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カティ ヴィクトル王子に慰められる

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 公爵邸に転移したカティはこっそりと自室で泣いた。
「カティ様!どうなさいました?!」
 抑えるように泣くカティにミンミは即座に気が付いた。

 何かあればすぐに国王に報告するようエドヴァルドは指示していた。泣かないカティが泣くときは何かある時。そう理解している公爵邸の使用人は即座に王宮に連絡をいれた。
 流石にすぐに国王が走ってくることはなかったがヴィクトル王子と王妃が来てくれた。
 王妃の少々豊かなお胸に抱かれながら、すぐに落ち着いた。
 少し前のカティなら、あの一言でまた魔力が暴走してしまっていたかもしれない。

「大丈夫?」
「はい。」
 カティはヴィクトルに目で合図を送った。
「母上、今日ここに泊まっても良いですか?カティの側についててやりたいのですが。」
「そうね。警備は万全だし・・・でも何があったのか知りたいのだけれどまだうまく説明できないわよね。」
 困ったように王妃は言う。
「僕が時間をかけてゆっくり聞いてみます。何よりこんなに泣くのをほっておけません。」
 王妃は息子に向かって微笑むと
「そうね、あなたが守ってあげてね。」
 そう言い、王妃は別室に移動した。

「で、どうしたの?」
「・・・怒らないでね。」
「いや、怒るだろうね。なんかすごいことした気がする。」
「うっ・・・」
「話してくれないと分からないよ。」
「うん。ヴィー城に・・・忍び込んだの。」
「はあ?!」
 王子の仮面が外れて思わず叫ぶ。
「どうやって?!」
「うんと・・・あの・・・」
「宰相に内緒にするように言われてるんだ?でもこの国一の魔術師の君が何やってもまあ・・・驚かないようにする。」
「・・・転移といいまして。瞬間に行きたいところに行けるといいますか。」
「・・・。本気で言ってる?」
 カティはスッとヴィクトルの前から姿を消した。
「!! カティ?!」
 急に姿を消したカティに驚いて周囲を見渡したヴィクトルは
「うをっ?!」
 今度は驚いて叫んだ。

 ベッドの下からぬ~っとカティが仰向けのまま出てきたからだ。
「・・・心臓に悪いんだけど。」
「とまあ、こういうわけで忍び込んだのです。」
「・・・そうか。驚きすぎて何をいえばいいのかわからないよ。続きの話を頼む。」
「で、とう様から何の便りもないのが心配で、何か情報を聞き出せないか聞きに行ったの。トルスティ様の為に私を殺すみたいなことを言ったわ。私が生きていると儀式が成功しないって。このままじゃ埒が明かないから魔獣に襲わせるって。」
「!!とんでもない証言だよ!すぐに父上に伝令を飛ばしておく。」
「あ、でも何で知ってるのか聞かれたら困る。」
「そうだね・・・えと、落とし穴をかいくぐってカティを襲った暗殺者から聞いたことにして、ショックで魔力が暴発して賊を消し去ってしまって・・・ショックで泣いた・・・事でどうかな。」
「そうだね・・・うん、ありがとう。とう様にも知らせたいのに・・・あ、伝令飛ばせるんだった!」
 カティは慌ててエドヴァルドにトルスティという名と魔獣について飛ばした。

「・・・なぜあんなに泣いてたの?」
「・・・・別に。何でもない。」
「宰相がいない今、僕しか話を聞いてあげられないだろう?誰にも言わないから安心して。」
「ヴィー・・・」
 カティはエドヴァルドとエンヤのおかげでもう乗り越えていた。
 カティを疎む存在がいた。ただそれだけだ。それ以上にエドヴァルドもレオ、ミンミ、エンヤ、国王夫妻もみんな心からカティを愛し大事に思ってくれていることを信じているから。
 今更あのような言葉を投げつけられたところで、カティの芯は揺るがない。
「それでも・・・悲しくなっちゃったの。どうして次から次へと私の事を邪魔って思う人が出てくるのかなって。」
 ヴィクトルは何も言ってあげられなかった。
 代わりにカティの頭のてっぺんにキスをした。
(・・・。・・・殿下が・・・鬼畜と同じ・・・なにゆえに)
 とはいえ、第三王子もまだ11歳。
 それほど大した意味は込められていないだろうが、カティはエドヴァルド以外のスキンシップに真っ赤になった。

「僕も君の事大好きだよ。君を邪魔に思う奴らは自分の都合だけで邪魔にしているだけで、君が悪いわけじゃない。すべてあちらに非がある。カティが落ち込む必要も悲しむ必要もない。」
「ヴィー・・・ありがと。」
 ヴィクトルにきゅっと抱き着いた。

 カティが飛ばした伝令はエドヴァルドに届くことはなかった。
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