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26 王子の暗殺劇 3
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第一王子派の貴族が黒幕と聞かされたヘンリーとアレクシア妃は自分たちにも処罰が下るだろうと覚悟し、顔をこわばらせていた。
「・・・この機会を犯人は逃すはずがない。」
「え?」
「ここに皆が揃っている、存在証明がされておるな。そして近衛もわしらをこうして守っている。今、エリックを守っておるのは第一騎士団の数名のみ。」
「何がおっしゃりたいのですか?」
フローラが尋ねる。
「守りの薄い今、暗殺者が狙いやすいだろう。だがここにいる皆は疑われることはない。その機会を逃すはずはないだろう。」
「陛下は私達をお疑いなのですか!」
ソフィが大声を出す。
「・・・。もうわかっているのだ。」
「そ、それなら!ヘンリーお兄様なのではなくて?!信頼できるシモン侯爵家に指示をしたのでしょう!」
「何を言う!そんなことするはずがないだろう!私はエリックのことを嫌ってはいない、害するなど考えたことはない!」
「そうかしら、優秀と言われている第二王子に嫉妬していたのではなくて?」
先ほどは後ろ盾になると言ったフローラが、手のひらを返したように攻めてくる。
「嫉妬は・・・してたさ!だがあいつが次期国王にふさわしいなら、国のためにはあいつが立てばいい。私はそれを支える!それぐらいは王家の人間として覚悟はしている!」
第二王子は文武に精通し、清濁併せて人をまとめ、うまく使う。知的に策略を張り巡らし物事を思うように運ぶ手腕にもたけている。
それとは反対に、第一王子は凡庸と噂されている。何事も人並みだが、どちらかというと規律を重んじ、人当たりは良く皆の話もよく聞く。ただ言い換えれば、自己決定ができない優柔不断とささやかれ、国王に立つには荷が重い・・と言われているのは周知の事実。
そのことを第一王子は重々知っていた、もっと子供の頃はそれに悩み、苦しみ、どす黒い思いにとらわれたこともあった。苦しんで苦しんで、もがいて、エリックを羨み、妬み、恨んだ。
しかしエリックがそれだけの努力を裏でやっているのを見たとき、この国の為に私心を捨てて取り組んでいるのを見たとき、自分には出来ないと素直にエリックを認めることが出来た。
しかし、側妃のフローラと異母妹のソフィアは王位継承権を争うヘンリーを疑った。
その様子にヘンリーはいらだったが、ヘンリーははっとして
「陛下!エリックが狙われているならば、近衛をエリックのもとに向かわせてください!重体のエリックを囮にするなどなんてことを!」
ヘンリーは立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
国王はやや表情を弛めると
「ヘンリー、心配するな。もうじき片が付くであろう。」
国王の言葉と同時に扉を守っていた近衛騎士が扉を開けた。
「エリック!!お前!」
重体で、政務に復帰することも難しいと言われていたエリックが以前と変わらない姿で現れた。
「兄上、ご心配をお掛けいたしました。」
そしてその後ろからエリックの専属護衛騎士に取り押さえられた近衛騎士第一部隊隊長が現れた。
「どういう・・・」
訳が分からず、室内にいるものは戸惑った。
「先ほど、護衛のカインに命を狙われましたので取り押さえた次第です。」
「カインが?!王族を守る一番忠誠心の熱い騎士ではないか!」
「ええ。ですから私の部屋へ簡単に侵入し、仕留めた後にしれっとドアの外で見張りをしていれば疑われなかった可能性がありますね、私が重体であれば。」
エリックは毒を飲んだこと自体が狂言だったと説明した。毒は確かに仕込まれていたが、事前に察知していたため飲んだ振りをして、犯人をおびき寄せることにした。それとともに、自分が表舞台に復帰できないと噂を流した時の他国の動き、国内貴族の動きを注視していたという。
国によっては侵攻を考えるもの、交易の契約を反故にしようとするもの、後ろ盾に名乗りを上げようとするものなど様々な動きがみられた。国内でも第二王子から第一王子に乗り換える貴族もいたがこれは当然のことだとエリックは気にすることはなったが、監視が緩んだすきに他国へ情報を流すもの、禁輸、密輸で暴利をむさぼろうとするものなど貴族にふるいをかけたのだ。
「先日、捕らえた暗殺者がシモン侯爵家に頼まれたと白状したが、あれも兄上の力をそぐための計略です。シモン侯爵家は何も関わっておりません。」
「そうか・・・そうか。」
それだけ言ってヘンリーはソファーに力が抜けたように座った。
「カイン。お前に尋ねる。なぜ王族を守る立場のお前が私を殺めようとした?お前のことは信頼していたのだが。」
「・・・申し訳ありません。私には・・・妻と娘、息子がおります。」
そう話し出したカインを遮るように
「エリック殿が無事でよかった。心からご無事をお祝い申し上げる。ここからはこの国の機微に関することだろうから、部外者の私は退出させていただこう。」
そう言ってアラン皇子が立ち上がった。
「では、わたくしも失礼いたしますわ。アラン様をご案内いたします。」
つられるようにソフィも立ち上がった。
「いや、お二方にも事の顛末をお聞きいただきたい。」
エリックは引き留めた。
「いやいや、遠慮させていただきます。他国の醜聞は耳に入れないほうがよいだろう。」
「そうですか。仕方ありません。では、フローラ、ソフィ、アランを第二王子エリック殺害未遂の咎で拘束しろ。」
