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赤ちゃん返り
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意識が戻ったエドヴァルドは筋力が失われ思うように動けず、レオに支えてもらいながら体を起こした。
「この・・・横にいる令嬢はまさかカティなのか?」
「はい。カティ様は・・・十五歳になりました。エドヴァルド様は十三年もの間、行方不明でございました。」
涙をこらえてあれからの事を簡単に話した。
「それほどの時間が・・・迷惑をかけたな。カティにも。」
レオは一晩では語りつくせぬほど話したいことがあった。しかし元気を取り戻してからの事だ。これからはまた側にいられるのだから。
「カティ様は治癒魔法を施し、今はお休みになられております。」
「大きくなったのだな。まだ片手で抱けるほど小さかったのに・・・」
「はい。素敵な令嬢になられました。」
エドヴァルドはカティの頭を撫でようとしたが手でさえうまく動かせないようだった。
「十三年お休みになられていたのですから。またすぐに戻りますよ、それまで私が誠心誠意お世話させていただきますのでご心配はいりません。」
おそらく食事や移動もままならないだろう。馬車移動に耐えられるようになるまで数カ月はここでの療養も考えなければいけない。
レオはそう考えていたが、翌日あっさりと解決した。
「とう・・さま?・・・とう様!・・・とう様・・・とう様・・・」
目が覚めて、ヘッドボードにもたれて身を起こしているエドヴァルドを見たカティはエドヴァルドの名を呼びながらしがみついてポロポロと涙を落した。
「良かっ・・・」
「・・・辛い思いをさせた。すまない。」
呼吸困難になるほど泣くカティをレオがそっと引き離し、背中をさする。
「カティ様、エドヴァルド様は今思うように動けないのです。ですからあまり負担はかけられません。」
「うっく・・どうして?」
「筋力が落ちているようだ。治癒魔法でもこれは変わらないらしい。ずっと治療してくれていたのだな、礼を言う。」
カティに手を伸ばそうとするが、手を持ち上げるのでさえままならない。
レオはカティをソファーにいざなうがカティはエドヴァルドにしがみつく。
するとふわっとエドヴァルドが揺れて倒れそうになり慌ててレオが支える。
「ごめんなさい!」
それを見てまたポロポロ涙をこぼす。
「!!」
カティは気が付いた。もしかしたら・・・カティは魔法を発動した。
エドヴァルドが驚いたようにカティを見て、そしてスッと手を伸ばしてカティの頭を撫でた。
「やっぱり!」
カティはエドヴァルドの手を取るとベッドから出るように引っ張った。
「カティ様?!」
レオが驚いて声をかけるが
「大丈夫だ。軽い・・・魔法か?」
「はい!重力を・・・えと、体にかかる圧力を軽くしました!」
カティの手に引かれてエドヴァルドはスッと立ち上がり、危なげもなく歩いてソファーにたどり着く。
「エドヴァルド様・・・ようございました。」
レオはうつむいて涙をこらえた。
バートランドの王宮に乗り込んだ時、一気に制圧するのに使った魔法。
あの魔法で今度は逆にエドヴァルドにかかる重力を軽くした。おかげで筋力が弱り切ったエドヴァルドでも自由に動けるようになったのだ。
カティは自分の重力も軽くするとべったりとエドヴァルドにくっついて離れなくなった。
「カティ様、いけませんよ。エドヴァルド様はまだ本調子ではないのですから。」
「・・・とう様、駄目?しんどい?」
今日もベッドにもぐりこんでエドヴァルドと寝ようとするカティにレオが注意する。
「それだけではありません。もうカティ様は赤ん坊ではありません。いつもご自分の事淑女だとおっしゃってるではありませんか。淑女はそんなこといたしませんよ。」
「いいもん。カティ赤ちゃんだもん。とう様の側にずっといるもん。」
「・・・まあ、よい。」
「赤ちゃん返りにもほどがありますよ。・・・お気持ちはわかりますが。」
レオも仕方がないと苦笑した。
自分でさえ、離れがたいのだ。カティの気持ちはよくわかる。
「は~いとう様。次はこっち。」
ベッドの上で身を起こすエドヴァルドの食事を手伝う。
手伝いは必要はないというエドヴァルドに涙を浮かべてお世話したいと駄々こねてこの地位を勝ち取った。
昔よりも距離を感じるエドヴァルド、カティはこんなに嬉しくて前のようにずっとずっと側にいたいのに無表情でどこか困惑したような目でカティを見る。
レオには以前と同じ態度なのに・・・
(はっ!!見違えるように美しくお淑やかに育ってしまったからかも?!ここは距離を埋めるために私が淑女を投げ捨てて突撃しなくちゃ!)
