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連載

カティ 魔力暴走

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*医療的な話が出てきますが、あくまで創作なのでご了承願います(*´▽`*)

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 エドヴァルドはミルカとレオを執務室に呼び、レオがお茶を入れると皆が席に着いた。
「カティ、何があったのか話せるか。」
「はい・・・。私はどう?」
「私が戻ってきた時にはお前はもう息をしていなかった。」
「死んで・・た・・・?」
「ああ、お前に聞いていた雷ショック魔法と心肺蘇生を施した。」
「雷ショック魔法と心肺蘇生?」
 ミルカが聞く。

 この世界には心臓マッサージの概念がなかった。赤ん坊のカティの命を救ったときのように人工呼吸は知られていたが、心臓へのマッサージと合わせることで救命率が上がることは発見されていなかった。
 そして、それ以上に心臓に直接電流を流す救命措置など知られているはずもなく、エドヴァルドはカティから聞いたことがあったのだ。カティがいた世界はこの世界の医学に比べて相当発達していたようで、興味深い情報ばかりだった。
 カティのいた世界よりもよほど命が失われやすいこの世界では必要な知識である。
 カティの死が医師に確認され、魔術医のミルカももうダメだと判定した時それしかないとやってみたのが功を奏した。

「ありがとう・・・」
「ああ。」
 エドヴァルドはカティを抱いていた手に力を込めた。カティが呼吸もなく横たわっているのを見たとき表情は変わらずはたから見れば気が付かなかっただろうが、絶望と、暗殺者への憎悪で心の中は大荒れだったのだ。
「私が杖なんかで騒いだから・・・あんなことに。ごめんなさい。」
「仕方があるまい。私も結界を越えて易々と侵入を許してしまった。敵の力は侮れんということだ。」
「護衛さんが木の枝を切ってちょっと大きい杖を作ってくれたの。嬉しくてまた手を振り上げたら・・・すごい光と風が出ちゃって。前より強い光が出て、葉っぱがいっぱい舞い降りてきたからミンミたちが驚いて屋敷に戻ろうとしたときに急に男たちが出てきて護衛が切られたの。ミンミが私を連れて走ってくれたんだけど、後ろから切られて倒れてしまって。それでも私をかばってくれて・・・そのせいで何度も何度も切られて・・・」
 その時の恐怖を思い出してまた涙が出る。

「それで、動かなくなったミンミから私は賊に引っ張り出されてしまって・・・ミンミと護衛さんたちが血まみれで倒れているのが見えて」
 その時の光景が恐怖と怒りと悲しみと一緒に頭に浮かぶ。
 賊がカティに剣を突き立てようとしたときカティはその感情を爆発させた。

 憎い憎い許さない!こいつらを許さない!

 そう思った瞬間、剣を構えた男に向かってカティの体から何かが飛び出した。男は胸をさえるとウっと一言発するのみで崩れ落ちた。
 それを見た仲間たちが駆け寄ってきたが、次々と崩れ落ちていった。

 そして今、あの時と同じように体の中をすごいスピードで熱いエネルギーのようなものが走り回り、外に飛び出ていくのを感じる。
「カティ!落ち着け!」 
 エドヴァルドに体を揺さぶられて我に返った。
「え?」
 エドヴァルドは部屋にいる全員に防御壁をはっていた。
「ここにいるものも死なせるつもりか?」
「な・・なんのこと?」
「無自覚か・・・やっかいだな。」
 取りあえず賊がなぜ死んだのかは分かった。
 それまで魔法がうまく放出できなかったカティが身の丈に合った杖のおかげで放出しやすくなっていた。加えて、感情が爆発し身体に抑圧されていた力があふれ出たと思われる。
 皮肉にも暗殺者が心臓を直接攻撃するような恐ろしい攻撃魔法と瀕死の侍女たちを救う治癒魔法を引き出すことになった。

「すごく怖かったの・・・許せなくて。我慢できないって思ったら勝手に相手が倒れていったの。それでミンミのもとに行ったらミンミが動かなくて・・・私のせいで。私が杖を欲しいといったせいで!私をかばったせいで!」
 また体が熱くなる。今度はその熱が外に逃れていってくれず体内にとどまり体を内から壊そうとしてくる。ドクンドクンと心臓が脈打ち、頭痛が始まり朦朧としそうになった時、額から涼やかな風を感じ、荒ぶった熱が落ち着いていった。
 目を開けるとやはりミルカが手のひらを当ててくれていた。
 ミルカは安心させるように微笑んだ。
「エドヴァルド様、おそらく自責の念に駆られて魔力が体内で暴走して自らの心臓を攻撃してしまったのではないかと。」
 カティは自家中毒だったのではないかという診断をした。

「これまで以上にコントロールをしなければ危険だな。カティが狙われた理由も相手も分からない。同じようなことがあればまた危険にさらされる。」
 今回、暴走した魔力が自身を傷つけることになった、コントロールを身につけないとカティの命に関わる。
 幸い、大きな杖に変えたことで魔力の発出がしやすくなったようだ。これをきっかけに上手く魔法が使えるようになり、自身を守る力になるようにと願った。
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