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番外編 竜のお使い様同盟 2
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屋敷に帰ってきたステファンもヨハンナを歓迎した。
ヨハンナは恐縮したが、夕食を一緒にとり、その後はゆっくりとお茶を飲みながら話に花を咲かせた。
竜の山での話や、指輪の加護、ロイドとヨハンナの関係など話が尽きず、楽しい時間が過ぎた。
ヨハンナがなぜ女性でありながら危険な護衛の仕事をしているのかいきさつを聞き、ステファンも興味津々で聞き入った。
「ロイド様とはいつ約束を?」
「明後日です。」
「じゃあ、まだ時間があるわね!明日は私に付き合ってくれる?」
「ええ、どちらに?」
「街へ行きたいの。女性同士楽しみましょうよ。」
ステファンの許可をもらい、二人は翌日街に出た。
そして日常に身につけるドレスを手掛けている店にやってきた。
「エヴェリーナ様!言ってくださればお伺いいたしますのに!」
店のオーナーが慌ててやってくる。
「今日はお友達のドレスを見に来たの。彼女に似合うドレスと装飾品一式をいくつか見せていただける?」
「エヴェリーナ様?!」
「明日のデート楽しみだわ~。今のままでも美しいけど、いつもと違う着飾ったヨハンナさんを見たらロイド様はもうメロメロですわ!」
「ちょ、ちょっと!違います!私とロイド様はそんなんじゃありません!」
真っ赤になってヨハンナは否定する。
「ふふふ、どちらでもいいじゃない。せっかく異国に来たのだもの、この国のドレスを着るのも思い出の一つになるわ。遠路はるばる会いに来てくれたのだもの、ラッシュ国を楽しんで欲しいのよ。もしかしたらラッシュ国民になったりしてね。」
嬉しそうにエヴェリーナ様がいい、その間にさっさとドレスが何着か用意された。オーナーとエヴェリーナにどんどん詰められ、とうとう二人が一番似合うと声をそろえていった明るい青のドレスを買うことになった。それに合わせて靴やバック、装飾品まで選び、それらはエヴェリーナが贈ってくれた。
断固拒否をしたが、ドラン国での旅がどれだけかけがえのない物だったのかを懇々と訴えられた。無事に旅ができたのはヨハンナのおかげであり、竜のお使い様同盟の仲間でもある。
なにより一緒に過ごした時間の中で大切な友人と思っていると。
「だから明日のデートに向けて精一杯応援をさせて欲しいのよ」
「いえ、ですからデートなどでは・・・」
「ロイド様の事、憎からず思ってらっしゃるんでしょう?そうじゃなければお誘いがあったからと言って外国まで来ないでしょう?」
エヴェリーナは本当に楽しそうに悪い顔をした。
ロイドは侯爵家の3男で、王太子殿下の側近でもある。侯爵家は武の家柄で、父親、兄たちは騎士団として活躍している。ロイドも武術に秀でているが、王太子殿下と同級生であったこともあり側近としておそばに上がりながらいざという時の護衛の役目も担っている。
そんなロイドは王太子殿下を支えること以外には鍛える事しか興味がなかった。しかし、ステファンと一緒にドラン国へ行き、婚約者に対する執着を見たときにちょっと引いたものの、そこまで誰かを想えるのはうらやましいとも思ったのだ。
あまりにもステファンが婚約者にへばりついているため、護衛のヨハンナと話す機会も多くあった。そこで女性ながら危険な仕事をし、その志と自らを律した生き方に感動を覚え、共感することも多かった。
帰国してからも、その彼女のことが頭から離れず手紙を出したところ、来てくれると言ってくれた。その返事を見たとき、胸が高鳴り自分が恋をしていたのだとやっとわかった。明日は頑張ろう。
「そうなると思ってたの。おめでとう」
エヴェリーナは嬉しそうにいった。
今日はロイドとヨハンナが侯爵邸に遊びに来ていた。
その場で二人が婚約することを聞かされたのだ。
「ありがとうございます、エヴェリーナ様のおかげです。」
「あの時の縁がこのようにつながるなんて不思議ね。またみんなで竜の山にお礼に伺いましょう!」
