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一肌脱いじゃう 8
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またあの令嬢が騒いでいると、報告を受けたステファン。
ロイドが代わりに話を聞きに行く。
戻ってきたロイドは、首を振りながら王太子とステファンにドリスの状態を報告した。
「口封じされるかもしれない恐怖でおかしくなったのではないですか。支離滅裂ですよ。これでは目撃情報も当てにはなりません。」
令嬢の料理をフルコース食べた上に、丁寧にナプキンを使うおかしなトカゲが、巨大化して自分を頭から飲み込んだと泣きわめいていたそうだ。
「なんだそれは、錯乱か?もしくは気を引こうとまたたわごとか?結局役に立ちそうにないな。ステファン、どうした?」
「いえ。」
ドリスをいたぶる『トカゲ』、心当たりがある。
ステファンとエヴェリーナはトカゲにもらった宝石に助けられたことがあるのだ。今回もその竜のお使い様が関係しているのかもしれない。
とすれば、エヴェリーナの部屋に現れた男も本当に神だったのかもしれない。ステファンはほっと安心した。
ステファンは自分の指にはめられている指輪をトントンと叩いてロイドに合図した。
結局あの日、無くしたと思った指輪は、何度も探した服のポケットに入っていた。あの紛失にも不思議な力が働いていたのだろう。
ロイドも、トカゲに宝石を貰っている仲間だ。すぐに信じられるわけではないだろうが、伝わったはず。
ロイドは目を大きく見開いて、しばらく固まっていたが納得したように何度かうなづいた。ロイド夫妻も同じ宝石をネックレスにして身につけているし、以前ステファンたちが受けた加護も知っている。
「殿下、彼女の証言はあきらめましょう。それよりも彼女を囮にして何か動きはありましたか?」
「ああ。彼女を目で追う疑わしい人物はいる。しかし証拠がない。いっそのこと彼女を襲ってくれればいいのだが。」
「そうですね。」
ステファンも同意する。
「何言っているんですか。」
「なんだ、ロイド。じゃあお前はヨハンナ殿があの女のせいで倒れたら許せるのか?」
「それはまあ・・・」
「ここだけの話だ。まあ、錯乱したという理由で下がらすのもいいかもしれないな。それで実家に見張りをつけるか。」
王太子がそう言ったころ、ドアにノックがあった。
「申し訳ありません、ドリス嬢がどうしてもステファン様に話をしたいと。謝罪をしたいので来て欲しいと言っております。」
ドリスの世話をしているメイドが申し訳なさそうにいう。
「ステファンに関わるなと命じたのに、理解できない女だな。」
「いえ、私が行きましょう。私も言いたいことはありますし。」
ステファンが険しい顔で言う。
「手は出すなよ。」
「わかっております。」
ステファンはドリスの部屋を訪ねた。
「ああ、ステファン様!やっと来てくださいましたのね。今まで・・・いやああ!」
ドリスはいきなり大きな叫び声をあげて後ずさる。
ステファンは令嬢に怒りをぶつけるつもりだったが出鼻をくじかれた。
「か、肩!!」
「肩?」
自分の肩を見るが何もない。
「どうしたんだ?あなたには言いたいことは山のようにあるが・・自分の愚かさにやっと気が付いたか?」
「こ、来ないでください。トカゲが・・・トカゲがっ!」
「トカゲ?」
ステファンの肩にトカゲが現れ、まん丸い目でドリスを見ている。
ステファンが肩を見るとさっと隠れ、またすぐに現れ、ドリスにアピールするように左右に体を揺らしている。
「・・・茶番はいい。さて謝罪とやらを聞かせてもらおう。」
ドリスはステファンとともに近づいてくるトカゲに恐怖した。
また頭から丸呑みされるのかと恐怖で体が震える。
トカゲがぱかっと口を開けたとたん、ドリスは悲鳴を上げて部屋を飛び出していった。
「なんだ、あれは。エヴェリーナの事を問い質したかったのに。」
「はは、竜のお使い様の怒りを買ったんじゃないか。お前の背中に・・・ってあれ?」
