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続編
3 嫉妬か警戒か
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エドヴァルドの執務中、赤ん坊時代のカティは寝かされていたがもう15歳。ただじっとそこにいると仕事の邪魔になる。
何かお手伝いをしたくとも自分は何もできない事に気が付いた。
令嬢としてのマナーや歴史、簡単な執務などは勉強していたがエドヴァルドを支えるための知識など全くない。
(有能な公爵の夫人が無能・・・そう後ろ指、指されることが目に浮かんじゃう。またしてもとう様の汚点になる私。)
がっくりと肩を落とす。
だが、はっと思い出す。
忌まわしい夢だったが先日、遠足の夢を見たことで学校の存在を思い出した。
「そうだ学校!この世界の学校はたしか14歳か15歳から3年間学院に通うとかだったっけ?」
もっと幼少期からのが学園もあるが貴族子女はそれまでは家庭教師について学ぶことが多い。そして学院に入り、将来に関係する学科を専門に学ぶ。
騎士科や経営科、高位貴族が執務を学ぶ貴族院科などあるらしい。知らんけど。
「じゃあ、私が貴族院科にいけばとう様の力になれるかも!あ、ヴィーが貴族院だったと言っていたような・・・。今度、父上様に聞いてみよう。」
今度国王に会う時に貴族院について詳しく聞いてみようと思いながら、まずエドヴァルドにも話をした。
そして、即エドヴァルドに却下される。
「学院など必要ない。」
「執務の事は父上様が派遣してくれた文官にほとんどお任せしてたの。レオや執事が助けてくれてから私は全然勉強していなくて・・・とう様のお手伝いしたいの。」
「確かに公爵夫人として学ばねばならないことはたくさんある。だが、家庭教師をつけるか私が教えれば十分だ。」
「でも私ちょっと、ちょっとなんですけれども・・・お勉強が苦手で。学院で一から十まで教えてもらわないと無理かも。」
「学院など、有象無象の貴族子息が集まっている。しかも貴族院科など・・・そのようなところにお前を一人で行かせるわけにはいかない。」
「え?」
「お前はただでさえ人の耳目を集めているのだ。それが学院でともに時間を共有するとお前の面白さが・・いや、素晴らしさに皆が気が付いてしまう。」
「今、面白さって・・・」
「そうすると私が困るのだ。」
そう言ってカティの言葉を遮るようにカティの手を取り指先にキスをする。カティは抗議をしようとしていたがポンと吹っ飛んでしまう。
「ううっ・・」
「分かってくれたか?」
「で、でも、とう様に恥を・・・」
「カティ様、お忘れですか?死人が出ます。」
こそっとレオがカティに耳打ちする。
そうだった!
婚約が決まった時に、カティの不用意な一言のせいでレオが危うく殺られる所だったことを思い出す。そう言えば、今も王宮でしばしば冷気を放っている。
学院で万が一、令息と親しくなれば、その相手がどんな目に合うかわからない。
「・・・学院は止めておきます。」
「ああ、代わりに家庭教師を手配しよう。私も教えるから心配するな。」
そう言って、エドヴァルドは満足したようにカティの頭にキスをした。
レオは、若い令息たちが巻きこまれずに済んだことにホッとしたのだった。
こうして一つの問題が片付いたが、もう一つの問題にレオはまた巻き込まれていた。
養女になったカティを、親子の交流と称して両陛下が思い思いに城へと招きたがるようになったのだ。
家族団らんだからと食事に誘い、庭に花が咲いたと誘い、ドレスを贈りたいと誘い、また他国のお菓子が手に入ったと誘い・・・頻繁に王宮に呼び出されるようになったカティ。それを不服に思うエドヴァルド。
「カティ、今日は外務大臣が異国の珍しい菓子を届けてくれたのだ。カティと一緒に食べようと楽しみでな。」
輪になったお菓子がテーブルに置かれている。
(バウムクーヘン!!)
