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グランドフィナーレ
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「さあさあ、カティちゃん。こちらへいらっしゃい。」
王妃が笑顔でカティを手招き、抱きしめてくれる。
今日は養女に迎えていただいた国王夫妻にお礼とご挨拶に伺った。
「いえ、もう娘なのだからカティと呼ばせてもらうわ。あなたが娘になってくれて嬉しい、私の事はお母さまと呼んでくれればいいのよ。」
「そうだな、わしのことはとう様と呼ぶといい。ほら、娘や、わしにも挨拶を。」
そう言って国王が両手を広げて待っている。
(こ、これは・・・行くしかないよね。)
「陛下と王妃様に養女に迎えていただいてとても嬉しいです。これまでもずっと親代わりをしてくださって・・・本当の家族になることが出来て嬉しいです、ありがとうございます。」
そう言って国王を抱擁しようとしたとき、後ろから抱き込まれた。
「ぬ!エドヴァルド、親子の抱擁をなぜとめる。」
「狭量ゆえお許しください。」
エドヴァルドの表情筋は、今日は全面休業のようで一切仕事をしていない。
「カティ、今度は一人(・・)で実家(・・)(王宮)に帰ってくると良い。とう(・・)様(・)は楽しみに待っているよ。」
「カティ、陛下の事はこれまで通り陛下で良い。不敬に当たるからな。」
「はい。」
「何をいっとる。お前が不在の間はわしが親も同然だったのだ。ようやく親になったのだからとう様で良い。のう?カティ。」
「はい、陛下には親代わりに大変支えていただきました。ですが、とう様はとう様の名前ですので、陛下の事は恐れ多くも父上様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか。」
「そういうことです、陛下。」
エドヴァルドの機嫌のよさそうな姿を見て
(間違ってなかった!)
とほっとした。うっかり「はい、とう様とお呼びします!」と言おうものなら陛下のおひげが凍っていたかもしれない。
「むう~。残念だが、しかたなかろう。また公爵邸の方にも遊びに行くからな。これは親として可愛い娘の幸せを見守るためだから断るなよ。」
「・・・そこは譲歩いたしましょう。」
こうしてお礼とご挨拶、婚約者と両親の微妙な顔合わせは無事終わった。
そして今日は婚約パーティ。
といっても公爵家当主の婚約パーティにしてはかなり小さく、当事者と公爵邸の使用人だけのささやかなパーティだ。
しかしどこからか聞きつけた両陛下がちゃっかりと参加している。ヴィクトルも旅立つ前にと顔を出してくれた。
ふと気が付くと元子爵もきちんと礼服を着て見守ってくれていた。皆に気を遣って端っこにいたが、それでも嬉しそうに笑っている。カティは嬉しくてじいじに手を振った。
婚約式の事を伝えに行ったとき、元子爵はカティとの縁を切ろうとしたのだ。
「じいじ~。」
カティは元子爵のもとを訪ねた。
「カティ様!ご婚約おめでとうございます。」
「・・・ありがとう。とう様と・・・婚約することになっちゃったの。」
恥ずかしそうにうつむいた。
「本当に喜ばしいことです。カティ様が幸せになる、それが私の望みでした。こんなに嬉しいことはありません。」
元子爵は涙ぐむ。
「それでね、お屋敷の皆だけで婚約パーティをするの。じいじも来てね。」
「カティ様、いえ次期公爵夫人・・・私は参加することは出来ません。それにもうこのように一人でこちらに来てはなりません。これまでありがとうございました。私はこれからも遠くからあなたを見守っています。」
「どうしてそんなこと言うの?!じいじはずっとじいじだよ。」
「これまではお目こぼしいただいていただけでございます。私のようなものが公爵夫人のお側にいてはカティ様の瑕疵になります。」
「ならないよ、ならない!じいじがいなかったら、とう様がいなくなった時耐えられなかった!じいじは私の命の恩人なの!」
わ~んとじいじに抱きついて泣く。
思わず元子爵はカティの身体を抱き寄せる。
「すまん、すまんな・・・でも、弁えないといけないんだ。」