先ほどまでいたはずのトカゲがもうどこにもいなかった。
ここにきてようやく冒頭にいたる。
ロイドが代わりに話を聞きに行く。
戻ってきたロイドは、首を振りながら王太子とステファンにドリスの状態を報告した。
「口封じされるかもしれない恐怖でおかしくなったのではないですか。支離滅裂ですよ。これでは目撃情報も当てにはなりません。」
令嬢の料理をフルコース食べた上に、丁寧にナプキンを使うおかしなトカゲが、巨大化して自分を頭から飲み込んだと泣きわめいていたそうだ。
「なんだそれは、錯乱か?もしくは気を引こうとまたたわごとか?結局役に立ちそうにないな。ステファン、どうした?」
「いえ。」
ドリスをいたぶる『トカゲ』、心当たりがある。
ステファンとエヴェリーナはトカゲにもらった宝石に助けられたことがあるのだ。今回もその竜のお使い様が関係しているのかもしれない。
とすれば、エヴェリーナの部屋に現れた男も本当に神だったのかもしれない。ステファンはほっと安心した。
ステファンは自分の指にはめられている指輪をトントンと叩いてロイドに合図した。
結局あの日、無くしたと思った指輪は、何度も探した服のポケットに入っていた。あの紛失にも不思議な力が働いていたのだろう。
ロイドも、トカゲに宝石を貰っている仲間だ。すぐに信じられるわけではないだろうが、伝わったはず。
ロイドは目を大きく見開いて、しばらく固まっていたが納得したように何度かうなづいた。ロイド夫妻も同じ宝石をネックレスにして身につけているし、以前ステファンたちが受けた加護も知っている。
「殿下、彼女の証言はあきらめましょう。それよりも彼女を囮にして何か動きはありましたか?」
「ああ。彼女を目で追う疑わしい人物はいる。しかし証拠がない。いっそのこと彼女を襲ってくれればいいのだが。」
「そうですね。」
ステファンも同意する。
「何言っているんですか。」
「なんだ、ロイド。じゃあお前はヨハンナ殿があの女のせいで倒れたら許せるのか?」
「それはまあ・・・」
「ここだけの話だ。まあ、錯乱したという理由で下がらすのもいいかもしれないな。それで実家に見張りをつけるか。」
王太子がそう言ったころ、ドアにノックがあった。
「申し訳ありません、ドリス嬢がどうしてもステファン様に話をしたいと。謝罪をしたいので来て欲しいと言っております。」
ドリスの世話をしているメイドが申し訳なさそうにいう。
「ステファンに関わるなと命じたのに、理解できない女だな。」
「いえ、私が行きましょう。私も言いたいことはありますし。」
ステファンが険しい顔で言う。
「手は出すなよ。」
「わかっております。」
ステファンはドリスの部屋を訪ねた。
「ああ、ステファン様!やっと来てくださいましたのね。今まで・・・いやああ!」
ドリスはいきなり大きな叫び声をあげて後ずさる。
ステファンは令嬢に怒りをぶつけるつもりだったが出鼻をくじかれた。
「か、肩!!」
「肩?」
自分の肩を見るが何もない。
「どうしたんだ?あなたには言いたいことは山のようにあるが・・自分の愚かさにやっと気が付いたか?」
「こ、来ないでください。トカゲが・・・トカゲがっ!」
「トカゲ?」
ステファンの肩にトカゲが現れ、まん丸い目でドリスを見ている。
ステファンが肩を見るとさっと隠れ、またすぐに現れ、ドリスにアピールするように左右に体を揺らしている。
「・・・茶番はいい。さて謝罪とやらを聞かせてもらおう。」
ドリスはステファンとともに近づいてくるトカゲに恐怖した。
また頭から丸呑みされるのかと恐怖で体が震える。
トカゲがぱかっと口を開けたとたん、ドリスは悲鳴を上げて部屋を飛び出していった。
「なんだ、あれは。エヴェリーナの事を問い質したかったのに。」
「はは、竜のお使い様の怒りを買ったんじゃないか。お前の背中に・・・ってあれ?」
先ほどまでいたはずのトカゲがもうどこにもいなかった。
ここにきてようやく冒頭にいたる。
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