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15 シリルは特別 2
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後ろ髪をひかれつつシリルは自分に与えられた部屋に戻った。
しばらくして、先ほどよりももっと覇気がなくした顔色の悪いニコラがシリルを呼びに来た。
「シャルロット様の部屋に軽い食事と飲み物を運ばせますので、召し上がってください。」
昼のワゴンに乗せたメモには、「ニコラ様が帰られるまで一切のもてなし不要。」と書かれていた。それを見て事態を知った執事やメイド長らが慌てて部屋を訪れたがシリルが応じる事がなく、半日飲まず食わずだった。それどころではない事態であったのだが。
そして、なにも食事をとっていなかったシリルはありがたく食べたが、シャルロットは手を付けなかった。
紅茶を少し口にするだけだった。
「明日、街に出ようと思うの。」
「ええ?姉上、人と会うの苦手なんじゃ?」
「ええ、馬車に乗ったまま街を見に行きたい。シリルに側についていてほしいんだけど、お願してもいい?」
「もちろんです。」
シャルロットはニコラと視線を合わせると頷いた。
「では、明日馬車を用意させます。・・・シャルロット様、本当にありがとうございます。このご恩は決して忘れません。」
そういって自室に戻っていった。
「ニコラ様は一体何をおっしゃっているんですか?」
シャルロットは大きく一度深呼吸をしシリルと向き合った。
そして自分の秘密を打ち明けた。
人の死を見てしまい、疑似体験してしまう事。
そのため、他人に会うのを避けていること。
王族らの危険を知るため、時々夜会などに参加している事。
その辛い苦しみから心を守るために、ジェラルドやニコルたちが抱きしめてくれ、それが唯一の心のよりどころになっていること。
それでも恐ろしくて眠れないときジェラルドの部屋で眠らせてもらう事。を。
それを聞いてシリルはショックを受けた。聞けば聞くほどシャルロットの抱えていた想像もしなかった重責と苦痛に胸が痛む。
シャルロットが死ぬより苦しい目にあっていたなんて、わが身を犠牲にして王族を守っているのに周囲から心ない嘲笑をうけ、人と交流することもできず楽しむこともできずただ屋敷にこもっていただなんて。
比べて自分は学院に行き、友がいて人生を自由に楽しんでいた。そして自宅にこもる姉を軽蔑し、挙句の果てに傷つけた。
「そんな・・・ずっとずっと何回も死ぬような辛い思いして・・・なのに・・・僕・・」
シリルはたまらず、シャルロットの手を握りしめて何度も何度も謝罪の言葉を口にした。
「今日メイドが来た時にも起こったの。」
「・・・うん。あの気に入らないメイドが死ぬってことなんだよね?」
「・・・うん。いつものように痛みに襲われて苦しくてもうダメって思った時・・・あなたが私を包んでくれたでしょ?・・・その時奇跡が起こったの。」
「え?僕は別に何も・・」
「貴方が触れたとたんに痛みも苦しみも恐怖も消えたの。こんなこと初めてで、どういうことかわからないけど・・・泣くほどうれしかったの。」
シャルロットはシリルの手を強く握り返した。
「ありがとう。」
シリルには全く心当たりも、何かした覚えもなかったがシャルロットが苦痛から逃れられる一助になったことがうれしかった。むしろ自分以外の誰かでなかったことを神に感謝した。
「それでちょっと確認したいことがあって・・・明日シリルについてきてほしかったの。」
「それって・・・誰かが死ぬかもしれないってことですか?」
「うん。はっきりすれば話す。迷惑かけてごめんなさい。」
「迷惑なんてとんでもない。僕がそばにいることで姉上が救われるならうれしい。・・・夜も側にいた方が?」
「多分、大丈夫。シリルのおかげだわ。」
シリルは少し残念に思った。
その夜、泣いているシャルロットを抱き寄せて慰めているニコラの姿を目撃してしまった。胸の奥が重く、痛む。苦しい時にシャルロットが助けを求めるのはニコラ。やはり二人の間には通じ合うものがあるのかもしれない。
