死を見る令嬢は義弟に困惑しています

れもんぴーる

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ブトナ男爵令嬢 2

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 それから3カ月がたち、勇んで家に戻った。
 しかし家族は誰も喜んではくれなかった。モーリア侯爵が籍を抜かなくていいと言ってくれていたにも関わらずすでに貴族の身分は既にはく奪されていた。

「どうしてですか?!私、いうとおりに罰を受けてきましたわ!」
「・・・。娼館で働いていたという醜聞がどう広がっているかわからないのか。娼館で働いていたお前は娼婦をしていたことになっている。」
「私は掃除や洗濯をしていただけです!」
「・・・こうなることを侯爵家は狙っていたのだろう。侯爵令嬢を貶めたお前を彼らは許すことはなかったんだ。お前がいると男爵家は没落する、すでにお前のせいで傾いてきているがな。」
「そんな・・・ひどいですわ!」
「自分のしたことが返ってきただけだろう!それでも・・それでもお前は大切な私の娘だった。ここを出てこの手紙の人物のところに行きなさい。生活が立ちゆくよう頼んである。」
親子としての情を男爵は捨てきれなかった。最後にできる温情を元娘に与えた。

「待って・・・待ってください!あの日・・・本当にあの女は男と過ごしていたのです!証明するために相手の男を探すつもりです。それまでお待ちください!」
「無駄だ。お前の言葉を信じたかった、だからお前がいない間に探した。確かに侯爵令嬢と連れ立って部屋に入った令息を見つけたよ。彼はもともと友人で、具合の悪くなった令嬢を介抱していたそうだ。」
「そんなはずはありません!きっとそういうように言われて・・・」
「だとしてもだ!そうまでしてなぜお前が彼女を敵視するんだ!関係がないことに首を突っ込まなければよかったものを!」

 その通りだった。シャルロットがどうであろうと自分には全く関係のない話だった。でも悔しかった。社交界に居場所がなかったような女が、有望株のシリルと婚約し、王家の覚えもめでたいなんて。だから真実の姿を暴いて、以前のように居場所を無くしてやろうと思った、そうすればシリルも感謝し自分に好意を持ってくれるはずだった。

 あの夜、シャルロットを襲おうとした令息がとっくに落ちぶれてしまったのも知らずに、代わりに証言したものは別の人間だったとも知らずに元男爵令嬢は打つ手を失った。

 少しばかりのお金と手紙を渡され、元男爵令嬢は屋敷を出された。
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