「これは『樹木の一片(ひとひら)』というケーキで、手間がかかりなかなか入手困難らしい。」
「うわあ!嬉しい!父上様、ありがとうございます!まさかこのお菓子が食べられるなんて!」
大喜びのカティに大満足の国王。
「なんと。カティはこの菓子を知っているのか。ではまた大臣に申し付けておくからな。すぐに連絡するから来ておくれ。」
「はい!」
嬉しそうにお菓子を食べ、国王と楽しそうに話をしているカティの横で無表情で静かに紅茶を飲むエドヴァルドから冷気がひそかに滲み出ている。
「エドヴァルド、お主は忙しいであろう。カティは後で送り届けるゆえ、先に戻るがいい。今日はゆっくり親子水入らずで過ごそうな、カティ。」
エドヴァルドの冷気に気が付きながらわざわざ、怒らせるようなことをいう。
国王は毎回カティだけを招待するのに、エドヴァルドが必ず付き添ってくるのだ。恐ろしいお目つき役のせいでゆっくり自由にカティを愛でることが出来ない国王は何とか追い返そうとする。
「お言葉ですが、陛下。カティは私の婚約者でございます、カティを一人にするような薄情者ではありません。私は喜んでお暇させていただきますが、カティも一緒です。」
それに対して、エドヴァルドは婚約者に付き添うのは当然のことであると気にも留めず、二人の間にはいつも火花が散っている。
しかし、レオが困っているのは二人のいさかいではなかった。それだけならエドヴァルドと国王に勝手にさせておけばいい。
国王と別れて部屋を出たとたんエドヴァウドはカティを立て抱きに抱える。
「とう様、恥ずかしいから降ろしてほしい・・・」
「カティも知っているだろう。王宮は魑魅魍魎が運びこる危険な場所だ。」
エドヴァルドがいない時もしょっちゅう王宮に通っていたのだから、今ではカティの方が王宮について詳しい位だ。
だから今の王宮に危険がないことぐらいよく知っている。
「危険な事ないよ?」
「気が付いていないだけだ。私に任せておけばいい。」
何を言ってもエドヴァルドは降ろさずカティを抱いたまま厳しい顔つきで王宮内を歩く。カティは恥ずかしくて顔を伏せるようにエドヴァルドにしがみつくしかない。
カティが登城する度に、すれ違う男性たちの視線がカティに向くことにエドヴァルドは苛立ち、冷気を飛ばしまくっているのだ。嫉妬からなのか、前世の件から警戒しているのか。
挙句、牽制のため王宮内ではカティを抱えて歩くようになった。
それが恥ずかしくて嫌がるカティが王宮に行きたくないと言い始めたのだ。
そしてそれに憤った国王が、エドヴァルドに苦言を呈すが全く聞き入れず、レオにエドヴァルドを何とかしろと命がくだったのだ。
「私は何に巻き込まれているのだ、いったい・・・。」
「エドヴァルド様、カティ様の過去の件があるから、警戒されるのも無理はありませんが、カティ様にかなうものはこの国にはおりません。ご自分の身は守れますよ。」
「カティとて令嬢だ。何があるかわからぬ。」
エドヴァルドは首を振る。
「カティは私がいない間、ずいぶんと王宮に知り合いができたようだな。」
「ヴィクトル殿下や両陛下が気にかけてくださいましたので、王宮に出向くことも多くございました。」
「奴らがカティとすれ違うたびに目礼し、カティが笑顔で挨拶をするのが気に入らぬ。」
(・・・嫉妬だった。)
初めてエドヴァルドが執着したのがカティだ。凍え切ったエドヴァルドの心に人の温かさを与えてくれたカティを慈しみ溺愛している。
今までにない独占欲を目にして、レオはエドヴァルドの説得をあきらめた。
その代わりカティの方に、エドヴァルドも行方不明になったことで心に傷を負っており、それを癒すためにはカティが必要だと虚言を混ぜつつ泣き落としをした。
