3 / 34
残された婚約者
しおりを挟む
エヴェリーナが姿を消してから4か月がたつのに何の情報もなかった。随分前から周到に準備をしていたのだろう、何の痕跡も残されていなかった。
エヴェリーナの実家でも原因はわからないというが、エヴェリーナ付きの侍女からはこの家には身の置き所がなかったと教えられた。父親は、再婚当初、早く打ち解けてもらおうと後妻とその連れ子をかわいがり、ついついエヴェリーナを後回しにしていたそうだ。それが年月が経ってもその傾向は変わらず、まるでエヴェリーナ一人が他人のように見えたと侍女は証言した。
怒りのあまり、それを父親と後妻にぶつけた。二人は後ろめたさは感じていたらしい。しかしエヴェリーナがおとなしくしているのをいいことに、そのまま来てしまったと弁解した。ただ大切には思ってるとの言い訳に思わず声を荒げた。
「彼女に何かあったら、あなたたちのせいですよ!」
「ステファン様。お母さまたちをお責めにならないで。私たちはこの家の一員になろうと必死で頑張っているのをお父様が支えてくださっていただけなのです。お姉さまはそれを寂しく思われてしまっただけなのです」
「ではなぜ4人で頑張らなかったのですか?3人で頑張ってきた・・・彼女をはじめから仲間にする気がなかったという事でしょう。被害者ぶるのはやめていただきたい。」
「ステファン様、そんなことおっしゃらないで・・・」
エヴェリーナの義理の妹のテューネはほろほろと涙を落とす。
彼女はいつもこうだと聞いていた。何かあったらすぐに泣きだし、それで両親を味方につけていつもエヴェリーナが悪者にされると言っていた。
小柄で華奢な体に、天使のように可愛いと形容されるその美貌で涙を流されると誰だって、庇護欲がわき彼女の味方をするだろう。
そうだ、とステファンは思い出した。エヴェリーナが珍しくそう愚痴を言った時、「でも彼女はとても繊細だから。君が大丈夫と思ったことでも彼女には泣くほど辛いことかもしれないだろう?もう少し優しくしてもいいんじゃないかな?」と偉そうに言ってしまったことがある。
その時、エヴェリーナはそうねと笑った。
自分も、この家族と一緒だった。エヴェリーナはどんな気持ちだったのだろう。血がにじむのにも構わず、唇を噛みしめた。
エヴェリーナの実家でも原因はわからないというが、エヴェリーナ付きの侍女からはこの家には身の置き所がなかったと教えられた。父親は、再婚当初、早く打ち解けてもらおうと後妻とその連れ子をかわいがり、ついついエヴェリーナを後回しにしていたそうだ。それが年月が経ってもその傾向は変わらず、まるでエヴェリーナ一人が他人のように見えたと侍女は証言した。
怒りのあまり、それを父親と後妻にぶつけた。二人は後ろめたさは感じていたらしい。しかしエヴェリーナがおとなしくしているのをいいことに、そのまま来てしまったと弁解した。ただ大切には思ってるとの言い訳に思わず声を荒げた。
「彼女に何かあったら、あなたたちのせいですよ!」
「ステファン様。お母さまたちをお責めにならないで。私たちはこの家の一員になろうと必死で頑張っているのをお父様が支えてくださっていただけなのです。お姉さまはそれを寂しく思われてしまっただけなのです」
「ではなぜ4人で頑張らなかったのですか?3人で頑張ってきた・・・彼女をはじめから仲間にする気がなかったという事でしょう。被害者ぶるのはやめていただきたい。」
「ステファン様、そんなことおっしゃらないで・・・」
エヴェリーナの義理の妹のテューネはほろほろと涙を落とす。
彼女はいつもこうだと聞いていた。何かあったらすぐに泣きだし、それで両親を味方につけていつもエヴェリーナが悪者にされると言っていた。
小柄で華奢な体に、天使のように可愛いと形容されるその美貌で涙を流されると誰だって、庇護欲がわき彼女の味方をするだろう。
そうだ、とステファンは思い出した。エヴェリーナが珍しくそう愚痴を言った時、「でも彼女はとても繊細だから。君が大丈夫と思ったことでも彼女には泣くほど辛いことかもしれないだろう?もう少し優しくしてもいいんじゃないかな?」と偉そうに言ってしまったことがある。
その時、エヴェリーナはそうねと笑った。
自分も、この家族と一緒だった。エヴェリーナはどんな気持ちだったのだろう。血がにじむのにも構わず、唇を噛みしめた。
236
お気に入りに追加
2,423
あなたにおすすめの小説
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください
mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。
「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」
大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です!
男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。
どこに、捻じ込めると言うのですか!
※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる