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カティ 黒幕と対峙する
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「何・・・者だ?!」
尋常ではない圧を身体に受け椅子から身動きできないでいながらも、威圧してくるトルスティ代理国王はさすがだった。
「なぜ・・・他国の公女の命を狙う?」
エンヤが問う。
カティはミンミに抱かれて一応赤ちゃんの振りをして無垢な目で見ている。
レオは黙々と、重力に押しつぶされている王の護衛や側近たちを縛り上げている。
カティは重力を操り、相手の結界の中の重力を重くした。そして魔法も使えないように封じていた。
「その子供か・・・ふん、わざわざ死に急ぎにつれて来たか。苦労して作り出した魔獣を殺したのはお前たちであろう。ただで済むと思うな。」
国王は憎々しい目でレオ達を睨む。
レオも、きつい瞳で睨み返す。そのせいでエドヴァルドを失ったのだ。
「この魔法はなんだ?・・・そのじじいか?」
「そうじゃよ。魔法はお前たちの専売特許だとでも思ったか。貴様らの魔法など赤子の手をひねるようじゃわい。」
「・・・どうするつもりだ?」
「殺されたくなければ手を引け。こちらはこのようにいつでも国ごと制圧できる。」
「はっ!甘いことだ。」
「もう一度問う。幼い子を殺める理由は?」
「理由をいえば解放するとでも?」
「ふん。解放してほしい?覚悟もなく大それたことを・・・しょせんその程度の器という事じゃ。」
エンヤが言い捨てると、トルスティの顔がゆがむ。
「とうたまは?とうたまどこ?」
状況がわかっていないだろう子供が無邪気に聞く。
そんなカティに苛立つように
「お前が・・・お前さえいなければ私は真の王になれたのだ!」
「しんの王?あたまもちからもよわい・・・おうたまにはなれないよ?」
「なんだと?!お前さえさっさと死ねば!」
「・・・。」
ぐっとまた結界内の圧が強まり、押しつぶされて意識を失うものまで出ている。
それに負けて椅子から転がり落ちた国王をレオは拘束する。
カティはミンミに降ろしてもらうと国王の前に立った。
エドヴァルドの事を想うと悲しみと怒りで何かが体の中から飛び出してしまいそうなのを必死に堪える。周囲の壁や調度品にピシピシとひびが入る。
無様に崩れ落ちて身動きできないトルスティ、この男と血がつながっているとは思えない。憎くて苦しくて・・・きっと今、自分の気持ちのままに力を解放すると大勢の命を奪ってしまう。
一度深呼吸をして震える体を落ち着けた。
同じ舞台に上がらない。この男と自分は違う。
落ち着かなきゃ・・・落ち着いて。
トルスティの身体が急に軽くなると逆に浮きはじめ、天上にたたきつけられるかと思った瞬間、今度は床に向かって落下した。
「うわ~?!」
床まであと数センチというところでピタッと止まった。
そして薄い膜のような球体で囲まれる。
「何の真似だ!」
その球体は広い部屋をコロコロ転がり始めた。初めはゆっくりと転がりトルスティはその中で歩き、バランスを取る。
「おい!ふざけるな!」
腹が立って足を止めると中で転がってしまう。どんどん早く転がる球体に合わせ、どんどん早く足を動かすトルスティ。しまいには全力で走るが、球体は止まる様子もなく室内をコロコロ転がりまくる。
足がもつれたトルスティは転倒し、ごろごろ上へ下へと球体の動きに翻弄されてみっともない姿をさらす。
トルスティは屈辱に怒りをあらわにするが、どうしようもない。目も回り、ふらふらになったころやっとやっと球体がはじけるように消え、地面にたたきつけられるように落ちた。
カティは、重力に押さえつけられなくてもふらふらで床に這いつくばるトルスティの額に「偽国王」、左頬に「ダメ」そして右頬に「絶対」と書いた。
そしてスッと鏡を前に差し出した。
「き・・さま!私を誰だと思ってる!」
「まけいぬ。」
「殺す!卑怯者!正々堂々と勝負しろ!」
レオが鼻で笑い、怒りをあらわにする。
「赤ん坊に暗殺者を送り込む貴様が言うな!」
「とうたまかえして。」
「さっきからなんだ?!とうたまとうたまって!」
レオが沈痛な面持ちで
「あの魔獣を倒した英雄の事だ。あれと一緒に湖に沈んだ・・・」
「ふはははは!こいつの義父が死んだのか?いい気味だ!あの湖はその後崩れた山からマグマが流れ出し湖の水で爆発を起こし、あたり一面埋まったわ!もうどこがどこかも分かるまい!」
大笑いする国王の口に猿ぐつわを嵌めるとレオは心配そうにカティを見た。
ミンミが涙をこらえながらカティを抱きしめる。
「・・・レオ、初めて人に死んでほしいと思ったの。」
「・・・。当然です。わたくしがやります。」
「ううん。こんな人間の為にレオの手と心を少しでも汚すわけにはいかないの。」
トルスティの側近から今回の事件のあらかたが判明した。
バートランド国は直系が王位継承し、儀式を経て正式な王と認められる。
儀式とは、迷路になっている洞窟を無事通り抜けて王宮につながる扉に到着すること。
バートランド国王だけがもつ「直観」、その力のない者は通り抜けることが出来ない洞窟。そして不思議なことにその力は、正統な王位第一継承者にしか引き継がれないのだ。
トルスティは前国王の一人息子ユリウス王太子を暗殺していた。前国王が崩御した時、すぐに自分が正統な後継者だとその儀式を行った。しかし儀式は失敗した。
正統な継承者がどこかにいるのだ。
トルスティは前国王の隠し子を探したが見つからなかった。
しかし必死に調査した結果、殺害したユリウスに子供がいたことが判明した。だがその子供であるクラウスも死亡していることが分かり、そしてさらにその子どもがいることも。
その子供を処分しない限り、自分は真の国王と認められない。甥を殺してまで手に入れたはずの王位。
周囲からささやかれる疑惑や落胆の声が許せなかった。そのための努力は惜しまず必死でやってきたのだから。
尋常ではない圧を身体に受け椅子から身動きできないでいながらも、威圧してくるトルスティ代理国王はさすがだった。
「なぜ・・・他国の公女の命を狙う?」
エンヤが問う。
カティはミンミに抱かれて一応赤ちゃんの振りをして無垢な目で見ている。
レオは黙々と、重力に押しつぶされている王の護衛や側近たちを縛り上げている。
カティは重力を操り、相手の結界の中の重力を重くした。そして魔法も使えないように封じていた。
「その子供か・・・ふん、わざわざ死に急ぎにつれて来たか。苦労して作り出した魔獣を殺したのはお前たちであろう。ただで済むと思うな。」
国王は憎々しい目でレオ達を睨む。
レオも、きつい瞳で睨み返す。そのせいでエドヴァルドを失ったのだ。
「この魔法はなんだ?・・・そのじじいか?」
「そうじゃよ。魔法はお前たちの専売特許だとでも思ったか。貴様らの魔法など赤子の手をひねるようじゃわい。」
「・・・どうするつもりだ?」
「殺されたくなければ手を引け。こちらはこのようにいつでも国ごと制圧できる。」
「はっ!甘いことだ。」
「もう一度問う。幼い子を殺める理由は?」
「理由をいえば解放するとでも?」
「ふん。解放してほしい?覚悟もなく大それたことを・・・しょせんその程度の器という事じゃ。」
エンヤが言い捨てると、トルスティの顔がゆがむ。
「とうたまは?とうたまどこ?」
状況がわかっていないだろう子供が無邪気に聞く。
そんなカティに苛立つように
「お前が・・・お前さえいなければ私は真の王になれたのだ!」
「しんの王?あたまもちからもよわい・・・おうたまにはなれないよ?」
「なんだと?!お前さえさっさと死ねば!」
「・・・。」
ぐっとまた結界内の圧が強まり、押しつぶされて意識を失うものまで出ている。
それに負けて椅子から転がり落ちた国王をレオは拘束する。
