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国王 カティの後ろ盾になる

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 翌日はエドヴァルドと一緒に王宮へ出仕した。
「カティ、今日は陛下に会いに行くぞ。」
 国王の執務室に行くと、国王が待ちかねていた。

「よく来たな。さ、カティちゃん。こちらに座りなさい。」
 テーブルの上にはカティの為にいろんな国の珍しいお菓子が並べられていた。
 国王は、孫のようにかわいがっているカティにもっと会いたかったが、王宮隠し通路事故以来、エドヴァルドが国王に対して冷ややかなため、及び腰になっていた。
 ヴィクトル王子は時々公爵邸に遊びに行っているというのに自分には冷たい。
 エドヴァルドに洗脳なり脅迫でもされていないか国王は心配しながらも、ヴィクトルと可愛いカティの婚約が調うことをひそかに願っている。
「おうたま、ありがと。」
「好きなだけ食べなさい。」
「はい!」
 すぐに満面の笑顔でエドヴァルドに食べさせてもらっている。このカティに癒されるのだ。
「してエドヴァルド、報告したいこととは。」
「はい、カティの能力についてです。それとカティの保護を。」
 正体不明で、かなりの強敵。これから成長していくカティをずっと側に置くのは不可能である。カティの身の安全に関して協力を求めることにした。
 一時は国王でさえ、信用しきれなかったが、前回契約も交わし、今はまあまあ信用している。クラウスもそうだったが、カティもマルガレータを怖がったように何か勘が働くようだ。そのカティが懐いている国王夫妻は明らかな敵ではないだろう。

「実は公爵邸が襲撃されました。」
「なんだと?!」
 国一番の魔法の使い手のエドヴァルドが結界をはり、警備も厳重な公爵邸を襲撃するとはどれほどの相手なのか想像がつかない。
「それで被害は?!」
「騎士3名、侍女一名が瀕死の重体。そして・・・カティの命が奪われました。」
 カティの場合は自家中毒だが、それも襲撃によって引き起こされたことだ。
「・・・何を言ってる?」
 国王は嬉しそうにお菓子をほおばっているカティを見やる。
「私が知らせを受けて屋敷に戻った時にはカティは息をしておりませんでした。」
「・・・それは誠か。」
「はい。」
 カティも顔を上げて陛下にうんと頷いた。

「なんてことだ・・・それで!それでカティちゃんはどうなったのだ!どこも悪い所はないか?!」
 カティを抱き上げると顔や手足を確かめた。
「とうたま、たすけてくれた。」
「助けるって・・・エドヴァルド!お前、蘇生魔法まで使えるのか?!」
「陛下、そんな事出来ませんよ。心臓に小さな雷を落として、止まった心臓を動かしたのです。そこから心臓を一定の強さとリズムで圧迫して蘇生させました。」
「心臓に雷って・・・なんて恐ろしいことを!それでカティちゃんが死んだらどうするつもりだ!」
 カティが国王の膝の上から、お菓子に手を伸ばそうとしていたところを国王にグイっと抱きしめられて邪魔される。
「何かしないとそれこそカティを失っていたでしょう。その蘇生術も陛下にお伝えし、医師や騎士、兵士にも学んでもらいたいと思っております。」
「・・・そうか・・・」
 国王は大きく息を吐きながら冷や汗を拭った。
「よく耐えたな、こんな小さな体で。」
 手を伸ばしもうすぐお菓子に手が届くという時、ふたたび国王に抱きしめられたカティは空振りをした。
「ぐぬぬぬ・・・」
 するとスッと目の前にお菓子が差し出される。
 エドヴァルドがお菓子を口元に持ってきてくれていた。
 カティはニコニコの顔で口を開いて食べさせてもらった。
「とうたま、ありがと。」
 ムッとした国王は、お菓子を手に取りカティの口元に持っていった。
「えっと・・・ひとり、たべれるの。」
「いやいや、カティちゃんは死の淵から生還したところだろ?もっと甘えるがよい。」
 ただ自分がやりたいだけの国王はもっともらしいことを言った。

 少々どころか大いに食べさせられたカティはうつらうつらしはじめ、そのまま国王の膝の上で眠ってしまった。
 その瞬間、国王は厳しい顔つきになり
「それで、この子にそんなことをしたやつらはどうなった?」
「実行犯は全て仕留めましたが・・・身元が分かるものはなく正体はわかっておりません。私の結界を突破したことといい、ただものではないと思われます。」
「目的はお前か?」
「いえ・・・それがおそらくカティだと。」
「なに?!心当たりは?」
「今は・・・ないはず。アンティラ家の一派も粛清すみです。今更カティが狙われる理由は思いつきません。」
 カティが異世界の知識を持っていることや、先日覚醒した高度な治癒魔法と相手の心臓を一気に仕留める攻撃魔法を使えることはまだエンヤと屋敷以外の者には知られていない。もし知られれば、利用しようと攫われることはあっても命を狙われることはないはず。

「今はない?」
「陛下、内密に報告がございます。口外無用を誓っていただけますか?」
「わかった。」
「先ほど、実行犯を仕留めたと言いましたがやったのはカティです。」
「なんだと?!」
「カティは魔法がうまく使えませんが、潜在能力は高い。追い詰められたときに無意識に攻撃してしまったようです。」
「なんてことだ・・・」
「そして、死を待つばかりの侍女も完治させるほどの治癒魔法もです。」
 国王は唸るしかなかった。
 エドヴァルドが報告してきたわけが分かった。

 人の命を奪う力、人の命を救う力。相反する力を持つ子供の存在が明らかになると狙われるだろう。エドヴァルドが常時側にいれれば問題はないが、成長するにつれて別行動も増える。
 事情を知った信頼できる味方が多い方が守りやすい。
「わかった。この子の能力は稀少であり、使いようによっては危険だ。狙われる可能性も高い。王家の庇護対象とする。緊急時に限らず、王宮への出入り自由とし、護衛やその他必要なものも用意しよう。」
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。」
 国王は今気が付いたというように
「そういえば、ヴィクトルが世話になっているようだな。」
「ええ。良くカティの世話をしてくれています。」
「ほほう!なるほどなるほど。二人は仲が良いのだな。エドヴァルドはヴィクトルの事はどう思う?」
 ヴィクトルと婚約させれば準王族として、手厚い警備体制が敷ける。そして可愛いカティが自分の娘になり、おまけに稀少な能力が王家の手の内に入る。
「赤ん坊を隠し通路に連れて行った殿下の事は、子供思いで優しいお方だと思っておりますよ。」
「・・・そうだな、ヴィクトルは子供の相手が得意でな。これからもよろしく頼む。」
 今、婚約など言おうものなら逆鱗に触れると国王は悟った。またチャンスはあるだろう、カティに一番近い所にヴィクトルはいるのだから。

「それで、カティちゃんの魔法は今どうなっている?」
「魔法についてはコントロールが全くできず、治癒魔法も低レベルなものです。今は魔術師エンヤ殿に師事させております。」
「・・・エンヤか。あの老師は、能力は高いがカティちゃんには向いてないんじゃないか?」
「・・・残念なことに相性は良いようです。」
 エドヴァルドはため息をついた。
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