46 / 98
連載
カティ 修行にて
しおりを挟む
魔獣の森の中にある聖なるスポット。
そこは大地から魔力が湧き上がってくるようで、魔力を持つ者は感覚が研ぎ澄まされ、力が漲る場所だった。。
そのスポットには魔獣は入り込めないが、その周りには凶暴な魔獣が闊歩している環境。
エンヤの修業とは、聖なるスポットで魔力と魔法を引き出す練習をしては、そのスポットの外ですぐ実践。
その特別な場所でカティが思いついた魔法を、とにかくイメージさせる。聖なる力の後押しのおかげで、そのイメージが形になる。
一度それを体験すると、自信が付きその魔法が身についていく。カティは楽しくなり、エンヤでさえ不可能なこの世界にない魔法をどんどん生み出した。
後はそれを安定させ、威力を増していく必要がある。それには修行と称して、即魔獣と戦う討伐そのものがあてられた。
魔獣にエンヤがわざとらしく襲われかけては、「嬢ちゃん助けてくれい。」と助けを求めてくる。時には手におえない大きな魔獣や凶暴な魔獣でさえ容赦なく退治させられる。カティはおかげでぐんぐん力は強くなっていった。
あとはカティ自身が人からの攻撃に対して力を発揮できるのか。ここが一番カティにとって難しい問題だった。
聖地での特訓の後、エンヤは野盗が出るという山にわざわざ行った。
案の定、野盗に襲われて固まってしまい相手を攻撃できなかったカティをかばうようにエンヤはわざと切られた。
その後、怒りを爆破させたカティは野盗を再起不能になるまで叩きのめした。重傷を負ったエンヤに大泣きをしながら治癒魔法をかけたカティにエンヤは諭した。
「嬢ちゃん、魔法がどれだけ使えるようになっても、実際に使わねば意味はない。お主が怪我をすると宰相も陛下も屋敷のみんなも悲しむぞ。」
「でも・・・動けないの。怖いの。」
「嬢ちゃんの力があれば負けることはない。」
「・・・でも相手が・・・死んじゃう・・・私もう・・・」
公爵邸襲撃の時に無意識に相手を殲滅し、今回も師匠を傷つけた相手に重傷を負わしている。相手を簡単に殺してしまう力が怖かった。
「嬢ちゃんを襲う奴に遠慮はいらん。反撃しないと自分が死んでしまうんじゃぞ。」
「・・・もし・・・死んでも・・・いなくなったほうがとう様に迷惑掛かけなくて済むかもしれない・・・とう様は大事にしてくれるけど私が赤ちゃんだから見捨てられないだけで・・・誰からも望まれたことないの。」
泣きながらカティは前世の話、実母から殺されかけたことや命を何度も狙われたことを話した。
カティはひどく傷つき、消えてしまった方が皆のためだと無意識下に刷り込まれている。
エドヴァルドがどれだけ愛情を示してくれても、公爵邸で毎日楽しく暮らしていても魂の根っこのところが怯えと不安で固められている。
「嬢ちゃん・・・」
幼いカティがこれほど辛い思いを抱えているとしり、エンヤは哀れになった。その心の奥深くに暗く漂う想いが魔法の発現を押さえ込んでしまっている。
「じゃがな・・・嬢ちゃんが自分の身を大事に思わなかったら、嬢ちゃんの事を大事にしているわしや宰相や周りの皆が嬢ちゃんを守るために身を挺することになるんじゃ。嬢ちゃんは皆から愛されておるんじゃ、それをようようわかって欲しい。わしでさえこうなんじゃ、宰相はお主を守るためには自分が死ぬことを厭わないじゃろ。わしらを守るためにも嬢ちゃんは自分を大事にせねばならん。」
カティはウグウグ泣きながら、
「・・・大事?仕方なくじゃない?迷惑じゃない?私本当にいてもいい?」
「そうじゃ。命を懸けて守ってやりたいほど大事じゃ。」
実際に命を懸けてカティをかばってくれたエンヤの言葉には重みも真実味もある。
カティはエンヤにぎゅっとしがみついた。
「お師匠様・・・痛かった?切られたところ痛かった?」
「大丈夫じゃ。お主がようよう治してくれた。」
「ごめん・・・ごめんなさい。」
エンヤはカティの背中をポンポンと叩いてやった。
「うん・・・強くなる。・・・お師匠様、ご指導お願いします。」
最強赤ちゃん誕生の瞬間だった。
そうして、どんどん国内の野盗を退治して瞬発力と精神力を鍛えた。
するといつの間にかローベンス国の治安が良くなり、旅の往来が安全に行えるようになったおかげで交易が発展するというおまけまでついてきた。
裏の世界では、「闇に舞う蝶カティヨン」の名が広まり恐れられたとかいないとか。
