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再びの襲撃
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事件から二カ月がたち、アンジェリーヌも元気になったころロジェの希望でお茶会が再開された。
今のロジェは屋敷まで迎えに来て、サロンまでエスコートしてくれる。
お茶会の間も、寒くないか? 辛くないか? など気を配り、最近読んだ本の話や友人の話など面白おかしく話してくれる。
本当に以前とは別人ではないかと思うほど、ロジェは変わった。
アンジェリーヌは嬉しくて思わずロジェの顔をずっと見てしまっていた。
「なに?」
「ううん、ロジェ様とこうして過ごせるのが嬉しい」
バツが悪そうなロジェは
「本当に済まなかった。俺は何も知らず、知ろうともせずアンジェリーヌを助けなかった。ひどい婚約者だった」
「それは・・・私が何も言わなかったから。ごめんなさい」
「いや、言える環境ではなかったのだから。俺が気づくべきだったんだ。それに気がつかなかったからと言って人にしていい態度ではなかった。俺は未熟でアンジェリーヌに八つ当たりをして・・・謝ってすむことではないけど、これから一生をかけて償わせてほしい」
「ロジェ様・・・」
アンジェリーヌは涙を落として頷いた。
「でも、償われるのは嫌です。償いではなく・・・愛するために側にいてください」
「あ・・・ああ! もちろんだ! ありがとう、アンジェリーヌ」
アンジェリーヌは今のロジェとなら幸せになれると思った。
アンヌは一体、何をしてロジェを変えてくれたのだろう。
もう会うことのできないアンヌに思いを馳せてまた涙を落としたのだった。
ロジェはお茶会を早々に切り上げ、
「今日は一緒に行きたいところがあるんだ。」
というロジェに連れられて、街に向かうことになった。
「この間、出来た店がとても令嬢方に人気があると聞いたんだ。とても可愛いデザインの髪飾りやリボンが置いてあるそうだ」
これまでのお詫びとでもいうように、デートや贈り物を目いっぱいしたい気持ちで一杯だったのだ。
「まあ、素敵ですわね」
街に到着すると通りに馬車を止めてロジェが手を出すと、アンジェリーヌは嬉しそうにその手をつないだ。
幾つかロジェがアンジェリーヌにプレゼントし、外に出て再び手をつないで歩きはじめた時、後ろで大声と人がもみ合うような音がした後、かちゃりと冷たい金属音がした。
振り返ったアンジェリーヌは自分のすぐそばの地面にナイフが落ちているのを見て身を震わせた。すぐさまロジェがアンジェリーヌの身体を自分の後ろにかばう。その二人を護衛が守る。
すると見知らぬ男が一人のみすぼらしい男を地面に押さえ込んでいた。
「この者がペルシエ侯爵令嬢に刃物を向けたため、取り押さえた次第です」
その男がロジェにそう告げた。
「アンジェリーヌを⁉ か、感謝する。だが貴殿は?」
「陛下の命を受け、ご令嬢を守っておりました」
「国王陛下が! おかげで彼女を傷つけられずに済みました。心から感謝いたします」
ロジェは頭を下げた。
そうだった。アンジェリーヌを階段から突き落とした犯人はまだ捕まっていない。
一度ならず二度もこんなことが起るということは、アンジェリーヌが狙われているという証拠。
自分はうかつにも、アンジェリーヌが自分にまた好意を寄せてくれたことに舞い上がってしまい、再度狙われる危険性を失念していた。浮かれて街デートに誘ったせいでこんな危険目に合わせてしまった。
なぜ、国王がアンジェリーヌに影までつけてくれたのかは知らないが、彼がいなければ永遠にアンジェリーヌを失ってしまったかもしれない。
自分がそこまで危機感を持っていなかったせいで、護衛たちにも危険性を伝えていなかった。だから静かにナイフを持って近づく男に気がつけなかった。
すべて自分の失態だった。何があっても守ろうと決意したばかりなのに、自分のふがいなさに絶望する。
「この男の身柄は私が預かります。ただ、もう安全だという確証はありません。このまま馬車に乗り屋敷に戻られた方がいいと思いますよ」
男の忠告に従いロジェは震えるアンジェリーヌを屋敷に送り届け、ペルシエ家は警備を強化しロジェも頼み込んで泊まらせてもらった。
「姉上、大丈夫ですか!?」
アベルも心配してアンジェリーヌの側にいた。
「大丈夫よ。ロジェ様が守ってくださったの」
「いや・・・あれは王家だよ。うかつに街歩きに誘って申し訳なかった。こんな俺などアンジェリーヌの側にいる資格はないのかもしれない・・・」
今回の失態は相当ロジェを追い詰めた。一歩間違えると今度こそアンジェリーヌは死んでいたから。
後悔し落ち込んでいるロジェにアンジェリーヌは手を伸ばしてロジェの手に重ねた。
「いいえ。私こそ巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。それにとても楽しかったから・・・」
「・・・俺はこれからもっと剣技を身につける。そしてたくさんの事を学び、アンジェリーヌの事を守れるように励む。今のように口だけにならない様に努力するから・・・これからも側にいてくれるかい?」
「はい」
アンジェリーヌは嬉しそうに微笑んだ。
