《パラレルワールド》死を見る令嬢は義弟に困惑しています 

れもんぴーる

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19 地震に備えて 2

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 翌日、殿下は街に向かうと広場に領民を集めた。
 そして、王家の秘匿された技術で調査したところ、この地に大地震が近々来ることが分かったと伝えた。
 それを聞いた領民たちはざわめいた。いくら尊き王族の言葉といえどもにわかに信じられるわけはない。確かに過去何回も大地震が起こっている地域だが、いつ来るのか知るすべはないのだ。

「静かに!聞いてくれ!確かに必ず来るとは言えないだろう、あくまでも可能性の話だ。だが考え方を変えてみてくれ、一日それを信じて行動し、助かった場合のメリット。何も起らなかった時のデメリットを。結果的に地震が起こらなかったからと言ってどれだけの不都合があるだろうか?」
 そういえば、そうだと思い始める領民も出始めた。別に何も損はしない。

「今回、私は地震に備えて食料品、医薬品をたくさん持ってきている。これも使わずに済むのならそれに越したことはない。この領地に寄贈するので今後の備蓄としてほしい。そして、いつか来る地震に対する領民みなの命を守るための訓練だと思って協力してほしい!」
 国に、王家に、それこそ何のメリットもないことを、この領地と領民を守るために王子自らがこうして行動してくれたことにみんな心動かされた。
 その隣に立つ領主の嫡男ニコラも領民の為に力を尽くしてくれたであろうことがわかる。
 領民たちは口々に、殿下とニコラを称え、喜んで準備をすると約束した。

 エリックはたくさんのテントを持ってきていた。野営が得意な兵たちの手で平地や牧草地にどんどんテントが建てられていく。耐震が不安な家のものはあらかじめここで夕方から一夜を過ごしてもらう。家畜たちは安全な場所に移動させ、驚いて逃げ出さないように強固な柵がつけられた。そして復興を見据えて、領民も手伝い、木々が切り出された。
 各自貴重品や食料、水など用意し、当日は家族が一塊でいること、独り者で心配なものは公爵邸に集まること、公爵邸に医者を配置していることなどこまごましたことなども領民に伝えられ、いざその日を待った。
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