そこは大地から魔力が湧き上がってくるようで、魔力を持つ者は感覚が研ぎ澄まされ、力が漲る場所だった。。
そのスポットには魔獣は入り込めないが、その周りには凶暴な魔獣が闊歩している環境。
エンヤの修業とは、聖なるスポットで魔力と魔法を引き出す練習をしては、そのスポットの外ですぐ実践。
その特別な場所でカティが思いついた魔法を、とにかくイメージさせる。聖なる力の後押しのおかげで、そのイメージが形になる。
一度それを体験すると、自信が付きその魔法が身についていく。カティは楽しくなり、エンヤでさえ不可能なこの世界にない魔法をどんどん生み出した。
後はそれを安定させ、威力を増していく必要がある。それには修行と称して、即魔獣と戦う討伐そのものがあてられた。
魔獣にエンヤがわざとらしく襲われかけては、「嬢ちゃん助けてくれい。」と助けを求めてくる。時には手におえない大きな魔獣や凶暴な魔獣でさえ容赦なく退治させられる。カティはおかげでぐんぐん力は強くなっていった。
あとはカティ自身が人からの攻撃に対して力を発揮できるのか。ここが一番カティにとって難しい問題だった。
聖地での特訓の後、エンヤは野盗が出るという山にわざわざ行った。
案の定、野盗に襲われて固まってしまい相手を攻撃できなかったカティをかばうようにエンヤはわざと切られた。
その後、怒りを爆破させたカティは野盗を再起不能になるまで叩きのめした。重傷を負ったエンヤに大泣きをしながら治癒魔法をかけたカティにエンヤは諭した。
「嬢ちゃん、魔法がどれだけ使えるようになっても、実際に使わねば意味はない。お主が怪我をすると宰相も陛下も屋敷のみんなも悲しむぞ。」
「でも・・・動けないの。怖いの。」
「嬢ちゃんの力があれば負けることはない。」
「・・・でも相手が・・・死んじゃう・・・私もう・・・」
公爵邸襲撃の時に無意識に相手を殲滅し、今回も師匠を傷つけた相手に重傷を負わしている。相手を簡単に殺してしまう力が怖かった。
「嬢ちゃんを襲う奴に遠慮はいらん。反撃しないと自分が死んでしまうんじゃぞ。」
「・・・もし・・・死んでも・・・いなくなったほうがとう様に迷惑掛かけなくて済むかもしれない・・・とう様は大事にしてくれるけど私が赤ちゃんだから見捨てられないだけで・・・誰からも望まれたことないの。」
泣きながらカティは前世の話、実母から殺されかけたことや命を何度も狙われたことを話した。
カティはひどく傷つき、消えてしまった方が皆のためだと無意識下に刷り込まれている。
エドヴァルドがどれだけ愛情を示してくれても、公爵邸で毎日楽しく暮らしていても魂の根っこのところが怯えと不安で固められている。
「嬢ちゃん・・・」
幼いカティがこれほど辛い思いを抱えているとしり、エンヤは哀れになった。その心の奥深くに暗く漂う想いが魔法の発現を押さえ込んでしまっている。
「じゃがな・・・嬢ちゃんが自分の身を大事に思わなかったら、嬢ちゃんの事を大事にしているわしや宰相や周りの皆が嬢ちゃんを守るために身を挺することになるんじゃ。嬢ちゃんは皆から愛されておるんじゃ、それをようようわかって欲しい。わしでさえこうなんじゃ、宰相はお主を守るためには自分が死ぬことを厭わないじゃろ。わしらを守るためにも嬢ちゃんは自分を大事にせねばならん。」
カティはウグウグ泣きながら、
「・・・大事?仕方なくじゃない?迷惑じゃない?私本当にいてもいい?」
「そうじゃ。命を懸けて守ってやりたいほど大事じゃ。」
実際に命を懸けてカティをかばってくれたエンヤの言葉には重みも真実味もある。
カティはエンヤにぎゅっとしがみついた。
「お師匠様・・・痛かった?切られたところ痛かった?」
「大丈夫じゃ。お主がようよう治してくれた。」
「ごめん・・・ごめんなさい。」
エンヤはカティの背中をポンポンと叩いてやった。
「うん・・・強くなる。・・・お師匠様、ご指導お願いします。」
最強赤ちゃん誕生の瞬間だった。
そうして、どんどん国内の野盗を退治して瞬発力と精神力を鍛えた。
するといつの間にかローベンス国の治安が良くなり、旅の往来が安全に行えるようになったおかげで交易が発展するというおまけまでついてきた。
裏の世界では、「闇に舞う蝶カティヨン」の名が広まり恐れられたとかいないとか。
337
お気に入りに追加
8,091
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。