「構わん。」
ふいにエドヴァルドの声がした。
「エドヴァルド様、申し訳ありません!」
元子爵はカティから離れた。
「この十三年間カティに寄り添い守ってくれたことに感謝する。婚約パーティは屋敷の者は全員参加だ、衣装も用意をさせるゆえ参加してくれ。」
「本当に・・・もったいないお言葉でございます。」
元子爵はエドヴァルドに頭を下げた。
これまで悲しみ、苦しみの方が多い人生だった孫がようやく本当に幸せになる。エドヴァルドなら、いやエドヴァルドしかカティを心から笑顔にすることは出来ないだろう。
今日、真っ赤な顔してエドヴァルドに抱えられたカティが手を振ってくれるのを見てそう思った。
広間では、他にもミンミもレオも好敵手である料理長も護衛たちもみんな笑顔で見守ってくれている。どの笑顔も一人一人カティの大切な家族。
にやにやしているエンヤには腹が立つけれども。
思えば、前世から今世まで両親との縁が薄く、思い出などほとんどなかった。あると言えば捨てられたこと、殺されかけた事だけ。
それが今はどうだろう。両陛下が両親になりヴィーがお兄さんになった、そしてミンミおかあさん、口うるさい小姑のレオ、じいじ、公爵家の使用人たち。たくさんの優しい大好きな家族が愛をくれる。
そして何より血のつながりがない私を心から慈しんでくれたとう様・・・それが生涯の伴侶となる。
全ては赤ん坊の私の命を救ってくれたことに始まり、麗しいご尊顔とは裏腹の鬼畜の所業。でも誰よりも大切にしてくれた。人生の幸せ全てをエドヴァルドがくれた。
あの長く辛く苦しい時間も忘れない。
大切な人が当たり前にそばにいてくれるのは奇跡であることを噛みしめる。
これからの未来、大好きなエドヴァルドや家族とともに生きて、ともに幸せになる。それがカティの願い。
「とう様、ありがとう。幸せにしてくれてありがとう。」
抱き上げてくれているエドヴァルドの耳元でそっと伝える。
エドヴァルドは笑みを浮かべるとカティの頭のてっぺんにキスを落とした。
終
カティの幸せを持ちましてこれにて完結いたします。
思ったより長い物語になってしまいましたが、最後まで読み続けて下さった皆様に感謝しかありません。こんなに多くの方の目にとまると思っておらず、とても嬉しかったです。本当にありがとうございました!
たくさん感想もいただき、笑わせてもらったり元気を貰ったり、笑わそうと大喜利を頑張って見たり(´艸`*)
とても楽しい時間をありがとうございました(*´▽`*)
王妃が笑顔でカティを手招き、抱きしめてくれる。
今日は養女に迎えていただいた国王夫妻にお礼とご挨拶に伺った。
「いえ、もう娘なのだからカティと呼ばせてもらうわ。あなたが娘になってくれて嬉しい、私の事はお母さまと呼んでくれればいいのよ。」
「そうだな、わしのことはとう様と呼ぶといい。ほら、娘や、わしにも挨拶を。」
そう言って国王が両手を広げて待っている。
(こ、これは・・・行くしかないよね。)
「陛下と王妃様に養女に迎えていただいてとても嬉しいです。これまでもずっと親代わりをしてくださって・・・本当の家族になることが出来て嬉しいです、ありがとうございます。」
そう言って国王を抱擁しようとしたとき、後ろから抱き込まれた。
「ぬ!エドヴァルド、親子の抱擁をなぜとめる。」
「狭量ゆえお許しください。」
エドヴァルドの表情筋は、今日は全面休業のようで一切仕事をしていない。
「カティ、今度は一人(・・)で実家(・・)(王宮)に帰ってくると良い。とう(・・)様(・)は楽しみに待っているよ。」
「カティ、陛下の事はこれまで通り陛下で良い。不敬に当たるからな。」
「はい。」
「何をいっとる。お前が不在の間はわしが親も同然だったのだ。ようやく親になったのだからとう様で良い。のう?カティ。」
「はい、陛下には親代わりに大変支えていただきました。ですが、とう様はとう様の名前ですので、陛下の事は恐れ多くも父上様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか。」
「そういうことです、陛下。」
エドヴァルドの機嫌のよさそうな姿を見て
(間違ってなかった!)
