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デート
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「今日は街に行かないか?」
ドラン国に来てから働きづめで、街に出て楽しむこともないエヴェリーナを気にしてアルビンが誘ってくれた。
ドラン国は、ラッシュの国の街とはまた違った賑わいを見せていた。ラッシュ国は落ち着いた色合いの街だが、この国は赤や黄色、青、緑と花が咲いたような華やかな街並みだった。様々なお店が軒を連ね、あちらこちらから食欲をそそるような良い香りが漂ってくる。
ひときわ良い香りのする店でアルビンは何か買ってきた。薄いパンのような生地に甘辛く味付けた肉と野菜を挟んだものだった。
「これ?どうやって?」
一応貴族の端くれだったので外で、食器もなく食べたことがない。
「こうしてかぶりつくんだよ」
と、アルビンは大きな口で一口食べて見せた。アルビンも貴族だったはずだけど。
とてもおいしそうに、そしてうれしそうな顔にエヴェリーナも思わずかぶりついた。
「美味しい!」
途中ですっとアルビンの手が伸びてきて、ハンカチで口元を拭ってくれた。
「ご、ごめんなさい」
エヴェリーナは恥ずかしさで真っ赤になった。
「喜んでもらえてよかった。さ、もう少し見て回ろう。」
そのあとも、喫茶で美味しいお茶やケーキをごちそうになったり、演劇場や公園、おいしいパン屋さんなどにも案内してくれた。人の多いところでは手を引いてくれる。
ステファンとこうして過ごしたこともほとんどなく、こういう扱いに慣れていないエヴェリーナは戸惑いながらも胸が弾むのをかんじた。こうして休みには二人で出かけることが多くなった。
エヴェリーナの家の応接室に通されたステファンはイライラしていた。
「ステファン様、こちらお取り寄せしたお茶ですの。ぜひお召し上がりになって?」
と妹のテューネがもてなそうとまとわりつく。
「伯爵は不在ですか?時間は知らせておいたはずですが?」
「もちろん伝えておりますわ。少し遅れているようなので、その間テューネのもてなしでおくつろぎください」
と、母までが嬉しそうにしている。
この二人はエヴェリーナのことなど全く心配していない。何のために忙しいすき間を縫ってきていると思っているんだ。不機嫌にしているステファンに気が付くと、テューネはウルウル涙をためながら
「ああ、ごめんなさい。お姉さまの事で御心労をおかけしているステファン様を癒す手伝いができればと思いましたの・・・」
そっと腕に触れてくる。テューネはこうすればたいてい誰でもいうことを聞いてくれると自分の可愛さの魅せ方をよくわかっていた。これまでのステファンなら少なくとも、機嫌は直っていただろう。しかし、テューネの泣き落としの件で大切なエヴェリーナに後悔する返事をしてしまったステファンは深く反省をし、妹のずるさを理解していた。
「・・・・帰りますよ。伯爵によろしくお伝えください。」
「え?待って。ゆっくりなさって。あの・・・姉がこのまま見つからなかったら婚約は妹のわたくしと結びなおしになりますわっ」
「は?」
「家同士の婚約だからそうなるとお母さまから聞いております。ですからゆっくりとお話を・・・」
「・・・かわいそうに。こんな家族と暮らしていたなんて。」
「・・・私はステファン様のことを思って・・」
「失礼する。ああ、伯爵にはもう用がないと伝えてください。一切あてにはしないと。」
執事に伝言を残すと家を後にした。
お互いに捜索状況や情報の共有をするためにわざわざ来たというのに無駄足だった。しかも彼女の心配さえしていない家族のもとで、日頃どんなに辛い生活を送っていたのだろうか。この席につかなかった実の父親も同様なのだろう。
だが、どうして自分に頼ってくれなかったのか。確かに忙しくてなかなか会うことができなかったが、婚約者として大切にしてきたつもりなのに。
「・・・つもりだったから、彼女は僕を信頼してなかったのかな?」
何も知らないくせに、妹にもう少し優しくしてあげたらなんて言ってしまった。他にも忙しさにかまけて約束をキャンセルすることも多くそのフォローもできていなかった。仕事だからしょうがない、わかってくれると思い込んでいた。
