42 / 51
ブトナ男爵令嬢 2
しおりを挟む
それから3カ月がたち、勇んで家に戻った。
しかし家族は誰も喜んではくれなかった。モーリア侯爵が籍を抜かなくていいと言ってくれていたにも関わらずすでに貴族の身分は既にはく奪されていた。
「どうしてですか?!私、いうとおりに罰を受けてきましたわ!」
「・・・。娼館で働いていたという醜聞がどう広がっているかわからないのか。娼館で働いていたお前は娼婦をしていたことになっている。」
「私は掃除や洗濯をしていただけです!」
「・・・こうなることを侯爵家は狙っていたのだろう。侯爵令嬢を貶めたお前を彼らは許すことはなかったんだ。お前がいると男爵家は没落する、すでにお前のせいで傾いてきているがな。」
「そんな・・・ひどいですわ!」
「自分のしたことが返ってきただけだろう!それでも・・それでもお前は大切な私の娘だった。ここを出てこの手紙の人物のところに行きなさい。生活が立ちゆくよう頼んである。」
親子としての情を男爵は捨てきれなかった。最後にできる温情を元娘に与えた。
「待って・・・待ってください!あの日・・・本当にあの女は男と過ごしていたのです!証明するために相手の男を探すつもりです。それまでお待ちください!」
「無駄だ。お前の言葉を信じたかった、だからお前がいない間に探した。確かに侯爵令嬢と連れ立って部屋に入った令息を見つけたよ。彼はもともと友人で、具合の悪くなった令嬢を介抱していたそうだ。」
「そんなはずはありません!きっとそういうように言われて・・・」
「だとしてもだ!そうまでしてなぜお前が彼女を敵視するんだ!関係がないことに首を突っ込まなければよかったものを!」
その通りだった。シャルロットがどうであろうと自分には全く関係のない話だった。でも悔しかった。社交界に居場所がなかったような女が、有望株のシリルと婚約し、王家の覚えもめでたいなんて。だから真実の姿を暴いて、以前のように居場所を無くしてやろうと思った、そうすればシリルも感謝し自分に好意を持ってくれるはずだった。
あの夜、シャルロットを襲おうとした令息がとっくに落ちぶれてしまったのも知らずに、代わりに証言したものは別の人間だったとも知らずに元男爵令嬢は打つ手を失った。
少しばかりのお金と手紙を渡され、元男爵令嬢は屋敷を出された。
しかし家族は誰も喜んではくれなかった。モーリア侯爵が籍を抜かなくていいと言ってくれていたにも関わらずすでに貴族の身分は既にはく奪されていた。
「どうしてですか?!私、いうとおりに罰を受けてきましたわ!」
「・・・。娼館で働いていたという醜聞がどう広がっているかわからないのか。娼館で働いていたお前は娼婦をしていたことになっている。」
「私は掃除や洗濯をしていただけです!」
「・・・こうなることを侯爵家は狙っていたのだろう。侯爵令嬢を貶めたお前を彼らは許すことはなかったんだ。お前がいると男爵家は没落する、すでにお前のせいで傾いてきているがな。」
「そんな・・・ひどいですわ!」
「自分のしたことが返ってきただけだろう!それでも・・それでもお前は大切な私の娘だった。ここを出てこの手紙の人物のところに行きなさい。生活が立ちゆくよう頼んである。」
親子としての情を男爵は捨てきれなかった。最後にできる温情を元娘に与えた。
「待って・・・待ってください!あの日・・・本当にあの女は男と過ごしていたのです!証明するために相手の男を探すつもりです。それまでお待ちください!」
「無駄だ。お前の言葉を信じたかった、だからお前がいない間に探した。確かに侯爵令嬢と連れ立って部屋に入った令息を見つけたよ。彼はもともと友人で、具合の悪くなった令嬢を介抱していたそうだ。」
「そんなはずはありません!きっとそういうように言われて・・・」
「だとしてもだ!そうまでしてなぜお前が彼女を敵視するんだ!関係がないことに首を突っ込まなければよかったものを!」
その通りだった。シャルロットがどうであろうと自分には全く関係のない話だった。でも悔しかった。社交界に居場所がなかったような女が、有望株のシリルと婚約し、王家の覚えもめでたいなんて。だから真実の姿を暴いて、以前のように居場所を無くしてやろうと思った、そうすればシリルも感謝し自分に好意を持ってくれるはずだった。
あの夜、シャルロットを襲おうとした令息がとっくに落ちぶれてしまったのも知らずに、代わりに証言したものは別の人間だったとも知らずに元男爵令嬢は打つ手を失った。
少しばかりのお金と手紙を渡され、元男爵令嬢は屋敷を出された。
61
お気に入りに追加
835
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ちっちゃいは正義
ひろか
恋愛
セラフィナ・ノーズは何でも持っていた。
完璧で、隙のない彼女から婚約者を奪ったというのに、笑っていた。
だから呪った。醜く老いてしまう退化の呪い。
しかしその呪いこそ、彼らの心を奪うものだった!
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる