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目覚め
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その後は大騒ぎとなり、エドヴァルドの身体はバートランドの王宮に大至急運ばれた。
ヴィクトルとレオはエドヴァルドの遺体が発見されたと思ったが、ぎりぎりの状態で生命活動が維持されていたことに驚きを隠せなかった。
カティはベッドに寝かされているエドヴァルドの掛布の中に手を伸ばし、その手を両手で握り治癒魔法を放った。
部屋全体が真っ白になる程の光がカティから放たれる。
ほんの少しエドヴァルドの脈や呼吸がしっかりしたが、意識が戻ることはなかった。
カティは無言でごそごそと寝具の中に潜り込み、エドヴァルドの腕に抱き着いて治癒魔法を放ち続けた。
医師や魔術医は衰弱しているものの身体機能には問題がないと診断した。
魔術医は、魔獣がその体内に蓄えていた魔力のおかげで、十三年もの間エドヴァルドの生命が維持されていたのではないかと推測した。しかしなぜそんなことが起こったのかは初めてのことで想像もできないと困惑していた。
エドヴァルドの側について治癒魔法を流し続けるカティを、ヴィクトル達は心配したが止めることはなかった。このような奇跡を起こしたのはカティのエドヴァルドを想う心、カティは自分が倒れようともエドヴァルドの為に力を出し尽くすだろうから。
「ヴィクトル殿下、ありがとうございました。あとは私がお世話をいたします。殿下もお体を御休め下さい。」
「ヴィー、本当にありがとう。今までずっと付き合ってくれてありがとう。」
「私もすごく嬉しい、よかったね。」
「うん。」
ヴィクトルは泣き顔のカティの頬にキスをすると
「ふふ。ユリ公爵の意識が戻るとできないから。じゃあね、お休み。」
そう言って出て行った。
「レオも休んでいいよ。私ついてる。」
「気が高ぶって休める気がしません。このような奇跡が・・・カティ様があきらめずに続けて下さったおかげでエドヴァルド様に再びお会い出来ました。心から感謝いたします。」
レオは跪いてカティに礼をとった。
「・・・あのね、たぶんとう様はバリアをはったのだと思う。」
「え?」
「何回かバリアについてとう様とお話ししたことがあったの。私がどうイメージして、魔法を紡ぎだすのか。そして何度も見てたから・・・とう様の事だから使えるようになってたと思う。とう様は氷のように冷たかったからバリアの中で人工冬眠状態になってたのかもしれない。」
「それは・・・・さすがエドヴァルド様としか・・・」
「私が湖の水を宙にとどめて土中から光る物体を浮かせたとき、魔獣ごとバリアに包まれて出てきたの。バリアの中が魔力に満たされてとう様の命をつないでくれていたのかも。」
蟲毒で作られた魔獣が充電池の役割をしていたのかも、とカティは思った。
「そういえば・・・エドヴァルド様が湖に落ちるときに強く光っておりました。我々は魔力をほとんど使い果たしておりましたが、最後の力を振り絞って身を守られたのでしょう。」
それが偶然に魔獣を巻き込んでこのような奇跡に至ったのだろう。そして再び湖となり、しみ込んだ水を通じてその光がカティの目にとまったことも。
レオは心から神に、カティに感謝した。
明け方近くまでカティはずっと治癒魔法をかけ続け、魔力が欠乏し疲労と相まって気を失うように眠りについた。
レオはベッドの側の椅子に座り見守り続けていた。
伝令でユリ公爵家へとエドヴァルドの生存を報告した。その後は恐ろしいほどの伝令が届くがまだ何もわからないため連絡をするまで待つよう返信しておいた。あちらも今頃大騒ぎになっているだろう。
今後の事を考え込んでいると
「・・・レオか?」
空耳かと思った。あれからずっと渇望していた懐かしい低い声が響いた。
しかし確かに、ベッドの中のエドヴァルドがこちらを見つめていた。
ヴィクトルとレオはエドヴァルドの遺体が発見されたと思ったが、ぎりぎりの状態で生命活動が維持されていたことに驚きを隠せなかった。
カティはベッドに寝かされているエドヴァルドの掛布の中に手を伸ばし、その手を両手で握り治癒魔法を放った。
部屋全体が真っ白になる程の光がカティから放たれる。
ほんの少しエドヴァルドの脈や呼吸がしっかりしたが、意識が戻ることはなかった。
カティは無言でごそごそと寝具の中に潜り込み、エドヴァルドの腕に抱き着いて治癒魔法を放ち続けた。
医師や魔術医は衰弱しているものの身体機能には問題がないと診断した。
魔術医は、魔獣がその体内に蓄えていた魔力のおかげで、十三年もの間エドヴァルドの生命が維持されていたのではないかと推測した。しかしなぜそんなことが起こったのかは初めてのことで想像もできないと困惑していた。
エドヴァルドの側について治癒魔法を流し続けるカティを、ヴィクトル達は心配したが止めることはなかった。このような奇跡を起こしたのはカティのエドヴァルドを想う心、カティは自分が倒れようともエドヴァルドの為に力を出し尽くすだろうから。
「ヴィクトル殿下、ありがとうございました。あとは私がお世話をいたします。殿下もお体を御休め下さい。」
「ヴィー、本当にありがとう。今までずっと付き合ってくれてありがとう。」
「私もすごく嬉しい、よかったね。」
「うん。」
ヴィクトルは泣き顔のカティの頬にキスをすると
「ふふ。ユリ公爵の意識が戻るとできないから。じゃあね、お休み。」
そう言って出て行った。
「レオも休んでいいよ。私ついてる。」
「気が高ぶって休める気がしません。このような奇跡が・・・カティ様があきらめずに続けて下さったおかげでエドヴァルド様に再びお会い出来ました。心から感謝いたします。」
レオは跪いてカティに礼をとった。
「・・・あのね、たぶんとう様はバリアをはったのだと思う。」
「え?」
「何回かバリアについてとう様とお話ししたことがあったの。私がどうイメージして、魔法を紡ぎだすのか。そして何度も見てたから・・・とう様の事だから使えるようになってたと思う。とう様は氷のように冷たかったからバリアの中で人工冬眠状態になってたのかもしれない。」
「それは・・・・さすがエドヴァルド様としか・・・」
「私が湖の水を宙にとどめて土中から光る物体を浮かせたとき、魔獣ごとバリアに包まれて出てきたの。バリアの中が魔力に満たされてとう様の命をつないでくれていたのかも。」
蟲毒で作られた魔獣が充電池の役割をしていたのかも、とカティは思った。
「そういえば・・・エドヴァルド様が湖に落ちるときに強く光っておりました。我々は魔力をほとんど使い果たしておりましたが、最後の力を振り絞って身を守られたのでしょう。」
それが偶然に魔獣を巻き込んでこのような奇跡に至ったのだろう。そして再び湖となり、しみ込んだ水を通じてその光がカティの目にとまったことも。
レオは心から神に、カティに感謝した。
明け方近くまでカティはずっと治癒魔法をかけ続け、魔力が欠乏し疲労と相まって気を失うように眠りについた。
レオはベッドの側の椅子に座り見守り続けていた。
伝令でユリ公爵家へとエドヴァルドの生存を報告した。その後は恐ろしいほどの伝令が届くがまだ何もわからないため連絡をするまで待つよう返信しておいた。あちらも今頃大騒ぎになっているだろう。
今後の事を考え込んでいると
「・・・レオか?」
空耳かと思った。あれからずっと渇望していた懐かしい低い声が響いた。
しかし確かに、ベッドの中のエドヴァルドがこちらを見つめていた。
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