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番外編 一度目の世界 2
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その後、女は聖なる力を持つ血を持ってきて聖獣に与えた。
すると、清らかな魔力が体に流れ込んできた。体中に力が漲り、気持ちよくてこの魔力の持ち主の側に行きたい。ずっと側にいたい、そんな本能が体をさいなむ。目の前の女と契約した時にはない感覚だった。
「どう?お前には聖なる力の持ち主とも契約を結ばせてやったわ。感謝しなさい。その礼に巡ってきた魔力は私に戻しなさい。」
聖獣にはおそらく捕らえられているであろう者から聖なる力が流れてきてしまう、そして聖獣の体を巡った魔力は女に渡される。申し子の命を盾に、そして無理やり結ばされた女との契約の為に聖獣は言われるがままにするしかなかった。
中途半端な契約、それも申し子の側にいることがかなわない不十分なもの。聖なる魔力の供給は微々たるものだった。また聖獣自身が女に怒りを抱き、この現状を許せなかったことも一因で、聖獣が成獣になるまでに3年もの月日を要した。
その結果が・・・目の前でボロボロにされている申し子の姿だった。
竜は空に向かって咆哮すると、翼を広げて風を起こし、口から炎を吐き少女に剣を突き立てている騎士たち、周りを囲む騎士たちを吹き飛ばし炎で燃やし尽くした。
怒りを抑えられない。その怒りで正気を失った竜は森を燃やした。そして翼を広げ飛び立つと初めて街の方へ向かった。
初代国王に、初めて契約した国王に、国民の前に姿を見せないで欲しいと頼まれ森の奥深くにいた聖獣。初めて空の高みからみた街は竜にはちっぽけなものに見えた。
何も考えることはできなかった、聖獣は街を燃やし、風を起こして破壊し、王宮も、美しい街並みもあっという間に瓦礫と化した。
少女に剣を突き立てる役目を騎士にさせている間、女はその場から離れていた。そして遠くから、街が破壊されるのを、人族が殺されていくのを見た。
この国の民が憎かった。あの男が作ったこの国が憎くて憎くてたまらなかった。やっと無茶苦茶にしてやることができた。
しかし、この虚無感は何だ?聖獣に人族を殺させても気は晴れなかった。これではだめだったのか?自分の手でやるべきだったのか?
前世が魔族だった女はこの目でこの国が滅びるのを見るために、ここまでやってきた。それなのに・・・
ふと見上げると、国中を蹂躙しに飛び立った聖獣が宙に浮いてこちらを見ていた。
正気を失い、名を授けていない仮の契約など意味をなさなかった。女を守るという使命は欠片も頭に残っていない聖獣は女に向かって火を吐いた。
ルーナ国を燃やし尽くし、燃えあとに立ち尽くす竜のもとに、赤く燃える強大な鳥、金に輝く大きな獅子、真っ黒い巨大竜が現れた。
1000年も前に神の国から連れ去られた聖獣、この所業で神の国にその所在がようやく明らかになったのだ。
迎えに来た聖獣達は、魔力でつながった申し子を失い、力を使い果たして弱り切った哀れな聖獣を見て首を横に振った。
「消えゆく前に、望みはあるか?哀れな子よ。」
「・・・僕の・・・申し子に会いたかった。あの子を守りたかった。」
3体の聖獣は顔を見合わせた後
「・・・。そなたの願い、叶えてやろう。待つがいい」
と、応えた。その瞬間、まばゆい光に包まれ空間が揺らいだ。
聖獣が気が付いた時、元の光り輝く鳥の姿に戻りあの森の中にいた。
ここで待っていたら彼女に出会える。
あとどのくらい待つのかわからない。1000年も一人で過ごしたのだ、あと数年くらい瞬きくらいの時間だ。
後にケルンと呼ばれることになる聖獣は、前回は一度も会えなかった彼女に会えるという希望を胸にしばしの眠りについた。
=========================
最後までお読みいただきありがとうございました(*´▽`*)
これからの未来の話、初代国王の話などいつか番外編を書くことがあるかもしれませんが、当初の予定通りここでいったん完結とさせていただきます。
近々、「死を見る少女と義弟の話」(変わるかも)を投稿する予定です。
好みが合いましたら読んでいただけると嬉しいです!