カティはミンミに降ろしてもらうと国王の前に立った。
エドヴァルドの事を想うと悲しみと怒りで何かが体の中から飛び出してしまいそうなのを必死に堪える。周囲の壁や調度品にピシピシとひびが入る。
無様に崩れ落ちて身動きできないトルスティ、この男と血がつながっているとは思えない。憎くて苦しくて・・・きっと今、自分の気持ちのままに力を解放すると大勢の命を奪ってしまう。
一度深呼吸をして震える体を落ち着けた。
同じ舞台に上がらない。この男と自分は違う。
落ち着かなきゃ・・・落ち着いて。
トルスティの身体が急に軽くなると逆に浮きはじめ、天上にたたきつけられるかと思った瞬間、今度は床に向かって落下した。
「うわ~?!」
床まであと数センチというところでピタッと止まった。
そして薄い膜のような球体で囲まれる。
「何の真似だ!」
その球体は広い部屋をコロコロ転がり始めた。初めはゆっくりと転がりトルスティはその中で歩き、バランスを取る。
「おい!ふざけるな!」
腹が立って足を止めると中で転がってしまう。どんどん早く転がる球体に合わせ、どんどん早く足を動かすトルスティ。しまいには全力で走るが、球体は止まる様子もなく室内をコロコロ転がりまくる。
足がもつれたトルスティは転倒し、ごろごろ上へ下へと球体の動きに翻弄されてみっともない姿をさらす。
トルスティは屈辱に怒りをあらわにするが、どうしようもない。目も回り、ふらふらになったころやっとやっと球体がはじけるように消え、地面にたたきつけられるように落ちた。
カティは、重力に押さえつけられなくてもふらふらで床に這いつくばるトルスティの額に「偽国王」、左頬に「ダメ」そして右頬に「絶対」と書いた。
そしてスッと鏡を前に差し出した。
「き・・さま!私を誰だと思ってる!」
「まけいぬ。」
「殺す!卑怯者!正々堂々と勝負しろ!」
レオが鼻で笑い、怒りをあらわにする。
「赤ん坊に暗殺者を送り込む貴様が言うな!」
「とうたまかえして。」
「さっきからなんだ?!とうたまとうたまって!」
レオが沈痛な面持ちで
「あの魔獣を倒した英雄の事だ。あれと一緒に湖に沈んだ・・・」
「ふはははは!こいつの義父が死んだのか?いい気味だ!あの湖はその後崩れた山からマグマが流れ出し湖の水で爆発を起こし、あたり一面埋まったわ!もうどこがどこかも分かるまい!」
大笑いする国王の口に猿ぐつわを嵌めるとレオは心配そうにカティを見た。
ミンミが涙をこらえながらカティを抱きしめる。
「・・・レオ、初めて人に死んでほしいと思ったの。」
「・・・。当然です。わたくしがやります。」
「ううん。こんな人間の為にレオの手と心を少しでも汚すわけにはいかないの。」
トルスティの側近から今回の事件のあらかたが判明した。
バートランド国は直系が王位継承し、儀式を経て正式な王と認められる。
儀式とは、迷路になっている洞窟を無事通り抜けて王宮につながる扉に到着すること。
バートランド国王だけがもつ「直観」、その力のない者は通り抜けることが出来ない洞窟。そして不思議なことにその力は、正統な王位第一継承者にしか引き継がれないのだ。
トルスティは前国王の一人息子ユリウス王太子を暗殺していた。前国王が崩御した時、すぐに自分が正統な後継者だとその儀式を行った。しかし儀式は失敗した。
正統な継承者がどこかにいるのだ。
トルスティは前国王の隠し子を探したが見つからなかった。
しかし必死に調査した結果、殺害したユリウスに子供がいたことが判明した。だがその子供であるクラウスも死亡していることが分かり、そしてさらにその子どもがいることも。
その子供を処分しない限り、自分は真の国王と認められない。甥を殺してまで手に入れたはずの王位。
周囲からささやかれる疑惑や落胆の声が許せなかった。そのための努力は惜しまず必死でやってきたのだから。
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