急に態度を翻した自分に比べてニコラはずっと、シャルロットの側に寄り添っているのだから。
しばらくして、先ほどよりももっと覇気がなくした顔色の悪いニコラがシリルを呼びに来た。
「シャルロット様の部屋に軽い食事と飲み物を運ばせますので、召し上がってください。」
昼のワゴンに乗せたメモには、「ニコラ様が帰られるまで一切のもてなし不要。」と書かれていた。それを見て事態を知った執事やメイド長らが慌てて部屋を訪れたがシリルが応じる事がなく、半日飲まず食わずだった。それどころではない事態であったのだが。
そして、なにも食事をとっていなかったシリルはありがたく食べたが、シャルロットは手を付けなかった。
紅茶を少し口にするだけだった。
「明日、街に出ようと思うの。」
「ええ?姉上、人と会うの苦手なんじゃ?」
「ええ、馬車に乗ったまま街を見に行きたい。シリルに側についていてほしいんだけど、お願してもいい?」
「もちろんです。」
シャルロットはニコラと視線を合わせると頷いた。
「では、明日馬車を用意させます。・・・シャルロット様、本当にありがとうございます。このご恩は決して忘れません。」
そういって自室に戻っていった。
「ニコラ様は一体何をおっしゃっているんですか?」
シャルロットは大きく一度深呼吸をしシリルと向き合った。
そして自分の秘密を打ち明けた。
人の死を見てしまい、疑似体験してしまう事。
そのため、他人に会うのを避けていること。
王族らの危険を知るため、時々夜会などに参加している事。
その辛い苦しみから心を守るために、ジェラルドやニコルたちが抱きしめてくれ、それが唯一の心のよりどころになっていること。
それでも恐ろしくて眠れないときジェラルドの部屋で眠らせてもらう事。を。
それを聞いてシリルはショックを受けた。聞けば聞くほどシャルロットの抱えていた想像もしなかった重責と苦痛に胸が痛む。
シャルロットが死ぬより苦しい目にあっていたなんて、わが身を犠牲にして王族を守っているのに周囲から心ない嘲笑をうけ、人と交流することもできず楽しむこともできずただ屋敷にこもっていただなんて。
比べて自分は学院に行き、友がいて人生を自由に楽しんでいた。そして自宅にこもる姉を軽蔑し、挙句の果てに傷つけた。
「そんな・・・ずっとずっと何回も死ぬような辛い思いして・・・なのに・・・僕・・」
シリルはたまらず、シャルロットの手を握りしめて何度も何度も謝罪の言葉を口にした。
「今日メイドが来た時にも起こったの。」
「・・・うん。あの気に入らないメイドが死ぬってことなんだよね?」
「・・・うん。いつものように痛みに襲われて苦しくてもうダメって思った時・・・あなたが私を包んでくれたでしょ?・・・その時奇跡が起こったの。」
「え?僕は別に何も・・」
「貴方が触れたとたんに痛みも苦しみも恐怖も消えたの。こんなこと初めてで、どういうことかわからないけど・・・泣くほどうれしかったの。」
シャルロットはシリルの手を強く握り返した。
「ありがとう。」
シリルには全く心当たりも、何かした覚えもなかったがシャルロットが苦痛から逃れられる一助になったことがうれしかった。むしろ自分以外の誰かでなかったことを神に感謝した。
「それでちょっと確認したいことがあって・・・明日シリルについてきてほしかったの。」
「それって・・・誰かが死ぬかもしれないってことですか?」
「うん。はっきりすれば話す。迷惑かけてごめんなさい。」
「迷惑なんてとんでもない。僕がそばにいることで姉上が救われるならうれしい。・・・夜も側にいた方が?」
「多分、大丈夫。シリルのおかげだわ。」
シリルは少し残念に思った。
その夜、泣いているシャルロットを抱き寄せて慰めているニコラの姿を目撃してしまった。胸の奥が重く、痛む。苦しい時にシャルロットが助けを求めるのはニコラ。やはり二人の間には通じ合うものがあるのかもしれない。
急に態度を翻した自分に比べてニコラはずっと、シャルロットの側に寄り添っているのだから。
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