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次は祖母?
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ノエルはハンナと部屋で食事を摂っていた。
「今度は前侯爵様まで・・・・このお屋敷で何がおこっているのでしょうか。」
ハンナはため息をつく。使用人たちには詳細は知らされず、ただ罪を犯し幽閉されることになったと聞かされただけだ。
セレスタンはアマリアの虐待も、前侯爵の偏った性癖も決して表ざたにしたくなかった。
「僕、怖い。僕も牢屋にいれられるのかなあ。」
ハンナはノエルを抱きしめると
「大丈夫ですよ、坊ちゃまは何もしていないのですから。」
「でも・・・母上もおじい様も牢屋にいるよ?母上もおじい様も何もしていないのに。」
「私にはわかりませんが・・・坊ちゃまは大丈夫な事だけは私が保証します!いざとなったら坊ちゃまを連れて逃げてあげますよ、だから安心してくださいね。」
「ありがとう、ハンナ。僕、ハンナ大好き。」
「私も坊ちゃまの事大好きですよ。」
「セレスタン、一体どういうことなの。お父様を幽閉するなんて・・・今更でしょう?」
母親はかつては5人で囲んでいた食卓に、自分とセレスタンしかいないことを嘆き悲しんだ。
そして次男を陥れ、殺害したことに対する罰としては今さらであり、自分たちも共犯なのだ。
妻に続き、父親までも監禁する息子に少し恐れを抱いた。
「あんな奴、父上とも思わない。」
「何があったの?」
「・・・口に出すのも汚らわしい。とにかくあの男は死ぬまで幽閉だ。どのみち、あれがばれていたら死罪だった。幽閉で済むことで感謝してもらいたい。」
「・・・セレスタン。あなたはどうなの?あなたも・・・関わっていたじゃないの。」
「わかってますよ!だからそれからは罪滅ぼしにとちゃんとやってるんじゃないですか!母上だって、リュカの事虐げていたではないですか。何も言う資格はありません。ともかく今回の事は、あれとは関係がありません。父上は病気で臥せっていることにします。いいですね!」
「わかったわ・・・」
前侯爵夫人は何も言えず黙り込んでしまった。
「ノエル、今日は一緒にご飯食べましょう?もう怖いお母様いないわ。」
前侯爵夫人はハンナと一緒に庭で遊んでいるノエルに声をかける。
ハンナは立ち上がるとスッと頭を下げる。
「もう、ハンナ途中でやめちゃ駄目だよ。ちゃんと座って続きしよう。」
「お坊ちゃま、おばあ様がいらしてますわ。」
「・・・。」
「ねえ、ノエル。」
前侯爵夫人が近づき、ハンナは控えるしかない。
「・・・もういい。僕、お部屋帰る。」
「あ、坊ちゃま!」
ハンナは頭を下げてノエルを追いかける。
ノエルは前侯爵夫人を避け、無視するようになった。
前侯爵夫人は背筋が凍るような嫌な予感がした。
次は自分?
「次」ってどういうこと・・・自分で思っておかしくなった。
アマリアの事も夫の事もそれぞれ事情があった事だ、順番に狙われているわけではないのに。
そう思ってはっとした。リュカなら・・・リュカなら私たち家族を恨んで全員に復讐するだろう。もしあの子の魂が憎しみに囚われて天に昇れずこの世にさまよっていたら・・・ああ、私にはその復讐を受け止めるしかないのだわ。そう思った。
ノエルは真夜中に庭に立っていた。
屋敷の真っ黒なシルエットを眺めていた。
奇麗に消し去ろう、サンテール家などこの世から無くしてしまえばいい。
この世界に何の未練もない、あるのは恨みだけ。生きている意味もない、苦しいだけのこの世界と記憶。
一緒に自分も消えてしまおう。
明日の夜、父も牢屋に入ってもらい、ランプの油を屋敷に撒いてすべて無に帰そう。報われなかった自分の人生の弔いの炎だ。
その光景を思い浮かべ、悲しい笑顔を浮かべた。
「坊ちゃま!どうしたのですか?!」
ハンナが走ってきて、冷え切った体に温かいブランケットをかけてくれた。
「・・・どうして?」
「お夕食時、元気がなかったように思いました。だから心配で気にかけていたのです。」
「そっか・・・ハンナは優しいね。」
「坊ちゃまの事大好きですから!前も言いましたけど、悩みがあったら私にお話しくださいね。何もできないかもしれないけど一緒に頑張れますから。」
「ハンナ。」
ハンナはノエルを抱きしめ、
