81 / 98
連載
瓢箪から駒
しおりを挟む
屋敷に帰るとエドヴァルドは大切な話があるとカティを向かいに座らせた。
いつもなら黙っていても膝にのせてくれるのに。
「レオ、頼む。」
レオがカティの前に4枚の書類を並べる。心なしかレオの顔がこわばっている。
「この書類に署名をしてくれるか?」
エドヴァルドがそう言い、カティは何の書類か確認もせずさらさらと名前を書いた。
「はい、とう様。」
エドヴァルドは満足そうにうなづいた。
「エドヴァルド様!まさかと思いましたが何の説明もなしですか?!」
レオが慌てて書類を回収する。
「後でゆっくり説明するつもりだ。早く提出してこい。」
「何を言っているんですか!カティ様に承諾も得ないでありえません!カティ様も良く読まないで署名はしてはいけないと教えられたはずです!」
「でもとう様だから大丈夫に決まってるよ。」
「カティ様の一生に関わる重要な事でございます!エドヴァルド様!」
エドヴァルドは溜息をついて
「夜にでもゆっくりと説明しようと思っていたのだが。カティは陛下の養女になる、陛下はいたくお喜びだ。」
カティはショックのあまり意味がよく理解できなかった。
幼女になる?うん、昔はね。
妖女になる?隠しきれない色気が漏れたのかしら。
ようじょ・・・養女?養女?!陛下の養女?
目を見開いて固まるカティ。
「一部はその養子縁組の書類だ。もう一部は婚約許可願だ。」
コンヤクキョカネガイダ
何言ってるのかさっぱりわからない。
「この書類が受理されれば私とお前は正式な婚約者となる。」
十三年間の人工冬眠はエドヴァルドの脳に変異を起こしたのか。
それとも私はエドヴァルドの死を受け入れられずまだ夢を見ているのかな。
うん、きっとそうだ。長い夢を見てるんだ。
「カティ様、しっかりしてください!エドヴァルド様、カティ様が混乱されております。何よりも、きちんとカティ様にプロポーズをして返事をいただいてください!」
「聞かなくともわかっている。カティの結婚相手に望む三つの条件に当てはまるうえに、私と結婚したいと言い、私の側にずっといたいと女神に願うと他ならぬ女神自身が言ったのだ。」
そして本人があの時言っていたように言葉の綾ではないかと、日頃のカティの言動を確認した上で今回、敢行した。
「・・・あのとう様。お話が・・・良くわかりません。」
エドヴァルドはカティの横に座ると
「私はお前の幸せを願っている。私が一人でいるとお前を貶めたり攻撃する者が後を絶たん。どう対処するか考えていた時に老師の話を聞いたのだ。」
「うっ!まさか・・・あの時・・・聞こえてた?」
「戯言をと聞捨てたのだが・・・よくよく考えるとそうすれば全てにおさまりが良いと腑に落ちたのだ。老師にはあとで礼をせねばならんな。」
「いや・・・だからといって・・・なぜ・・」
「なぜ?私が父でなければ結婚しても良いと聞いたが。」
「そ、それは・・・」
「お前は雑音を気にすることなく私の側で安心出来るし、私もお前を守ることができる。さらに私は伴侶を得ることが出来る上に、愚か者たちを寄せつけずにすみ、評判を落とすこともない。何か問題があるか?」
「あれ?そういわれれば・・・え?いいことばっかり?」
なるほど、と簡単に丸め込まれるカティ。
「カティ様!すぐに詐欺にあいますよ!大事なのはカティ様の気持ちです。エドヴァルド様を婚約者として想えますか?お二方の関係性が変わるのですよ。」
カティはエドヴァルドを見る。
これまでとう様と慕っていたエドヴァルド。急に婚約者と言われても戸惑ってしまう。でも・・・
考え込んでしまったカティを見て
「悪かった。勝手に話を進めすぎたようだ。この話はなかった事にする。」
エドヴァルドは書類を手に取ると燃やそうと火を出した。
「駄目!!」
頭で考えるよりも体が動いてカティはその書類を奪い取って大事そうに胸に抱えた。
「駄目!燃やさないで!」
「カティ様・・・」
レオは嬉しそうにその姿を見る。
「あの・・・と、とう様とずっと一緒にいたいから・・・お、お受けしたいです!」
顔を真っ赤にしていうカティの頭にエドヴァルドはキスをすると書類をレオに渡した。レオは頭を下げて大急ぎで出て行った。
レオは王宮に向かう途中であふれる涙をぬぐった。
二人の幸せを心から喜んでいる。
この十数年間は、悲しく辛い時間だった。しかし、あのまま親子としての時間をはぐくんでいれば、どれだけ深い愛情で結ばれようともおそらく肉親の情の域を越えなかったはずだ。
離れていた時間が長かったからこそ、そして再会した時のカティが成長していたからこそこのような縁が結ばれたのだと思う。
苦しすぎた時間だったが、これからは二人とも幸せになって欲しい。そう思い、レオは馬を走らせた。
*国王が退位してからカティを養女にした方がいいのかなと思いましたが、話が長くなりそうなのでそのまま国王の養女にしました。国王が養女にできるのか??とか、よくわからないまま・・・ごめんなさい(*´▽`*)
いつもなら黙っていても膝にのせてくれるのに。
「レオ、頼む。」
レオがカティの前に4枚の書類を並べる。心なしかレオの顔がこわばっている。
「この書類に署名をしてくれるか?」
エドヴァルドがそう言い、カティは何の書類か確認もせずさらさらと名前を書いた。
「はい、とう様。」
エドヴァルドは満足そうにうなづいた。
「エドヴァルド様!まさかと思いましたが何の説明もなしですか?!」
レオが慌てて書類を回収する。
「後でゆっくり説明するつもりだ。早く提出してこい。」
「何を言っているんですか!カティ様に承諾も得ないでありえません!カティ様も良く読まないで署名はしてはいけないと教えられたはずです!」
「でもとう様だから大丈夫に決まってるよ。」
「カティ様の一生に関わる重要な事でございます!エドヴァルド様!」
エドヴァルドは溜息をついて
「夜にでもゆっくりと説明しようと思っていたのだが。カティは陛下の養女になる、陛下はいたくお喜びだ。」
カティはショックのあまり意味がよく理解できなかった。
幼女になる?うん、昔はね。
妖女になる?隠しきれない色気が漏れたのかしら。
ようじょ・・・養女?養女?!陛下の養女?
