転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる

文字の大きさ
上 下
71 / 98
連載

十三年ぶりの帰還

しおりを挟む
 エドヴァルドが完全に回復し、ようやくローベンス国へと戻れる日がやってきた。

 ヴィクトルが先に戻り、詳細を国王へ報告していたため、エドヴァルドとカティがローベンス国に戻った時、国中が大歓迎で出迎えた。
 ローベンス国を救った英雄の奇跡の御帰還!とお祭り騒ぎで、通り道の沿道には国民が大勢詰めかけていた。
 その中、むっつりとしたエドヴァルドを乗せた馬車が王宮に到着した。

 国王夫妻はこれまでの事を労い、エドヴァルドの無事の帰還を喜んでくれた。
「これまでご迷惑をおかけいたしましたことをお詫びいたします。そして公爵家ならびにカティについて格別ご配慮いただきましたこと重ねてお礼申し上げます。」
「かまわぬ。またこうして宰相に会うことが出来ようとは・・・嬉しく思っておる。」
「陛下、私はもう宰相ではございません。これからは一臣下として陛下をお支えしていきたいと思っております。」
「宰相に戻って欲しい。マティアスもそなたの無事を聞いてそう申しておった。」
 しかし、エドヴァルドは固辞した。
 代わりに他の要職にと勧めても、今後は公爵としての執務に専念すると意志は固かった。

「とう様、いいの?陛下がっかりしてたよ?」
「十年以上、今の体制で上手く回っている。今更かき回す必要はないし、面倒なことから解放されて何よりだ。それよりもだ。」
 執務室の上に山のように積まれた釣り書きを見てうんざりした。

 唯一の公爵家で、容姿端麗で今やこの国の英雄。宰相としての能力も伝説となっているほどだ。そんなエドヴァルドの生存がわかるやいなや、釣り書きが殺到した。ただし十数年前のエドヴァルドを良く知るものはそんな命知らずなことはしない。
 そしてその内の半分はカティあての釣り書き。
 エドヴァルドのことで注目され、カティにも魔力があることが知る者には知られた。エドヴァルドを救った女神という呼び名をつけるものまでいたとか。

「私のはいい。結婚しないから。」
「ヴィクトル殿下が婚約を申し込んだときいたが。」
(あれ?ほんの少し気温が下がった気がする。気のせいかな?)
「うん。でも私は秘密が多いし。社交とか無理だから・・・ヴィーには申し訳ないことをしちゃったの。」
「気にすることはない。しかし、一番親しい相手だったそうだな。」
(ん?またちょっと寒くなった?)
「色々助けてくれて・・・大好きだし、とっても信頼してるけど。私の事全部話せないし・・・ヴィーは王族だから知ったら王家に報告するか、何かの時には利用せざるを得ないでしょう?それに腹黒い貴族社会で生きていける気がしないもん。」
「それでは一生どこにも行けないぞ。」
「いかないもん。ずっととう様と暮らすの。」
(ん?温度が戻ったかな?)
「そうだな。そうするといい。」
 エドヴァルドはほんの少し笑みを浮かべ、カティの釣り書きとともに自分への釣り書きもレオに処分するように言った。
しおりを挟む
感想 497

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。