純粋なカティはコクコクとうなづきエドヴァルドのためならとそれ以降、エドヴァルドに抱えられての移動に文句を言わず、笑顔で首に手をまわすようになった。
レオはミッションをクリアし、エドヴァルドと国王双方から褒美をもらうのだった。
何かお手伝いをしたくとも自分は何もできない事に気が付いた。
令嬢としてのマナーや歴史、簡単な執務などは勉強していたがエドヴァルドを支えるための知識など全くない。
(有能な公爵の夫人が無能・・・そう後ろ指、指されることが目に浮かんじゃう。またしてもとう様の汚点になる私。)
がっくりと肩を落とす。
だが、はっと思い出す。
忌まわしい夢だったが先日、遠足の夢を見たことで学校の存在を思い出した。
「そうだ学校!この世界の学校はたしか14歳か15歳から3年間学院に通うとかだったっけ?」
もっと幼少期からのが学園もあるが貴族子女はそれまでは家庭教師について学ぶことが多い。そして学院に入り、将来に関係する学科を専門に学ぶ。
騎士科や経営科、高位貴族が執務を学ぶ貴族院科などあるらしい。知らんけど。
「じゃあ、私が貴族院科にいけばとう様の力になれるかも!あ、ヴィーが貴族院だったと言っていたような・・・。今度、父上様に聞いてみよう。」
今度国王に会う時に貴族院について詳しく聞いてみようと思いながら、まずエドヴァルドにも話をした。
そして、即エドヴァルドに却下される。
「学院など必要ない。」
「執務の事は父上様が派遣してくれた文官にほとんどお任せしてたの。レオや執事が助けてくれてから私は全然勉強していなくて・・・とう様のお手伝いしたいの。」
「確かに公爵夫人として学ばねばならないことはたくさんある。だが、家庭教師をつけるか私が教えれば十分だ。」
「でも私ちょっと、ちょっとなんですけれども・・・お勉強が苦手で。学院で一から十まで教えてもらわないと無理かも。」
「学院など、有象無象の貴族子息が集まっている。しかも貴族院科など・・・そのようなところにお前を一人で行かせるわけにはいかない。」
「え?」
「お前はただでさえ人の耳目を集めているのだ。それが学院でともに時間を共有するとお前の面白さが・・いや、素晴らしさに皆が気が付いてしまう。」
「今、面白さって・・・」
「そうすると私が困るのだ。」
そう言ってカティの言葉を遮るようにカティの手を取り指先にキスをする。カティは抗議をしようとしていたがポンと吹っ飛んでしまう。
「ううっ・・」
「分かってくれたか?」
「で、でも、とう様に恥を・・・」
「カティ様、お忘れですか?死人が出ます。」
こそっとレオがカティに耳打ちする。
そうだった!
婚約が決まった時に、カティの不用意な一言のせいでレオが危うく殺られる所だったことを思い出す。そう言えば、今も王宮でしばしば冷気を放っている。
学院で万が一、令息と親しくなれば、その相手がどんな目に合うかわからない。
「・・・学院は止めておきます。」
「ああ、代わりに家庭教師を手配しよう。私も教えるから心配するな。」
そう言って、エドヴァルドは満足したようにカティの頭にキスをした。
レオは、若い令息たちが巻きこまれずに済んだことにホッとしたのだった。
こうして一つの問題が片付いたが、もう一つの問題にレオはまた巻き込まれていた。
養女になったカティを、親子の交流と称して両陛下が思い思いに城へと招きたがるようになったのだ。
家族団らんだからと食事に誘い、庭に花が咲いたと誘い、ドレスを贈りたいと誘い、また他国のお菓子が手に入ったと誘い・・・頻繁に王宮に呼び出されるようになったカティ。それを不服に思うエドヴァルド。
「カティ、今日は外務大臣が異国の珍しい菓子を届けてくれたのだ。カティと一緒に食べようと楽しみでな。」
輪になったお菓子がテーブルに置かれている。
(バウムクーヘン!!)