「エヴェリーナは家族だけじゃなくて・・・僕からも逃げたかったのかな。」
ドラン国に来てから働きづめで、街に出て楽しむこともないエヴェリーナを気にしてアルビンが誘ってくれた。
ドラン国は、ラッシュの国の街とはまた違った賑わいを見せていた。ラッシュ国は落ち着いた色合いの街だが、この国は赤や黄色、青、緑と花が咲いたような華やかな街並みだった。様々なお店が軒を連ね、あちらこちらから食欲をそそるような良い香りが漂ってくる。
ひときわ良い香りのする店でアルビンは何か買ってきた。薄いパンのような生地に甘辛く味付けた肉と野菜を挟んだものだった。
「これ?どうやって?」
一応貴族の端くれだったので外で、食器もなく食べたことがない。
「こうしてかぶりつくんだよ」
と、アルビンは大きな口で一口食べて見せた。アルビンも貴族だったはずだけど。
とてもおいしそうに、そしてうれしそうな顔にエヴェリーナも思わずかぶりついた。
「美味しい!」
途中ですっとアルビンの手が伸びてきて、ハンカチで口元を拭ってくれた。
「ご、ごめんなさい」
エヴェリーナは恥ずかしさで真っ赤になった。
「喜んでもらえてよかった。さ、もう少し見て回ろう。」
そのあとも、喫茶で美味しいお茶やケーキをごちそうになったり、演劇場や公園、おいしいパン屋さんなどにも案内してくれた。人の多いところでは手を引いてくれる。
ステファンとこうして過ごしたこともほとんどなく、こういう扱いに慣れていないエヴェリーナは戸惑いながらも胸が弾むのをかんじた。こうして休みには二人で出かけることが多くなった。
エヴェリーナの家の応接室に通されたステファンはイライラしていた。
「ステファン様、こちらお取り寄せしたお茶ですの。ぜひお召し上がりになって?」
と妹のテューネがもてなそうとまとわりつく。
「伯爵は不在ですか?時間は知らせておいたはずですが?」
「もちろん伝えておりますわ。少し遅れているようなので、その間テューネのもてなしでおくつろぎください」
と、母までが嬉しそうにしている。
この二人はエヴェリーナのことなど全く心配していない。何のために忙しいすき間を縫ってきていると思っているんだ。不機嫌にしているステファンに気が付くと、テューネはウルウル涙をためながら
「ああ、ごめんなさい。お姉さまの事で御心労をおかけしているステファン様を癒す手伝いができればと思いましたの・・・」
そっと腕に触れてくる。テューネはこうすればたいてい誰でもいうことを聞いてくれると自分の可愛さの魅せ方をよくわかっていた。これまでのステファンなら少なくとも、機嫌は直っていただろう。しかし、テューネの泣き落としの件で大切なエヴェリーナに後悔する返事をしてしまったステファンは深く反省をし、妹のずるさを理解していた。
「・・・・帰りますよ。伯爵によろしくお伝えください。」
「え?待って。ゆっくりなさって。あの・・・姉がこのまま見つからなかったら婚約は妹のわたくしと結びなおしになりますわっ」
「は?」
「家同士の婚約だからそうなるとお母さまから聞いております。ですからゆっくりとお話を・・・」
「・・・かわいそうに。こんな家族と暮らしていたなんて。」
「・・・私はステファン様のことを思って・・」
「失礼する。ああ、伯爵にはもう用がないと伝えてください。一切あてにはしないと。」
執事に伝言を残すと家を後にした。
お互いに捜索状況や情報の共有をするためにわざわざ来たというのに無駄足だった。しかも彼女の心配さえしていない家族のもとで、日頃どんなに辛い生活を送っていたのだろうか。この席につかなかった実の父親も同様なのだろう。
だが、どうして自分に頼ってくれなかったのか。確かに忙しくてなかなか会うことができなかったが、婚約者として大切にしてきたつもりなのに。
「・・・つもりだったから、彼女は僕を信頼してなかったのかな?」
何も知らないくせに、妹にもう少し優しくしてあげたらなんて言ってしまった。他にも忙しさにかまけて約束をキャンセルすることも多くそのフォローもできていなかった。仕事だからしょうがない、わかってくれると思い込んでいた。
「エヴェリーナは家族だけじゃなくて・・・僕からも逃げたかったのかな。」
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