24 / 34
番外編 ○○視点
しおりを挟む
「お母様、見てください!」
息子のアノが小さな手のひらに一杯いちごを乗せている。
「まあ、美味しそうね。」
エヴェリーナは四歳になったアノの頭を優しく撫でる。
庭師と一緒に植え付けたいちごの実がようやく生ったのだ。
「神様にあげるの!」
アノは庭に建てられた、竜の紋用が彫られた石祠にいちごを供えた。
隣の国のとても優しい神様をお祭りしてあり、大恩人だから大切にするように両親から言われている。
そして両親は時々庭で見かけるトカゲはその神様のお使い様だよと教えてくれた。
そのお使い様はいちごがお好きなのよと、お母さまはまるでお使い様のことを良く知っているかのように話す。
お母さまは大人なのに、いまだ夢見る乙女のように純真な心を持ち、竜といわれる聖獣がいる事を信じ、庭に住み着いているトカゲさんをお使い様だと信じているんだ。
僕はそんなお母さまが大好きなんだ。
アノはいちごを二つ祠にお供えして、一つは自分の手に、残りを大好きな母に渡した。
「僕遊んでくる。」
一粒のいちごを握りしめて庭を駆け出していく。
少し前から小さなお友達が出来た。竜のお使い様と言われているトカゲさん。
ある日、僕が庭で僕付きのお守(も)りとかくれんぼをしていたの。神様の祠の近くにお母様が植えた花があって、その陰に隠れていたらそこにトカゲさんが裏返ってバタバタしてたんだ。僕、本当はちょっと怖かったんだけど表向きに返してあげたの。そしたらすぐに木陰に走っていっちゃった。良かった。
なのに今度は僕が木登りしようとしたとき、根っこの側に干からびてるトカゲさんをまた見つけちゃったの。あんまりお利口さんじゃないのかもしれない。やっぱり神様のお使い様じゃないよね。
棒で突っついたけど全く動かないの。もう死んじゃったのかな。お母さまが悲しむと思ったら僕も泣いちゃった。僕の涙がトカゲさんに落ちたの。そしたらトカゲさん!元気になって僕の足をポンポンって可愛い手でたたいてくれたの!ポンポンって!
アノは慌ててコップに水を汲みに行くと、トカゲにかけた。気持ちよさそうにその水を浴びるとトカゲはもう一度感謝の意を示すように小さなアノの足先をトントンと叩いた。
「ありがとうと言ってるの?」
トカゲは大きくうなづいたように見えた。
「うわあ~!トカゲさん!僕の言ってることわかるの?!」
再びこくんと頷いた様に見える。
「うわ~うわ~君凄いね!あのね!お母様がね、トカゲさんはいちごが好きって言ってたの!いちご好き?」
モミジの葉っぱのような形の小さな手の平を精一杯広げて、右手(?)を上げた。
「もうすぐね!いちごの実がなるってお母さまが言ってたの。出来たら君にもあげるね!」
そうしてアノは摘みたての一粒のいちごを握りしめて、最近トカゲがお気に入りらしい木に走っていく。
木の根の陰にいるトカゲにいちごを渡す。トカゲは小さな手で大きないちごを支えてまん丸い目をキラキラさせてパクリとかぶりつく。
それを見たアノがまたキラキラと目を輝かす。
うわ~うわ~本当にいちご食べてる!可愛い!
トカゲさんいつもひっくり返ったり、干からびたり危なっかしいから僕が見守ってあげなくちゃ!
それ以来、僕はお庭に出る度にトカゲさんを探すんだ。
お母様、トカゲさんの神様が僕のお家を守ってくれてるけど、神様のお使いのトカゲさんを守っているのは僕なんだよ!
