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絶望
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ヨハンはエミリアの実家から連絡を貰い、フィネル家にやってきていた。
冬の長期休みに合わせて戻ってくると聞き、かけつけたのだ。
何が何でも話をし、許してもらい関係を修繕しなければならない。何十通送ったかわからない手紙には一度も返信がなかった。
戻ってきたエミリアはヨハンを見て表情を変えることなく他人行儀に挨拶をした。そして久しぶりにも拘らず、自分の両親にも簡単に帰宅の挨拶をするだけだった。
両親は悲しそうな顔をし、心配していた事や会いたかったと伝えるも、エミリアはそっけなく、謝るだけだった。
「今日は荷物を取りに戻っただけですので、明日には出立いたします。」
「冬の休みの間、帰ってきたのではないのか?」
「いいえ。友人が旅行に誘って下さいましたので用意に帰ってきただけですわ。」
「そんなこと!事前の承諾もなしに勝手に決めるものではない。お前とは話すことがたくさんある、婚約者のヨハン殿ともゆっくり過ごしなさい。そうすればすぐに分かり合えるものだ。」
エミリアは、あれだけ手紙で訴えたのに少しも耳を傾けてくれないのだと寂しく思った。
自分も頑固で、ここまで逃げ回ったことは悪かったと思っている。だけど、もうエミリアの心の中には壁が出来てしまっていた。
昔は仲の良い親子ではあったが、最近はこちらの言い分に耳を傾けてくれたことはない。一家の長として優先すべきことがあるのはエミリアも理解している。しかし、今回はエミリアの一生と心に関わる問題だ。
いびつな婚約状況に何一つ力になってくれなかった、相談にもならなかった。せめて労わりの言葉だけでもくれていたらまた違っただろうに。
「エミリア様、やっとお会いできてうれしいです。本当に申し訳ありませんでした。私が不誠実な事ばかりしたせいであなたを悲しませてしまって・・・ご家族とも溝を作ってしまいました。改めてお詫びします。そしてこれから信頼を取り戻すチャンスを下さいませんか?」
「お気遣いなく。ヨハン様、私に気を遣う必要はございませんわ。ご自由にお過ごしくださいませ。」
「エミリア!我儘はいい加減にしなさい。ヨハン殿、娘が申し訳ありません。少し拗ねておるだけでして。照れ隠しのようなものですので、許してやってください。」
フィネル子爵が何とか取り繕おうとする。
「いいえ、もとはといえば私が信頼を無くしたのが原因ですので。弁解させていただきますと、あの令嬢は幼馴染なのですが、もうすぐ王都の貴族の後妻になる予定なのです。なにぶん田舎育ちですので、馬鹿にされないよう都会のことをいろいろ教えて欲しいと頼まれまして半年間だけ面倒を見ることになったのです。」
聞き流しながら、なぜいつも顔合わせの日に?都会を勉強するのがカフェで楽しみ、服を買う事なのか?などなどエミリアは思っていた。
これっぽちも共感も感心もしなかった。何より、あの令嬢のあの表情。
「それは仕方がありませんな。ヨハン殿はお優しい。それに比べてうちの娘は自分の事ばかりで、まだまだ子供でして。」
父親の言葉を聞き、エミリアの冷めていく目を見てヨハンは慌てた。
「いいえ!エミリア様は何も悪くありません。日程調整しなかった私が悪いのです!エミリア様、本当に申し訳ありませんでした。」
ヨハンは立ち上がって頭を下げた。
「いえ、父の言う通り私はわがままで自分のことしか考えられない愚かな子供ですので、ヨハン様のような素晴らしい方にはふさわしくありませんわ。私は身を引きますので、ヨハン様にふさわしいお方と婚約してくださいませ。」
「エミリア!それが子供だと言っているんだ!」
「だからヨハン様にふさわしくないと言っているのです!また、たたく気ですか?!どうぞ、叩いてください!」
思わず手が浮き上がった父を見てエミリアは怒鳴った。
はっとしたようにヨハンを見て手を下げた。
「ヨハン殿、失礼した。みっともない姿をお見せいたしましたがいつもこんなことをしているわけでは・・・申し訳なかった。」
「い、いえ。」
ヨハンは絶望感で一杯だった。
エミリアは関係修復など微塵も願っていない。それどころかそのせいで親とも喧嘩し、エミリアは父親に叩かれたこともあるようだ。
自分がうかつなことをしたばかりに、一つの家族を壊してしまった。そんな自分がこれ以上エミリアに縋る資格などあるわけがない。
それでも・・・幼いころに一度だけ出会った彼女を探し続けてやっとかなった婚約。それを失いたくはなかった。
「今日は・・・お暇いたします。私こそ自分勝手でエミリア様にご迷惑をおかけしました。心からお詫びいたします。ですが・・・一度、ゆっくりとお話しする時間をいただけませんか?お願いします。」
「・・・わかりました。旅から戻ってから連絡いたします。」
父が旅の許可を出していないというのを無視し、ヨハンを馬車まで送った。