ありがとうございました!
すると、清らかな魔力が体に流れ込んできた。体中に力が漲り、気持ちよくてこの魔力の持ち主の側に行きたい。ずっと側にいたい、そんな本能が体をさいなむ。目の前の女と契約した時にはない感覚だった。
「どう?お前には聖なる力の持ち主とも契約を結ばせてやったわ。感謝しなさい。その礼に巡ってきた魔力は私に戻しなさい。」
聖獣にはおそらく捕らえられているであろう者から聖なる力が流れてきてしまう、そして聖獣の体を巡った魔力は女に渡される。申し子の命を盾に、そして無理やり結ばされた女との契約の為に聖獣は言われるがままにするしかなかった。
中途半端な契約、それも申し子の側にいることがかなわない不十分なもの。聖なる魔力の供給は微々たるものだった。また聖獣自身が女に怒りを抱き、この現状を許せなかったことも一因で、聖獣が成獣になるまでに3年もの月日を要した。
その結果が・・・目の前でボロボロにされている申し子の姿だった。
竜は空に向かって咆哮すると、翼を広げて風を起こし、口から炎を吐き少女に剣を突き立てている騎士たち、周りを囲む騎士たちを吹き飛ばし炎で燃やし尽くした。
怒りを抑えられない。その怒りで正気を失った竜は森を燃やした。そして翼を広げ飛び立つと初めて街の方へ向かった。
初代国王に、初めて契約した国王に、国民の前に姿を見せないで欲しいと頼まれ森の奥深くにいた聖獣。初めて空の高みからみた街は竜にはちっぽけなものに見えた。
何も考えることはできなかった、聖獣は街を燃やし、風を起こして破壊し、王宮も、美しい街並みもあっという間に瓦礫と化した。
少女に剣を突き立てる役目を騎士にさせている間、女はその場から離れていた。そして遠くから、街が破壊されるのを、人族が殺されていくのを見た。
この国の民が憎かった。あの男が作ったこの国が憎くて憎くてたまらなかった。やっと無茶苦茶にしてやることができた。
しかし、この虚無感は何だ?聖獣に人族を殺させても気は晴れなかった。これではだめだったのか?自分の手でやるべきだったのか?
前世が魔族だった女はこの目でこの国が滅びるのを見るために、ここまでやってきた。それなのに・・・
ふと見上げると、国中を蹂躙しに飛び立った聖獣が宙に浮いてこちらを見ていた。
正気を失い、名を授けていない仮の契約など意味をなさなかった。女を守るという使命は欠片も頭に残っていない聖獣は女に向かって火を吐いた。
ルーナ国を燃やし尽くし、燃えあとに立ち尽くす竜のもとに、赤く燃える強大な鳥、金に輝く大きな獅子、真っ黒い巨大竜が現れた。
1000年も前に神の国から連れ去られた聖獣、この所業で神の国にその所在がようやく明らかになったのだ。
迎えに来た聖獣達は、魔力でつながった申し子を失い、力を使い果たして弱り切った哀れな聖獣を見て首を横に振った。
「消えゆく前に、望みはあるか?哀れな子よ。」
「・・・僕の・・・申し子に会いたかった。あの子を守りたかった。」
3体の聖獣は顔を見合わせた後
「・・・。そなたの願い、叶えてやろう。待つがいい」
と、応えた。その瞬間、まばゆい光に包まれ空間が揺らいだ。
聖獣が気が付いた時、元の光り輝く鳥の姿に戻りあの森の中にいた。
ここで待っていたら彼女に出会える。
あとどのくらい待つのかわからない。1000年も一人で過ごしたのだ、あと数年くらい瞬きくらいの時間だ。
後にケルンと呼ばれることになる聖獣は、前回は一度も会えなかった彼女に会えるという希望を胸にしばしの眠りについた。
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最後までお読みいただきありがとうございました(*´▽`*)
これからの未来の話、初代国王の話などいつか番外編を書くことがあるかもしれませんが、当初の予定通りここでいったん完結とさせていただきます。
近々、「死を見る少女と義弟の話」(変わるかも)を投稿する予定です。
好みが合いましたら読んでいただけると嬉しいです!
ありがとうございました!
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