19 / 32
夜会
しおりを挟む
アリエルの生還および爵位の継承の祝い。
それとドラゴナ神国の王族であるシャルルに歓迎と感謝の意を表するため、王家主催の夜会が開催された。
これにかこつけて、ドラゴナ神国との関係を確固たるものしようとする国の魂胆が見え見えだったがシャルルとアリエルはそれに乗った。
シャルルの登場は広間を煌めき騒めかせた。
表舞台に出ることがほとんどないという、かの国の王族でかつ、長身で見目麗しいシャルルの登場に夫人や令嬢達のみならず、居並ぶもの皆から感嘆の声が上がる。
そのシャルルの隣には美しく着飾ったアリエルが立っていた。
「アリエル・・・」
セドリックは辛い思いで二人を見つめた。あれからまだアリエルと話す機会がないままだった。
今夜のパーティだって本来なら自分がエスコートをして・・・しかし連絡してもなんの返答もなかった。
このような登場をされてしまっては、アリエルはもうシャルルのパートナーと周知されてしまう。
その後ろで不貞腐れたような顔をして護衛をしているのはクロウ。
クロウもシャルルに敗れたのだろうと思ったが、いい気味だと思う心の余裕はなかった。
アリエルは気品と自信に溢れた笑みで周りに挨拶をしている。シャルルはアリエルの事を愛しそうに見つめ、大切にしているのが傍目にも分かり、セドリックはズキンと胸の痛みを感じた。
このパーティの参加者の半数以上はすでにシャルルと顔見知りでアリエルとも友好的な付き合いをしているのか、笑顔で談笑している。
サンドラと懇意にしていた学院生そしてその親たちだけが焦り、居たたまれない様子だった。
シャルルは神秘の国の王族、そしてそのシャルルの寵愛を受けるアリエル。
王家とのつながり、権力、能力どれにおいてもサンドラと比べてどちらが重要なのか考えるまでもない。
アリエルに冷たく当たっていた者たちは必死で取り繕おうと二人に近寄った。
「閣下、クロウ様、アリエル嬢、ご機嫌麗しゅうございます。」
「この国の者は目下の者が王族に直接話しかけるのか?」
シャルルの言葉に、一瞬に場が凍る。
「い、いえ!クロウ様とは同じ学び舎で席を同じくさせていただいておりますし、アリエル嬢とは友人ですのでご挨拶をと・・・ね、アリエル。」
アリエルは優しい笑みを浮かべ、声をかけた令息はほっとした。
「私は学院に友人はいなかったと思いますが・・・」
困惑したようにアリエルは首をかしげる。
「アリエル嬢・・・」
「ほう、まさか友人の振りをして図々しく声をかけてくる者がいるとはな。」
まわりにいた令息令嬢達は真っ青になる。ただでさえ、気がつけば自分たちの家は社交界の中心からはじかれていた。
これ以上シャルルの不興をかえば、王家に睨まれる。そうなれば家が凋落してするのも時間の問題だ
「お、お許しください!アリエル嬢!これまでのことはいくらでもお詫びする!」
次々に皆が謝罪を口にする。
「謝罪は不要ですわ。何のことかわかりませんし、このような場でおやめくださいね。」
「手のひらを反すような言動・・・いやはや、この国の未来を担う者たちのレベルを知ることが出来て有意義な時間だったよ。アリエルも疲れただろう?少しあちらでゆっくりと過ごすことにしよう。クロウ、後は頼む。」
「はい、承知しました。」
そう言って二人はもう周りの者に目もくれず、踵を返して休憩用に用意されているテーブルへと向かい、クロウはこの後予定されているイベントの最終確認のため国王の下へ向かった。
学友たちはアリエルとシャルルの後ろ姿を見送り、肩を落とした。
今から思えばアリエルは何一つ悪くなかったのに。
始めはささいなことから、アリエルが中傷された。ちょっとしたやっかみも含まれた些細な悪口。それがどうした事かどんどん膨らみ、たいした理由もないのにアリエルが孤立することになった。
自分たちは正義をかざし、悪乗りというには悪質で卑怯ないじめを行っていたにすぎなかったのだ。
本当に何故あんなことがまかり通っっていたのかわからない、今考えれば非難されるべき行動をとっていたのはサンドラ。
自分たちはそんなわかりきったことをなぜ理解しようとしなかったのだろう。あの時は次々と流れる噂を真実だと思い込み、アリエルを虐げることは正義とでさえ思っていた
やっと目が覚めたが、今更謝罪して許されるわけがない、自分たちが不利になって初めて謝罪を思いついたのだから・・・自分たちの閉ざされた未来を受け入れるしかなかった。
それとドラゴナ神国の王族であるシャルルに歓迎と感謝の意を表するため、王家主催の夜会が開催された。
これにかこつけて、ドラゴナ神国との関係を確固たるものしようとする国の魂胆が見え見えだったがシャルルとアリエルはそれに乗った。
シャルルの登場は広間を煌めき騒めかせた。
表舞台に出ることがほとんどないという、かの国の王族でかつ、長身で見目麗しいシャルルの登場に夫人や令嬢達のみならず、居並ぶもの皆から感嘆の声が上がる。
そのシャルルの隣には美しく着飾ったアリエルが立っていた。
「アリエル・・・」
セドリックは辛い思いで二人を見つめた。あれからまだアリエルと話す機会がないままだった。
今夜のパーティだって本来なら自分がエスコートをして・・・しかし連絡してもなんの返答もなかった。
このような登場をされてしまっては、アリエルはもうシャルルのパートナーと周知されてしまう。
その後ろで不貞腐れたような顔をして護衛をしているのはクロウ。
クロウもシャルルに敗れたのだろうと思ったが、いい気味だと思う心の余裕はなかった。