平民であることを気にして踏ん切りがつかなかったヨハンナに、ロイドは3男だから社交の必要はないと言ってくれた。何なら王太子殿下の側近を辞めて、一騎士か兵として国を支えても構わないとも言ったのだ。
そして、それとは別にヨハンナにも仕事の話がきた。
ステファンはかねてから考えていた案を王太子に伝えた。
それは女性が安心して頼れる女性騎士だ。令嬢や淑女が事件に巻き込まれた場合、繊細な内容なことも多く男性騎士相手に話すことを拒否するケースも多かった。相談しやすく、護衛にしても安心できる女性騎士が必要だと考えていた。
一緒にお茶をしてヨハンナの過去を聞いた時から、女性騎士第一号にふさわしい人物だと思い、構想を練り上げていたのだ。
王太子殿下のみならず国王、王妃の賛同を得られ、正式に女性騎士の地位が認められた。
ヨハンナは恐縮で辞退をしかけたが、母国でもともと抱いていた夢や希望、そして兵団での扱いを思い出し、気持ちを奮い立たせ拝命することにした。
それに伴い、令嬢など貴族と相対することもあるからとエルノー家の養女になり貴族籍に身を置くこととなった。エヴェリーナと姉妹となるということは侯爵家の後ろ盾もあるということだ、これで元平民だからと嫌がらせをしようとする輩を牽制できる。
今度は仲の良い姉妹になれてうれしいとエヴェリーナは喜んだ。もちろんエルノー伯爵とは書類上の関係のみだと王家からエルノー伯爵には言い渡され、伯爵はがっくりと落胆することとなる。
ヨハンナは結婚式を挙げる教会で、これまでのことに思いを馳せていた。
兵団を飛び出した自分が他国の騎士になった、平民の自分が貴族となり結婚した。それもこれもエヴェリーナと出会ったおかげだ。
竜のお使い様のご利益は確かにあったかもしれない、しかしエヴェリーナ自身が自分にとっての女神さまだとヨハンナは思った。
竜のお使い様同盟、この4人はこの後もずっと仲が良く、代がわりをしてもその絆は続いていった。
デュクロ家の庭先に住むトカゲとともに。
=================
次の番外編で完結になります
ヨハンナは恐縮したが、夕食を一緒にとり、その後はゆっくりとお茶を飲みながら話に花を咲かせた。
竜の山での話や、指輪の加護、ロイドとヨハンナの関係など話が尽きず、楽しい時間が過ぎた。
ヨハンナがなぜ女性でありながら危険な護衛の仕事をしているのかいきさつを聞き、ステファンも興味津々で聞き入った。
「ロイド様とはいつ約束を?」
「明後日です。」
「じゃあ、まだ時間があるわね!明日は私に付き合ってくれる?」
「ええ、どちらに?」
「街へ行きたいの。女性同士楽しみましょうよ。」
ステファンの許可をもらい、二人は翌日街に出た。
そして日常に身につけるドレスを手掛けている店にやってきた。
「エヴェリーナ様!言ってくださればお伺いいたしますのに!」
店のオーナーが慌ててやってくる。
「今日はお友達のドレスを見に来たの。彼女に似合うドレスと装飾品一式をいくつか見せていただける?」
「エヴェリーナ様?!」
「明日のデート楽しみだわ~。今のままでも美しいけど、いつもと違う着飾ったヨハンナさんを見たらロイド様はもうメロメロですわ!」
「ちょ、ちょっと!違います!私とロイド様はそんなんじゃありません!」
真っ赤になってヨハンナは否定する。
「ふふふ、どちらでもいいじゃない。せっかく異国に来たのだもの、この国のドレスを着るのも思い出の一つになるわ。遠路はるばる会いに来てくれたのだもの、ラッシュ国を楽しんで欲しいのよ。もしかしたらラッシュ国民になったりしてね。」
嬉しそうにエヴェリーナ様がいい、その間にさっさとドレスが何着か用意された。オーナーとエヴェリーナにどんどん詰められ、とうとう二人が一番似合うと声をそろえていった明るい青のドレスを買うことになった。それに合わせて靴やバック、装飾品まで選び、それらはエヴェリーナが贈ってくれた。
断固拒否をしたが、ドラン国での旅がどれだけかけがえのない物だったのかを懇々と訴えられた。無事に旅ができたのはヨハンナのおかげであり、竜のお使い様同盟の仲間でもある。
