もう侯爵家は終わりだ。
そして、公爵家はエリックから更なる信頼を得て、褒賞を賜る。ブトナ侯爵に感謝しかない。
ブトナ侯爵令嬢ローズは豪勢なドレスに身を包み、派手なアクセサリーで全身を装飾していた。
王宮で挨拶をし、追って連絡をすると言われてから音沙汰がなくてやきもきしていたが、ついにエリック王子から連絡が来た。
今度開催される公爵邸での夜会にて二人で会おうというもの。ただし、噂になると未来に差しさわりがあるので口外しないようにと念が押されていた。
(やはり、シャルロットを追い出すだけではだめだった。エリック様にあの女のふしだらさを教えてあげてよかったのだわ。エリック様は感謝してきっと私の事を・・・フフフ。)
広間を見渡すも、エリックの姿が見えない。
困っていたところに、使用人がそっと近づいてきて、
「ご案内するよう申し遣っております。」
といった。ローズは胸を高鳴らせ
「案内しなさい。」
居丈高に言った。
個室にはワインや軽食がすでに並べられている。
エリックは少し遅れるため、食べて待つように言われた。ローズは、この先に待ち受ける輝かしい自分の未来に向かって、ワイングラスを掲げ乾杯をした。
ざわめきにふと、気が付いた。
エリックを待ちながら、いつの間にか寝てしまったのだろう。慌てて目を開けると大勢の人々がこちらを見て眉をひそめていた。
「な・・何?」
自分の状況に気が付いた。自分の両脇に見知らぬ男が二人、ローズに寄りかかるように眠っていた。おまけに二人とも上半身のシャツははだけ、胸やお腹をさらしている。
まるで先ほどまで三人でお楽しみだったような状況に、ローザはパニックに陥った。
「なんなのよ!これは!」
「あら、目が覚めたと思ったらあのようなはしたない・・・。今更取り繕ったところで無駄ですけれど。」
「でもまあ、よくも特別控室に無断で入り込んだうえに殿方を引っ張り込んで不埒な行為に及ばれるとは・・・・侯爵は教育を放棄されていたのかしらねえ。」
あからさまな侮蔑の言葉に、顔を真っ赤にしてローズはソファーから立ち上がると、
「何を見てるのよ!出て行きなさい!私はもうすぐ王族になるのよ!無礼は許さないわ!」
室内にいる人々を睨みつけた。
「まあ、怖い怖い。あ、騎士様たちが来られましたわ。」
さっと人々が割れると、ドアから数名の騎士と夜会の主催の公爵が入ってきた。
「この女を不法侵入、公然わいせつ罪で拘束せよ。」
「公爵様!何かの間違いです!私はこの者どもを知りません!私はエリック殿下とここで会う約束をしているのです!」
「この部屋は私の妻のご両親がお疲れになった時にいつでも休めるよう、整えていた部屋だ。その他の何者にも使わせるはずはない。」
「殿下がここで待つようおっしゃたのです!エリック様をお呼びくださいませ!」
「黙れ!不敬罪も追加だ!連れていけ!」
公爵は、それ以上耳を貸すことなくローズを騎士に拘束させた。
そして居並ぶ貴族たちに、丁寧に詫び、夜会を引き続き楽しんで欲しいと、とっておきのワインを出すと約束した。
皆、もうブテナ侯爵家はおしまいだとさっきの出来事を肴に美味しくワインが進むだろう。
皆が出て行った後、公爵はソファーで眠りこけている男たちを起こした。
「ご苦労だったな。」
日頃は、この公爵家で働いている使用人二人に特別任務としてローズの側で眠る振りをさせた。そのうえで、すぐに大騒ぎするようなご婦人が偶然この部屋を見るように仕組んだ。あとは勝手に騒いでくれた。
エリック殿下の逆鱗に触れたというブトナ侯爵親子。これでローズの将来は潰えた。縁談が来るわけがなく、社交界にも顔を出せなくなった。
侯爵に関しては、エリックがさらに追い詰めると聞いた。もう侯爵家は終わりだ。
そして、公爵家はエリックから更なる信頼を得て、褒賞を賜る。ブトナ侯爵に感謝しかない。
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