アリエルは気品と自信に溢れた笑みで周りに挨拶をしている。シャルルはアリエルの事を愛しそうに見つめ、大切にしているのが傍目にも分かり、セドリックはズキンと胸の痛みを感じた。
このパーティの参加者の半数以上はすでにシャルルと顔見知りでアリエルとも友好的な付き合いをしているのか、笑顔で談笑している。
サンドラと懇意にしていた学院生そしてその親たちだけが焦り、居たたまれない様子だった。
シャルルは神秘の国の王族、そしてそのシャルルの寵愛を受けるアリエル。
王家とのつながり、権力、能力どれにおいてもサンドラと比べてどちらが重要なのか考えるまでもない。
アリエルに冷たく当たっていた者たちは必死で取り繕おうと二人に近寄った。
「閣下、クロウ様、アリエル嬢、ご機嫌麗しゅうございます。」
「この国の者は目下の者が王族に直接話しかけるのか?」
シャルルの言葉に、一瞬に場が凍る。
「い、いえ!クロウ様とは同じ学び舎で席を同じくさせていただいておりますし、アリエル嬢とは友人ですのでご挨拶をと・・・ね、アリエル。」
アリエルは優しい笑みを浮かべ、声をかけた令息はほっとした。
「私は学院に友人はいなかったと思いますが・・・」
困惑したようにアリエルは首をかしげる。
「アリエル嬢・・・」
「ほう、まさか友人の振りをして図々しく声をかけてくる者がいるとはな。」
まわりにいた令息令嬢達は真っ青になる。ただでさえ、気がつけば自分たちの家は社交界の中心からはじかれていた。
これ以上シャルルの不興をかえば、王家に睨まれる。そうなれば家が凋落してするのも時間の問題だ
「お、お許しください!アリエル嬢!これまでのことはいくらでもお詫びする!」
次々に皆が謝罪を口にする。
「謝罪は不要ですわ。何のことかわかりませんし、このような場でおやめくださいね。」
「手のひらを反すような言動・・・いやはや、この国の未来を担う者たちのレベルを知ることが出来て有意義な時間だったよ。アリエルも疲れただろう?少しあちらでゆっくりと過ごすことにしよう。クロウ、後は頼む。」
「はい、承知しました。」
そう言って二人はもう周りの者に目もくれず、踵を返して休憩用に用意されているテーブルへと向かい、クロウはこの後予定されているイベントの最終確認のため国王の下へ向かった。
学友たちはアリエルとシャルルの後ろ姿を見送り、肩を落とした。
今から思えばアリエルは何一つ悪くなかったのに。
始めはささいなことから、アリエルが中傷された。ちょっとしたやっかみも含まれた些細な悪口。それがどうした事かどんどん膨らみ、たいした理由もないのにアリエルが孤立することになった。
自分たちは正義をかざし、悪乗りというには悪質で卑怯ないじめを行っていたにすぎなかったのだ。
本当に何故あんなことがまかり通っっていたのかわからない、今考えれば非難されるべき行動をとっていたのはサンドラ。
自分たちはそんなわかりきったことをなぜ理解しようとしなかったのだろう。あの時は次々と流れる噂を真実だと思い込み、アリエルを虐げることは正義とでさえ思っていた
やっと目が覚めたが、今更謝罪して許されるわけがない、自分たちが不利になって初めて謝罪を思いついたのだから・・・自分たちの閉ざされた未来を受け入れるしかなかった。
122
お気に入りに追加
1,958
あなたにおすすめの小説
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
王子が主人公のお話です。
番外編『使える主をみつけた男の話』の更新はじめました。
本編を読まなくてもわかるお話です。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
公爵令嬢は、婚約者のことを諦める
小倉みち
恋愛
公爵令嬢アメリは、婚約者である公爵子息マートンを、とても愛していた。
小さいころに一目ぼれをし、それ以降、彼だけを追いかけ続けていた。
しかしマートンは、そうじゃなかった。
相手側から、無理やり用意された縁談。
好きだ好きだと、何度もアメリに追い回される。
彼女のことを、鬱陶しいとさえ思っていた。
自分が愛されていないことは知っていたが、それでもアメリは彼を求めていた。
彼と結婚したい。
彼と恋仲になりたい。
それだけをずっと考えていた。
しかしそんなある日、彼女は前世を思い出す。
それは、マートンと親しい関係にある男爵令嬢の胸倉を掴んだ瞬間に起こった出来事だった。
すべてを思い出した彼女は、ここが乙女ゲームの世界であり、自分がそのゲームの悪役令嬢。
そして今、胸倉を掴んでいる男爵令嬢こそが、乙女ゲームのヒロインであることを悟る。
攻略対象であるマートンのルートに彼女が入ってしまっている今、自分に勝ち目はない。
それどころか、下手をすれば国外追放され、自分の家に迷惑がかかってしまう。
ストーリーの結末を思い出してしまった彼女は、悲劇を起こさないように。
マートンのことを、きっぱりと諦めることにした。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
夫はあなたに差し上げます
水瀬 立乃
恋愛
妊娠をきっかけに結婚した十和子は、夫の綾史と4ヶ月になる息子の寿真と家族3人で暮らしていた。
綾史には仲良しの女友達がいて、シングルマザーの彼女とその娘をとても気にかけていた。
5人で遊びに行った帰り道、十和子は綾史達と別れて寿真とふたりで帰路につく。
その夜を境に、十和子の停滞気味の人生は意外な形で好転していく。
※小説家になろう様でも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる