転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる

文字の大きさ
上 下
52 / 98
連載

斬新な牢獄

しおりを挟む
 公爵邸には時々、第三王子のヴィクトルが遊びに来てくれた。
「君は僕ら王族より狙われるね。」
「・・・いい加減にしてほしい。・・・犯人が分かったら許さないんだから。」
 カティには血縁に関することなど詳細は説明されていなかった。
「それにしても君のお仕置きは面白いなあ。今度また暗殺者捕まえたら僕にも試させてよ。」
「ヴィーも魔法使える?」
「少しだけなんだ。だからカティのように魔法でお仕置きは出来ないけど前にカティから話を聞いて考えていることがあってさ。父上に頼んでいるところなんだ。死罪にしていい犯罪者なんてそんなにザクザクいなくて試せなかったんだけど、いい機会だから。」
「いい機会って!私の命かかっているんですけど?!」
「だって絶対大丈夫でしょ?君すごく強くなったって父上が。」
「・・・そうだけど・・・でもいい気はしないよ?死ねって思われているんだから。」

 ヴィクトルはカティを抱き上げるとポンポンと背中を叩いた。
「そうだね、ごめん。配慮が足りなかった。」
「・・・別にいいけど。こうして大事にしてくれる人がいる事の方が大事だってわかったから。」
「うん。ずっと大事にするよ。」
「え?」
「何でもない。カティを敵視する者なんてわずかだよ。僕たちみんな、君の事が好きだし本当に大事だから。」
「ありがとう。」

 その後、ヴィクトルがやりたいことを聞いたカティは目をキラキラさせ、ワクワクが止まらなくなった。二人で悪い笑いを漏らしながら計画を立ててゆき、それを陛下に許可をもらう。
 そして、さらに結界を弛めたふりをして暗殺者をほいほい捕獲するのだった。

 ヴィクトルの案を面白がった国王は、郊外に廃墟のように捨ておかれた屋敷をそのままからくり屋敷に改造した。
広い庭を囲むように高い壁が張り巡らされ、唯一の出入り口には二重の扉と見張りの兵。そして庭や屋敷を覗けるように、壁外のところどころに高い見張り台・見物台が設置された。実は室内の様子も、隠し通路から覗けるようになっている。

 ヴィクトルと国王、カティはその施設の見学に来た。
 国王は幼いカティの同行を渋ったが、カティに見せたかったヴィクトルがカティへは真実を隠すと説得した。
 その施設には現在8名の暗殺者が収容されている。その前につかまった暗殺者は国王が処刑をしてしまっており、やや少なめだ。
 彼らは牢に閉じ込められることなく、敷地内は自由がゆるされていた。物理面だけではなく、外に逃げることは出来ないよう魔法で結界も張られている。

 庭は花が咲き乱れ、飛び石が置かれ、池には橋がかけられており、美しく整えられている。牢獄というよりは別荘で軟禁といった様相だ。

 ここに放り込まれた暗殺者たちは、はじめは余裕だった。
 通告されたのはここに幽閉という事だけ。
 食事は、時間と場所は不定に敷地内に放り投げるという事と、もし自白したいことがあればいつでも耳を貸すという事だけだった。
 この国の甘い刑罰を馬鹿にした暗殺者たちは、この屋敷をじっくり調べて脱出するつもりだった。
 一人の暗殺者は、屋敷を囲む壁を調べるために飛び石を踏みつつ庭に向かった。すると一つの石がこくんと沈んだかと思うと回転し、男は穴に落ちていった。石はくるっと戻ってまた何もない様に庭を飾った。

 それを見ていたカティや国王は大喜びだった。
「穴の中はどうなってるの?」
 ヴィクトルに抱っこされているカティはこそこそ聞く。
「ああ、暗殺者ほいほいと同じだよ。ねばねばでしばらく動けない。弱ったら引き上げて奴隷だ。」
「・・・。奴隷にするとき額に、「人間やめました」って書いてあげてね。」
「いいね!それ。」
 二人の可愛い悪だくみに国王はにこにこ頷いている。

 しかし実際は・・・餓死するまでそのまま放置される。そして不定期に提供される食事にも時々毒が混入される。咲き乱れる木々や花々の中にも毒を持つ物もあり、自炊することも命がけ。屋敷内にもいろいろ仕掛けがあり、うっかりすると命は失われる。
 ここに閉じ込められた者たちは直にこの屋敷の恐ろしさを知ることになった。食事をするのも屋敷内を移動するのも命がけであることを知り、身動きできなくなっていくのである。
 しかし国王もヴィクトルもカティにはそれを告げない。
 あくまでも命を奪わない罰だと伝えておく。カティの純粋な心を余計なことで穢したくないから。
 
 ヴィクトル提案の面白半分の施設を許可した理由は、処刑人の精神的負担の軽減だ。いくらお役目で相手が極悪人だとしても、無抵抗の相手を殺すのは心に相当な負担になる。
 その点カティが名付けた風雲ヴィー城では、罪人本人の選択、行動で命が左右される。こちら側の胸は痛まない。それに生きのびれば生きのびるほどその間、死の恐怖と戦わなくてはならない。
 なかなかいいシステムかもしれないと国王は結果を見て満足した。
しおりを挟む
感想 498

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。