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再会
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旅から戻り、すぐにアルビンに移住のことを告げた。
「・・・そうか。もう決めちゃったのかな」
「はい。自然の中で生きていくのも性に合ってる気がして。」
アルビンはしばらく考えていたが、やめるまでに一度だけ通訳してほしいと頼んだ。うちうちの取引だから、身バレする心配はないといわれ、今までの恩返しにと快く引き受けた。
そうと決まればいろいろお世話になっている人への挨拶もある。手土産に何か買おうと街に向かった。そして
「エヴェリーナ!」
と、こんなところで聞こえるはずがない人の声で名前を呼ばれた。
「・・・ステファン様・・・」
瞬間思い浮かんだ感情は、喜びだった。こんなところまで探しに来てくれたと思ってしまった。しかし、どうしても前回の光景が頭から離れず、それを思うと心臓がぎゅっと凍えて縮まった。
「やっと会えた・・・どうして黙っていなくなったの?」
「・・・・。失礼します。」
頭を下げて、逃げるように歩き出した。
「待って!話がある。」
腕を掴まれた。
「私はありません。ちゃんとお話しせずに申し訳ありませんでしたが、あれが私の気持ちの全てです。」
ステファンは辛そうに顔をしかめたが
「他の事でも大事な話がある。・・・アルビンという男の話だよ。君の・・・恋人なの?」
「雇い主です。」
「彼からすぐ離れて。彼は危ない。」
「何を言ってるんですか?彼は商会の会長で、穏やかで親切でいい人です!」
「裏の顔があるんだよ。彼は密輸や、禁止薬物とかとにかく犯罪に加担している、このまま帰っちゃいけない。」
「ステファン様が何を知っているんですか?!そんな人ではありません。」
「頼む、聞いてほしい。あるきっかけから調べたんだ、殿下付きの影の力も借りた。問題はこのドランにとどまらず、うちの国にも関係があったからだ。」
「・・・王家の影が?本当に?」
呆然として逃げる力を失ってしまったエヴェリーナを抱きしめた。
「君が巻き込まれる前にこのまま僕の泊まっている宿に行こう」
「・・・それは・・・いったん戻りたい。お母さまの・・・形見の指輪だけは・・・」
「・・・わかった。僕もついていく」
「・・・はい。」
アルビンの屋敷に戻ると、この国に来た時の服に着替え小さなカバンに大切なものを詰め込んだ。そして再び出ようとしたとき執事から声をかけられた。
「どちらに?」
「先ほど買い忘れたものがあって、もう一度街に行ってきますわ。」
「さようでございますか。ではお気をつけて」
ホッとして、ドアを開けようとしたとき後ろから口をふさがれた。扉さえ開ければ、ステファンが気が付いてくれる。ドアノブに何とか手を伸ばそうとするも体から力が抜けていき、目の前が真っ暗になった。
気が付くと、どこかの部屋のベッドに寝かされていた。
何が起こったのか全く分からなかった。
ドアを出ようとした時、後ろから何かをかがされた。考えられるのは執事。ステファンから聞いたことは事実で、ここの使用人たちもその仲間だったというのか。
なんとかここから出なくてはと立ち上がった時、正面のドアが開いた。
「やあ、エヴェリーナ。」
「・・・アルビンさん。どうしてこんなこと・・・」
「どうして?じゃあ、どうして君は黙って出ていこうとしたの?」
「私は買い物に行こうとしただけで・・・・」
「母の形見をもって?」
「・・・」
ずっと見張られてたというのか。みんな親切で優しい人だと思っていたのに。
「ああ、君を出せって騒いでいた彼には、君が裏口から逃げたと言っておいたから助けは来ないよ。えらく、青ざめた顔で裏に走っていったよ。あれは元婚約者?よりを戻すつもりだった?困るんだよ、ここにいてくれないと」
裏家業のことを知られたとはまだ知らないようだ。ただ、エヴェリーナを出ていかせないためだけにこんなことを?
