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25 王子の暗殺劇 2
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舞踏会から帰宅した父から其れを聞いたシャルロットは身を震わせて崩れおちた。
「命は取り留められたということだ。」
「殿下の・・・殿下のお側に行くわけにはまいりませんか?殿下を見ることは叶いませんか?」
シャルロットが個人的な気持ちから誰かを見たいなど初めての事だった。
ジェラルドはシャルロットの気持ちに気が付いてしまった。
決して報われることのないその気持ちを、どうしてやることもできない。
「命は助かったとお聞きした。まだ、犯人はわかっておらず、王宮は厳戒態勢なのだ。お前が面会するのは不可能だ。」
シャルロットは両手を組み震わせながら
「本当に?」
「ああ。ルコント領でお会いした時、異常はなかったのだろう?」
「あ・・・そうでした。」
シャルロットは焦燥感から混乱していたが、少し前にエリックを見たときには何も見えなかった。
しかし、命はあっても意識が戻らないかもしれない、元のように動けないかもしれないなど心配することは山のようにある。
「いったい誰が・・・。」
「お前はそんな恐ろしいことを考えなくてもよい。殿下の回復を祈りなさい、殿下は絶対に大丈夫だから。」
「・・・はい。」
そしてその二日後、事態は大きく動いた。
エリックが寝ている寝所に暗殺者が侵入し、捕らえられた。
その暗殺者は、第一王子派の貴族の名前を挙げ、殺害を依頼されたと言った。第二王子は聡明すぎて、貴族の地位や権力を利用した不正やうまみを得ることが出来ない。どうしてでも第一王子に王太子になって欲しかったと動機を語った。
「陛下、こうして皆が集められたのはエリック暗殺の件についてでしょうか?」
「そうだ。」
国王はじめ、正妃、側妃、王子と王女、アラン皇太子が一室に集っていた。王族のみならず、国内の主要貴族、他国の外交官も同席していた。
そしてドアの前と壁際に近衛兵がずらっと並んでいる。
「物々しいですね。」
アランが言う。
「まだ黒幕がはっきりしておらんからな。」
「ある貴族が黒幕だと耳にいたしましたが。」
「アラン皇太子殿下、耳が早いな。」
「これでも一国の皇太子ですので常に情報は収集しておりますゆえ。」
国王は一度皆を見渡した。
「アラン殿下が言った通り、シモン侯爵家がエリック暗殺を依頼したと暗殺者は白状した。残念ながらヘンリーを支える貴族の一人だ。」
ヘンリーは苦しそうに顔をしかめる。自分を支えてくれている貴族たちの中でも権力、資金ともに最大で、なくてはならない後援者だった。
エリックがこのまま回復せず、自分が王太子となってもシモン侯爵家の後ろ盾無くして、第二王子派の貴族を取り込みうまく動かして政権をうまく回すなど難しいだろう。
自分の為にエリックを暗殺しようとしたというが、結果は自分を窮地に追いやっただけでなく、そもそも弟の命を奪うようなことを後援者がしたことが恐ろしかった。
後継者争いと言ってもエリックとの仲は悪くなかった、死など望むはずもない。
「ヘンリー、なんてこと。あのシモン侯爵が・・・そんな方ではないと思っていたのに。」
ヘンリーの母であるアレクシア妃も顔色を無くす。
「ヘンリー王子、アレクシア妃。及ばずながら、私どもがお支えいたしますわ。幸いわたくしの娘は隣国へ嫁ぎます。後継者争いとは無縁ですし、エリック殿下はもしかすると・・・」
もう一人の側妃フローラがそう言いかけた。
「フリーラ妃よ、エリックがなんだというのだ?」
「い、いえ。出過ぎたことを申しました。」
「まるでもうエリックが復帰が出来ないことを知っているようだな。」
「滅相もございません!」
フローラは慌てて引き下がった。しかし国王はつい追及をゆるめかった。
「しかもまるでもうヘンリーが王太子に決まったも同然で、その後ろ盾になるだと?わしはまだ決めておらんぞ。」
「も、申し訳ありません。エリック王子のお身体が思わしくないと耳にしましたので・・・」
「誰からだ?」
「いえ、誰というわけでは・・・」
「言えないのか?」
「申し訳ありません、噂のレベルでございます。」
「王太子候補の王子の健康不安を面白おかしく吹聴されるようでは危機管理が全くなっておらん。噂のもとを突き止めたい、誰から聞いたのだ?」
流せば済むようなことを国王はしつこく追及する。
母の窮地を見て取り
「陛下、お母さまをお許しくださいませ。お母さまはこの国のことを考え、あらゆる危機に対処できるようヘンリーお兄様に申し出たにすぎませんわ。エリックお兄様のお体については良く知りませんの。ただ心配のあまりご容態が悪いのではないかと想察しただけでございます。」
国王から子供たちの中で一番かわいがられ、自身もそれを自覚している王女がそう言った。
