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14 シリルは特別 1
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「姉上!!」
王宮の夜会での発作と同じだった。
どうしたら・・・一瞬、動揺したが父親のしていることを思い出した。
力いっぱいシャルロットを抱きしめ、大丈夫だと背中をさすった。
「・・・・え?」
シャルロットが驚いたように顔を上げてシリルを見た。
「噓でしょ・・・」
「姉上、大丈夫ですか?すぐに医者を呼んでもらいます!」
「お医者様は必要ないわ。それよりもあなた・・・どういうこと?」
シリルが抱きしめてくれたとたん、触れ合った場所から暖かい光のようなものが流れ込み、痛みや恐怖を一気に消し去ってくれたのだ。いつもはもっと長時間苦しみ、痛みが取れても恐怖や不安はいつまでもくすぶっていた。それが今はすぐに楽になった。
シャルロットは身を離すとシリルの手を包みぎゅっと握ると、シリルを涙で潤んだ瞳で見つめた。
シリルの方はどぎまぎして言われてることが頭に入らなかった。姉上も僕の事好きとか・・・と見当違いのことで胸を高鳴らせていた。
いや、と、我に返ると
「あ、姉上、本当に医者は呼ばなくていいのですか?ひどい苦し・・・」
再び、今度はシャルロットの手がシリルの体に回された。
「お願い・・・もうしばらくこうさせて。」
「・・・はい」
シリルはゆっくりと背中をさすった。撫でながら、メイドが入ってきたとたんに発作が起きたことに思い当たった。シャルロットが人を異常なほど避けるのは、発作と関係があるのだろう。
なぜ、あのメイドらは入ってきたのだ。あのニコラがそんな指示をするはずがない。主人がいないからと勝手をしたか。おかげでシャルロットが苦しむことになった。
いら立ちは募るが、今回の発作は軽く済んだようですぐに落ち着いてくれた。
「ありがとう、もう大丈夫。でも少し休むわ。」
青い顔をしてベッドに向かった。
ベッドに横になったシャルロットの手を握った。
「こうしててもいい?」
「・・・ほっとするわ、ありがとう。」
しばらく見守っていたが、眠りについたのを見届けると机に向かい何か書きつけた。そしてワゴンに乗せると、食事や飲み物にも一切手を付けず廊下に出した。その後は誰も入れないように内鍵をかけた。
その後何度かノックがあったようだがすべて放置し、シリルはシャルロットのそばについていた。
少し日が陰るころ、目を覚ましたシャルロットはシリルに詫びた。そしてつながれたままの手を見て、ぎゅっと握り返した。
「・・・姉上。」
「貴方のおかげでよく眠れたわ。」
「もう頭痛くない?」
「ええ。」
しかし、顔色は悪いままだった。
「ニコラ様はまだお戻りになってない?」
「まだです。姉上、メイドを見て倒れましたよね。」
シャルロットはびくっとつないでいた手を揺らした。
「・・・今晩、ゆっくり話を聞いてくれる?先にニコラ様とお話したいことがあるの。」
「はい。」
ニコラの後かと少々ムッとしたが、ようやく話をしてくれそうだと胸のもやもやがとれそうな気分だった。
しばらくして扉が強めに叩かれた。
「シャルロット様、シリル様!私です、ニコラです。大変な粗相をいたしまして申し訳ありません!」
シリルは鍵を開けてニコラを受け入れた。
「メイドが部屋に入ったと執事に聞きました。そのあと食事もお茶もご遠慮されていると。本当に申し訳ありません、もしかしてシャルロット様に何か・・・」
「・・・ええ。まだ横になっていますが、こちらに呼んできます。」
ニコラは顔を辛そうにしかめた。
シリルに手を引かれてソファーに座るシャルロットにニコラは頭を下げて謝罪した。
しかしシャルロットはそんなことはどうでもいいというふうに、ニコラを見つめた。