「これは『樹木の一片(ひとひら)』というケーキで、手間がかかりなかなか入手困難らしい。」
「うわあ!嬉しい!父上様、ありがとうございます!まさかこのお菓子が食べられるなんて!」
大喜びのカティに大満足の国王。
「なんと。カティはこの菓子を知っているのか。ではまた大臣に申し付けておくからな。すぐに連絡するから来ておくれ。」
「はい!」
嬉しそうにお菓子を食べ、国王と楽しそうに話をしているカティの横で無表情で静かに紅茶を飲むエドヴァルドから冷気がひそかに滲み出ている。
「エドヴァルド、お主は忙しいであろう。カティは後で送り届けるゆえ、先に戻るがいい。今日はゆっくり親子水入らずで過ごそうな、カティ。」
エドヴァルドの冷気に気が付きながらわざわざ、怒らせるようなことをいう。
国王は毎回カティだけを招待するのに、エドヴァルドが必ず付き添ってくるのだ。恐ろしいお目つき役のせいでゆっくり自由にカティを愛でることが出来ない国王は何とか追い返そうとする。
「お言葉ですが、陛下。カティは私の婚約者でございます、カティを一人にするような薄情者ではありません。私は喜んでお暇させていただきますが、カティも一緒です。」
それに対して、エドヴァルドは婚約者に付き添うのは当然のことであると気にも留めず、二人の間にはいつも火花が散っている。
しかし、レオが困っているのは二人のいさかいではなかった。それだけならエドヴァルドと国王に勝手にさせておけばいい。
国王と別れて部屋を出たとたんエドヴァウドはカティを立て抱きに抱える。
「とう様、恥ずかしいから降ろしてほしい・・・」
「カティも知っているだろう。王宮は魑魅魍魎が運びこる危険な場所だ。」
エドヴァルドがいない時もしょっちゅう王宮に通っていたのだから、今ではカティの方が王宮について詳しい位だ。
だから今の王宮に危険がないことぐらいよく知っている。
「危険な事ないよ?」
「気が付いていないだけだ。私に任せておけばいい。」
何を言ってもエドヴァルドは降ろさずカティを抱いたまま厳しい顔つきで王宮内を歩く。カティは恥ずかしくて顔を伏せるようにエドヴァルドにしがみつくしかない。
カティが登城する度に、すれ違う男性たちの視線がカティに向くことにエドヴァルドは苛立ち、冷気を飛ばしまくっているのだ。嫉妬からなのか、前世の件から警戒しているのか。
挙句、牽制のため王宮内ではカティを抱えて歩くようになった。
それが恥ずかしくて嫌がるカティが王宮に行きたくないと言い始めたのだ。
そしてそれに憤った国王が、エドヴァルドに苦言を呈すが全く聞き入れず、レオにエドヴァルドを何とかしろと命がくだったのだ。
「私は何に巻き込まれているのだ、いったい・・・。」
「エドヴァルド様、カティ様の過去の件があるから、警戒されるのも無理はありませんが、カティ様にかなうものはこの国にはおりません。ご自分の身は守れますよ。」
「カティとて令嬢だ。何があるかわからぬ。」
エドヴァルドは首を振る。
「カティは私がいない間、ずいぶんと王宮に知り合いができたようだな。」
「ヴィクトル殿下や両陛下が気にかけてくださいましたので、王宮に出向くことも多くございました。」
「奴らがカティとすれ違うたびに目礼し、カティが笑顔で挨拶をするのが気に入らぬ。」
(・・・嫉妬だった。)
初めてエドヴァルドが執着したのがカティだ。凍え切ったエドヴァルドの心に人の温かさを与えてくれたカティを慈しみ溺愛している。
今までにない独占欲を目にして、レオはエドヴァルドの説得をあきらめた。
その代わりカティの方に、エドヴァルドも行方不明になったことで心に傷を負っており、それを癒すためにはカティが必要だと虚言を混ぜつつ泣き落としをした。
純粋なカティはコクコクとうなづきエドヴァルドのためならとそれ以降、エドヴァルドに抱えられての移動に文句を言わず、笑顔で首に手をまわすようになった。
レオはミッションをクリアし、エドヴァルドと国王双方から褒美をもらうのだった。
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