なにより一緒に過ごした時間の中で大切な友人と思っていると。
「だから明日のデートに向けて精一杯応援をさせて欲しいのよ」
「いえ、ですからデートなどでは・・・」
「ロイド様の事、憎からず思ってらっしゃるんでしょう?そうじゃなければお誘いがあったからと言って外国まで来ないでしょう?」
エヴェリーナは本当に楽しそうに悪い顔をした。
ロイドは侯爵家の3男で、王太子殿下の側近でもある。侯爵家は武の家柄で、父親、兄たちは騎士団として活躍している。ロイドも武術に秀でているが、王太子殿下と同級生であったこともあり側近としておそばに上がりながらいざという時の護衛の役目も担っている。
そんなロイドは王太子殿下を支えること以外には鍛える事しか興味がなかった。しかし、ステファンと一緒にドラン国へ行き、婚約者に対する執着を見たときにちょっと引いたものの、そこまで誰かを想えるのはうらやましいとも思ったのだ。
あまりにもステファンが婚約者にへばりついているため、護衛のヨハンナと話す機会も多くあった。そこで女性ながら危険な仕事をし、その志と自らを律した生き方に感動を覚え、共感することも多かった。
帰国してからも、その彼女のことが頭から離れず手紙を出したところ、来てくれると言ってくれた。その返事を見たとき、胸が高鳴り自分が恋をしていたのだとやっとわかった。明日は頑張ろう。
「そうなると思ってたの。おめでとう」
エヴェリーナは嬉しそうにいった。
今日はロイドとヨハンナが侯爵邸に遊びに来ていた。
その場で二人が婚約することを聞かされたのだ。
「ありがとうございます、エヴェリーナ様のおかげです。」
「あの時の縁がこのようにつながるなんて不思議ね。またみんなで竜の山にお礼に伺いましょう!」
平民であることを気にして踏ん切りがつかなかったヨハンナに、ロイドは3男だから社交の必要はないと言ってくれた。何なら王太子殿下の側近を辞めて、一騎士か兵として国を支えても構わないとも言ったのだ。
そして、それとは別にヨハンナにも仕事の話がきた。
ステファンはかねてから考えていた案を王太子に伝えた。
それは女性が安心して頼れる女性騎士だ。令嬢や淑女が事件に巻き込まれた場合、繊細な内容なことも多く男性騎士相手に話すことを拒否するケースも多かった。相談しやすく、護衛にしても安心できる女性騎士が必要だと考えていた。
一緒にお茶をしてヨハンナの過去を聞いた時から、女性騎士第一号にふさわしい人物だと思い、構想を練り上げていたのだ。
王太子殿下のみならず国王、王妃の賛同を得られ、正式に女性騎士の地位が認められた。
ヨハンナは恐縮で辞退をしかけたが、母国でもともと抱いていた夢や希望、そして兵団での扱いを思い出し、気持ちを奮い立たせ拝命することにした。
それに伴い、令嬢など貴族と相対することもあるからとエルノー家の養女になり貴族籍に身を置くこととなった。エヴェリーナと姉妹となるということは侯爵家の後ろ盾もあるということだ、これで元平民だからと嫌がらせをしようとする輩を牽制できる。
今度は仲の良い姉妹になれてうれしいとエヴェリーナは喜んだ。もちろんエルノー伯爵とは書類上の関係のみだと王家からエルノー伯爵には言い渡され、伯爵はがっくりと落胆することとなる。
ヨハンナは結婚式を挙げる教会で、これまでのことに思いを馳せていた。
兵団を飛び出した自分が他国の騎士になった、平民の自分が貴族となり結婚した。それもこれもエヴェリーナと出会ったおかげだ。
竜のお使い様のご利益は確かにあったかもしれない、しかしエヴェリーナ自身が自分にとっての女神さまだとヨハンナは思った。
竜のお使い様同盟、この4人はこの後もずっと仲が良く、代がわりをしてもその絆は続いていった。
デュクロ家の庭先に住むトカゲとともに。
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次の番外編で完結になります
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