「ソフィ、お前は黙っていなさい。」
「へ、陛下。」
「なぜ、ここに皆が集められたのか。わかるか?」
「命は取り留められたということだ。」
「殿下の・・・殿下のお側に行くわけにはまいりませんか?殿下を見ることは叶いませんか?」
シャルロットが個人的な気持ちから誰かを見たいなど初めての事だった。
ジェラルドはシャルロットの気持ちに気が付いてしまった。
決して報われることのないその気持ちを、どうしてやることもできない。
「命は助かったとお聞きした。まだ、犯人はわかっておらず、王宮は厳戒態勢なのだ。お前が面会するのは不可能だ。」
シャルロットは両手を組み震わせながら
「本当に?」
「ああ。ルコント領でお会いした時、異常はなかったのだろう?」
「あ・・・そうでした。」
シャルロットは焦燥感から混乱していたが、少し前にエリックを見たときには何も見えなかった。
しかし、命はあっても意識が戻らないかもしれない、元のように動けないかもしれないなど心配することは山のようにある。
「いったい誰が・・・。」
「お前はそんな恐ろしいことを考えなくてもよい。殿下の回復を祈りなさい、殿下は絶対に大丈夫だから。」
「・・・はい。」
そしてその二日後、事態は大きく動いた。
エリックが寝ている寝所に暗殺者が侵入し、捕らえられた。
その暗殺者は、第一王子派の貴族の名前を挙げ、殺害を依頼されたと言った。第二王子は聡明すぎて、貴族の地位や権力を利用した不正やうまみを得ることが出来ない。どうしてでも第一王子に王太子になって欲しかったと動機を語った。
「陛下、こうして皆が集められたのはエリック暗殺の件についてでしょうか?」
「そうだ。」
国王はじめ、正妃、側妃、王子と王女、アラン皇太子が一室に集っていた。王族のみならず、国内の主要貴族、他国の外交官も同席していた。
そしてドアの前と壁際に近衛兵がずらっと並んでいる。
「物々しいですね。」
アランが言う。
「まだ黒幕がはっきりしておらんからな。」
「ある貴族が黒幕だと耳にいたしましたが。」
「アラン皇太子殿下、耳が早いな。」
「これでも一国の皇太子ですので常に情報は収集しておりますゆえ。」
国王は一度皆を見渡した。
「アラン殿下が言った通り、シモン侯爵家がエリック暗殺を依頼したと暗殺者は白状した。残念ながらヘンリーを支える貴族の一人だ。」
ヘンリーは苦しそうに顔をしかめる。自分を支えてくれている貴族たちの中でも権力、資金ともに最大で、なくてはならない後援者だった。
エリックがこのまま回復せず、自分が王太子となってもシモン侯爵家の後ろ盾無くして、第二王子派の貴族を取り込みうまく動かして政権をうまく回すなど難しいだろう。
自分の為にエリックを暗殺しようとしたというが、結果は自分を窮地に追いやっただけでなく、そもそも弟の命を奪うようなことを後援者がしたことが恐ろしかった。
後継者争いと言ってもエリックとの仲は悪くなかった、死など望むはずもない。
「ヘンリー、なんてこと。あのシモン侯爵が・・・そんな方ではないと思っていたのに。」
ヘンリーの母であるアレクシア妃も顔色を無くす。
「ヘンリー王子、アレクシア妃。及ばずながら、私どもがお支えいたしますわ。幸いわたくしの娘は隣国へ嫁ぎます。後継者争いとは無縁ですし、エリック殿下はもしかすると・・・」
もう一人の側妃フローラがそう言いかけた。
「フリーラ妃よ、エリックがなんだというのだ?」
「い、いえ。出過ぎたことを申しました。」
「まるでもうエリックが復帰が出来ないことを知っているようだな。」
「滅相もございません!」
フローラは慌てて引き下がった。しかし国王はつい追及をゆるめかった。
「しかもまるでもうヘンリーが王太子に決まったも同然で、その後ろ盾になるだと?わしはまだ決めておらんぞ。」
「も、申し訳ありません。エリック王子のお身体が思わしくないと耳にしましたので・・・」
「誰からだ?」
「いえ、誰というわけでは・・・」
「言えないのか?」
「申し訳ありません、噂のレベルでございます。」
「王太子候補の王子の健康不安を面白おかしく吹聴されるようでは危機管理が全くなっておらん。噂のもとを突き止めたい、誰から聞いたのだ?」
流せば済むようなことを国王はしつこく追及する。
母の窮地を見て取り
「陛下、お母さまをお許しくださいませ。お母さまはこの国のことを考え、あらゆる危機に対処できるようヘンリーお兄様に申し出たにすぎませんわ。エリックお兄様のお体については良く知りませんの。ただ心配のあまりご容態が悪いのではないかと想察しただけでございます。」
国王から子供たちの中で一番かわいがられ、自身もそれを自覚している王女がそう言った。
「ソフィ、お前は黙っていなさい。」
「へ、陛下。」
「なぜ、ここに皆が集められたのか。わかるか?」
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