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ドラゴナ神国サイド 再会

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 一時、意識を失ったアリエルが気がついた時、アリエルはベッドに寝かされていた。

「お嬢、気がつきましたか?大丈夫ですか?」
「ええ、夢・・・を見ていたみたい。お母様が生きていると・・・お母様は人間ではないって不思議な夢を。竜でも神なんでもいいから生きていてくれたら・・・」
 アリエルは涙を落とした。
「・・・お嬢。夢ではないのです、フレヤ様はこの国にいらっしゃいます。」
「え?」
「お待ちくださいね。」
 クロウがドアを開けると、金色の瞳と七色に輝く肌を持ったフレヤの姿があった。

「・・・お母様・・・本当に?」
 アリエルはがばっとベッドに起きあがった。
 部屋に入らずそこに佇むフレヤは、その大きな瞳に涙を湛えていた。
「・・・恐ろしくはない?あなたの側に・・・行ってもいい?」
 涙を落としながら両手で口元を覆っているアリエルに、拒否されるのを恐れるようにフレヤは聞いた。

「お母様!お母様、会いたかった!」
 アリエルはフレヤに両手を伸ばした。
「あなたを置いて行ってごめんなさい、辛い思いをさせてしまってごめんね。」
 フレヤは泣きじゃくるアリエルの身体を抱きしめた。
 二人は涙ながらの再会を果たしたのだった。


 その夜、精神的に疲れたアリエルが母のフレヤと一緒の部屋に早々に引っ込んだ後、クロウはシャルルに呼び出されていた。
「小童(こわっぱ)、アリエルと親し過ぎじゃ。私なんてまだ距離を置かれておるのに。」
 シャルルは拗ねたようにクロウを睨む。
「俺はお嬢から絶大な信頼を得ていますから。当然です。」
 ふふんとクロウが笑う。
 アリエルがいなくなり、普段の話し方になったシャルルに気にも留めず、クロウは自分の優位性を示す。
「・・・護衛交代じゃな。」
「あ、また横暴を!俺がいなくなればお嬢が悲しみますよ。」
「案外と大丈夫なもんじゃ。優しくていい子だったのう。やっとドラゴナに来てくれた。お前がさっさと手配しないからじゃ。」
「・・・仕方がないでしょう。フレヤ様に会わせたい気持ちはありましたが、お嬢はあちらに未練があった。無理して連れて来て、事実を知ったら苦しんだかもしれない。それにまた陛下に拒否反応を起こす恐れもありましたし。」
「・・・まあな。もう未練はなくなったのか?」
「おそらく。ともかくお嬢の周りではおかしなことが起こり過ぎでした。」

 ジョルジュが亡くなった後、家督が叔父を引き継いだこともそうだ。
 詳細を言ってはくれなかったが、学院での人間関係に苦労しているようなことを言っていたし、セドリックの裏切りといい、続けざまにアリエルに不幸が襲っている。
「ほう。そんなことになっていたのか。クロウ、報告がなかったが?」
「・・・。」
「答えよ。」
「お嬢があの男を愛していたからです。報告すれば無理やりでもこちらに連れてくるでしょう。しかしあの男が裏切った以上もう王都にいる必要はない。だからお誘いしました。」
「鳥の小さい頭でいろいろ考えたわけか。」
 クロウの頭をこんこん叩く。
(このくそ竜め!)
 クロウはフェニックスの系譜である。こちらも神獣の血をひくとは言え竜人族の強大な力の前には逆らえない。それにこんなのでも前国王だ。

「それに少し覚醒の兆しがあったのも決断した要因の一つです。お嬢が感情を乱したときに天気が急変しておりましたし。」
「そうか。アリエルにも私の血がしっかり流れていたんじゃな。」
 シャルルは嬉しそうにうんうんと頷いた。
「優しくて思いやりがあって良い子じゃと聞いていたが、纏う気までも素晴らしかった。うん、あの子はええ子じゃ。あれにどうかな・・・だがこいつがな。いやでもあの子は手元に置きたいしのう。」
 何かを思い浮かべてシャルルはニヤニヤしている。

「何言ってるんですか、気持ちの悪い。」
 ぶつぶつ言うシャルルに不敬も何もなく、クロウは失礼な態度を平気でとる。
「お前主人に向かって気持ち悪いとは何事じゃ。」
「今の御主人はお嬢なので。」
「お前を派遣したのは私じゃろうが!いいのか、私の権限でアリエルとうちの王子を婚約させてもいいんじゃぞ!」
「な!」
「あの可愛いアリエルにおまえならと思っていたのじゃが・・・やめた。絶対に許してやらん!」
「ひどい職権乱用だ!それに俺とお嬢は別に・・・」
 クロウは焦った顔でしどろもどろになる。
「ほう、そうかそうか。じゃあうちの王子たちと結婚させていいんじゃな。よし分かった。」
「そんなことは言っておりません!」
と、久しぶりに会った師弟は夜が更けるまでくだらないこと挟みつつ、情報交換をしたのだった。



 アリエルは自分の出自やドラゴナ神国の真実を知り混乱したが、再会した母とドラゴナ神国で楽しい時を過ごすうちに受け入れられるようになった。
 急に話し方が老けたシャルルの見た目とのギャップにもしばらくは困惑したが、アリエルは慈しんでくれるシャルルをお爺様と慕うようにもなった。

 不要な記憶が消えた後の、花が咲くようなかわいい笑顔。
 お爺様と呼び、慕ってくれる孫娘にシャルルはデレデレになった。
 何より、覚醒したアリエルはシャルルが近づいてももう体調を崩すことはなかった。
 ようやく大いに孫を可愛がることが出来るようになったシャルルが自重するはずがない。目に入れてもいたくないほど溺愛している。


 こうしてドラゴナ神国に慣れたアリエルだったが、落ち着いてくると父の愛したワトー侯爵家を放ってきてしまったことが心配になった。
 叔父に任せるにしてももう少し引き継ぎが必要だし、領地にいないことが分かれば心配をかけてしまう。すでにもう二ヶ月も経っている、不在がバレている可能性は高い。
 アリエルはそう言ったが、
「それについては心配ありません。お嬢は・・・行方不明扱いになっております。」
「え!?」
「盗賊に会ってしまい、必死で逃れてそのままこちらに来てしまったものだからコベールではそうなっています。」
「だったら連絡しないと!」
「いえ、ドラゴナ神国に来させるわけにはいかないし、俺は・・・お嬢が狙われた可能性まで考えております。」
 だから、コベール国には何も報告をしなかったという。
 不安げな表情のアリエルに、シャルルが
「心配はない。私が一緒に行く。滅ぼす代わりに一掃してやろう。」
 と名乗りを上げた。


 実はアリエルの血まみれの姿を見た時、シャルルが、
「ちょっと出かけてくる。」
と、簡単にコベール国を滅ぼしに出かけようとしたのをクロウが血相を変えて止めていたのだ。
「待ってください!確かにあれはお嬢を狙っていたと思います。ですがコベール国民すべてが悪いわけではありません。あいつら全員の息の根を止めてしまったため狙いはわかりませんでしたが・・・」

 国ごと亡ぼすのを何とか思いとどまったシャルルだったが、アリエルを貶め苦しませた国に憤り、この度の襲撃やジョルジュの死、その他色々なことに疑問を抱いたシャルル自らが可愛い孫娘の為に一肌脱ぐことを決めたのだった。

 もちろん、お爺様大好きと言われるために。
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