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ロジェ 2
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ロジェは、ペルシエ侯爵から婚約解消の手続きを進めて欲しいと連絡を受けたが、婚約をこのまま続けたいと願い出た。
再度謝罪し、二度とアンジェリーヌを悲しませないと誓ったが、すぐに了承してくれることはなく、侯爵はアンジェリーヌの気持ちが最優先だと返事を保留した。
そんなロジェは未だアンジェリーヌが見つからないことに焦っていた。
「あいつはどこに行ったんだ・・・」
あんな大人しい令嬢が一人で生活ができるはずがない。
誰かに匿われているならともかく、騙されてえらい目に合っているかもしれない、どこかへ売り飛ばされたり、もっとひどい目に合っているかもしれないと思うと震えが来るほど心配になる。
ペルシエ侯爵が騎士団に捜索を頼んだそうだが、発見に至っていない。
一度、アンジェリーヌがロッシュ家にいるかもしれないという情報を得た侯爵は、ロッシュ家に確認に出向いた。しかし、ロッシュ家にいたのはアンジェリーヌに似てはいたが、アンジェリーヌではなかったという。
それでもアンジェリーヌの弟のアベルがロッシュ家に足しげく通っていたと聞いて、本当はアンジェリーヌだったのではないかと疑いたくなってくる。
だってあのロッシュ家なのだ。
あの時、劇場で会ったアンジェリーヌに似た下品な女。同行していたのはロッシュ家嫡男。
派手な化粧で話し方も雰囲気も全く違ったからアンジェリーヌではないと言われ、疑いつつ引き下がりはしたが、顔は似ていた。
対してペルシエ侯爵がロッシュ家で確認した女性ははっきりと別人と分かったというのだから、きっと別人を用意されたのだ。
あんな下品な女の振りをしてまで、身代わりを立ててまでアンジェリーヌは、自分から逃れたかったのか。本当に自分の事などもうどうでもよくて、もうあの公爵令息と・・・そう思うと後悔と嫉妬で胸が苦しくなる。
ロジェはペルシエ侯爵に、最近のアンジェリーヌの事を教えて欲しいと頼み込んだ。
最初はしぶっていた侯爵だったが、自分の言動が原因でアンジェリーヌが家出をしたのかもしれないと食い下がると渋々ながらペルシエ家の恥だがと教えてもらうことが出来た。
ペルシエ侯爵の話は驚くことばかりだった。
アンジェリーヌが幼少期からどんな目に合っていたのか、チョコレートボンボンを口にしてからアンジェリーヌが変わってしまったこと、義母を離縁した事。家出をした理由はロジェではなく、家族にあった事。
ロジェは、虐待の事を知り、ひどく後悔をした。
なぜ守ってやれなかったのか。なぜ、自分まで冷たくしてしまい、逃げ場所になってやれなかったのだろう。
アンジェリーヌがマノンから『婚約者に泣きついてもそれは同情を引くためについている嘘だと彼も知っているから、言うだけ無駄だ。虚言を吐くと軽蔑されるだけだ』と言われてロジェに助けを求めることが出来なかったことを知る。
以前、勇気を出して父に訴えたアンジェリーヌは信じてもらえないどころか、その後でマノンに折檻されて、誰にも何も言えなくなってしまった事も知る。
彼女の落とした視線、出なくなってしまった言葉、影をひそめてしまった明るい笑顔・・・それらが、彼女が出していた助けを求めるサインだったというのに、自分も一緒になって冷たくしてしまった。
最低な自分。悔やんでも悔やみきれない。
彼女が自分の事など見限るのは当たり前だ。追いすがる資格さえない。
それでもロジェはもう一度チャンスを貰えるのなら、アンジェリーヌの心が癒されるまで側にいさせて欲しいと願った。
ロジェは、もしかしてという思いでロッシュ家に手紙を出したが、当家は関係がないという返事が来た。
ロッシュ家の別邸に出入りしているアンジェリーヌの弟のアベルに話を聞いても、ロッシュ家にいるアンヌは姉とは別人で歌を聞きに会いに行っているだけだという。
しかし「どこにいるかわからないが、無理やり連れ戻すとまた彼女を苦しめる事になるから帰ってきてくれるのを待っている」という言葉を聞いて、やはりロッシュ家に匿われていると確信した。
そしてようやくロジェは、これまで辛い目に遭っていたアンジェリーヌを連れ帰ることは、こちらのエゴだということに気がついたのだった。
ロッシュ家にいるのであれば、ひとまずは無事でいるということだ。
ロッシュ家にアンジェリーヌがいる事に不安はあるが、自分はまだ婚約者なのだから。
いくらナリスとアンジェリーヌが親しくしていたとしても、自分との婚約が解消されない限り勝手にアンジェリーヌが他の令息と結婚できるはずはない。