「それよりもニコラ様はご無事みたい・・・ということは・・・ああ、ニコラ様、内密でお話したいことがあります。」
王宮の夜会での発作と同じだった。
どうしたら・・・一瞬、動揺したが父親のしていることを思い出した。
力いっぱいシャルロットを抱きしめ、大丈夫だと背中をさすった。
「・・・・え?」
シャルロットが驚いたように顔を上げてシリルを見た。
「噓でしょ・・・」
「姉上、大丈夫ですか?すぐに医者を呼んでもらいます!」
「お医者様は必要ないわ。それよりもあなた・・・どういうこと?」
シリルが抱きしめてくれたとたん、触れ合った場所から暖かい光のようなものが流れ込み、痛みや恐怖を一気に消し去ってくれたのだ。いつもはもっと長時間苦しみ、痛みが取れても恐怖や不安はいつまでもくすぶっていた。それが今はすぐに楽になった。
シャルロットは身を離すとシリルの手を包みぎゅっと握ると、シリルを涙で潤んだ瞳で見つめた。
シリルの方はどぎまぎして言われてることが頭に入らなかった。姉上も僕の事好きとか・・・と見当違いのことで胸を高鳴らせていた。
いや、と、我に返ると
「あ、姉上、本当に医者は呼ばなくていいのですか?ひどい苦し・・・」
再び、今度はシャルロットの手がシリルの体に回された。
「お願い・・・もうしばらくこうさせて。」
「・・・はい」
シリルはゆっくりと背中をさすった。撫でながら、メイドが入ってきたとたんに発作が起きたことに思い当たった。シャルロットが人を異常なほど避けるのは、発作と関係があるのだろう。
なぜ、あのメイドらは入ってきたのだ。あのニコラがそんな指示をするはずがない。主人がいないからと勝手をしたか。おかげでシャルロットが苦しむことになった。
いら立ちは募るが、今回の発作は軽く済んだようですぐに落ち着いてくれた。
「ありがとう、もう大丈夫。でも少し休むわ。」
青い顔をしてベッドに向かった。
ベッドに横になったシャルロットの手を握った。
「こうしててもいい?」
「・・・ほっとするわ、ありがとう。」
しばらく見守っていたが、眠りについたのを見届けると机に向かい何か書きつけた。そしてワゴンに乗せると、食事や飲み物にも一切手を付けず廊下に出した。その後は誰も入れないように内鍵をかけた。
その後何度かノックがあったようだがすべて放置し、シリルはシャルロットのそばについていた。
少し日が陰るころ、目を覚ましたシャルロットはシリルに詫びた。そしてつながれたままの手を見て、ぎゅっと握り返した。
「・・・姉上。」
「貴方のおかげでよく眠れたわ。」
「もう頭痛くない?」
「ええ。」
しかし、顔色は悪いままだった。
「ニコラ様はまだお戻りになってない?」
「まだです。姉上、メイドを見て倒れましたよね。」
シャルロットはびくっとつないでいた手を揺らした。
「・・・今晩、ゆっくり話を聞いてくれる?先にニコラ様とお話したいことがあるの。」
「はい。」
ニコラの後かと少々ムッとしたが、ようやく話をしてくれそうだと胸のもやもやがとれそうな気分だった。
しばらくして扉が強めに叩かれた。
「シャルロット様、シリル様!私です、ニコラです。大変な粗相をいたしまして申し訳ありません!」
シリルは鍵を開けてニコラを受け入れた。
「メイドが部屋に入ったと執事に聞きました。そのあと食事もお茶もご遠慮されていると。本当に申し訳ありません、もしかしてシャルロット様に何か・・・」
「・・・ええ。まだ横になっていますが、こちらに呼んできます。」
ニコラは顔を辛そうにしかめた。
シリルに手を引かれてソファーに座るシャルロットにニコラは頭を下げて謝罪した。
しかしシャルロットはそんなことはどうでもいいというふうに、ニコラを見つめた。
「それよりもニコラ様はご無事みたい・・・ということは・・・ああ、ニコラ様、内密でお話したいことがあります。」
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