身を引いても円満解決しませんでした

れもんぴーる

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    一肌脱いじゃう 5

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 エヴェリーナは静かにベッドで眠っていた。
 メイドが付き添っているということは、エヴェリーナはただの風邪や疲労などでないということだろう。
 ステファンは眠っているメイドを起こすと、部屋の外に連れ出した。
「申し訳ありません!」
「いや、咎めているわけではない。リーナはどうした?風邪ではないだろう?」
「い、いえ。お風邪でございます。たまたま汗を拭きにお側にいただけで・・・いつの間にか眠ってしまい申し訳ありません!」
 メイド自身、いつ眠ったのか記憶にない。ソファーに座った事さえ記憶になかった。

「・・・何か隠しているだろう。リーナが私に会いたくないと言っているのか?あの男は誰だ?!」
 次第にステファンの声が硬くなる。
「隠してなどおりません。お許しください。」
 若いメイドはオロオロしている。
「あの男の事だけ教えてくれ。妻の寝室に、夜中に入り込むなどと・・・この屋敷に滞在しているのか?」
「え?何のことでしょうか?」
「男がいただろう、リーナの身体に・・・」
 ステファンは唇をかむ。
「そんな方はおりません。」
「・・・もういい。下がってくれ。彼女は私が見る。」
「でも・・・」
「構わないから。」
「・・・かしこまりました。」

 ステファンはエヴェリーナの手を握った。
「リーナ。」
 そう言ってエヴェリーナの手の甲を頬に当てる。それでもエヴェリーナは目を覚まさない。
 エヴェリーナの痩せた様子、メイドの看病、何より先ほどの見知らぬ男。不安に苛まれたステファンは夜中であったが執事を執務室に呼んだ。

「エヴェリーナに何があった?本当の事を教えてくれ。」
「・・・。奥様はお休みになっておられましたか?」
「ああ。あれは疲労なんてものではないだろう。やはりムーラン嬢のせいで倒れたのではないのか?」
「旦那様、失礼なことをお聞きすることをお許しいただけますか。」
「なんだ。」
「・・・奥様以外の女性と関係されたことはございますか?」
「あるわけないだろう!」
 執事はわかっているという顔で
「わかっております。旦那様がどれほど奥様を愛してらっしゃるか。もう一つ、お仕事は一段落されましたか?」
「いや・・・」
 暗殺事件の事は、まだ口外できない。
 本来なら王太子の側を離れるわけにはいかない状態なのだ。

「さようでございますか。・・・では、これ以上申し上げることはございません。奥様の事は私どもが守っておりますので、旦那様はどうか心配なさらず王宮へお戻りくださいませ。」
「何を隠している。」
「滅相もございません。」
「・・・リーナの寝室に出入りしている男は誰だ?」
 執事も何かを隠しており、ステファンは不安に襲われた。
 自分がいない間に、この屋敷で何が起こったのだ。
「男?でございますか?何のことでしょうか。」
 執事はそれに関しては全く知らないようだった。

「・・・いや。それよりも何か隠していることがあるのなら話してくれ。事と次第によっては、私は殿下のお側を離れるつもりだ。リーナより大切なものはない。」
 ステファンはそう言い切った。
「旦那様・・・。そこまで決意をされていらっしゃるなら。実は旦那様のお仕事に邪魔になってはいけないと奥様が口止めをされているのです。」
「そうか・・・だから何も知らせが来なかったのだな。何があった?」
「お茶会での件は聞いておられるようですが、実はそのあとこの屋敷にも押し掛けてこられて・・・旦那様と特別な関係であり、いずれこの家で暮らすことになるから奥様に出て行けなどと・・・」
「何を馬鹿なことを!」
「奥様は気丈に追い払われましたがその夜倒れられまして・・・」
「医者は呼んだのか?!」
「はい。・・・それで・・・」
 執事は言いよどむ。自分が言っていいことではない。

「頼む、何でも教えてくれ。取り返しのつかないことをしたくない。」
 エヴェリーナの一回目の人生のように。
 執事はそれでも迷っていたが
「奥様自身もご存じなかったのですがご懐妊されておりました。」
「!!」
「しかし・・・」
「まさか?!」
「いえ、絶対安静と言われております。これ以上ご負担をお掛けしないために旦那様にお伝えして、対処をお願いしたかったのですが・・・奥様が旦那様の負担になってはいけないと口止めをされていたのでございます。ですから、あの令嬢に同行してきた王宮の護衛の方にもそうお願いをいたしました。代わりに我々は二度とあの者を奥様に会わせないよう警戒しておりました。」
 
 それを聞いたステファンはドリスに対して怒りと殺意が沸いた。
 もう目撃証言などどうでもいい。
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