ロジェは後悔していること、大事に想っている事を白を切るアベルに伝え、アンジェリーヌに伝わるよう願う事しかできなかった。
再度謝罪し、二度とアンジェリーヌを悲しませないと誓ったが、すぐに了承してくれることはなく、侯爵はアンジェリーヌの気持ちが最優先だと返事を保留した。
そんなロジェは未だアンジェリーヌが見つからないことに焦っていた。
「あいつはどこに行ったんだ・・・」
あんな大人しい令嬢が一人で生活ができるはずがない。
誰かに匿われているならともかく、騙されてえらい目に合っているかもしれない、どこかへ売り飛ばされたり、もっとひどい目に合っているかもしれないと思うと震えが来るほど心配になる。
ペルシエ侯爵が騎士団に捜索を頼んだそうだが、発見に至っていない。
一度、アンジェリーヌがロッシュ家にいるかもしれないという情報を得た侯爵は、ロッシュ家に確認に出向いた。しかし、ロッシュ家にいたのはアンジェリーヌに似てはいたが、アンジェリーヌではなかったという。
それでもアンジェリーヌの弟のアベルがロッシュ家に足しげく通っていたと聞いて、本当はアンジェリーヌだったのではないかと疑いたくなってくる。
だってあのロッシュ家なのだ。
あの時、劇場で会ったアンジェリーヌに似た下品な女。同行していたのはロッシュ家嫡男。
派手な化粧で話し方も雰囲気も全く違ったからアンジェリーヌではないと言われ、疑いつつ引き下がりはしたが、顔は似ていた。
対してペルシエ侯爵がロッシュ家で確認した女性ははっきりと別人と分かったというのだから、きっと別人を用意されたのだ。
あんな下品な女の振りをしてまで、身代わりを立ててまでアンジェリーヌは、自分から逃れたかったのか。本当に自分の事などもうどうでもよくて、もうあの公爵令息と・・・そう思うと後悔と嫉妬で胸が苦しくなる。
ロジェはペルシエ侯爵に、最近のアンジェリーヌの事を教えて欲しいと頼み込んだ。
最初はしぶっていた侯爵だったが、自分の言動が原因でアンジェリーヌが家出をしたのかもしれないと食い下がると渋々ながらペルシエ家の恥だがと教えてもらうことが出来た。
ペルシエ侯爵の話は驚くことばかりだった。
アンジェリーヌが幼少期からどんな目に合っていたのか、チョコレートボンボンを口にしてからアンジェリーヌが変わってしまったこと、義母を離縁した事。家出をした理由はロジェではなく、家族にあった事。
ロジェは、虐待の事を知り、ひどく後悔をした。
なぜ守ってやれなかったのか。なぜ、自分まで冷たくしてしまい、逃げ場所になってやれなかったのだろう。
アンジェリーヌがマノンから『婚約者に泣きついてもそれは同情を引くためについている嘘だと彼も知っているから、言うだけ無駄だ。虚言を吐くと軽蔑されるだけだ』と言われてロジェに助けを求めることが出来なかったことを知る。
以前、勇気を出して父に訴えたアンジェリーヌは信じてもらえないどころか、その後でマノンに折檻されて、誰にも何も言えなくなってしまった事も知る。
彼女の落とした視線、出なくなってしまった言葉、影をひそめてしまった明るい笑顔・・・それらが、彼女が出していた助けを求めるサインだったというのに、自分も一緒になって冷たくしてしまった。
最低な自分。悔やんでも悔やみきれない。
彼女が自分の事など見限るのは当たり前だ。追いすがる資格さえない。
それでもロジェはもう一度チャンスを貰えるのなら、アンジェリーヌの心が癒されるまで側にいさせて欲しいと願った。
ロジェは、もしかしてという思いでロッシュ家に手紙を出したが、当家は関係がないという返事が来た。
ロッシュ家の別邸に出入りしているアンジェリーヌの弟のアベルに話を聞いても、ロッシュ家にいるアンヌは姉とは別人で歌を聞きに会いに行っているだけだという。
しかし「どこにいるかわからないが、無理やり連れ戻すとまた彼女を苦しめる事になるから帰ってきてくれるのを待っている」という言葉を聞いて、やはりロッシュ家に匿われていると確信した。
そしてようやくロジェは、これまで辛い目に遭っていたアンジェリーヌを連れ帰ることは、こちらのエゴだということに気がついたのだった。
ロッシュ家にいるのであれば、ひとまずは無事でいるということだ。
ロッシュ家にアンジェリーヌがいる事に不安はあるが、自分はまだ婚約者なのだから。
いくらナリスとアンジェリーヌが親しくしていたとしても、自分との婚約が解消されない限り勝手にアンジェリーヌが他の令息と結婚できるはずはない。
ロジェは後悔していること、大事に想っている事を白を切るアベルに伝え、アンジェリーヌに伝わるよう願う事しかできなかった。
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