「はっ!」
一斉に姿勢を正し、返答した後、この室内を守っていた騎士たちは3人を拘束した。
「・・・この機会を犯人は逃すはずがない。」
「え?」
「ここに皆が揃っている、存在証明がされておるな。そして近衛もわしらをこうして守っている。今、エリックを守っておるのは第一騎士団の数名のみ。」
「何がおっしゃりたいのですか?」
フローラが尋ねる。
「守りの薄い今、暗殺者が狙いやすいだろう。だがここにいる皆は疑われることはない。その機会を逃すはずはないだろう。」
「陛下は私達をお疑いなのですか!」
ソフィが大声を出す。
「・・・。もうわかっているのだ。」
「そ、それなら!ヘンリーお兄様なのではなくて?!信頼できるシモン侯爵家に指示をしたのでしょう!」
「何を言う!そんなことするはずがないだろう!私はエリックのことを嫌ってはいない、害するなど考えたことはない!」
「そうかしら、優秀と言われている第二王子に嫉妬していたのではなくて?」
先ほどは後ろ盾になると言ったフローラが、手のひらを返したように攻めてくる。
「嫉妬は・・・してたさ!だがあいつが次期国王にふさわしいなら、国のためにはあいつが立てばいい。私はそれを支える!それぐらいは王家の人間として覚悟はしている!」
第二王子は文武に精通し、清濁併せて人をまとめ、うまく使う。知的に策略を張り巡らし物事を思うように運ぶ手腕にもたけている。
それとは反対に、第一王子は凡庸と噂されている。何事も人並みだが、どちらかというと規律を重んじ、人当たりは良く皆の話もよく聞く。ただ言い換えれば、自己決定ができない優柔不断とささやかれ、国王に立つには荷が重い・・と言われているのは周知の事実。
そのことを第一王子は重々知っていた、もっと子供の頃はそれに悩み、苦しみ、どす黒い思いにとらわれたこともあった。苦しんで苦しんで、もがいて、エリックを羨み、妬み、恨んだ。
しかしエリックがそれだけの努力を裏でやっているのを見たとき、この国の為に私心を捨てて取り組んでいるのを見たとき、自分には出来ないと素直にエリックを認めることが出来た。
しかし、側妃のフローラと異母妹のソフィアは王位継承権を争うヘンリーを疑った。
その様子にヘンリーはいらだったが、ヘンリーははっとして
「陛下!エリックが狙われているならば、近衛をエリックのもとに向かわせてください!重体のエリックを囮にするなどなんてことを!」
ヘンリーは立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
国王はやや表情を弛めると
「ヘンリー、心配するな。もうじき片が付くであろう。」
国王の言葉と同時に扉を守っていた近衛騎士が扉を開けた。
「エリック!!お前!」
重体で、政務に復帰することも難しいと言われていたエリックが以前と変わらない姿で現れた。
「兄上、ご心配をお掛けいたしました。」
そしてその後ろからエリックの専属護衛騎士に取り押さえられた近衛騎士第一部隊隊長が現れた。
「どういう・・・」
訳が分からず、室内にいるものは戸惑った。
「先ほど、護衛のカインに命を狙われましたので取り押さえた次第です。」
「カインが?!王族を守る一番忠誠心の熱い騎士ではないか!」
「ええ。ですから私の部屋へ簡単に侵入し、仕留めた後にしれっとドアの外で見張りをしていれば疑われなかった可能性がありますね、私が重体であれば。」
エリックは毒を飲んだこと自体が狂言だったと説明した。毒は確かに仕込まれていたが、事前に察知していたため飲んだ振りをして、犯人をおびき寄せることにした。それとともに、自分が表舞台に復帰できないと噂を流した時の他国の動き、国内貴族の動きを注視していたという。
国によっては侵攻を考えるもの、交易の契約を反故にしようとするもの、後ろ盾に名乗りを上げようとするものなど様々な動きがみられた。国内でも第二王子から第一王子に乗り換える貴族もいたがこれは当然のことだとエリックは気にすることはなったが、監視が緩んだすきに他国へ情報を流すもの、禁輸、密輸で暴利をむさぼろうとするものなど貴族にふるいをかけたのだ。
「先日、捕らえた暗殺者がシモン侯爵家に頼まれたと白状したが、あれも兄上の力をそぐための計略です。シモン侯爵家は何も関わっておりません。」
「そうか・・・そうか。」
それだけ言ってヘンリーはソファーに力が抜けたように座った。
「カイン。お前に尋ねる。なぜ王族を守る立場のお前が私を殺めようとした?お前のことは信頼していたのだが。」
「・・・申し訳ありません。私には・・・妻と娘、息子がおります。」
そう話し出したカインを遮るように
「エリック殿が無事でよかった。心からご無事をお祝い申し上げる。ここからはこの国の機微に関することだろうから、部外者の私は退出させていただこう。」
そう言ってアラン皇子が立ち上がった。
「では、わたくしも失礼いたしますわ。アラン様をご案内いたします。」
つられるようにソフィも立ち上がった。
「いや、お二方にも事の顛末をお聞きいただきたい。」
エリックは引き留めた。
「いやいや、遠慮させていただきます。他国の醜聞は耳に入れないほうがよいだろう。」
「そうですか。仕方ありません。では、フローラ、ソフィ、アランを第二王子エリック殺害未遂の咎で拘束しろ。」
「はっ!」
一斉に姿勢を正し、返答した後、この室内を守っていた騎士たちは3人を拘束した。
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