投げ捨てる淑女を持ち合わせてはいないが、本人だけは本気だった。
「この・・・横にいる令嬢はまさかカティなのか?」
「はい。カティ様は・・・十五歳になりました。エドヴァルド様は十三年もの間、行方不明でございました。」
涙をこらえてあれからの事を簡単に話した。
「それほどの時間が・・・迷惑をかけたな。カティにも。」
レオは一晩では語りつくせぬほど話したいことがあった。しかし元気を取り戻してからの事だ。これからはまた側にいられるのだから。
「カティ様は治癒魔法を施し、今はお休みになられております。」
「大きくなったのだな。まだ片手で抱けるほど小さかったのに・・・」
「はい。素敵な令嬢になられました。」
エドヴァルドはカティの頭を撫でようとしたが手でさえうまく動かせないようだった。
「十三年お休みになられていたのですから。またすぐに戻りますよ、それまで私が誠心誠意お世話させていただきますのでご心配はいりません。」
おそらく食事や移動もままならないだろう。馬車移動に耐えられるようになるまで数カ月はここでの療養も考えなければいけない。
レオはそう考えていたが、翌日あっさりと解決した。
「とう・・さま?・・・とう様!・・・とう様・・・とう様・・・」
目が覚めて、ヘッドボードにもたれて身を起こしているエドヴァルドを見たカティはエドヴァルドの名を呼びながらしがみついてポロポロと涙を落した。
「良かっ・・・」
「・・・辛い思いをさせた。すまない。」
呼吸困難になるほど泣くカティをレオがそっと引き離し、背中をさする。
「カティ様、エドヴァルド様は今思うように動けないのです。ですからあまり負担はかけられません。」
「うっく・・どうして?」
「筋力が落ちているようだ。治癒魔法でもこれは変わらないらしい。ずっと治療してくれていたのだな、礼を言う。」
カティに手を伸ばそうとするが、手を持ち上げるのでさえままならない。
レオはカティをソファーにいざなうがカティはエドヴァルドにしがみつく。
するとふわっとエドヴァルドが揺れて倒れそうになり慌ててレオが支える。
「ごめんなさい!」
それを見てまたポロポロ涙をこぼす。
「!!」
カティは気が付いた。もしかしたら・・・カティは魔法を発動した。
エドヴァルドが驚いたようにカティを見て、そしてスッと手を伸ばしてカティの頭を撫でた。
「やっぱり!」
カティはエドヴァルドの手を取るとベッドから出るように引っ張った。
「カティ様?!」
レオが驚いて声をかけるが
「大丈夫だ。軽い・・・魔法か?」
「はい!重力を・・・えと、体にかかる圧力を軽くしました!」
カティの手に引かれてエドヴァルドはスッと立ち上がり、危なげもなく歩いてソファーにたどり着く。
「エドヴァルド様・・・ようございました。」
レオはうつむいて涙をこらえた。
バートランドの王宮に乗り込んだ時、一気に制圧するのに使った魔法。
あの魔法で今度は逆にエドヴァルドにかかる重力を軽くした。おかげで筋力が弱り切ったエドヴァルドでも自由に動けるようになったのだ。
カティは自分の重力も軽くするとべったりとエドヴァルドにくっついて離れなくなった。
「カティ様、いけませんよ。エドヴァルド様はまだ本調子ではないのですから。」
「・・・とう様、駄目?しんどい?」
今日もベッドにもぐりこんでエドヴァルドと寝ようとするカティにレオが注意する。
「それだけではありません。もうカティ様は赤ん坊ではありません。いつもご自分の事淑女だとおっしゃってるではありませんか。淑女はそんなこといたしませんよ。」
「いいもん。カティ赤ちゃんだもん。とう様の側にずっといるもん。」
「・・・まあ、よい。」
「赤ちゃん返りにもほどがありますよ。・・・お気持ちはわかりますが。」
レオも仕方がないと苦笑した。
自分でさえ、離れがたいのだ。カティの気持ちはよくわかる。
「は~いとう様。次はこっち。」
ベッドの上で身を起こすエドヴァルドの食事を手伝う。
手伝いは必要はないというエドヴァルドに涙を浮かべてお世話したいと駄々こねてこの地位を勝ち取った。
昔よりも距離を感じるエドヴァルド、カティはこんなに嬉しくて前のようにずっとずっと側にいたいのに無表情でどこか困惑したような目でカティを見る。
レオには以前と同じ態度なのに・・・
(はっ!!見違えるように美しくお淑やかに育ってしまったからかも?!ここは距離を埋めるために私が淑女を投げ捨てて突撃しなくちゃ!)
投げ捨てる淑女を持ち合わせてはいないが、本人だけは本気だった。
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