上 下
75 / 98
連載

カティ 脱・ファザコン!

しおりを挟む
「カティ様?」
 いつものように夕食のセッティングをしていたメイドが戸惑う。
 エドヴァルドの席の隣の椅子に座るカティ。

「今日はエドヴァルド様のお膝で召し上がらなくて良いのですか?お調子でも?」
「ほほほほ。淑女たるもの一人で食事が摂れなくてどうします?これからはこのようにお願いします。」
「・・・かしこまりました。」
 エドヴァルドはちらっと見て
「もう大丈夫か?」
「はい、お父様。ご心配をお掛けいたしました。」
 レオがカティを見て首をひねっているが、気にしない。

「脱・ファザコン!」を掲げ、今日からカティは自立する予定なのだ。
 これまでのようにエドヴァルドに甘えてはいけない。
 どこに出ても恥ずかしくない令嬢になれば、周囲から先日のような嘲笑を受けることもなく、エドヴァルドの評判も悪くなることはないだろう。そして、心の病だと皆が優しくしてくれているのも知っている、このままではエドヴァルドも心配で離れられないはずだ。
 エドヴァルドのためにも自立する!カティは強く決意した。
 
 王家のおかげもあり、公爵令嬢としてのマナーや教育は表面的には身につけている。ただ真に身についていないだけである。
 お淑やかにナイフとフォークを使って少しづつ食事をすすめる。

「はっ・・・これは・・・・」
 カティはスープの中に椎茸を発見した。
「これは・・・シェフめ・・・この手で来たか。」
 椎茸が細かく刻まれている。
 エドヴァルドが帰ってくるまではシェフとの戦いだった。椎茸が食べられないカティと何とかして食べさせようとするシェフ。あの手この手で料理に紛れ込ませてきていた。
 いつもならこっそりエドヴァルドの皿に入れて、エドヴァルドも黙ってそっと食べてくれていたが今日はこの手は使えない。

(よし!)
 エドヴァルドのお皿を見るとほとんど空になっている。
 カティはぐっと自分のお皿を睨みつけて、脳内で砂時計をイメージする。
 砂時計の砂が移動するように自分の皿からエドヴァルドの皿にスープが移動し、自分のお皿が空になる。そのイメージに魔力を乗せ発動した。
 
 (よしっ!!)
 自分の目の前の皿が空になっている。
 ぐっとこぶしを握る。

 が、痛いほどの視線を横から感じる。
「ん?何か?」
「お前の所作に感心したばかりなのだが。」
 エドヴァルドは再び一杯になった自分のお皿を見て溜息をついた。
「類まれなる能力に感心すればいいのか、能力の無駄使いと嘆けばよいのか迷うところだ。」
 そう言いながらも椎茸入りのスープをすべて飲んでくれた。

 食後にはサロンに移動し、いつも紅茶(カティは+お菓子)を嗜むのだがその時もカティは少し離れて座る。
「今日はサロン冷えてるね?」
「・・・いつもと変わりはありませんが。」
 ちらっとレオはエドヴァルドを見る。
「お父様、先ほどのわたくしいかがでしたか?」
「どうとは?」
「公爵令嬢としてですわ。」
「・・・令嬢は嫌いなものを他人の皿には移動しない。」
「ぐっ・・・」
 カティはぶーっと口を尖らす。
「カティ様、淑女たるもの口はとがらせてはいけません。」
「急にどうした?」
「わたくしの真の姿を見ていただこうと思ったのです。私の淑女ぶりを見たらお父様もご安心されるかと。ほほほ。」
(不安でしか、ありませんよ。また下らない事思いついたんですね。)
 レオはおそらく巻き込まれるだろうとため息をついた。
しおりを挟む
感想 497

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?

なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」  かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。   『お飾りの王妃』    彼に振り向いてもらうため、  政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。  アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。  そして二十五の歳。  病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。  苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。  しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。  何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。  だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。  もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。  自由に、好き勝手に……私は生きていきます。  戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。