楽しそうに祠を奇麗にしているエヴェリーナを見ながらアノは心の中で胸を張る。
息子のアノが小さな手のひらに一杯いちごを乗せている。
「まあ、美味しそうね。」
エヴェリーナは四歳になったアノの頭を優しく撫でる。
庭師と一緒に植え付けたいちごの実がようやく生ったのだ。
「神様にあげるの!」
アノは庭に建てられた、竜の紋用が彫られた石祠にいちごを供えた。
隣の国のとても優しい神様をお祭りしてあり、大恩人だから大切にするように両親から言われている。
そして両親は時々庭で見かけるトカゲはその神様のお使い様だよと教えてくれた。
そのお使い様はいちごがお好きなのよと、お母さまはまるでお使い様のことを良く知っているかのように話す。
お母さまは大人なのに、いまだ夢見る乙女のように純真な心を持ち、竜といわれる聖獣がいる事を信じ、庭に住み着いているトカゲさんをお使い様だと信じているんだ。
僕はそんなお母さまが大好きなんだ。
アノはいちごを二つ祠にお供えして、一つは自分の手に、残りを大好きな母に渡した。
「僕遊んでくる。」
一粒のいちごを握りしめて庭を駆け出していく。
少し前から小さなお友達が出来た。竜のお使い様と言われているトカゲさん。
ある日、僕が庭で僕付きのお守(も)りとかくれんぼをしていたの。神様の祠の近くにお母様が植えた花があって、その陰に隠れていたらそこにトカゲさんが裏返ってバタバタしてたんだ。僕、本当はちょっと怖かったんだけど表向きに返してあげたの。そしたらすぐに木陰に走っていっちゃった。良かった。
なのに今度は僕が木登りしようとしたとき、根っこの側に干からびてるトカゲさんをまた見つけちゃったの。あんまりお利口さんじゃないのかもしれない。やっぱり神様のお使い様じゃないよね。
棒で突っついたけど全く動かないの。もう死んじゃったのかな。お母さまが悲しむと思ったら僕も泣いちゃった。僕の涙がトカゲさんに落ちたの。そしたらトカゲさん!元気になって僕の足をポンポンって可愛い手でたたいてくれたの!ポンポンって!
アノは慌ててコップに水を汲みに行くと、トカゲにかけた。気持ちよさそうにその水を浴びるとトカゲはもう一度感謝の意を示すように小さなアノの足先をトントンと叩いた。
「ありがとうと言ってるの?」
トカゲは大きくうなづいたように見えた。
「うわあ~!トカゲさん!僕の言ってることわかるの?!」
再びこくんと頷いた様に見える。
「うわ~うわ~君凄いね!あのね!お母様がね、トカゲさんはいちごが好きって言ってたの!いちご好き?」
モミジの葉っぱのような形の小さな手の平を精一杯広げて、右手(?)を上げた。
「もうすぐね!いちごの実がなるってお母さまが言ってたの。出来たら君にもあげるね!」
そうしてアノは摘みたての一粒のいちごを握りしめて、最近トカゲがお気に入りらしい木に走っていく。
木の根の陰にいるトカゲにいちごを渡す。トカゲは小さな手で大きないちごを支えてまん丸い目をキラキラさせてパクリとかぶりつく。
それを見たアノがまたキラキラと目を輝かす。
うわ~うわ~本当にいちご食べてる!可愛い!
トカゲさんいつもひっくり返ったり、干からびたり危なっかしいから僕が見守ってあげなくちゃ!
それ以来、僕はお庭に出る度にトカゲさんを探すんだ。
お母様、トカゲさんの神様が僕のお家を守ってくれてるけど、神様のお使いのトカゲさんを守っているのは僕なんだよ!
楽しそうに祠を奇麗にしているエヴェリーナを見ながらアノは心の中で胸を張る。
233
お気に入りに追加
2,423
あなたにおすすめの小説
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

結婚の約束を信じて待っていたのに、帰ってきた幼馴染は私ではなく義妹を選びました。
田太 優
恋愛
将来を約束した幼馴染と離れ離れになったけど、私はずっと信じていた。
やがて幼馴染が帰ってきて、信じられない姿を見た。
幼馴染に抱きつく義妹。
幼馴染は私ではなく義妹と結婚すると告げた。
信じて待っていた私は裏切られた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる