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28 殿下とお茶会
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「今回もシャルロット嬢に助けられたな。これでようやく、国内外の膿をあぶりだせたし、不穏分子を処分できた。ようやく一息つける、これからの国政は安定するだろう。」
笑顔で言うエリックに、自分は何もできていないと慌てた。
「最初に私の暗殺が成功していたらアランとフローラ妃の傀儡になったヘンリー兄上が王太子となり、いずれ国王となっていただろう。そしていずれは隣国に乗っ取られていた。あなたの功績はカイン一人の命を救っただけではない、この国を救ってくれた。私はあなたに感謝と・・・あなた自身の事情を顧みず駆けつけてくれたあなたに想いを止められない。」
エリックは跪くとシャルロットの手の甲に軽く唇をふれた。
「殿下!お立ち下さい!」
シャルロットは顔を真っ青にして逃げ出しそうになった。
見守っていたニコラは、自分の恋心を永遠に封印する日が来たことを悟った。
自分はエリックほど強くない。周りの声を全て抑えつけてシャルロットを深窓の妻として社交界から遠ざけて幸せにすることはきっとできないだろう。
きっとこの胸の痛みはずっと続く。それでもシャルロットを幸せにしてくれるのならば、尊敬するエリックならばシャルロットを任せられる。
エリックは椅子に座りなおすと
「驚かせたね。」
フフッと笑った。シャルロットも気が抜けてほっとして笑った。
「ご冗談はおやめください。心臓が止まるかと思いましたわ。」
おそらくエリックが王太子となるだろう。そしていずれこの国の王として名を馳せることになる。前回の地震時といい、今回の王位継承問題といいその手腕に疑うところはない。
知らず胸の中に育った気持ちには気が付かないふりをして、できれば、エリックを支えていきたい。
これまでは、父の役に立ちたい、自分の苦しみに意味を見出したかったなどの理由で、王族、国政に関わる重鎮たちを見てきたが、今は自らこの国の為に、この国を良くしようとするエリックのために力になりたいと思った。
「シャルロット嬢、これからはこうしてお茶会に招いてもいいかな?」
「身に余る光栄ですわ。」
シャルロットは嬉しそうに笑った。
シャルロットの事情を知っているエリックとニコラとのお茶会ならば安心である。人払いもしっかりしてくれている。そして何か力になれることもあるかもしれない。
「貴女にはどれだけ感謝をしていいかわからないが、表立って褒美を与えるわけにはいかないだろう?だからこうして時々お茶会に招こうと思う。」
そうすればシャルロットがエリックに信頼されていること、ひいては王家の庇護下にあると示すことができる。それだけの価値がシャルロットにあることを知らしめ、これまでの噂を払拭できる。
「殿下、お心遣い感謝いたしますわ。私の方こそ荒唐無稽な話を聞き入れて下さったばかりか、このようなお心遣いまで・・・本当にありがとうございます。」
三人でのお茶会はとても楽しかった。
人前ではいつもとりつくろわなければいけない立場上、紳士然としているが気を許す仲間内ではくだけている様子で、その様子がまた好ましく、シャルロットも気を遣わずに過ごすことができた。
笑顔で言うエリックに、自分は何もできていないと慌てた。
「最初に私の暗殺が成功していたらアランとフローラ妃の傀儡になったヘンリー兄上が王太子となり、いずれ国王となっていただろう。そしていずれは隣国に乗っ取られていた。あなたの功績はカイン一人の命を救っただけではない、この国を救ってくれた。私はあなたに感謝と・・・あなた自身の事情を顧みず駆けつけてくれたあなたに想いを止められない。」
エリックは跪くとシャルロットの手の甲に軽く唇をふれた。
「殿下!お立ち下さい!」
シャルロットは顔を真っ青にして逃げ出しそうになった。
見守っていたニコラは、自分の恋心を永遠に封印する日が来たことを悟った。
自分はエリックほど強くない。周りの声を全て抑えつけてシャルロットを深窓の妻として社交界から遠ざけて幸せにすることはきっとできないだろう。
きっとこの胸の痛みはずっと続く。それでもシャルロットを幸せにしてくれるのならば、尊敬するエリックならばシャルロットを任せられる。
エリックは椅子に座りなおすと
「驚かせたね。」
フフッと笑った。シャルロットも気が抜けてほっとして笑った。
「ご冗談はおやめください。心臓が止まるかと思いましたわ。」
おそらくエリックが王太子となるだろう。そしていずれこの国の王として名を馳せることになる。前回の地震時といい、今回の王位継承問題といいその手腕に疑うところはない。
知らず胸の中に育った気持ちには気が付かないふりをして、できれば、エリックを支えていきたい。
これまでは、父の役に立ちたい、自分の苦しみに意味を見出したかったなどの理由で、王族、国政に関わる重鎮たちを見てきたが、今は自らこの国の為に、この国を良くしようとするエリックのために力になりたいと思った。
「シャルロット嬢、これからはこうしてお茶会に招いてもいいかな?」
「身に余る光栄ですわ。」
シャルロットは嬉しそうに笑った。
シャルロットの事情を知っているエリックとニコラとのお茶会ならば安心である。人払いもしっかりしてくれている。そして何か力になれることもあるかもしれない。
「貴女にはどれだけ感謝をしていいかわからないが、表立って褒美を与えるわけにはいかないだろう?だからこうして時々お茶会に招こうと思う。」
そうすればシャルロットがエリックに信頼されていること、ひいては王家の庇護下にあると示すことができる。それだけの価値がシャルロットにあることを知らしめ、これまでの噂を払拭できる。
「殿下、お心遣い感謝いたしますわ。私の方こそ荒唐無稽な話を聞き入れて下さったばかりか、このようなお心遣いまで・・・本当にありがとうございます。」
三人でのお茶会はとても楽しかった。
人前ではいつもとりつくろわなければいけない立場上、紳士然としているが気を許す仲間内ではくだけている様子で、その様子がまた好ましく、シャルロットも気を遣わずに過ごすことができた。
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