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新たな生活
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卒業式ではこの学院と学友との別れに涙した。
卒業パーティでは皆解放されたように踊り、そして興奮のまま家路につくもの、寮へと戻るものと皆の人生がここで分岐していった。
そしてエミリアは翌朝、ソフィアの馬車に乗せてもらった。
とうとうアルテオ国から旅立つ日がやってきたのだ。
見送りにはヴィンセントが来てくれていた。
「ヴィンセント、ありがとう。」
「俺はこの国で頑張る、そしてエミリアにも会いに行くよ。」
「ええ、待っているわ。」
ヴィンセントは離れがたそうにしていたが、ぎゅっとエミリアを抱きしめると唇を合わせた。
「ヴィンセント!」
顔を真っ赤にしてエミリアは叫ぶ。ヴィンセントは笑って、
「俺はお前との未来もあきらめていないからな。お互い頑張ろうぜ。」
そう言ってエミリアを送り出した。
卒業を祝うために花束を抱えて迎えにきていたヨハンがそれを見て絶望している姿には誰も気が付かなかった。
レイノー国での生活はソフィアのおかげで快適だった。
ソフィアの命の恩人のエミリアを侯爵は歓迎し、新たな生活に惜しみなく力を貸してくれた。
しばらく侯爵邸に居候させてもらい、仕事を探す前にこの国を知る方がよいとあちらこちらに連れて行ってくれた。
レイノー国の様々な場所を案内してもらった結果、考えたのは通訳兼案内だった。
レイノー国は年中通して温暖で過ごしやすい気候である。
美しい海岸線や、高低差のある滝、希少な動植物がみられる森、洞窟や山など見どころがいっぱいで、かつ食材も豊かで美味しいものがたくさんある。アルテオからの旅行客も多い。
それらの通訳と案内は結構需要が見込めるのではないかと思う。自分も言語をいかせるし、レイノー国を堪能できる。
もともと子爵令嬢でそれほど貴族らしい生活を送っていたわけではなく、仕事に対する抵抗もない。
ソフィアに心配されたのは安全についてだ。女性一人では危険だという忠告に従い、ソフィアの父トゥーリ侯爵から護衛をお借りすることになった。それもきちんと仕事として成り立てば雇用料を支払うよう契約も交わした。
3週間などあっという間にたち、ソフィアは名残惜しみながらアルテオ国に戻っていった。
ソフィアがいなくなった侯爵家にいつまでも居候をさせてもらうのは気がひけて、トゥーリ侯爵に大家さんがしっかりしている部屋を紹介してもらった。
仕事は新たに事務所を開設できるほどの資金はないため、侯爵の事業の事務所で窓口を請け負ってくれることになった。その方が怪しい依頼を防ぐことが出来るだろうと、侯爵には本当にお世話になった。
いつか、必ずお返しをさせてもらおうと心に決めた。
しかし新しい仕事、そう順調にはいかない。
空いている時間は様々なお店に足を運び、観光地を歩き回り自分の目で情報を集めた。
少しするとちょこちょこ仕事が入りだした。ソフィアがアルテオ国で紹介してくれた貴族たちがエミリアに依頼し、その口コミでまた新しいお客が依頼してくれるようになった。
エミリアの観光案内は、美しい海岸線や、滝、希少な動植物がみられる森、洞窟や山だけではなく、女性目線の細やかな配慮がされている。美しい街並み、教会や美味しい食事や可愛いカフェも必ず組み込まれていて、休憩時間も頻回にとり、お手洗いや化粧直しの場所もしっかり押さえてあって女性にとても喜ばれた。
通訳がいることで買い物や体験など地元の人との細かいやり取りもスムーズになり、体調を崩したときも安心して医師に診てもらえるなど女性客を中心にどんどん評判になっていった。
ヴィンセントから手紙が届く。
両親と、兄のユーロの様子が書かれていた。ユーロは何の相談もなかった事を怒りながらも異国での生活を心配しているらしい。父は、怒りまくり家族へ八つ当たりをして、母は何もいわず落ち込んでいる様子。
バランド家からは、婚約を嫌がるように行方をくらましたことで婚約破棄と慰謝料を請求されたようだ。
(だからあちらの有責で解消できる間に話を聞いてくれたらよかったのに・・・)
自分も悪い所はあるとわかっている。きちんとした話し合いを放棄し、逃げるようにこの国に来たのだから非難を浴びる覚悟はしている。
それにヨハンは悪気がなく、人の良さにつけ込まれて幼馴染の令嬢にいい様に操られただけだ。笑って許せば、大事にもならず、婚約もそのままで家族もバランド家も満足だっただろう。
でも、そうするとエミリアの心に沸き上がった不信感や苛立ち、両親からも突き放された悔しさ、悲しみをどう昇華させればよかったというのか。
なかった事には出来ない、エミリア一人が我慢すればよかったのか。
気にしていないつもりではあったが、惨めさや卑屈といったマイナスな感情に心がむしばまれはじめていたのだとこの地に来てからよくわかった。あれ以上、あのような状況が続くことは我慢が出来なかったと思う。
そしてなにより夢を見つけてしまった。自分が頑張ってきたことがこうして形になっているのだ。思い切って飛び出してよかったと思っている。
