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不穏な手紙 1
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ある日、シャルロットのもとに一通の手紙が届けられた。
差出人を見ると会ったことはないが、耳にはした事のある令嬢だった。
大っぴらにお披露目をしたわけではないが、シリルと婚約者したことが少しづつ社交界にも広まってきている。そしてシリルが噂の否定に走りまわったこととエリックとのお茶会のおかげでシャルロットの名誉はずいぶん回復されていた。それに伴ってお茶会への誘いも増えた。基本的参加することはないけれど。
なので、これまで縁のない令嬢からの手紙でも疑うことなく封を切った。
内容に目を通した瞬間、体が震え足の力を失い床にくずれてしまった。
その手紙には、ずいぶん昔の夜会でシャルロットがある男性と一夜の関係を結んだと書かれていた。それを婚約者のシリルは知っているのか。シャルロットのことを噂通りのふしだらな人間だと書かれていた。
あの日のことはよく覚えている。父のジェラルドが参加できず、シリルが名ばかりのエスコートをしてくれた日のことだ。体調を崩してしまったが、あの日を境にシリルとの関係が好転した。
でも体調が悪くなったからと宿で休んだとシリルには聞かされたけれど、夜会の途中から朝に宿で目が覚めるまでの記憶がなかった。そして全身に心当たりのない痛みも確かにあった。
もしかして、誰ともわからない男に乱暴されて、意識を失いでもした私をシリルが介抱してくれた・・・?私は恐怖でその記憶を無くしてしまった?
シリルは知っていて側にいてくれた?だから優しくなった?
「いやっ・・・いやあ~!!」
シャルロットは自身を抱きしめ泣き崩れた。
その夜の食卓で、シャルロットはほとんど何も食べることができなかった。
家族が心配したが、少し風邪を引いたかもしれないと言い訳をしてすぐに部屋に戻った。
ほどなく、シリルがレモンとはちみつをたっぷり入れた紅茶を持ってきてくれた。
「・・・ありがとう。」
カップを手に取るが、手が震えてしまって紅茶をこぼしてしまった。
「・・・何かあった?」
シリルはカップをシャルロットの手から取った。
「何も。風邪うつしちゃいけないから早く出て行った方がいいわ。」
「そんなの、大丈夫だよ。具合が悪くなった時側にいないと心配じゃないか。」
「平気だから!・・・一人にして。お願い。」
「・・・わかった。何かあればすぐに呼んでね。」
シリルの側にいることが辛かった。大切にされることが心苦しかった。シリルがどんな目で、どんな思いで自分を見ていたのか怖くてたまらなかった。
その日からシャルロットは食事がとれず、どんどん元気をなくしていった。
ジェラルドも心配し、医者を呼ぶと言ったが断わった。身体はどこも悪くないのだから。弱っているのは心。どうしようもない汚れた自分。
「お父様・・・修道院に行きたい。」
「シャルロット・・・いったい何があったんだ?私に話してほしい。なんでも力になると約束しただろう?」
シャルロットは横に首を振り、
「何もありません。ただ・・・私にはやはり普通の生活が苦しいのです。シリルと結婚することは出来ません。ただ祈りを捧げて心穏やかに暮らしていきたいのです。お願いです、お父様。」
ベッドに横たわり、やせ細ってしまったシャルロットはぽろぽろと涙をこぼす。
「どうしてだ・・・せっかくあの苦しみから解放されたというのに。もしかしてシリルと何かあったのか?」
シリルからも、シャルロットがよそよそしくなったと報告を受けている。
「ありません。私の・・・私のわがままです。」
「こんな体で修道院にはいかせられない。本気でそう思うならまず体を治しなさい。」
ジェラルドは執務室に戻るとため息をついた。
つい先日まで、幸せそうにしていたのに一体シャルロットの身に何が起こったのだろう。心当たりは何もなかった。
差出人を見ると会ったことはないが、耳にはした事のある令嬢だった。
大っぴらにお披露目をしたわけではないが、シリルと婚約者したことが少しづつ社交界にも広まってきている。そしてシリルが噂の否定に走りまわったこととエリックとのお茶会のおかげでシャルロットの名誉はずいぶん回復されていた。それに伴ってお茶会への誘いも増えた。基本的参加することはないけれど。
なので、これまで縁のない令嬢からの手紙でも疑うことなく封を切った。
内容に目を通した瞬間、体が震え足の力を失い床にくずれてしまった。
その手紙には、ずいぶん昔の夜会でシャルロットがある男性と一夜の関係を結んだと書かれていた。それを婚約者のシリルは知っているのか。シャルロットのことを噂通りのふしだらな人間だと書かれていた。
あの日のことはよく覚えている。父のジェラルドが参加できず、シリルが名ばかりのエスコートをしてくれた日のことだ。体調を崩してしまったが、あの日を境にシリルとの関係が好転した。
でも体調が悪くなったからと宿で休んだとシリルには聞かされたけれど、夜会の途中から朝に宿で目が覚めるまでの記憶がなかった。そして全身に心当たりのない痛みも確かにあった。
もしかして、誰ともわからない男に乱暴されて、意識を失いでもした私をシリルが介抱してくれた・・・?私は恐怖でその記憶を無くしてしまった?
シリルは知っていて側にいてくれた?だから優しくなった?
「いやっ・・・いやあ~!!」
シャルロットは自身を抱きしめ泣き崩れた。
その夜の食卓で、シャルロットはほとんど何も食べることができなかった。
家族が心配したが、少し風邪を引いたかもしれないと言い訳をしてすぐに部屋に戻った。
ほどなく、シリルがレモンとはちみつをたっぷり入れた紅茶を持ってきてくれた。
「・・・ありがとう。」
カップを手に取るが、手が震えてしまって紅茶をこぼしてしまった。
「・・・何かあった?」
シリルはカップをシャルロットの手から取った。
「何も。風邪うつしちゃいけないから早く出て行った方がいいわ。」
「そんなの、大丈夫だよ。具合が悪くなった時側にいないと心配じゃないか。」
「平気だから!・・・一人にして。お願い。」
「・・・わかった。何かあればすぐに呼んでね。」
シリルの側にいることが辛かった。大切にされることが心苦しかった。シリルがどんな目で、どんな思いで自分を見ていたのか怖くてたまらなかった。
その日からシャルロットは食事がとれず、どんどん元気をなくしていった。
ジェラルドも心配し、医者を呼ぶと言ったが断わった。身体はどこも悪くないのだから。弱っているのは心。どうしようもない汚れた自分。
「お父様・・・修道院に行きたい。」
「シャルロット・・・いったい何があったんだ?私に話してほしい。なんでも力になると約束しただろう?」
シャルロットは横に首を振り、
「何もありません。ただ・・・私にはやはり普通の生活が苦しいのです。シリルと結婚することは出来ません。ただ祈りを捧げて心穏やかに暮らしていきたいのです。お願いです、お父様。」
ベッドに横たわり、やせ細ってしまったシャルロットはぽろぽろと涙をこぼす。
「どうしてだ・・・せっかくあの苦しみから解放されたというのに。もしかしてシリルと何かあったのか?」
シリルからも、シャルロットがよそよそしくなったと報告を受けている。
「ありません。私の・・・私のわがままです。」
「こんな体で修道院にはいかせられない。本気でそう思うならまず体を治しなさい。」
ジェラルドは執務室に戻るとため息をついた。
つい先日まで、幸せそうにしていたのに一体シャルロットの身に何が起こったのだろう。心当たりは何もなかった。
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