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婚約破棄を突き付けられる
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アリエルが領地に向かうとすぐに現ワトー侯爵の叔父のダニエルは、アリエルの意志を確認することもなくセドリックの両親に婚約破棄を求めた。
ダニエルは以前からアリエルとセドリックを引き離す機会を待っていた。
執務、領地経営などしたことがないダニエルは、アリエルの能力を欲していた。
今回アリエルと一緒に領地をまわったことで、領民からの信頼が厚く、執務にも精通しているアリエルを見て、その気持ちを強くした。
出来れば自分の息子と結婚させたいと密かに考えていたのだ。
それだけではなく、婚約解消とともにルブラン家と共同で行っていた事業からも手を退くつもりだった。もともと兄が契約してた事業だったが、こちらにうまみは全くなかった。
アリエルが婚約していたからこそ結ばれていた契約は共同事業というよりも支援に近いものだ。ダニエルはそれからも手を引きたかった。
手元にはこの一カ月ほどのセドリックの行動が詳細に記された書類がある。
隣国の公爵令嬢との逢瀬。
相手有責で婚約破棄が出来る資料だと、ある人物が用意してくれた。
アリエルの療養がセドリックのせいであることもその人物から報告があり、このチャンスを侯爵は逃さなかった。
アリエルは、まだ婚約解消など考えていないのだろう。しかし、侯爵家当主としてアリエルをないがしろにしたセドリックを責める権利はある。
アリエルの為にしたのだと言えば、傷心のアリエルはわかってくれるだろう。彼女がいない間にすべてを終わらせておきたかった。
アリエルが領地に出かけた翌日、早速ダニエルは動いた。
「そんな!手を引かれたら事業が停滞する!当家だけで出来る規模ではない!」
婚約破棄の申し出を受け、セドリックの父、ルブラン侯爵は動揺する。
「ご子息が今お付き合いしている隣国の公爵令嬢に頼めばよろしいのではないですかな。ともかくうちはもう関係はありません、アリエルに近づかないようご子息にも良く言い聞かせてください。ああ、他に付き合っている令嬢がいるからその心配はありませんね。書類早く頼みますよ、では失礼する。」
ダニエルはセドリックの行動調査の書類と婚約破棄の書類を置いて席を立った。
学院から帰宅し、ワトー侯爵の来訪とその理由を聞いたセドリックはひどく驚き、狼狽えた。
「お前は何をしているんだ!アリエル嬢がたった一カ月いないだけで他の女に現を抜かすとは。それほど馬鹿だとは思わなかった。アリエル嬢と婚姻を結ぶことでこれからどんどん事業も拡大して・・・これで領民が飢える心配もないと思っていたのに台無しだ!・・・セドリック、お前は責任をもってその公爵令嬢とつながりを持て。」
「ち、父上・・・いったい・・」
「公爵令嬢と婚約をするか、それが無理でも支援をさせろと言っている。責任をとってもらう。」
「冗談はやめてください!僕はアリエルと結婚します、何の話合いもせずに一方的にひどすぎる!」
セドリックは青ざめながらも、父親に言い返す。
「お前が休暇中の一カ月、公爵令嬢との不貞をしていたと知られていないとでも思っているのか!お前がアリエル嬢から異国の令嬢に乗り換えたと学院でもお前たちの仲が噂になっているそうじゃないか。あちらはすべて調査したうえでの決断だ。」
「不貞などしていない!たった一カ月・・・アリエルの為に会っていただけで・・・」
「言い訳はいい。二人で会っていたのは事実だろう。ああ、お前など期待できん。こちらで調べてあちらに賠償金を求める。」
そう言い、ルブラン侯爵は執務室へと戻っていった。
しかしそれから数日後、再び父親に呼ばれた。
あれだけ怒りをあらわにしていた父親は一転上機嫌だった。
「ああ。ハルメ公爵に手紙を差し上げたところ、迷惑をかけて申し訳ないと連絡を下さってな。喜べ、お前に新しい縁談を紹介してくださるそうだ。資金面での協力も惜しまないとな。アリエル嬢のことは残念だったがかえって良縁が結べそうだ。」
「受けません!そんな縁談断ってください。」
「馬鹿を言うな。お前がしでかした責任をどうとるつもりだ?嫌だというのならお前の責任で資金を調達してこい!それができないのなら縁談を受けろ!あきらめてアリエル嬢との婚約破棄の書類に署名をしないか。」
「お断りです!」
「お前の意見はどうでもいい。お前の不貞は返ってよかったやも知れんな。さっさと書きなさい。」
「嫌です!あれから一度もアリエルと話をしていない!アリエルにひどいことをしたのは確かです!でもサンドラ嬢とのことは誤解なんだ、話せばアリエルも分かってくれる!」
「セドリック!」
これ以上父と話をしたくなくて、セドリックは部屋を飛び出した。
不貞などしていない。こんなことでアリエルと別れるなんて考えられない。
一度話合えば解決する話。傷つけたことを詫びて理解してもらえたら済む話だ。
誤解させた自分が悪いのは承知しているが、あれから一度も会えないまま婚約破棄の話が出るなんて思いもしなかった。あれはきっとアリエルの叔父が勝手に進めているはずだ。
アリエルに話をする機会を貰えたなら、自分の浅はかな行為を誠心誠意詫びて、アリエルへの愛をわかってもらう。すぐに許してくれなくても、許してもらえるまで日参する。
そうすれば誤解が解けてまた元のように仲の良い二人に戻れるとそう思っていた。
ダニエルは以前からアリエルとセドリックを引き離す機会を待っていた。
執務、領地経営などしたことがないダニエルは、アリエルの能力を欲していた。
今回アリエルと一緒に領地をまわったことで、領民からの信頼が厚く、執務にも精通しているアリエルを見て、その気持ちを強くした。
出来れば自分の息子と結婚させたいと密かに考えていたのだ。
それだけではなく、婚約解消とともにルブラン家と共同で行っていた事業からも手を退くつもりだった。もともと兄が契約してた事業だったが、こちらにうまみは全くなかった。
アリエルが婚約していたからこそ結ばれていた契約は共同事業というよりも支援に近いものだ。ダニエルはそれからも手を引きたかった。
手元にはこの一カ月ほどのセドリックの行動が詳細に記された書類がある。
隣国の公爵令嬢との逢瀬。
相手有責で婚約破棄が出来る資料だと、ある人物が用意してくれた。
アリエルの療養がセドリックのせいであることもその人物から報告があり、このチャンスを侯爵は逃さなかった。
アリエルは、まだ婚約解消など考えていないのだろう。しかし、侯爵家当主としてアリエルをないがしろにしたセドリックを責める権利はある。
アリエルの為にしたのだと言えば、傷心のアリエルはわかってくれるだろう。彼女がいない間にすべてを終わらせておきたかった。
アリエルが領地に出かけた翌日、早速ダニエルは動いた。
「そんな!手を引かれたら事業が停滞する!当家だけで出来る規模ではない!」
婚約破棄の申し出を受け、セドリックの父、ルブラン侯爵は動揺する。
「ご子息が今お付き合いしている隣国の公爵令嬢に頼めばよろしいのではないですかな。ともかくうちはもう関係はありません、アリエルに近づかないようご子息にも良く言い聞かせてください。ああ、他に付き合っている令嬢がいるからその心配はありませんね。書類早く頼みますよ、では失礼する。」
ダニエルはセドリックの行動調査の書類と婚約破棄の書類を置いて席を立った。
学院から帰宅し、ワトー侯爵の来訪とその理由を聞いたセドリックはひどく驚き、狼狽えた。
「お前は何をしているんだ!アリエル嬢がたった一カ月いないだけで他の女に現を抜かすとは。それほど馬鹿だとは思わなかった。アリエル嬢と婚姻を結ぶことでこれからどんどん事業も拡大して・・・これで領民が飢える心配もないと思っていたのに台無しだ!・・・セドリック、お前は責任をもってその公爵令嬢とつながりを持て。」
「ち、父上・・・いったい・・」
「公爵令嬢と婚約をするか、それが無理でも支援をさせろと言っている。責任をとってもらう。」
「冗談はやめてください!僕はアリエルと結婚します、何の話合いもせずに一方的にひどすぎる!」
セドリックは青ざめながらも、父親に言い返す。
「お前が休暇中の一カ月、公爵令嬢との不貞をしていたと知られていないとでも思っているのか!お前がアリエル嬢から異国の令嬢に乗り換えたと学院でもお前たちの仲が噂になっているそうじゃないか。あちらはすべて調査したうえでの決断だ。」
「不貞などしていない!たった一カ月・・・アリエルの為に会っていただけで・・・」
「言い訳はいい。二人で会っていたのは事実だろう。ああ、お前など期待できん。こちらで調べてあちらに賠償金を求める。」
そう言い、ルブラン侯爵は執務室へと戻っていった。
しかしそれから数日後、再び父親に呼ばれた。
あれだけ怒りをあらわにしていた父親は一転上機嫌だった。
「ああ。ハルメ公爵に手紙を差し上げたところ、迷惑をかけて申し訳ないと連絡を下さってな。喜べ、お前に新しい縁談を紹介してくださるそうだ。資金面での協力も惜しまないとな。アリエル嬢のことは残念だったがかえって良縁が結べそうだ。」
「受けません!そんな縁談断ってください。」
「馬鹿を言うな。お前がしでかした責任をどうとるつもりだ?嫌だというのならお前の責任で資金を調達してこい!それができないのなら縁談を受けろ!あきらめてアリエル嬢との婚約破棄の書類に署名をしないか。」
「お断りです!」
「お前の意見はどうでもいい。お前の不貞は返ってよかったやも知れんな。さっさと書きなさい。」
「嫌です!あれから一度もアリエルと話をしていない!アリエルにひどいことをしたのは確かです!でもサンドラ嬢とのことは誤解なんだ、話せばアリエルも分かってくれる!」
「セドリック!」
これ以上父と話をしたくなくて、セドリックは部屋を飛び出した。
不貞などしていない。こんなことでアリエルと別れるなんて考えられない。
一度話合えば解決する話。傷つけたことを詫びて理解してもらえたら済む話だ。
誤解させた自分が悪いのは承知しているが、あれから一度も会えないまま婚約破棄の話が出るなんて思いもしなかった。あれはきっとアリエルの叔父が勝手に進めているはずだ。
アリエルに話をする機会を貰えたなら、自分の浅はかな行為を誠心誠意詫びて、アリエルへの愛をわかってもらう。すぐに許してくれなくても、許してもらえるまで日参する。
そうすれば誤解が解けてまた元のように仲の良い二人に戻れるとそう思っていた。
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