「エミリア様、今更だと思われるでしょうが私は本当にエミリア様を大切に思っております。」
そう言い残してヨハンは帰っていった。
冬の長期休みに合わせて戻ってくると聞き、かけつけたのだ。
何が何でも話をし、許してもらい関係を修繕しなければならない。何十通送ったかわからない手紙には一度も返信がなかった。
戻ってきたエミリアはヨハンを見て表情を変えることなく他人行儀に挨拶をした。そして久しぶりにも拘らず、自分の両親にも簡単に帰宅の挨拶をするだけだった。
両親は悲しそうな顔をし、心配していた事や会いたかったと伝えるも、エミリアはそっけなく、謝るだけだった。
「今日は荷物を取りに戻っただけですので、明日には出立いたします。」
「冬の休みの間、帰ってきたのではないのか?」
「いいえ。友人が旅行に誘って下さいましたので用意に帰ってきただけですわ。」
「そんなこと!事前の承諾もなしに勝手に決めるものではない。お前とは話すことがたくさんある、婚約者のヨハン殿ともゆっくり過ごしなさい。そうすればすぐに分かり合えるものだ。」
エミリアは、あれだけ手紙で訴えたのに少しも耳を傾けてくれないのだと寂しく思った。
自分も頑固で、ここまで逃げ回ったことは悪かったと思っている。だけど、もうエミリアの心の中には壁が出来てしまっていた。
昔は仲の良い親子ではあったが、最近はこちらの言い分に耳を傾けてくれたことはない。一家の長として優先すべきことがあるのはエミリアも理解している。しかし、今回はエミリアの一生と心に関わる問題だ。
いびつな婚約状況に何一つ力になってくれなかった、相談にもならなかった。せめて労わりの言葉だけでもくれていたらまた違っただろうに。
「エミリア様、やっとお会いできてうれしいです。本当に申し訳ありませんでした。私が不誠実な事ばかりしたせいであなたを悲しませてしまって・・・ご家族とも溝を作ってしまいました。改めてお詫びします。そしてこれから信頼を取り戻すチャンスを下さいませんか?」
「お気遣いなく。ヨハン様、私に気を遣う必要はございませんわ。ご自由にお過ごしくださいませ。」
「エミリア!我儘はいい加減にしなさい。ヨハン殿、娘が申し訳ありません。少し拗ねておるだけでして。照れ隠しのようなものですので、許してやってください。」
フィネル子爵が何とか取り繕おうとする。
「いいえ、もとはといえば私が信頼を無くしたのが原因ですので。弁解させていただきますと、あの令嬢は幼馴染なのですが、もうすぐ王都の貴族の後妻になる予定なのです。なにぶん田舎育ちですので、馬鹿にされないよう都会のことをいろいろ教えて欲しいと頼まれまして半年間だけ面倒を見ることになったのです。」
聞き流しながら、なぜいつも顔合わせの日に?都会を勉強するのがカフェで楽しみ、服を買う事なのか?などなどエミリアは思っていた。
これっぽちも共感も感心もしなかった。何より、あの令嬢のあの表情。
「それは仕方がありませんな。ヨハン殿はお優しい。それに比べてうちの娘は自分の事ばかりで、まだまだ子供でして。」
父親の言葉を聞き、エミリアの冷めていく目を見てヨハンは慌てた。
「いいえ!エミリア様は何も悪くありません。日程調整しなかった私が悪いのです!エミリア様、本当に申し訳ありませんでした。」
ヨハンは立ち上がって頭を下げた。
「いえ、父の言う通り私はわがままで自分のことしか考えられない愚かな子供ですので、ヨハン様のような素晴らしい方にはふさわしくありませんわ。私は身を引きますので、ヨハン様にふさわしいお方と婚約してくださいませ。」
「エミリア!それが子供だと言っているんだ!」
「だからヨハン様にふさわしくないと言っているのです!また、たたく気ですか?!どうぞ、叩いてください!」
思わず手が浮き上がった父を見てエミリアは怒鳴った。
はっとしたようにヨハンを見て手を下げた。
「ヨハン殿、失礼した。みっともない姿をお見せいたしましたがいつもこんなことをしているわけでは・・・申し訳なかった。」
「い、いえ。」
ヨハンは絶望感で一杯だった。
エミリアは関係修復など微塵も願っていない。それどころかそのせいで親とも喧嘩し、エミリアは父親に叩かれたこともあるようだ。
自分がうかつなことをしたばかりに、一つの家族を壊してしまった。そんな自分がこれ以上エミリアに縋る資格などあるわけがない。
それでも・・・幼いころに一度だけ出会った彼女を探し続けてやっとかなった婚約。それを失いたくはなかった。
「今日は・・・お暇いたします。私こそ自分勝手でエミリア様にご迷惑をおかけしました。心からお詫びいたします。ですが・・・一度、ゆっくりとお話しする時間をいただけませんか?お願いします。」
「・・・わかりました。旅から戻ってから連絡いたします。」
父が旅の許可を出していないというのを無視し、ヨハンを馬車まで送った。
「エミリア様、今更だと思われるでしょうが私は本当にエミリア様を大切に思っております。」
そう言い残してヨハンは帰っていった。
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