アベルは嫌い合っていたはずの二人の甘々の姿を見て、げっそりとしたのだった。
その明け方早い時間、王宮から使いがやってきた。
真犯人を捕らえたと。
今のロジェは屋敷まで迎えに来て、サロンまでエスコートしてくれる。
お茶会の間も、寒くないか? 辛くないか? など気を配り、最近読んだ本の話や友人の話など面白おかしく話してくれる。
本当に以前とは別人ではないかと思うほど、ロジェは変わった。
アンジェリーヌは嬉しくて思わずロジェの顔をずっと見てしまっていた。
「なに?」
「ううん、ロジェ様とこうして過ごせるのが嬉しい」
バツが悪そうなロジェは
「本当に済まなかった。俺は何も知らず、知ろうともせずアンジェリーヌを助けなかった。ひどい婚約者だった」
「それは・・・私が何も言わなかったから。ごめんなさい」
「いや、言える環境ではなかったのだから。俺が気づくべきだったんだ。それに気がつかなかったからと言って人にしていい態度ではなかった。俺は未熟でアンジェリーヌに八つ当たりをして・・・謝ってすむことではないけど、これから一生をかけて償わせてほしい」
「ロジェ様・・・」
アンジェリーヌは涙を落として頷いた。
「でも、償われるのは嫌です。償いではなく・・・愛するために側にいてください」
「あ・・・ああ! もちろんだ! ありがとう、アンジェリーヌ」
アンジェリーヌは今のロジェとなら幸せになれると思った。
アンヌは一体、何をしてロジェを変えてくれたのだろう。
もう会うことのできないアンヌに思いを馳せてまた涙を落としたのだった。
ロジェはお茶会を早々に切り上げ、
「今日は一緒に行きたいところがあるんだ。」
というロジェに連れられて、街に向かうことになった。
「この間、出来た店がとても令嬢方に人気があると聞いたんだ。とても可愛いデザインの髪飾りやリボンが置いてあるそうだ」
これまでのお詫びとでもいうように、デートや贈り物を目いっぱいしたい気持ちで一杯だったのだ。
「まあ、素敵ですわね」
街に到着すると通りに馬車を止めてロジェが手を出すと、アンジェリーヌは嬉しそうにその手をつないだ。
幾つかロジェがアンジェリーヌにプレゼントし、外に出て再び手をつないで歩きはじめた時、後ろで大声と人がもみ合うような音がした後、かちゃりと冷たい金属音がした。
振り返ったアンジェリーヌは自分のすぐそばの地面にナイフが落ちているのを見て身を震わせた。すぐさまロジェがアンジェリーヌの身体を自分の後ろにかばう。その二人を護衛が守る。
すると見知らぬ男が一人のみすぼらしい男を地面に押さえ込んでいた。
「この者がペルシエ侯爵令嬢に刃物を向けたため、取り押さえた次第です」
その男がロジェにそう告げた。
「アンジェリーヌを⁉ か、感謝する。だが貴殿は?」
「陛下の命を受け、ご令嬢を守っておりました」
「国王陛下が! おかげで彼女を傷つけられずに済みました。心から感謝いたします」
ロジェは頭を下げた。
そうだった。アンジェリーヌを階段から突き落とした犯人はまだ捕まっていない。
一度ならず二度もこんなことが起るということは、アンジェリーヌが狙われているという証拠。
自分はうかつにも、アンジェリーヌが自分にまた好意を寄せてくれたことに舞い上がってしまい、再度狙われる危険性を失念していた。浮かれて街デートに誘ったせいでこんな危険目に合わせてしまった。
なぜ、国王がアンジェリーヌに影までつけてくれたのかは知らないが、彼がいなければ永遠にアンジェリーヌを失ってしまったかもしれない。
自分がそこまで危機感を持っていなかったせいで、護衛たちにも危険性を伝えていなかった。だから静かにナイフを持って近づく男に気がつけなかった。
すべて自分の失態だった。何があっても守ろうと決意したばかりなのに、自分のふがいなさに絶望する。
「この男の身柄は私が預かります。ただ、もう安全だという確証はありません。このまま馬車に乗り屋敷に戻られた方がいいと思いますよ」
男の忠告に従いロジェは震えるアンジェリーヌを屋敷に送り届け、ペルシエ家は警備を強化しロジェも頼み込んで泊まらせてもらった。
「姉上、大丈夫ですか!?」
アベルも心配してアンジェリーヌの側にいた。
「大丈夫よ。ロジェ様が守ってくださったの」
「いや・・・あれは王家だよ。うかつに街歩きに誘って申し訳なかった。こんな俺などアンジェリーヌの側にいる資格はないのかもしれない・・・」
今回の失態は相当ロジェを追い詰めた。一歩間違えると今度こそアンジェリーヌは死んでいたから。
後悔し落ち込んでいるロジェにアンジェリーヌは手を伸ばしてロジェの手に重ねた。
「いいえ。私こそ巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。それにとても楽しかったから・・・」
「・・・俺はこれからもっと剣技を身につける。そしてたくさんの事を学び、アンジェリーヌの事を守れるように励む。今のように口だけにならない様に努力するから・・・これからも側にいてくれるかい?」
「はい」
アンジェリーヌは嬉しそうに微笑んだ。
アベルは嫌い合っていたはずの二人の甘々の姿を見て、げっそりとしたのだった。
その明け方早い時間、王宮から使いがやってきた。
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