あなたを愛する心は珠の中

れもんぴーる

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夜会

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 アリエルの生還および爵位の継承の祝い。
 それとドラゴナ神国の王族であるシャルルに歓迎と感謝の意を表するため、王家主催の夜会が開催された。

 これにかこつけて、ドラゴナ神国との関係を確固たるものしようとする国の魂胆が見え見えだったがシャルルとアリエルはそれに乗った。


 シャルルの登場は広間を煌めき騒めかせた。
 表舞台に出ることがほとんどないという、かの国の王族でかつ、長身で見目麗しいシャルルの登場に夫人や令嬢達のみならず、居並ぶもの皆から感嘆の声が上がる。
 そのシャルルの隣には美しく着飾ったアリエルが立っていた。

「アリエル・・・」
 セドリックは辛い思いで二人を見つめた。あれからまだアリエルと話す機会がないままだった。
 今夜のパーティだって本来なら自分がエスコートをして・・・しかし連絡してもなんの返答もなかった。
 このような登場をされてしまっては、アリエルはもうシャルルのパートナーと周知されてしまう。
 その後ろで不貞腐れたような顔をして護衛をしているのはクロウ。
 クロウもシャルルに敗れたのだろうと思ったが、いい気味だと思う心の余裕はなかった。
 アリエルは気品と自信に溢れた笑みで周りに挨拶をしている。シャルルはアリエルの事を愛しそうに見つめ、大切にしているのが傍目にも分かり、セドリックはズキンと胸の痛みを感じた。

 このパーティの参加者の半数以上はすでにシャルルと顔見知りでアリエルとも友好的な付き合いをしているのか、笑顔で談笑している。
 サンドラと懇意にしていた学院生そしてその親たちだけが焦り、居たたまれない様子だった。
 シャルルは神秘の国の王族、そしてそのシャルルの寵愛を受けるアリエル。
 王家とのつながり、権力、能力どれにおいてもサンドラと比べてどちらが重要なのか考えるまでもない。

 アリエルに冷たく当たっていた者たちは必死で取り繕おうと二人に近寄った。
「閣下、クロウ様、アリエル嬢、ご機嫌麗しゅうございます。」
「この国の者は目下の者が王族に直接話しかけるのか?」
 シャルルの言葉に、一瞬に場が凍る。
「い、いえ!クロウ様とは同じ学び舎で席を同じくさせていただいておりますし、アリエル嬢とは友人ですのでご挨拶をと・・・ね、アリエル。」
 アリエルは優しい笑みを浮かべ、声をかけた令息はほっとした。
「私は学院に友人はいなかったと思いますが・・・」
 困惑したようにアリエルは首をかしげる。
「アリエル嬢・・・」
「ほう、まさか友人の振りをして図々しく声をかけてくる者がいるとはな。」

 まわりにいた令息令嬢達は真っ青になる。ただでさえ、気がつけば自分たちの家は社交界の中心からはじかれていた。
 これ以上シャルルの不興をかえば、王家に睨まれる。そうなれば家が凋落してするのも時間の問題だ
「お、お許しください!アリエル嬢!これまでのことはいくらでもお詫びする!」
 次々に皆が謝罪を口にする。
「謝罪は不要ですわ。何のことかわかりませんし、このような場でおやめくださいね。」
「手のひらを反すような言動・・・いやはや、この国の未来を担う者たちのレベルを知ることが出来て有意義な時間だったよ。アリエルも疲れただろう?少しあちらでゆっくりと過ごすことにしよう。クロウ、後は頼む。」
「はい、承知しました。」
 そう言って二人はもう周りの者に目もくれず、踵を返して休憩用に用意されているテーブルへと向かい、クロウはこの後予定されているイベントの最終確認のため国王の下へ向かった。

 学友たちはアリエルとシャルルの後ろ姿を見送り、肩を落とした。
 今から思えばアリエルは何一つ悪くなかったのに。
 始めはささいなことから、アリエルが中傷された。ちょっとしたやっかみも含まれた些細な悪口。それがどうした事かどんどん膨らみ、たいした理由もないのにアリエルが孤立することになった。
 自分たちは正義をかざし、悪乗りというには悪質で卑怯ないじめを行っていたにすぎなかったのだ。

 本当に何故あんなことがまかり通っっていたのかわからない、今考えれば非難されるべき行動をとっていたのはサンドラ。
 自分たちはそんなわかりきったことをなぜ理解しようとしなかったのだろう。あの時は次々と流れる噂を真実だと思い込み、アリエルを虐げることは正義とでさえ思っていた
 やっと目が覚めたが、今更謝罪して許されるわけがない、自分たちが不利になって初めて謝罪を思いついたのだから・・・自分たちの閉ざされた未来を受け入れるしかなかった。

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