「屋敷に戻りましょう。暖かいココアお入れします。」
「うん。ありがとう。」
「今度は前侯爵様まで・・・・このお屋敷で何がおこっているのでしょうか。」
ハンナはため息をつく。使用人たちには詳細は知らされず、ただ罪を犯し幽閉されることになったと聞かされただけだ。
セレスタンはアマリアの虐待も、前侯爵の偏った性癖も決して表ざたにしたくなかった。
「僕、怖い。僕も牢屋にいれられるのかなあ。」
ハンナはノエルを抱きしめると
「大丈夫ですよ、坊ちゃまは何もしていないのですから。」
「でも・・・母上もおじい様も牢屋にいるよ?母上もおじい様も何もしていないのに。」
「私にはわかりませんが・・・坊ちゃまは大丈夫な事だけは私が保証します!いざとなったら坊ちゃまを連れて逃げてあげますよ、だから安心してくださいね。」
「ありがとう、ハンナ。僕、ハンナ大好き。」
「私も坊ちゃまの事大好きですよ。」
「セレスタン、一体どういうことなの。お父様を幽閉するなんて・・・今更でしょう?」
母親はかつては5人で囲んでいた食卓に、自分とセレスタンしかいないことを嘆き悲しんだ。
そして次男を陥れ、殺害したことに対する罰としては今さらであり、自分たちも共犯なのだ。
妻に続き、父親までも監禁する息子に少し恐れを抱いた。
「あんな奴、父上とも思わない。」
「何があったの?」
「・・・口に出すのも汚らわしい。とにかくあの男は死ぬまで幽閉だ。どのみち、あれがばれていたら死罪だった。幽閉で済むことで感謝してもらいたい。」
「・・・セレスタン。あなたはどうなの?あなたも・・・関わっていたじゃないの。」
「わかってますよ!だからそれからは罪滅ぼしにとちゃんとやってるんじゃないですか!母上だって、リュカの事虐げていたではないですか。何も言う資格はありません。ともかく今回の事は、あれとは関係がありません。父上は病気で臥せっていることにします。いいですね!」
「わかったわ・・・」
前侯爵夫人は何も言えず黙り込んでしまった。
「ノエル、今日は一緒にご飯食べましょう?もう怖いお母様いないわ。」
前侯爵夫人はハンナと一緒に庭で遊んでいるノエルに声をかける。
ハンナは立ち上がるとスッと頭を下げる。
「もう、ハンナ途中でやめちゃ駄目だよ。ちゃんと座って続きしよう。」
「お坊ちゃま、おばあ様がいらしてますわ。」
「・・・。」
「ねえ、ノエル。」
前侯爵夫人が近づき、ハンナは控えるしかない。
「・・・もういい。僕、お部屋帰る。」
「あ、坊ちゃま!」
ハンナは頭を下げてノエルを追いかける。
ノエルは前侯爵夫人を避け、無視するようになった。
前侯爵夫人は背筋が凍るような嫌な予感がした。
次は自分?
「次」ってどういうこと・・・自分で思っておかしくなった。
アマリアの事も夫の事もそれぞれ事情があった事だ、順番に狙われているわけではないのに。
そう思ってはっとした。リュカなら・・・リュカなら私たち家族を恨んで全員に復讐するだろう。もしあの子の魂が憎しみに囚われて天に昇れずこの世にさまよっていたら・・・ああ、私にはその復讐を受け止めるしかないのだわ。そう思った。
ノエルは真夜中に庭に立っていた。
屋敷の真っ黒なシルエットを眺めていた。
奇麗に消し去ろう、サンテール家などこの世から無くしてしまえばいい。
この世界に何の未練もない、あるのは恨みだけ。生きている意味もない、苦しいだけのこの世界と記憶。
一緒に自分も消えてしまおう。
明日の夜、父も牢屋に入ってもらい、ランプの油を屋敷に撒いてすべて無に帰そう。報われなかった自分の人生の弔いの炎だ。
その光景を思い浮かべ、悲しい笑顔を浮かべた。
「坊ちゃま!どうしたのですか?!」
ハンナが走ってきて、冷え切った体に温かいブランケットをかけてくれた。
「・・・どうして?」
「お夕食時、元気がなかったように思いました。だから心配で気にかけていたのです。」
「そっか・・・ハンナは優しいね。」
「坊ちゃまの事大好きですから!前も言いましたけど、悩みがあったら私にお話しくださいね。何もできないかもしれないけど一緒に頑張れますから。」
「ハンナ。」
ハンナはノエルを抱きしめ、
「屋敷に戻りましょう。暖かいココアお入れします。」
「うん。ありがとう。」
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