とほっとした。うっかり「はい、とう様とお呼びします!」と言おうものなら陛下のおひげが凍っていたかもしれない。
「むう~。残念だが、しかたなかろう。また公爵邸の方にも遊びに行くからな。これは親として可愛い娘の幸せを見守るためだから断るなよ。」
「・・・そこは譲歩いたしましょう。」
こうしてお礼とご挨拶、婚約者と両親の微妙な顔合わせは無事終わった。
そして今日は婚約パーティ。
といっても公爵家当主の婚約パーティにしてはかなり小さく、当事者と公爵邸の使用人だけのささやかなパーティだ。
しかしどこからか聞きつけた両陛下がちゃっかりと参加している。ヴィクトルも旅立つ前にと顔を出してくれた。
ふと気が付くと元子爵もきちんと礼服を着て見守ってくれていた。皆に気を遣って端っこにいたが、それでも嬉しそうに笑っている。カティは嬉しくてじいじに手を振った。
婚約式の事を伝えに行ったとき、元子爵はカティとの縁を切ろうとしたのだ。
「じいじ~。」
カティは元子爵のもとを訪ねた。
「カティ様!ご婚約おめでとうございます。」
「・・・ありがとう。とう様と・・・婚約することになっちゃったの。」
恥ずかしそうにうつむいた。
「本当に喜ばしいことです。カティ様が幸せになる、それが私の望みでした。こんなに嬉しいことはありません。」
元子爵は涙ぐむ。
「それでね、お屋敷の皆だけで婚約パーティをするの。じいじも来てね。」
「カティ様、いえ次期公爵夫人・・・私は参加することは出来ません。それにもうこのように一人でこちらに来てはなりません。これまでありがとうございました。私はこれからも遠くからあなたを見守っています。」
「どうしてそんなこと言うの?!じいじはずっとじいじだよ。」
「これまではお目こぼしいただいていただけでございます。私のようなものが公爵夫人のお側にいてはカティ様の瑕疵になります。」
「ならないよ、ならない!じいじがいなかったら、とう様がいなくなった時耐えられなかった!じいじは私の命の恩人なの!」
わ~んとじいじに抱きついて泣く。
思わず元子爵はカティの身体を抱き寄せる。
「すまん、すまんな・・・でも、弁えないといけないんだ。」
「構わん。」
ふいにエドヴァルドの声がした。
「エドヴァルド様、申し訳ありません!」
元子爵はカティから離れた。
「この十三年間カティに寄り添い守ってくれたことに感謝する。婚約パーティは屋敷の者は全員参加だ、衣装も用意をさせるゆえ参加してくれ。」
「本当に・・・もったいないお言葉でございます。」
元子爵はエドヴァルドに頭を下げた。
これまで悲しみ、苦しみの方が多い人生だった孫がようやく本当に幸せになる。エドヴァルドなら、いやエドヴァルドしかカティを心から笑顔にすることは出来ないだろう。
今日、真っ赤な顔してエドヴァルドに抱えられたカティが手を振ってくれるのを見てそう思った。
広間では、他にもミンミもレオも好敵手である料理長も護衛たちもみんな笑顔で見守ってくれている。どの笑顔も一人一人カティの大切な家族。
にやにやしているエンヤには腹が立つけれども。
思えば、前世から今世まで両親との縁が薄く、思い出などほとんどなかった。あると言えば捨てられたこと、殺されかけた事だけ。
それが今はどうだろう。両陛下が両親になりヴィーがお兄さんになった、そしてミンミおかあさん、口うるさい小姑のレオ、じいじ、公爵家の使用人たち。たくさんの優しい大好きな家族が愛をくれる。
そして何より血のつながりがない私を心から慈しんでくれたとう様・・・それが生涯の伴侶となる。
全ては赤ん坊の私の命を救ってくれたことに始まり、麗しいご尊顔とは裏腹の鬼畜の所業。でも誰よりも大切にしてくれた。人生の幸せ全てをエドヴァルドがくれた。
あの長く辛く苦しい時間も忘れない。
大切な人が当たり前にそばにいてくれるのは奇跡であることを噛みしめる。
これからの未来、大好きなエドヴァルドや家族とともに生きて、ともに幸せになる。それがカティの願い。
「とう様、ありがとう。幸せにしてくれてありがとう。」
抱き上げてくれているエドヴァルドの耳元でそっと伝える。
エドヴァルドは笑みを浮かべるとカティの頭のてっぺんにキスを落とした。
終
カティの幸せを持ちましてこれにて完結いたします。
思ったより長い物語になってしまいましたが、最後まで読み続けて下さった皆様に感謝しかありません。こんなに多くの方の目にとまると思っておらず、とても嬉しかったです。本当にありがとうございました!
たくさん感想もいただき、笑わせてもらったり元気を貰ったり、笑わそうと大喜利を頑張って見たり(´艸`*)
とても楽しい時間をありがとうございました(*´▽`*)
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