エミリアは、仕事が順調でこちらの生活はとても楽しいと手紙に書いて送った。
卒業パーティでは皆解放されたように踊り、そして興奮のまま家路につくもの、寮へと戻るものと皆の人生がここで分岐していった。
そしてエミリアは翌朝、ソフィアの馬車に乗せてもらった。
とうとうアルテオ国から旅立つ日がやってきたのだ。
見送りにはヴィンセントが来てくれていた。
「ヴィンセント、ありがとう。」
「俺はこの国で頑張る、そしてエミリアにも会いに行くよ。」
「ええ、待っているわ。」
ヴィンセントは離れがたそうにしていたが、ぎゅっとエミリアを抱きしめると唇を合わせた。
「ヴィンセント!」
顔を真っ赤にしてエミリアは叫ぶ。ヴィンセントは笑って、
「俺はお前との未来もあきらめていないからな。お互い頑張ろうぜ。」
そう言ってエミリアを送り出した。
卒業を祝うために花束を抱えて迎えにきていたヨハンがそれを見て絶望している姿には誰も気が付かなかった。
レイノー国での生活はソフィアのおかげで快適だった。
ソフィアの命の恩人のエミリアを侯爵は歓迎し、新たな生活に惜しみなく力を貸してくれた。
しばらく侯爵邸に居候させてもらい、仕事を探す前にこの国を知る方がよいとあちらこちらに連れて行ってくれた。
レイノー国の様々な場所を案内してもらった結果、考えたのは通訳兼案内だった。
レイノー国は年中通して温暖で過ごしやすい気候である。
美しい海岸線や、高低差のある滝、希少な動植物がみられる森、洞窟や山など見どころがいっぱいで、かつ食材も豊かで美味しいものがたくさんある。アルテオからの旅行客も多い。
それらの通訳と案内は結構需要が見込めるのではないかと思う。自分も言語をいかせるし、レイノー国を堪能できる。
もともと子爵令嬢でそれほど貴族らしい生活を送っていたわけではなく、仕事に対する抵抗もない。
ソフィアに心配されたのは安全についてだ。女性一人では危険だという忠告に従い、ソフィアの父トゥーリ侯爵から護衛をお借りすることになった。それもきちんと仕事として成り立てば雇用料を支払うよう契約も交わした。
3週間などあっという間にたち、ソフィアは名残惜しみながらアルテオ国に戻っていった。
ソフィアがいなくなった侯爵家にいつまでも居候をさせてもらうのは気がひけて、トゥーリ侯爵に大家さんがしっかりしている部屋を紹介してもらった。
仕事は新たに事務所を開設できるほどの資金はないため、侯爵の事業の事務所で窓口を請け負ってくれることになった。その方が怪しい依頼を防ぐことが出来るだろうと、侯爵には本当にお世話になった。
いつか、必ずお返しをさせてもらおうと心に決めた。
しかし新しい仕事、そう順調にはいかない。
空いている時間は様々なお店に足を運び、観光地を歩き回り自分の目で情報を集めた。
少しするとちょこちょこ仕事が入りだした。ソフィアがアルテオ国で紹介してくれた貴族たちがエミリアに依頼し、その口コミでまた新しいお客が依頼してくれるようになった。
エミリアの観光案内は、美しい海岸線や、滝、希少な動植物がみられる森、洞窟や山だけではなく、女性目線の細やかな配慮がされている。美しい街並み、教会や美味しい食事や可愛いカフェも必ず組み込まれていて、休憩時間も頻回にとり、お手洗いや化粧直しの場所もしっかり押さえてあって女性にとても喜ばれた。
通訳がいることで買い物や体験など地元の人との細かいやり取りもスムーズになり、体調を崩したときも安心して医師に診てもらえるなど女性客を中心にどんどん評判になっていった。
ヴィンセントから手紙が届く。
両親と、兄のユーロの様子が書かれていた。ユーロは何の相談もなかった事を怒りながらも異国での生活を心配しているらしい。父は、怒りまくり家族へ八つ当たりをして、母は何もいわず落ち込んでいる様子。
バランド家からは、婚約を嫌がるように行方をくらましたことで婚約破棄と慰謝料を請求されたようだ。
(だからあちらの有責で解消できる間に話を聞いてくれたらよかったのに・・・)
自分も悪い所はあるとわかっている。きちんとした話し合いを放棄し、逃げるようにこの国に来たのだから非難を浴びる覚悟はしている。
それにヨハンは悪気がなく、人の良さにつけ込まれて幼馴染の令嬢にいい様に操られただけだ。笑って許せば、大事にもならず、婚約もそのままで家族もバランド家も満足だっただろう。
でも、そうするとエミリアの心に沸き上がった不信感や苛立ち、両親からも突き放された悔しさ、悲しみをどう昇華させればよかったというのか。
なかった事には出来ない、エミリア一人が我慢すればよかったのか。
気にしていないつもりではあったが、惨めさや卑屈といったマイナスな感情に心がむしばまれはじめていたのだとこの地に来てからよくわかった。あれ以上、あのような状況が続くことは我慢が出来なかったと思う。
そしてなにより夢を見つけてしまった。自分が頑張ってきたことがこうして形になっているのだ。思い切って飛び出してよかったと思っている。
エミリアは、仕事が順調でこちらの生活はとても楽しいと手紙に書いて送った。
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