「君にはこれからも優秀な通訳でいてほしからね」
「でも・・・私が竜の山に行くのを了承してくれたわ」
「そんなもの。それまでにどうにかするつもりだったさ。そもそも、もう少しだったのに、あのバカな女のせいで。」
「・・・どういうこと?」
「もうすぐ君は俺に落ちるとこだった、そうなったらこっちのものだったのに。あのあばずれが君にしょうもない嫉妬なんかするから君が離れようとしてしまった。だから時間をかけてる暇がなくなったよ。あの女を恨めばいいよ、ああもういないけどね」
そう笑うとエヴェリーナの手首をつかむみベッドに押し倒した。
「俺のものになれば、いうこと聞くだろう?君の優秀な能力を役立ててもらいたいんだ。」
「いやっ!!放して!」
服のボタンに手がかかり、力任せに引きちぎられた。
「いやあ!誰か・・・」
「うわあ?つっ?!痛!」
思いきり、アルビンに頭突きをした。自分も痛くて目が回りそうだがアルビンがひるんだ隙にエヴェリーナはドアの方に駆け出した。しかし鍵がかかっており逃げることはできなかった。
「助けて!!誰か!」
ドアをどんどん叩く。
「無駄だよ!こっちにこい!」
頭の痛みに苛立ち、乱暴にエヴェリーナを掴もうとする。
前回のことがあり、今回は護身術を学んではいた。相手の腕をひねりあげようとしたが、本気の男の力にはかなわず、あっさりと振りほどかれ頬を思い切り張られた。
そして、再びエヴェリーナはベッドに突き飛ばされた。
「・・・そうか。もう決めちゃったのかな」
「はい。自然の中で生きていくのも性に合ってる気がして。」
アルビンはしばらく考えていたが、やめるまでに一度だけ通訳してほしいと頼んだ。うちうちの取引だから、身バレする心配はないといわれ、今までの恩返しにと快く引き受けた。
そうと決まればいろいろお世話になっている人への挨拶もある。手土産に何か買おうと街に向かった。そして
「エヴェリーナ!」
と、こんなところで聞こえるはずがない人の声で名前を呼ばれた。
「・・・ステファン様・・・」
瞬間思い浮かんだ感情は、喜びだった。こんなところまで探しに来てくれたと思ってしまった。しかし、どうしても前回の光景が頭から離れず、それを思うと心臓がぎゅっと凍えて縮まった。
「やっと会えた・・・どうして黙っていなくなったの?」
「・・・・。失礼します。」
頭を下げて、逃げるように歩き出した。
「待って!話がある。」
腕を掴まれた。
「私はありません。ちゃんとお話しせずに申し訳ありませんでしたが、あれが私の気持ちの全てです。」
ステファンは辛そうに顔をしかめたが
「他の事でも大事な話がある。・・・アルビンという男の話だよ。君の・・・恋人なの?」
「雇い主です。」
「彼からすぐ離れて。彼は危ない。」
「何を言ってるんですか?彼は商会の会長で、穏やかで親切でいい人です!」
「裏の顔があるんだよ。彼は密輸や、禁止薬物とかとにかく犯罪に加担している、このまま帰っちゃいけない。」
「ステファン様が何を知っているんですか?!そんな人ではありません。」
「頼む、聞いてほしい。あるきっかけから調べたんだ、殿下付きの影の力も借りた。問題はこのドランにとどまらず、うちの国にも関係があったからだ。」
「・・・王家の影が?本当に?」
呆然として逃げる力を失ってしまったエヴェリーナを抱きしめた。
「君が巻き込まれる前にこのまま僕の泊まっている宿に行こう」
「・・・それは・・・いったん戻りたい。お母さまの・・・形見の指輪だけは・・・」
「・・・わかった。僕もついていく」
「・・・はい。」
アルビンの屋敷に戻ると、この国に来た時の服に着替え小さなカバンに大切なものを詰め込んだ。そして再び出ようとしたとき執事から声をかけられた。
「どちらに?」
「先ほど買い忘れたものがあって、もう一度街に行ってきますわ。」
「さようでございますか。ではお気をつけて」
ホッとして、ドアを開けようとしたとき後ろから口をふさがれた。扉さえ開ければ、ステファンが気が付いてくれる。ドアノブに何とか手を伸ばそうとするも体から力が抜けていき、目の前が真っ暗になった。
気が付くと、どこかの部屋のベッドに寝かされていた。
何が起こったのか全く分からなかった。
ドアを出ようとした時、後ろから何かをかがされた。考えられるのは執事。ステファンから聞いたことは事実で、ここの使用人たちもその仲間だったというのか。
なんとかここから出なくてはと立ち上がった時、正面のドアが開いた。
「やあ、エヴェリーナ。」
「・・・アルビンさん。どうしてこんなこと・・・」
「どうして?じゃあ、どうして君は黙って出ていこうとしたの?」
「私は買い物に行こうとしただけで・・・・」
「母の形見をもって?」
「・・・」
ずっと見張られてたというのか。みんな親切で優しい人だと思っていたのに。
「ああ、君を出せって騒いでいた彼には、君が裏口から逃げたと言っておいたから助けは来ないよ。えらく、青ざめた顔で裏に走っていったよ。あれは元婚約者?よりを戻すつもりだった?困るんだよ、ここにいてくれないと」
裏家業のことを知られたとはまだ知らないようだ。ただ、エヴェリーナを出ていかせないためだけにこんなことを?
「君にはこれからも優秀な通訳でいてほしからね」
「でも・・・私が竜の山に行くのを了承してくれたわ」
「そんなもの。それまでにどうにかするつもりだったさ。そもそも、もう少しだったのに、あのバカな女のせいで。」
「・・・どういうこと?」
「もうすぐ君は俺に落ちるとこだった、そうなったらこっちのものだったのに。あのあばずれが君にしょうもない嫉妬なんかするから君が離れようとしてしまった。だから時間をかけてる暇がなくなったよ。あの女を恨めばいいよ、ああもういないけどね」
そう笑うとエヴェリーナの手首をつかむみベッドに押し倒した。
「俺のものになれば、いうこと聞くだろう?君の優秀な能力を役立ててもらいたいんだ。」
「いやっ!!放して!」
服のボタンに手がかかり、力任せに引きちぎられた。
「いやあ!誰か・・・」
「うわあ?つっ?!痛!」
思いきり、アルビンに頭突きをした。自分も痛くて目が回りそうだがアルビンがひるんだ隙にエヴェリーナはドアの方に駆け出した。しかし鍵がかかっており逃げることはできなかった。
「助けて!!誰か!」
ドアをどんどん叩く。
「無駄だよ!こっちにこい!」
頭の痛みに苛立ち、乱暴にエヴェリーナを掴もうとする。
前回のことがあり、今回は護身術を学んではいた。相手の腕をひねりあげようとしたが、本気の男の力にはかなわず、あっさりと振りほどかれ頬を思い切り張られた。
そして、再びエヴェリーナはベッドに突き飛ばされた。
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