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17 予見 2
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「ご心配をおかけしました。そしてシリル、ありがとう。おかげで痛みは襲ってこなかった。やはりあなたには何か特別な力があるのだわ。」
「でもすごく苦しそうでしたよ。」
「そうね。想像していた通りだったの。大勢の人に・・・死が見えたわ。」
シャルロットはニコラを見た。ニコラは大きく目を見開いた。
「大地震が来るということですか!」
「ええ。家が崩れて下敷きになったり、家事なって炎に巻き込まれたり・・・本当に多くの人々が。」
涙声になり、シャルロットは顔を覆った。シリルのおかげで直接痛みは感じなくても、「死」は見えてしまう。それはシャルロットの心を悲しませ、傷つける。
昨日、メイドの一人に死が見えた。建物が崩れ、大きな瓦礫が頭に直撃し、倒れても誰も助けに来ず死んでいく姿だ。それを見てもしかして地震による倒壊かもしれないとニコラに話してみた。
すると、このルコント領は時折大地震に襲われ甚大な被害がでる地域であり、そのため領主の屋敷と別邸は頑丈に作られているのだと知った。
もし予想通りなら、被害はあのメイドだけにとどまらない。地震が起こるのかどうか、領民の命が危機に瀕していないかどうか街に出て確かめることになったのだ。
もし大地震が襲うなら大変なことになる、シャルロットとニコラはそれを想像して一晩、不安と焦燥感に苛まれたのだった。
大地震が来ることは確定した。しかし、それは日時まではわからない。いつも場面から類推しているのだ。今回も判っていることは暗いので夜ということ。しかしランプやろうそくの火も見えたことから就寝前でそれほど遅い時間ではないだろうこと。
期日については特定しにくい。ニコラが巻き込まれないことはわかったが、だからといってそれが王都に帰ってからからなのか、まだ領地にいる期間だが命が助かっただけなのかも判らない。
「シャルロット様の予知はいつもどのくらいの未来まで見えるのですか?」
「はっきりわからないのです。その後どうされてるのか、いつそれが起こったのかわからないことが多いですし。身近な範囲では2か月前後というところでしょうか。早い時は数日ということも。」
「今は緑の月ですから、黄の月までの間ですね。何か手がかりになるものはありませんか。飾りとか、花とか。」
「う~ん。そんな余裕がなかったですからね・・・あ、そういえば子供たちが。」
と、子供たちの死にざまを思い出して感情が乱れそうになるのを何とか押さえ込むと
「みんな緑の服を着ていましたわ。偶然?かもしれませんが。」
「!それはすごい!この地方では緑の月の15の日に子供に緑の服を着せて、お祝いをするのですよ。草花や木の葉のようなみずみずしい生命力と成長を願って。ということは・・・今から10日後です!」
日が分かったことは大進歩だ。しかし、これまでのように一人に忠告するような話ではない。大勢の領民を助けるために何をしなければいけないのか。
家屋の増強、避難、地震後の生活を見据えた準備などなどやることは多岐にわたる。今すぐ準備をしたいくらいだ。
しかし
「信じてくれるとは思えないわ。」
「・・・そうですね。しかも父上ではなく僕が言ったところで領民は信じないし動かないでしょう。」
「でもわかっているのに!このまま手をこまねいてほっておくことはできませんよ。」
ニコラがはっと何かに気が付いたように立ち上がった。
「すいません、王都に帰ります!」
「ええ?!」
「我が主、エリック殿下に掛け合ってきます!そこそこの恩は売ってありますから。お二人は申し訳ありませんが、すべきことをまとめておいていただけると嬉しいです。この屋敷のことはあなた方の言うとおりにするよう言いつけておきます。」
そういって、あわただしく馬に騎乗し王都に戻っていった。
「でもすごく苦しそうでしたよ。」
「そうね。想像していた通りだったの。大勢の人に・・・死が見えたわ。」
シャルロットはニコラを見た。ニコラは大きく目を見開いた。
「大地震が来るということですか!」
「ええ。家が崩れて下敷きになったり、家事なって炎に巻き込まれたり・・・本当に多くの人々が。」
涙声になり、シャルロットは顔を覆った。シリルのおかげで直接痛みは感じなくても、「死」は見えてしまう。それはシャルロットの心を悲しませ、傷つける。
昨日、メイドの一人に死が見えた。建物が崩れ、大きな瓦礫が頭に直撃し、倒れても誰も助けに来ず死んでいく姿だ。それを見てもしかして地震による倒壊かもしれないとニコラに話してみた。
すると、このルコント領は時折大地震に襲われ甚大な被害がでる地域であり、そのため領主の屋敷と別邸は頑丈に作られているのだと知った。
もし予想通りなら、被害はあのメイドだけにとどまらない。地震が起こるのかどうか、領民の命が危機に瀕していないかどうか街に出て確かめることになったのだ。
もし大地震が襲うなら大変なことになる、シャルロットとニコラはそれを想像して一晩、不安と焦燥感に苛まれたのだった。
大地震が来ることは確定した。しかし、それは日時まではわからない。いつも場面から類推しているのだ。今回も判っていることは暗いので夜ということ。しかしランプやろうそくの火も見えたことから就寝前でそれほど遅い時間ではないだろうこと。
期日については特定しにくい。ニコラが巻き込まれないことはわかったが、だからといってそれが王都に帰ってからからなのか、まだ領地にいる期間だが命が助かっただけなのかも判らない。
「シャルロット様の予知はいつもどのくらいの未来まで見えるのですか?」
「はっきりわからないのです。その後どうされてるのか、いつそれが起こったのかわからないことが多いですし。身近な範囲では2か月前後というところでしょうか。早い時は数日ということも。」
「今は緑の月ですから、黄の月までの間ですね。何か手がかりになるものはありませんか。飾りとか、花とか。」
「う~ん。そんな余裕がなかったですからね・・・あ、そういえば子供たちが。」
と、子供たちの死にざまを思い出して感情が乱れそうになるのを何とか押さえ込むと
「みんな緑の服を着ていましたわ。偶然?かもしれませんが。」
「!それはすごい!この地方では緑の月の15の日に子供に緑の服を着せて、お祝いをするのですよ。草花や木の葉のようなみずみずしい生命力と成長を願って。ということは・・・今から10日後です!」
日が分かったことは大進歩だ。しかし、これまでのように一人に忠告するような話ではない。大勢の領民を助けるために何をしなければいけないのか。
家屋の増強、避難、地震後の生活を見据えた準備などなどやることは多岐にわたる。今すぐ準備をしたいくらいだ。
しかし
「信じてくれるとは思えないわ。」
「・・・そうですね。しかも父上ではなく僕が言ったところで領民は信じないし動かないでしょう。」
「でもわかっているのに!このまま手をこまねいてほっておくことはできませんよ。」
ニコラがはっと何かに気が付いたように立ち上がった。
「すいません、王都に帰ります!」
「ええ?!」
「我が主、エリック殿下に掛け合ってきます!そこそこの恩は売ってありますから。お二人は申し訳ありませんが、すべきことをまとめておいていただけると嬉しいです。この屋敷のことはあなた方の言うとおりにするよう言いつけておきます。」
そういって、あわただしく馬に騎乗し王都に戻っていった。
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