目を見開いて固まるカティ。
「一部はその養子縁組の書類だ。もう一部は婚約許可願だ。」
コンヤクキョカネガイダ
何言ってるのかさっぱりわからない。
「この書類が受理されれば私とお前は正式な婚約者となる。」
十三年間の人工冬眠はエドヴァルドの脳に変異を起こしたのか。
それとも私はエドヴァルドの死を受け入れられずまだ夢を見ているのかな。
うん、きっとそうだ。長い夢を見てるんだ。
「カティ様、しっかりしてください!エドヴァルド様、カティ様が混乱されております。何よりも、きちんとカティ様にプロポーズをして返事をいただいてください!」
「聞かなくともわかっている。カティの結婚相手に望む三つの条件に当てはまるうえに、私と結婚したいと言い、私の側にずっといたいと女神に願うと他ならぬ女神自身が言ったのだ。」
そして本人があの時言っていたように言葉の綾ではないかと、日頃のカティの言動を確認した上で今回、敢行した。
「・・・あのとう様。お話が・・・良くわかりません。」
エドヴァルドはカティの横に座ると
「私はお前の幸せを願っている。私が一人でいるとお前を貶めたり攻撃する者が後を絶たん。どう対処するか考えていた時に老師の話を聞いたのだ。」
「うっ!まさか・・・あの時・・・聞こえてた?」
「戯言をと聞捨てたのだが・・・よくよく考えるとそうすれば全てにおさまりが良いと腑に落ちたのだ。老師にはあとで礼をせねばならんな。」
「いや・・・だからといって・・・なぜ・・」
「なぜ?私が父でなければ結婚しても良いと聞いたが。」
「そ、それは・・・」
「お前は雑音を気にすることなく私の側で安心出来るし、私もお前を守ることができる。さらに私は伴侶を得ることが出来る上に、愚か者たちを寄せつけずにすみ、評判を落とすこともない。何か問題があるか?」
「あれ?そういわれれば・・・え?いいことばっかり?」
なるほど、と簡単に丸め込まれるカティ。
「カティ様!すぐに詐欺にあいますよ!大事なのはカティ様の気持ちです。エドヴァルド様を婚約者として想えますか?お二方の関係性が変わるのですよ。」
カティはエドヴァルドを見る。
これまでとう様と慕っていたエドヴァルド。急に婚約者と言われても戸惑ってしまう。でも・・・
考え込んでしまったカティを見て
「悪かった。勝手に話を進めすぎたようだ。この話はなかった事にする。」
エドヴァルドは書類を手に取ると燃やそうと火を出した。
「駄目!!」
頭で考えるよりも体が動いてカティはその書類を奪い取って大事そうに胸に抱えた。
「駄目!燃やさないで!」
「カティ様・・・」
レオは嬉しそうにその姿を見る。
「あの・・・と、とう様とずっと一緒にいたいから・・・お、お受けしたいです!」
顔を真っ赤にしていうカティの頭にエドヴァルドはキスをすると書類をレオに渡した。レオは頭を下げて大急ぎで出て行った。
レオは王宮に向かう途中であふれる涙をぬぐった。
二人の幸せを心から喜んでいる。
この十数年間は、悲しく辛い時間だった。しかし、あのまま親子としての時間をはぐくんでいれば、どれだけ深い愛情で結ばれようともおそらく肉親の情の域を越えなかったはずだ。
離れていた時間が長かったからこそ、そして再会した時のカティが成長していたからこそこのような縁が結ばれたのだと思う。
苦しすぎた時間だったが、これからは二人とも幸せになって欲しい。そう思い、レオは馬を走らせた。
*国王が退位してからカティを養女にした方がいいのかなと思いましたが、話が長くなりそうなのでそのまま国王の養女にしました。国王が養女にできるのか??とか、よくわからないまま・・・ごめんなさい(*´▽`*)
402
お気に入りに追加
8,117
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。