転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる

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斬新な牢獄

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 公爵邸には時々、第三王子のヴィクトルが遊びに来てくれた。
「君は僕ら王族より狙われるね。」
「・・・いい加減にしてほしい。・・・犯人が分かったら許さないんだから。」
 カティには血縁に関することなど詳細は説明されていなかった。
「それにしても君のお仕置きは面白いなあ。今度また暗殺者捕まえたら僕にも試させてよ。」
「ヴィーも魔法使える?」
「少しだけなんだ。だからカティのように魔法でお仕置きは出来ないけど前にカティから話を聞いて考えていることがあってさ。父上に頼んでいるところなんだ。死罪にしていい犯罪者なんてそんなにザクザクいなくて試せなかったんだけど、いい機会だから。」
「いい機会って!私の命かかっているんですけど?!」
「だって絶対大丈夫でしょ?君すごく強くなったって父上が。」
「・・・そうだけど・・・でもいい気はしないよ?死ねって思われているんだから。」

 ヴィクトルはカティを抱き上げるとポンポンと背中を叩いた。
「そうだね、ごめん。配慮が足りなかった。」
「・・・別にいいけど。こうして大事にしてくれる人がいる事の方が大事だってわかったから。」
「うん。ずっと大事にするよ。」
「え?」
「何でもない。カティを敵視する者なんてわずかだよ。僕たちみんな、君の事が好きだし本当に大事だから。」
「ありがとう。」

 その後、ヴィクトルがやりたいことを聞いたカティは目をキラキラさせ、ワクワクが止まらなくなった。二人で悪い笑いを漏らしながら計画を立ててゆき、それを陛下に許可をもらう。
 そして、さらに結界を弛めたふりをして暗殺者をほいほい捕獲するのだった。

 ヴィクトルの案を面白がった国王は、郊外に廃墟のように捨ておかれた屋敷をそのままからくり屋敷に改造した。
広い庭を囲むように高い壁が張り巡らされ、唯一の出入り口には二重の扉と見張りの兵。そして庭や屋敷を覗けるように、壁外のところどころに高い見張り台・見物台が設置された。実は室内の様子も、隠し通路から覗けるようになっている。

 ヴィクトルと国王、カティはその施設の見学に来た。
 国王は幼いカティの同行を渋ったが、カティに見せたかったヴィクトルがカティへは真実を隠すと説得した。
 その施設には現在8名の暗殺者が収容されている。その前につかまった暗殺者は国王が処刑をしてしまっており、やや少なめだ。
 彼らは牢に閉じ込められることなく、敷地内は自由がゆるされていた。物理面だけではなく、外に逃げることは出来ないよう魔法で結界も張られている。

 庭は花が咲き乱れ、飛び石が置かれ、池には橋がかけられており、美しく整えられている。牢獄というよりは別荘で軟禁といった様相だ。

 ここに放り込まれた暗殺者たちは、はじめは余裕だった。
 通告されたのはここに幽閉という事だけ。
 食事は、時間と場所は不定に敷地内に放り投げるという事と、もし自白したいことがあればいつでも耳を貸すという事だけだった。
 この国の甘い刑罰を馬鹿にした暗殺者たちは、この屋敷をじっくり調べて脱出するつもりだった。
 一人の暗殺者は、屋敷を囲む壁を調べるために飛び石を踏みつつ庭に向かった。すると一つの石がこくんと沈んだかと思うと回転し、男は穴に落ちていった。石はくるっと戻ってまた何もない様に庭を飾った。

 それを見ていたカティや国王は大喜びだった。
「穴の中はどうなってるの?」
 ヴィクトルに抱っこされているカティはこそこそ聞く。
「ああ、暗殺者ほいほいと同じだよ。ねばねばでしばらく動けない。弱ったら引き上げて奴隷だ。」
「・・・。奴隷にするとき額に、「人間やめました」って書いてあげてね。」
「いいね!それ。」
 二人の可愛い悪だくみに国王はにこにこ頷いている。

 しかし実際は・・・餓死するまでそのまま放置される。そして不定期に提供される食事にも時々毒が混入される。咲き乱れる木々や花々の中にも毒を持つ物もあり、自炊することも命がけ。屋敷内にもいろいろ仕掛けがあり、うっかりすると命は失われる。
 ここに閉じ込められた者たちは直にこの屋敷の恐ろしさを知ることになった。食事をするのも屋敷内を移動するのも命がけであることを知り、身動きできなくなっていくのである。
 しかし国王もヴィクトルもカティにはそれを告げない。
 あくまでも命を奪わない罰だと伝えておく。カティの純粋な心を余計なことで穢したくないから。
 
 ヴィクトル提案の面白半分の施設を許可した理由は、処刑人の精神的負担の軽減だ。いくらお役目で相手が極悪人だとしても、無抵抗の相手を殺すのは心に相当な負担になる。
 その点カティが名付けた風雲ヴィー城では、罪人本人の選択、行動で命が左右される。こちら側の胸は痛まない。それに生きのびれば生きのびるほどその間、死の恐怖と戦わなくてはならない。
 なかなかいいシステムかもしれないと国王は結果を見て満足した。
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