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24 王子の暗殺劇 1

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 登城するなり、エリックの執務室に行き、婚約者候補への打診を丁寧に辞退した。
「なぜだか理由を聞いてもいいかい?」
「娘には勤まりません。殿下もご存じのようにああしていつ倒れるかわかりませんから。」
「そうだね、他国との顔合わせでしょっちゅう倒れるのはかわいそうだしね。」
 とニヤッと笑う。国外の貴賓を殺す気かと聞いていたニコラの背中がヒヤリとする。

「侯爵、勘違いしないでね。彼女の能力が欲しくて申し込んだわけではないよ、彼女自身に惹かれたのは本当だから。あわよくば彼女が私に惚れてくれていたらいいなあと思ったんだよ。」
「ではこの話はなかったことでよろしいですね。」
「そう結論を急がなくてもいいだろう?私が王太子にならず、もし臣下に下ることがあれば社交せずに屋敷で静かな暮らしを用意できる。」
「ご冗談を。殿下には王太子、次期国王になっていただきたいと願っております。」
「そのつもりだったよ、シャルロット嬢に会うまでは。」
「殿下!」
「一生を共にしたい、守りたいと思う人に出会えるのもなかなかないことだよ。だから、まだ辞退は許さない。せめて候補として残って欲しい。」
「・・・申し訳ありません。娘は殿下の婚約者になれる器ではございませんので。それにあの通りですので一生どこにもやるつもりはございません。平にご容赦願います。」
「・・・そう、とりあえずは保留だ。」
 パンと手を叩いて空気を変えた。 
「それでだ、5日後の舞踏会での手筈の確認だ。」
 エリックは書類を出すと、ジェラルドに渡した。

 一年に2回開催される王家主催の舞踏会。
 国内の貴族のみならず、国外の賓客も招かれる。交易を結ぶ国とのつながりを強固にする意図もあるが、大規模な舞踏会を開催することで王国の繁栄を見せつけるのも目的の一つである。
 舞踏会が開かれている大広間の一段高い王族の席に、国王夫妻、側妃アレクシア及びフローラ、第一王子のヘンリー、第二王子のエリック、第一王女のソフィが並び座っている。加えて、王女ソフィの婚約者で隣国の皇太子アランも招待されていた。
 舞踏会も終盤に差し掛かり、優美な音楽と皆のさざめきで心地の良い時間が流れていた。

 そんな中、エリックが急に口元を押さえたかと思うと血を吐いた。
 まわりから悲鳴が上がる。そのまま倒れ込んだエリックをニコラと護衛騎士が運び出した。
 悲鳴と怒号が響き渡る中、何人(なにびと)も逃げ出せないように広間の扉がしめられた。
「陛下!お兄様はどうなされたのですか?」
「毒のようだ。重体だが対処が早かったので命は取り留めた。しかし・・・」
 報告を受けた国王が辛そうに顔をしかめ、皆に伝える。
「ああ、お兄様・・・・」
「陛下、犯人は?」
「調査はこれからだ。まず、これより騎士団による持ち物調査と身元調査を
行う!他国の来賓客に関しては別室で協力を願いたい。」
 失礼だと怒りだすものもいたが、目の前で王子が毒殺されかけたこともあり皆しぶしぶでも協力した。
 その結果、身元の怪しいものはおらず、毒を所持している者もいなかった。
 国王は自ら、協力をしてくれたものに頭を下げ、その日は散会となった。

 舞踏会という公の場での暗殺劇は国中、世界中にあっという間に広がった。
 そして様々な思惑の下、国内外で何かが動き出した。
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